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13話 招待状
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「素晴らしい戦果だわ」
デイジーがデビュタント舞踏会にて華々しく社交界デビューした翌日から。
夜会やサロンや茶会の招待状が次々と我が家に送られて来ました。
招待状はどんどん増えて止まるところを知りません。
私は父とデイジーと一緒に、数々の招待状の確認作業を行いました。
招待状は直接デイジー宛てのものもあれば、父や私を招待する体裁で「ぜひデイジー嬢もご一緒に」という形のものもあります。
「おお! 王弟殿下から夜会のお誘いだ。私宛だが、デイジーもぜひ連れて来て欲しいと書かれている。デイジー、一緒に行こう」
ほくほく顔で父はそう言いましたが、デイジーは暗い顔をしました。
「……考えさせて……」
「王弟殿下の下の息子はデイジーと同い年でまだ婚約もしていない。これは、もしかすると、もしかするぞ! 行こう、行こう!」
父は浮かれています。
まあ、そうですよね。
デイジーがもし王弟殿下のご子息と結婚したら、デイジーは国王陛下の義理の姪になるのですもの。
デイジーが平民の私生児のままだったなら王族との結婚は望めませんでした。
父がデイジーを公爵家の養女としたからこそ、出て来た可能性の芽ですから、自分の手柄のように思っているのかもしれません。
教育したのは私ですけれどね。
「王族の催しに招待されることが周知されれば、デイジーの母が平民だからといって無下にする者はいなくなる。行こう、行こう」
父にしては良い考えです。
父は自分を良く見せることに熱心なので、そういうことには鋭いですね。
デイジーの母親が平民であることは知られていますから、下に見ている者はいるでしょう。
ですが王族と懇意であることが周知されれば、格が上がります。
私も一年前には、デイジーの嫁ぎ先に男爵家や商家が妥当だと思ったくらいです。
半分平民の血が入っていることはやはり足枷ですから。
しかしデイジーは一年間で目覚ましい成長をとげて進化しました。
安売りするなど、とんでもない話です。
「王族からも声がかかるとは、さすがは私の娘だ。私も若い頃は、社交界一の美貌の貴公子と言われていたものさ。招待状が山のように来ていた」
父の自慢話が始まりました。
私にはにわかに信じがたい父の武勇伝ですが、叔父が言うには本当の話なのだそうです。
父は若いころは見目が良く、社交界で数々の浮名を流していたとのことです。
今は決まった愛人の元に通う程度ですが。
「格式の高い家の催しに出席しておくのは、自分の価値を高めるために悪くない手よ」
私はデイジーに助言しました。
「王族や公爵家の催しに出席すれば、デイジーは公爵令嬢として足元を固められると思うわ」
「それなら、私はリナリアお姉様が出席なさる夜会にご一緒したいです」
デイジーがそう言うと、父はぱっと何か閃いたような顔をしました。
「ではリナリアも一緒に行けるように王弟殿下に頼んでやろう。リナリアが一緒ならデイジーも安心だろう?」
「……え、ええ、まあ、お姉様とご一緒できるなら……」
デイジーがデビュタント舞踏会にて華々しく社交界デビューした翌日から。
夜会やサロンや茶会の招待状が次々と我が家に送られて来ました。
招待状はどんどん増えて止まるところを知りません。
私は父とデイジーと一緒に、数々の招待状の確認作業を行いました。
招待状は直接デイジー宛てのものもあれば、父や私を招待する体裁で「ぜひデイジー嬢もご一緒に」という形のものもあります。
「おお! 王弟殿下から夜会のお誘いだ。私宛だが、デイジーもぜひ連れて来て欲しいと書かれている。デイジー、一緒に行こう」
ほくほく顔で父はそう言いましたが、デイジーは暗い顔をしました。
「……考えさせて……」
「王弟殿下の下の息子はデイジーと同い年でまだ婚約もしていない。これは、もしかすると、もしかするぞ! 行こう、行こう!」
父は浮かれています。
まあ、そうですよね。
デイジーがもし王弟殿下のご子息と結婚したら、デイジーは国王陛下の義理の姪になるのですもの。
デイジーが平民の私生児のままだったなら王族との結婚は望めませんでした。
父がデイジーを公爵家の養女としたからこそ、出て来た可能性の芽ですから、自分の手柄のように思っているのかもしれません。
教育したのは私ですけれどね。
「王族の催しに招待されることが周知されれば、デイジーの母が平民だからといって無下にする者はいなくなる。行こう、行こう」
父にしては良い考えです。
父は自分を良く見せることに熱心なので、そういうことには鋭いですね。
デイジーの母親が平民であることは知られていますから、下に見ている者はいるでしょう。
ですが王族と懇意であることが周知されれば、格が上がります。
私も一年前には、デイジーの嫁ぎ先に男爵家や商家が妥当だと思ったくらいです。
半分平民の血が入っていることはやはり足枷ですから。
しかしデイジーは一年間で目覚ましい成長をとげて進化しました。
安売りするなど、とんでもない話です。
「王族からも声がかかるとは、さすがは私の娘だ。私も若い頃は、社交界一の美貌の貴公子と言われていたものさ。招待状が山のように来ていた」
父の自慢話が始まりました。
私にはにわかに信じがたい父の武勇伝ですが、叔父が言うには本当の話なのだそうです。
父は若いころは見目が良く、社交界で数々の浮名を流していたとのことです。
今は決まった愛人の元に通う程度ですが。
「格式の高い家の催しに出席しておくのは、自分の価値を高めるために悪くない手よ」
私はデイジーに助言しました。
「王族や公爵家の催しに出席すれば、デイジーは公爵令嬢として足元を固められると思うわ」
「それなら、私はリナリアお姉様が出席なさる夜会にご一緒したいです」
デイジーがそう言うと、父はぱっと何か閃いたような顔をしました。
「ではリナリアも一緒に行けるように王弟殿下に頼んでやろう。リナリアが一緒ならデイジーも安心だろう?」
「……え、ええ、まあ、お姉様とご一緒できるなら……」
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