レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

文字の大きさ
54 / 219
第4章 突撃! 魔界統一編 後編

第53話 魔界統一編最終対決 魔神戦! 2

しおりを挟む

 元魔王城から数キロメルほど離れた所にまでレイ達は逃げてきていた。

 村長が使用したヒールとキュアーはソウ直伝。皆を回復させながらひたすら全力疾走で離れてきたのだ。

「もうここまで来れば大丈夫かのう?」

 息切れをしながらレイが言う。

「うぅむ。しかし気になりますな。あの魔神とやら……。ソウ様の焦った顔なぞ初めて見ましたわい」

「妾もじゃ。だからこうして逃げてきたが……やはり気になる」

 その時、レイ達がいるすぐそばにまで衝撃が飛んできた。

 強烈な暴風が吹き荒れる。周りの木々はなぎ倒され、皆に向かって飛んできた。

「おっと、これはいけませんな」

 村長がすぐさまバリヤーを使い、事なきを得た。

 が、次々に衝撃はが飛んでくる。その度に周りにあった木や岩が飛んでくるのだ。

「こりゃ、とんでもない闘いになっとりますのぅ」

「だ、旦那様っ……」

「我々に出来るのは早く避難することだけのようですじゃ。閣下。すぐにここを離れましょうぞ」

「あぁ、その通りじゃな。皆の者! さらに移動するぞ! 疲れ者は申し出よ。ポーションもまだまだある。すぐに行くぞっ!」

 レイ達は辺境の村を目指し、すぐに移動を開始するのだった。



 一昼夜の間、ひたすらに走った。そして、夜が明けると辺境の村に一行は到着した。

「しかし、凄まじい闘いじゃ」

 村長が額の汗を拭きながら言う。

「同感じゃのぅ。まさか、ここまで衝撃が走ってくるとは……。あの雷鳴のような光。あれは旦那様と魔神の闘いだとすれば、元魔王城の周りは壊滅じゃろうな」

 辺境の村からでもはっきりと見えるほどの闘い。ソウは丸一日中、闘っているのだ。

「これから皆の者で祈りを捧げようぞ! 我らが祈れば、主たる大魔神ソウ様に必ず届く! よいか皆の者!」

 村長の叫びに村にいた住民達、数万の祈りが捧げられる。

 ソウの闘い。これは今後のこの国の将来を決める闘いなのだ。

「なんとしても勝ってくだされ! ソウ様!」

 村長は村のバリヤーを強めつつ、ひたすらにソウの勝利を祈るのだった。



   *



 魔神との対決が始まって丸一日が経った。

 常に死と隣り合わせのギリギリの攻防だ。

 というか、実は何度か死んでいる。

 ただ、意識のあるうちにヒールと唱えたら何とかなったのだ。腹を切られ、両足を切られ、腕を切られとあちこち切られた。

 その度にヒールで治しつつ闘いを続けている。

 もちろん、魔神もそうだ。

 俺に切られる度に回復魔法を使いやがって! このチートラスボスが! 初期のファミ○ンRPGかよ!?

 ただ、俺の精神が疲れた。何度も味わった苦痛。これがじわじわと精神に効いてくる。

 正直、なんで闘えているのか不思議なくらいだ。

「くはっ! しぶとい羽虫の貴様でもやっと疲れが見えてきたようだな! この勝負、俺様がもらった!」

 ここぞとばかりに魔神の勢いが止まらない。より魔力を乗せ果敢に俺を攻撃し始めた。

「くっ、まだこれほどの余力を残してやがったのかよ!?」

 魔神の剣が俺の腹に突き刺ささる。

「ぐああっっ!」

 すぐさまヒールを唱える。だが、その一瞬の隙を突かれた。

 魔神は剣を振りかぶり、止めの一撃を放とうとした。

 しまった。これまでか!

 振り下ろされる一撃は俺の体を飲み込むほどの大きさだった。

 俺の体が塵となって消えていく。まるでスローモーションのように消えゆく俺の体……。

 そんなとき、レイと村長の声が聞こえた。

「旦那様~~~~っ!!!」

「ソウ様っ!!!」

 俺の目の前にわずかに現れた黒い霧。その中で祈りを捧げる数万の民達。

 その祈りが俺に最後の力を分け与えてくれた。体にに湧いた魔力を使い、俺が使った魔法は……、

「リザレクション!」

 魔神の攻撃によって消えゆく体が、時間を巻き戻すように戻っていく。魔神の剣が振り終わり、地に剣が突き刺さる。その上に俺は復活を遂げたのだ。

 魔神の目が見開く。

 剣を戻そうと腕がピクリと動いた。だが、もう遅い。

 俺のホーリーソードは魔神の顔面を横にたたき切る。そのまま回復する余裕を与えるつもりはない。何度も剣を振り続けた。魔神の顔は細切れになり、そして、体すらも。

 魔神の体をこの世に残すつもりはない。

 すぐヘルファイアーで残った体すら燃やし尽くした。

 だが、まだ終わっていなかった。

 魔神の精神体は黒い霧となって現れた。

「きっ、貴様ごときに……っ」

 しつこい奴だ。

 こんな奴はとっとと成仏させるに限る! ターンアンデッド!!!

 神聖なる光が魔神の精神体を包み込む。

「こ、このままではっ、終わらせんぞぉ!!!」

 黒い霧が大きくなり、俺を包み込んだ。

「何ぃ! 精神体が魔法だと!?」

「グッハッハッハッハ! 貴様を別世界へ送り込んでやるわ!! グワーハッハッハ……」

 神々しい光に飲み込まれ、消えゆく黒い霧。

 だが、俺の体もまた、黒い霧によって消えていく。

「な、なんとかならないのか! くっ! の、飲み込まれて……しま……」

 俺の意識はそこでプッツリと途絶えるのだった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...