悪役令嬢ですが、ヒロインより先に幸せを掴みます

さら

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第五十話 決着

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 雪の降りしきる王都の広場。特別法廷は、もはや裁きの場ではなかった。
 ――檻に戻れと叫ぶ王太子殿下と。
 ――自由を選ぶと誓うわたしと。
 ――そして、どちらを未来とするかを見極めようとする民衆。

 広場全体が、国の命運を懸けた舞台となっていた。

 ◇

 「クラリッサ!」
 殿下が叫ぶ。硝子の微笑は砕け、怒気に満ちた顔だけがそこにあった。
 「お前が罪を認めぬ限り、この国に未来はない!」

 「いいえ、殿下」
 わたしは扇を閉じ、真っ直ぐに答える。
 「檻に閉じ込められる未来こそ、この国を滅ぼします。わたしは檻には戻りません!」

 群衆がざわめき、声が広がっていく。
 ――「そうだ、檻はいらない!」
 ――「自由を選べ!」

 殿下の顔が紅潮し、拳を振り上げる。

 ◇

 「兄上!」
 レオンハルトが壇上に進み出る。軍装に身を包んだ姿は堂々として、真剣な瞳が輝いていた。
 「クラリッサは罪人ではない。檻を拒んだだけだ。……それを罪と呼ぶなら、罪深いのはあなたの方だ!」

 「黙れ、裏切り者!」殿下が怒号を放つ。
 「裏切りではない! 私は未来を選んでいる!」

 鋭い声が広場を震わせ、民の心に火を灯した。

 ◇

 その時、一人の重臣が進み出た。
 「殿下。……民の声をお聞きください。彼らはクラリッサ嬢を罪人とは見ていない。むしろ希望と見ている」

 さらに別の重臣が声を上げる。
 「強硬すぎる策は国を分断します。このままでは王家の威信そのものが失われましょう」

 重臣たちの言葉に殿下の顔が歪む。
 「お前たちまで私を裏切るのか!」

 ◇

 群衆の中から拍手が広がった。最初は小さく、やがて大きな波となり、広場全体を揺らした。
 「クラリッサ嬢は自由の象徴だ!」
 「檻には戻らせるな!」

 兵士たちも動きを止め、視線を交わす。殿下の命令よりも、民の声の方が強くなっていた。

 ◇

 「殿下」
 わたしは一歩前に進み、静かに言った。
 「わたしはもう檻には戻りません。……たとえこの身がどうなろうとも」

 レオンハルトが隣に立ち、力強く続ける。
 「そして私は、その彼女を必ず守る!」

 広場を揺らすほどの歓声が沸き起こった。

 ◇

 王太子殿下はなおも叫んだが、その声は歓声に掻き消されていった。硝子の微笑も、怒りの叫びも、もはや誰の胸にも届かない。

 やがて重臣たちの決議が下された。
 ――王太子殿下の権限停止。
 ――第二王子レオンハルトの補佐のもとで政務を執り行う。

 殿下の敗北は、国中に宣言された。

 ◇

 夜。新居の寝室で、わたしは白いハンカチを胸に抱いた。
 「……終わったのね」
 「いや、始まりだ」レオンハルトが優しく囁く。「君と共に歩む、自由な未来の始まりだ」

 彼の温もりに包まれながら、静かに微笑んだ。

 ◇

 ――悪役令嬢クラリッサは、断罪と布告を越え。

 ――ついに国の未来を左右する存在となった。
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