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39話 国民への影響
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「エンフィールド公爵、我が娘アイリスに非があったのであれば謝罪する。だが通行料の値上げは考え直して欲しい」
顔色を悪くしているドラセナ侯爵が思いつめた表情で、私たちの父エンフィールド公爵に言いました。
「通行料を倍額にされたら被害を受けるのは我が領だけではない。あちこちで物資が値上がりして国全体の経済が揺らぐことになる。小規模な商店は軒並み破産するかもしれん」
さすがはドラセナ侯爵。
財務大臣を任されているだけのことはあり、先の事を考えていらっしゃいます。
後先を考えないうちの父とは大違いです。
通行料が値上がりすれば、その分、輸送された物資の値も上がりますものね。
大商人はともかく、ぎりぎりで運営しているような木っ端商人には厳しいでしょう。
また、畑作地の少ない王都は、食料の大半を地方からの輸送に頼っていますから、食料が値上がりしたら貧しい平民の食卓は打撃を受けることになります。
「ふん、ならば貴殿らが責任をとって国民に施してやればよかろう。貴殿らの娘がエンフィールドに喧嘩を売ったのだからな」
「そ、そんな、無茶な……」
ドラセナ侯爵はますます顔色を悪くしました。
「お父様……」
私は父に言いました。
「ドラセナ侯爵とは後日改めてお話するというのはどうかしら。それまで倍返しも保留にしたら如何? 通行料を倍額にするなら、こちらも、ガジュマル叔父様に相談しなければなりませんし……」
「む……」
叔父の名を聞いて、父は少し顔色を変えました。
私の叔父、父の弟であるガジュマル・エンフィールドは、ちゃらんぽらんな父とは正反対の生真面目な人で、事実上エンフィールド領を治めている人です。
ちなみに父は、叔父を恐れています。
父は、叔父の機嫌を損ねたら暗殺されると思っているらしいです。
嫡子である私を始めとするエンフィールド一族はこぞって叔父を支持しているので、父は外では大きな顔をしていますが、叔父には頭が上がらないのです。
「そ、そうだな。そうしよう。こちらにも都合があるからな。ドラセナ侯爵、明日以降にもう一度話し合うということでどうかね。それまでは倍返しは保留とする」
「相解った。感謝する」
ドラセナ侯爵はそう言うと父の前を辞して、おそらくは会場のどこかにいる娘のアイリスさんを探すために、人垣の中へ入って行きました。
ドラセナ侯爵はこれから、アイリスさんに事の次第を問い質して真実を知るのでしょう。
彼はアイリスさんの馬鹿げた行いに頭を抱えることになるでしょうね。
お気の毒に。
ですが躾のされていない狂犬を野放しにしたのは、ドラセナ侯爵ご自身です。
「お父様、私たちもウィード公爵にご挨拶して帰りましょう」
「ウィードなどに挨拶する必要があるのかね」
「もう二度と招待には応じないって、一応ご挨拶しましょうよ」
「なるほど。よし、言ってやる。任せなさい」
顔色を悪くしているドラセナ侯爵が思いつめた表情で、私たちの父エンフィールド公爵に言いました。
「通行料を倍額にされたら被害を受けるのは我が領だけではない。あちこちで物資が値上がりして国全体の経済が揺らぐことになる。小規模な商店は軒並み破産するかもしれん」
さすがはドラセナ侯爵。
財務大臣を任されているだけのことはあり、先の事を考えていらっしゃいます。
後先を考えないうちの父とは大違いです。
通行料が値上がりすれば、その分、輸送された物資の値も上がりますものね。
大商人はともかく、ぎりぎりで運営しているような木っ端商人には厳しいでしょう。
また、畑作地の少ない王都は、食料の大半を地方からの輸送に頼っていますから、食料が値上がりしたら貧しい平民の食卓は打撃を受けることになります。
「ふん、ならば貴殿らが責任をとって国民に施してやればよかろう。貴殿らの娘がエンフィールドに喧嘩を売ったのだからな」
「そ、そんな、無茶な……」
ドラセナ侯爵はますます顔色を悪くしました。
「お父様……」
私は父に言いました。
「ドラセナ侯爵とは後日改めてお話するというのはどうかしら。それまで倍返しも保留にしたら如何? 通行料を倍額にするなら、こちらも、ガジュマル叔父様に相談しなければなりませんし……」
「む……」
叔父の名を聞いて、父は少し顔色を変えました。
私の叔父、父の弟であるガジュマル・エンフィールドは、ちゃらんぽらんな父とは正反対の生真面目な人で、事実上エンフィールド領を治めている人です。
ちなみに父は、叔父を恐れています。
父は、叔父の機嫌を損ねたら暗殺されると思っているらしいです。
嫡子である私を始めとするエンフィールド一族はこぞって叔父を支持しているので、父は外では大きな顔をしていますが、叔父には頭が上がらないのです。
「そ、そうだな。そうしよう。こちらにも都合があるからな。ドラセナ侯爵、明日以降にもう一度話し合うということでどうかね。それまでは倍返しは保留とする」
「相解った。感謝する」
ドラセナ侯爵はそう言うと父の前を辞して、おそらくは会場のどこかにいる娘のアイリスさんを探すために、人垣の中へ入って行きました。
ドラセナ侯爵はこれから、アイリスさんに事の次第を問い質して真実を知るのでしょう。
彼はアイリスさんの馬鹿げた行いに頭を抱えることになるでしょうね。
お気の毒に。
ですが躾のされていない狂犬を野放しにしたのは、ドラセナ侯爵ご自身です。
「お父様、私たちもウィード公爵にご挨拶して帰りましょう」
「ウィードなどに挨拶する必要があるのかね」
「もう二度と招待には応じないって、一応ご挨拶しましょうよ」
「なるほど。よし、言ってやる。任せなさい」
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