かわいそうな欲しがり妹のその後は ~ 王子様とは結婚しません!

柚屋志宇

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05話 引き受けました

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「デイジーの母親だ」

 父はカトレアさんについて説明しました。

 父のことですから、どうせ愛人の名だろうとは思いましたが。
 デイジーのお母君だったようです。

「カトレアは今までデイジーの世話をしていたんだ。出来るに決まっているだろう」

 デイジーのお母君なら、デイジーと同じ平民です。
 平民と貴族とでは、子供の世話の仕方も、家政の勝手も大分違うことでしょう。

「それが出来ていなかったから、こうしてお父様とお話をしているのです」
「……!」

 父は目を丸くして、私に問い掛けました。

「何か問題があったのかね?」
「問題、大有りですわ」
「だが服くらい、使用人に任せればいいことだろう」
「それが出来ていないから、こうしてお父様に申し上げているのです」
「使用人に命令するくらい、誰にでもできるだろう」
「私は淑女教育で家政を習っていますが、使用人に指示を出すのも結構面倒なんですのよ」
「リナリアは頑張っているのだね」
「ええ、おかげさまで。でも今はデイジーのことです」

 私は父にはっきり言いました。

「お父様がデイジーになさっていることは、虐待ですわ」
「虐待などしていない。ちゃんと優しくしている」
「ねえ、お父様、デイジーの家庭教師をクビにしたと聞きましたが、どうしてそんなことをなさったんですの?」
「厳しすぎるとデイジーが言ったからだ」
「その後、新しい家庭教師を雇ったんですの?」
「雇っているのではないかね?」
「指示は出しましたの?」

「……」

「お父様?」

「……出した気もするが……出さなかった気もする……」

「もう! これだから!」

「だが、だが、リナリア、誰かが手配してくれているだろう?」

「デイジーが嫌がったら使用人は強く言えませんわ。デイジーはこの家の娘になったのですもの。使用人よりデイジーのほうが立場が上なのです。お父様が指示を出していなければ、デイジーの我儘が通ってしまうのです」
「我儘くらい、聞いてやれば良いじゃないか」
「それが虐待なのです」
「な、何故だね……?!」
「我儘にふるまって、恥をかくのはデイジーですから、デイジーが悲しい思いをするのですよ? お父様はデイジーを虐めたいんですの?」
「そ、そんなことはない!」
「娘に充分な教育を与えられなければ、家の恥にもなりますのよ。娘に十分な教育を与えない、酷い親だと、皆に言われますわよ?」
「な、何故?!」
「デイジーが教育を受ける機会を、お父様が奪ったからです」
「どうすれば良いんだ!」

 あたふたしはじめた父に、私は言いました。

「私がデイジーを教育します。デイジーのことは私に任せていただけませんか?」
「リナリアに任せる」
「引き受けました」
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