レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

文字の大きさ
60 / 219
第5章 巨獣人の里編

第59話 巨獣神現る!

しおりを挟む


「お? リーダーの魔法でも一発になっちゃいましたね!」

「あぁ、ありがとう! もうレベルも6000を超えたからね! ま、ここからが本番でしょ!」

 開始からまだ三時間。まだまだこれからだ。

「もう、ゆるして……」

「お願いだっ、こ、殺してくれぇ!」

 巨獣人たちはすでに精神まで屈服した。強気の者など一匹も残ってない。

「お前等さ、許しを請う人間を一度でも許したことあるの? ないだろ? じゃあ、文句は言えないよな?」

「はっはっは、その通りだよ! ソウ君! こいつらの為に煮え湯を飲まされ続けたんだ。僕たちのレベルのため、協力してもらおうじゃないか!」

「そうですよね! って、刀の真空波でも一発で倒せちゃうな。仕方がない。リーダー、半分ずつ殲滅したら、エリアリザレクションかけますね」

 リーダーの口は三日月のように鋭く曲がる。

「サンキュー! それで頼むよ」



 三日ほど経過した。俺のレベルはすでに8350に届いた。この巨獣人での現界が見えてきた所だ。

 リーダーも魔法は軒並み8300を超えている。

「いい調子ですよ! 早くもレベルが揃いました!」

「ふぅむ。少し張り合いがないなぁ。もっと手応えが欲しい所だ」

 リーダーは少し不満そうだ。巨獣人たちが生き返っても白目を剥き続けて、為すがままだからな。しょーがない。

 そんな時、腹に響く足音がズドドドッ! と響く。

「新たな巨獣人の群れか!? 何十匹いるんだ?」

「おっほー! 仕上げにはもってこいだねぇ! よし、行くぞ。ソウ君!」

「はいっ! リーダー!」

 押し寄せる巨獣人はまるで黒い波だ。足下が揺れるほどの地震を伴い、押し寄せてくる。

「あ、あれは?」

 奴らの目が赤く光っていた。

 以前見た、オーク達の目が同じ状態だった。オーク達は洗脳支配を受け、操られていたのだ。

「リーダー、あいつらは操られてる! ボスがいるはずだ!」

「ほぅ、それは興味深い! いずれにせよ、掃討作戦だ!」

 リーダーはガラス瓶のようなものを俺に投げつけた。

 パリン! と簡単に割れた瓶には液体が入っている。俺の体にその液体が着くと、まるで体に浸透していくように消え去った。

「こ、これは?」

「なぁに、軽い身体強化さ。試してみてくれ!」

 俺は刀に手を当て、振り抜いた。その速度は以前の比ではなかった。明らかにスピードが三割増し。いや、四割近いかもしれない。その衝撃波は黒い波を貫通し、どこまでも飛んでいった。その直線上にいた十数匹の巨獣人が折り重なるように倒れる。

 一匹を倒すのが精一杯だったのに。衝撃波がこれほど強くなるなんて! 俺は驚きのあまり、リーダーを見た。視線が合う。リーダーは無言で頷いた。

 バフの重要性はファンタズムスターズで嫌というほど見に染みていたが……。まさか、これほどとは……。

 刀を数振りしてみる。あっという間に、黒い波は静まり返った。

「すごい、全く疲れもない。抵抗感もない。ただただ自然にこれほどの威力が出るなんて!」

「僕はバフが得意だったからね! ここでも研究を重ねたんだ。ただ、戦士がいなかったからお蔵入りしてたのさ」

 リーダーは涼しい顔で言う。だが、これはそんな生やさしいものではない。きっと、想像を遙かに上回るほどの熱意と時間が費やされているはずだ。

 敵はあっという間に全滅した。だが、黒い霧が倒れた巨獣人達を覆っていく。

「ふむ、なんだろう。これは……」

 リーダーが訝しむ。その間に黒い霧は積み重なった巨獣人たちを覆い尽くした。

 現れたのは真っ黒な毛に覆われた、巨大な足。それが二本、霧から生えてきたかと思えば、あっという間に全身が現れた。

 巨大な体躯は巨獣人と同じだが、体に生えている毛は別物だ。艶が光り輝き神々しさを感じる。それに顔の額に付いている目。

 現界した黒い巨体はその三つ目でこちらを睨んできた。

「貴様等か。ワシを現界させたのは……」

「あぁ、そうだと言ったら?」

 リーダーは黒い巨体に相対しても全くひるまない。

「ワシはイービルジャイアントの神。ドラン。そなたらの名はなんと申す?」

「僕はリズ。彼はソウ、だ。で? アンタこれから何をするつもりでここに来たんだい?」

「グワッハッハッハッハッハ!」

 奴の笑い声だけでも服がビリビリと震える。恐らく相当の威圧をしてきているのだろう。ま、俺たちには効かないのだが。

「知れた事よ! この世界を破壊しつくすのだ!」

「なぜ、そんな事を……」

「知れた事よ。この世界のありとあらゆる魂を喰い尽くすのだ。そしてワシの魂と同化することにより、ワシはより生きながらえるのだ」

「つまり、この世界はアンタのエサということか?」

「そういうことだ。わかったなら大人しくするんだな。そうすればひと思いに消してやろう。なぁに、痛いのは一瞬よ」

「そうか。君の主張はわかった。だが僕はそれを受け入れない。よって君を滅ぼそうじゃないか」

 リーダーは胸を張った。髪をひらひらと揺らし、決意の眼差しをドランへ向けた。

 俺はその姿に見蕩れていた。その姿が美しかったからだろうか。頼れるリーダーが帰ってきたからだろうか。それとも……、

「グワッハッハッハッハ! ならば、まずは貴様から滅ぼしてやろう! この世界から永遠にな!」

「無理だね。だって、お前はこれから僕たちの経験値になるんだから」

 リーダーは駆けだした。そのスピードたるや、俺の目でも追いきれない。

 ホントに生産職かよ???

 そして、リーダーとドランの激闘が始まるのであった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...