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07話 感動の婚約破棄
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その日、私がいつも通りに王立貴族学院に登校すると。
「フェリシア!」
廊下で、ルシアン殿下が私を呼び止めました。
ルシアン殿下の顔を見るのは、半年ぶりくらいでしょうか。
「あら殿下、ごきげんよう」
私はそうご挨拶をしましたが。
ルシアン殿下は、敵を見るような目で私を睨みつけました。
「モンフォール公爵令嬢フェリシア、貴様との婚約を破棄する!」
ルシアン王子殿下は、きりっとした表情で高らかに宣言しました。
「王妃教育を投げ出すような女は、王太子妃にふさわしくない!」
「はい、殿下。おっしゃる通りでございます」
私は優雅に微笑んで、ルシアン殿下のお気持ちを有難く頂戴いたしました。
「婚約破棄、承りました」
そして心の中で快哉を叫んでいました。
(やりましたわああぁぁぁ! 婚約破棄ですわあぁぁ!)
人生たまには良いこともあるものですね!
ああ、神様はいらっしゃったのだわ!
「では、御前を失礼いたします」
私は天にも昇る心地で、その場を立ち去ろうとしましたが……。
「待て、フェリシア! 他に言うことはないのか!」
「ございません」
私は清々しい気持ちでそう答えました。
周囲に集まっていたご令嬢たちに、険のある視線を向けられてしまいましたけれど。
ええ、廊下で言い合いをしている私とルシアン殿下の周囲には、ちょっとした人だかりができておりました。
ルシアン殿下が大声を出していらっしゃいますからね。
通りがかった生徒たちは、足を止めて、私たちのやりとりを見物しているのです。
「フェリシア、貴様には人の心がないのか! 貴様の我儘のせいで母上は臥せってしまわれたのだぞ! 謝罪の一つくらいしたらどうだ!」
「王妃様がですか?」
「そうだ!」
「私は関係ありません」
「なんだと!」
「私はここ一か月ほど王妃様にお会いしていません。私に会っていないのに、私の我儘のせいでご病気になられたとは、あまりにもおかしな話です」
「貴様が王妃教育に来ないせいで、母上はご心労で倒れたのだ!」
私はルシアン殿下ににっこりと微笑みを返しました。
「体を壊したのは私のほうです。三年におよぶ過酷な王妃教育のせいで私は体を壊したのです。王宮には理由をご連絡いたしましたが、体調不良を我儘だとおっしゃいますの?」
「貴様は学校には来ているではないか!」
「学校は気楽ですもの。ラルベル公爵領の復興案を一日で作成しろ、できなければ休日返上で明日も来い、だなんて、学校はそんな無茶な予定を組みませんもの。王妃教育と違って」
「は? 何を言っている?」
「私はもう、王妃様やルシアン殿下のお手柄になるような台本を書かされるだけの王妃教育には二度とまいりません、と、申し上げているのです」
「ラルベル公爵領の復興案を貴様が考えたと言うのか?! あれは母上が……」
ルシアン殿下はそこまで言うと、はっと気付いたような顔で言葉を切りました。
なるほど。
王妃様が自分が考えたような素振りで、ルシアン殿下に入れ知恵していたのですね。
「ともあれ、私は体を壊してしまいましたので。王妃様とルシアン殿下のお手柄にするための台本を書かされるだけの王妃教育には二度と行くことができません」
王妃教育の内容は大事な部分ですので、もう一度言いました。
「私はこのように病弱ですので王太子妃にふさわしくありません。婚約破棄、承りました」
私は淑女の笑みを浮かべました。
「それでは、ごきげんよう」
「ま、待て! フェリシア!」
ルシアン殿下がまだ何か言っていましたが、私は踵を返してその場を離れました。
「ルシアン殿下……!」
歩き出した私の背後で、ラルベル公爵令嬢セリーヌ様がルシアン殿下を気遣っている声が聞こえました。
「殿下、大丈夫でございますか。フェリシア様はなんて傲慢で虚栄心の強いお方なのでしょう」
「ああ、セリーヌ、ありがとう。君はいつも優しいな」
あら、まあ。
もしやルシアン殿下を略奪してくださる篤志家のご令嬢とは、セリーヌ様のことだったのかしら。
篤志家のセリーヌ様、お頑張りあそばせぇ!
あら、でも……。
セリーヌ様がユベール様と婚約解消する以前から、篤志家のご令嬢がルシアン殿下と親密な関係だという噂はありましたよね。
(……)
細かいことを考えるのはやめましょう。
結果良ければ、全て良しですわ!
「フェリシア!」
廊下で、ルシアン殿下が私を呼び止めました。
ルシアン殿下の顔を見るのは、半年ぶりくらいでしょうか。
「あら殿下、ごきげんよう」
私はそうご挨拶をしましたが。
ルシアン殿下は、敵を見るような目で私を睨みつけました。
「モンフォール公爵令嬢フェリシア、貴様との婚約を破棄する!」
ルシアン王子殿下は、きりっとした表情で高らかに宣言しました。
「王妃教育を投げ出すような女は、王太子妃にふさわしくない!」
「はい、殿下。おっしゃる通りでございます」
私は優雅に微笑んで、ルシアン殿下のお気持ちを有難く頂戴いたしました。
「婚約破棄、承りました」
そして心の中で快哉を叫んでいました。
(やりましたわああぁぁぁ! 婚約破棄ですわあぁぁ!)
人生たまには良いこともあるものですね!
ああ、神様はいらっしゃったのだわ!
「では、御前を失礼いたします」
私は天にも昇る心地で、その場を立ち去ろうとしましたが……。
「待て、フェリシア! 他に言うことはないのか!」
「ございません」
私は清々しい気持ちでそう答えました。
周囲に集まっていたご令嬢たちに、険のある視線を向けられてしまいましたけれど。
ええ、廊下で言い合いをしている私とルシアン殿下の周囲には、ちょっとした人だかりができておりました。
ルシアン殿下が大声を出していらっしゃいますからね。
通りがかった生徒たちは、足を止めて、私たちのやりとりを見物しているのです。
「フェリシア、貴様には人の心がないのか! 貴様の我儘のせいで母上は臥せってしまわれたのだぞ! 謝罪の一つくらいしたらどうだ!」
「王妃様がですか?」
「そうだ!」
「私は関係ありません」
「なんだと!」
「私はここ一か月ほど王妃様にお会いしていません。私に会っていないのに、私の我儘のせいでご病気になられたとは、あまりにもおかしな話です」
「貴様が王妃教育に来ないせいで、母上はご心労で倒れたのだ!」
私はルシアン殿下ににっこりと微笑みを返しました。
「体を壊したのは私のほうです。三年におよぶ過酷な王妃教育のせいで私は体を壊したのです。王宮には理由をご連絡いたしましたが、体調不良を我儘だとおっしゃいますの?」
「貴様は学校には来ているではないか!」
「学校は気楽ですもの。ラルベル公爵領の復興案を一日で作成しろ、できなければ休日返上で明日も来い、だなんて、学校はそんな無茶な予定を組みませんもの。王妃教育と違って」
「は? 何を言っている?」
「私はもう、王妃様やルシアン殿下のお手柄になるような台本を書かされるだけの王妃教育には二度とまいりません、と、申し上げているのです」
「ラルベル公爵領の復興案を貴様が考えたと言うのか?! あれは母上が……」
ルシアン殿下はそこまで言うと、はっと気付いたような顔で言葉を切りました。
なるほど。
王妃様が自分が考えたような素振りで、ルシアン殿下に入れ知恵していたのですね。
「ともあれ、私は体を壊してしまいましたので。王妃様とルシアン殿下のお手柄にするための台本を書かされるだけの王妃教育には二度と行くことができません」
王妃教育の内容は大事な部分ですので、もう一度言いました。
「私はこのように病弱ですので王太子妃にふさわしくありません。婚約破棄、承りました」
私は淑女の笑みを浮かべました。
「それでは、ごきげんよう」
「ま、待て! フェリシア!」
ルシアン殿下がまだ何か言っていましたが、私は踵を返してその場を離れました。
「ルシアン殿下……!」
歩き出した私の背後で、ラルベル公爵令嬢セリーヌ様がルシアン殿下を気遣っている声が聞こえました。
「殿下、大丈夫でございますか。フェリシア様はなんて傲慢で虚栄心の強いお方なのでしょう」
「ああ、セリーヌ、ありがとう。君はいつも優しいな」
あら、まあ。
もしやルシアン殿下を略奪してくださる篤志家のご令嬢とは、セリーヌ様のことだったのかしら。
篤志家のセリーヌ様、お頑張りあそばせぇ!
あら、でも……。
セリーヌ様がユベール様と婚約解消する以前から、篤志家のご令嬢がルシアン殿下と親密な関係だという噂はありましたよね。
(……)
細かいことを考えるのはやめましょう。
結果良ければ、全て良しですわ!
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