パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

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第6話 無能と呼ばれた錬金術師

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 翌朝。谷に霧が立ちこめ、畑の土はしっとり湿っていた。昨日までに腐葉土を混ぜ込んだ畝には、もう緑の芽が顔をのぞかせている。生命力というやつは侮れない。

「うわぁ! 芽が出てる!」
「早い……!」

 リナとフィオが歓声をあげ、グレンが「成長の乾杯だ!」と叫んで水を飲んだ。俺は皆の様子を見てうなずく。

「順調だな。だが、問題は肥料と保存方法だ」

 そう言ったときだった。

「……その問題、私に任せていただけませんか」

 静かな声がした。振り返ると、長いローブをまとった青年が立っていた。細身で眼鏡をかけ、背には大きな荷袋。髪はぼさぼさで、顔色は少し青白い。

「誰だ?」

「……私はセリウス。王立錬金術師団を追放された者です」

「また追放者か」俺は苦笑した。「理由は?」

「成果が“地味すぎる”と言われました」

「……詳しく」

 セリウスは荷袋を下ろし、中から瓶や草を取り出した。

「私は毒を無毒化する薬、食料を長持ちさせる薬、土を柔らかくする粉……そういうものを研究していました。しかし、派手な爆発薬や劇的な強化薬を作れない私を、団は無能と呼んだのです」

 リナが息を呑む。

「食料を長持ちさせるって……すごいじゃないですか!」

「でも、“物語”にならないので……」セリウスは苦笑した。

 俺は即答した。

「歓迎する。君の技術は、俺たちにとって最高の宝だ」

 セリウスの目が見開かれ、震えた。



 さっそくセリウスの力を試した。
 彼が畑に撒いた白い粉は土をふかふかにし、芽は一晩でぐんと伸びた。瓶に詰められた保存薬は、昨日の肉をまるで新鮮なままに保っていた。

「すごい……! これなら食べ物が腐らない!」
「俺の鍋のレパートリーが増えるな!」リナが目を輝かせる。

 グレンは保存薬を一口飲んで咳き込んだ。

「げほっ……苦い!」

「飲むものではありません」セリウスが冷静に突っ込む。

 皆が笑い、広場は和んだ。フィオもこっそり瓶を覗き込み、「これで魔法の触媒も長持ちするのかな」と呟いていた。



 夜。焚き火の周りで、俺は仲間たちに言った。

「追放された理由はみんなバラバラだ。酒癖、暴発、地味すぎる……でも、ここでは全部が役立つ」

「その通りだ!」グレンが豪快に頷く。
「わたしも……少しずつ狙いが当たるようになってきた!」フィオが笑う。
「料理も保存できるなら、もっと工夫できます!」リナも拳を握る。

 セリウスは少し照れたように俯き、呟いた。

「……ありがとう。初めて、役に立てた気がする」

 俺は彼の肩を叩いた。

「無能? そんなわけない。君の技術は、俺たちが生きるために必要不可欠だ」



 こうして追放者ギルドに新たな仲間――無能と呼ばれた錬金術師セリウスが加わった。
 追放の理由は笑えるほど理不尽だが、俺たちにとっては一つの欠片も無駄じゃない。

 ――追放された者が集まることで、最強のギルドが形作られていく。
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