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03話 開かれた真理の扉
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(王太子妃になりたくないなら、王妃教育には行かないほうが良いわよね)
王妃教育は、王太子妃になるための教育、いずれ王妃になるための教育です。
王太子妃になりたくないなら、やらなくて良いことに気付いてしまいました。
両親は失望するかもしれませんが、両親にはすでに叱られ続けているので同じことです。
(王妃教育をさぼりまくって、王子の婚約者にふわさしくないという事になれば、婚約解消できてしまうかも?!)
私の心は浮き立ちました。
(お父様に叱られるのはいつものこと。いつもと同じよ。どうせ同じく叱られるなら、婚約解消できたほうがお得だわ。婚約解消されて修道院へ送られるなら、それも良いわ。今の生活に比べたら、修道院のほうが気楽よ。頑張るよりもラクしてさぼったほうが幸せになれるんじゃないかしら!)
閃いた名案に、私がわくわくしていると。
私の陰口を言うヒソヒソ声が耳に入って来ました。
「フェリシア様は百十九位よ。また成績が落ちているわ」
「フェリシア様の成績は、もう下から数えがほうが早いわね」
「どうしてフェリシア様が王太子妃に選ばれたのかしら」
「あんな不出来なご令嬢は、ご立派なルシアン殿下の婚約者にふさわしくないわ」
(そうよ、そうよ! その通りよ! もっと言って良いのよ?)
私は、私の陰口を言う令嬢たちに、心の中で相槌を打ち、エールを送りました。
(ルシアン殿下の婚約者にふさわしくない娘になるには……。やはり学年最下位よね。次の試験では全教科で零点を取って学年最下位になってみせましょう。そして王妃教育もさぼりまくる。これで決まりよ!)
私の夢は大きく羽ばたきました。
(ふふふ……。あなたたちはこれから、私が学年最下位になる光景を見るのよ! 刮目なさい! そして囀りなさい! 私など王太子妃に相応しくないと!)
私が内心でほくそえんでいると……。
「フェリシア様、少しよろしいかしら?」
いきなり、声を掛けられました。
私に声を掛けて来た相手は、ラルベル公爵令嬢セリーヌ様です。
「あら、セリーヌ様、ごきげんよう」
私がそう挨拶をすると、セリーヌ様は何が気に障ったのか、むっとして顔をしかめました。
「フェリシア様、あなたはルシアン殿下の婚約者である自覚はありますの?」
「はい。私はルシアン殿下の婚約者です」
「フェリシア様はご自分の成績が恥ずかしくありませんの?」
セリーヌ様はますます不愉快そうにして、私を糾弾しました。
「ルシアン殿下の婚約者であるならば、ふさわしいお振舞いをなさるべきです」
「はい。私はルシアン殿下の婚約者としてふさわしい成績をとり、ふさわしい振舞いをしております」
成績がルシアン殿下より低いのは、ちゃんと王妃教育の通りですからね。
セリーヌ様は王妃教育の内容をご存知ないでしょうけれど。
私は一点の曇りもなく、ルシアン殿下の婚約者としてふさわしい行動をとっていると自負しておりましてよ。
(あら? ルシアン殿下と婚約破棄したいなら、これって、言ったほうが良いのではないかしら?)
ルシアン殿下の成績を超えないようにしていることは、ルシアン殿下の面子のために、私は家族以外には口外していませんでした。
でも私は気付いてしまいました。
それは王太子妃にふさわしすぎる行動であると。
王太子妃にふさわしくない行動をとるなら、これは口外してしまうべきですわね。
「セリーヌ様は王妃教育をご存知ないでしょうけれど。ルシアン殿下の妃となるならば、ルシアン殿下の成績を超えてはいけないと、王妃様から言われているのです。ですから私はルシアン殿下の成績に合わせて下げているのですわ」
「ふざけたことを言わないでくださいませ!」
「ふざけていません。本当のことです。王妃様による王妃教育です」
「聡明な王妃様がそんなことをおっしゃるはずがありませんわ!」
聡明な王妃様、ですか。
うちの両親も同じことを言っています。
私は毎週、王妃様と顔を合わせていますが、まだ王妃様が聡明な場面を一度も見たことがないというのに。
「王妃様って、そんなにご聡明なんですの?」
私が首を傾げてそう質問すると、セリーヌ様はむっとなさいました。
そしてやはり眉を吊り上げた不愉快そうな顔で、横から割り込んで来たご令嬢がいました。
「恐れ入ります。発言を許可していただきたく存じます」
「あら、あなたは、ガイヤール辺境伯令嬢でしたかしら」
私がそう声をかけると、横入してきたご令嬢は険しい顔で頷きました。
「はい。ガイヤール辺境伯が娘ブランシュと申します」
「どうぞ、おっしゃりたいことがあるなら、自由に発言なさって」
「ありがとうございます」
ガイヤール辺境伯令嬢ブランシュ様は私に礼を取ると、怒り顔で語り始めました。
「王妃様は大変ご聡明でご慧眼なお方です。辺境における我が家の役目を理解してくださっていることはもちろん、我が家の農業事業についてもご存知でいらっしゃいました。ブルーベリーの品種改良のこともご存知で、お褒めくださいました」
ガイヤール辺境伯領の、ブルーベリー……?
最近、王妃教育の課題で、書いた覚えがあるわ……。
王妃教育は、王太子妃になるための教育、いずれ王妃になるための教育です。
王太子妃になりたくないなら、やらなくて良いことに気付いてしまいました。
両親は失望するかもしれませんが、両親にはすでに叱られ続けているので同じことです。
(王妃教育をさぼりまくって、王子の婚約者にふわさしくないという事になれば、婚約解消できてしまうかも?!)
私の心は浮き立ちました。
(お父様に叱られるのはいつものこと。いつもと同じよ。どうせ同じく叱られるなら、婚約解消できたほうがお得だわ。婚約解消されて修道院へ送られるなら、それも良いわ。今の生活に比べたら、修道院のほうが気楽よ。頑張るよりもラクしてさぼったほうが幸せになれるんじゃないかしら!)
閃いた名案に、私がわくわくしていると。
私の陰口を言うヒソヒソ声が耳に入って来ました。
「フェリシア様は百十九位よ。また成績が落ちているわ」
「フェリシア様の成績は、もう下から数えがほうが早いわね」
「どうしてフェリシア様が王太子妃に選ばれたのかしら」
「あんな不出来なご令嬢は、ご立派なルシアン殿下の婚約者にふさわしくないわ」
(そうよ、そうよ! その通りよ! もっと言って良いのよ?)
私は、私の陰口を言う令嬢たちに、心の中で相槌を打ち、エールを送りました。
(ルシアン殿下の婚約者にふさわしくない娘になるには……。やはり学年最下位よね。次の試験では全教科で零点を取って学年最下位になってみせましょう。そして王妃教育もさぼりまくる。これで決まりよ!)
私の夢は大きく羽ばたきました。
(ふふふ……。あなたたちはこれから、私が学年最下位になる光景を見るのよ! 刮目なさい! そして囀りなさい! 私など王太子妃に相応しくないと!)
私が内心でほくそえんでいると……。
「フェリシア様、少しよろしいかしら?」
いきなり、声を掛けられました。
私に声を掛けて来た相手は、ラルベル公爵令嬢セリーヌ様です。
「あら、セリーヌ様、ごきげんよう」
私がそう挨拶をすると、セリーヌ様は何が気に障ったのか、むっとして顔をしかめました。
「フェリシア様、あなたはルシアン殿下の婚約者である自覚はありますの?」
「はい。私はルシアン殿下の婚約者です」
「フェリシア様はご自分の成績が恥ずかしくありませんの?」
セリーヌ様はますます不愉快そうにして、私を糾弾しました。
「ルシアン殿下の婚約者であるならば、ふさわしいお振舞いをなさるべきです」
「はい。私はルシアン殿下の婚約者としてふさわしい成績をとり、ふさわしい振舞いをしております」
成績がルシアン殿下より低いのは、ちゃんと王妃教育の通りですからね。
セリーヌ様は王妃教育の内容をご存知ないでしょうけれど。
私は一点の曇りもなく、ルシアン殿下の婚約者としてふさわしい行動をとっていると自負しておりましてよ。
(あら? ルシアン殿下と婚約破棄したいなら、これって、言ったほうが良いのではないかしら?)
ルシアン殿下の成績を超えないようにしていることは、ルシアン殿下の面子のために、私は家族以外には口外していませんでした。
でも私は気付いてしまいました。
それは王太子妃にふさわしすぎる行動であると。
王太子妃にふさわしくない行動をとるなら、これは口外してしまうべきですわね。
「セリーヌ様は王妃教育をご存知ないでしょうけれど。ルシアン殿下の妃となるならば、ルシアン殿下の成績を超えてはいけないと、王妃様から言われているのです。ですから私はルシアン殿下の成績に合わせて下げているのですわ」
「ふざけたことを言わないでくださいませ!」
「ふざけていません。本当のことです。王妃様による王妃教育です」
「聡明な王妃様がそんなことをおっしゃるはずがありませんわ!」
聡明な王妃様、ですか。
うちの両親も同じことを言っています。
私は毎週、王妃様と顔を合わせていますが、まだ王妃様が聡明な場面を一度も見たことがないというのに。
「王妃様って、そんなにご聡明なんですの?」
私が首を傾げてそう質問すると、セリーヌ様はむっとなさいました。
そしてやはり眉を吊り上げた不愉快そうな顔で、横から割り込んで来たご令嬢がいました。
「恐れ入ります。発言を許可していただきたく存じます」
「あら、あなたは、ガイヤール辺境伯令嬢でしたかしら」
私がそう声をかけると、横入してきたご令嬢は険しい顔で頷きました。
「はい。ガイヤール辺境伯が娘ブランシュと申します」
「どうぞ、おっしゃりたいことがあるなら、自由に発言なさって」
「ありがとうございます」
ガイヤール辺境伯令嬢ブランシュ様は私に礼を取ると、怒り顔で語り始めました。
「王妃様は大変ご聡明でご慧眼なお方です。辺境における我が家の役目を理解してくださっていることはもちろん、我が家の農業事業についてもご存知でいらっしゃいました。ブルーベリーの品種改良のこともご存知で、お褒めくださいました」
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最近、王妃教育の課題で、書いた覚えがあるわ……。
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