189 / 219
第9章 勇者RENの冒険
第186話 絶望の味
しおりを挟むミリィはジークの動きを見ていた。だが、一瞬にして見失ってしまった。
スッと消えるジークの体。そして、どこから襲ってくるのか、全く予測が立たない。
「なっ!?」
ミリィは目を見開いた。気づけばジークの剣が目の前にまで迫っていたのだ。
かろうじて横に一閃された剣を屈んで躱すことが出来た。だが、そこにジークの膝蹴りがすぐに飛んでくる。
「きゃあああっ!」
またしても吹き飛ばされ、私の体は舞台に転がされる。
み……、見えなかった……。どうして……?
謎が残る。ジークからは目を離さなかったはず。私の視力で追いきれない? それこそまさかだ。私の視力はそれこそ規格外。しかも距離に関わらず瞬時にピントをオートに合わせられる。
私の見た映像が遠く離れたマザーに送られたはず。すぐに解析してくれれば……。
すぐに立ち上がり、辺りを見回したがジークの姿はもうなかった。
「遅いわッッ!!」
頭上から振り下ろされる攻撃に、またしてもギリギリの所で体を右に投げ出し、避けることが出来た。
ジークの一撃は舞台に巨大な破壊跡を残すが、それほどの一撃を放っていながらも、片手をこちらに向けてきたのだ。
放たれるのは炎。それも極大魔法と言っても差し支えないほどの巨大な炎がビームのように私に襲いかかってくる。
「次から次と……」
ミリィはすぐに電磁バリヤーを展開し、その炎を防いだ。
「この程度の攻撃、私には効かないわ」
バリヤーごと炎に飲み込まれたかのように視界が赤い炎に包まれている。
炎の魔法が晴れてきたが、肝心のジークの姿はもうそこにはなかった。
ズバアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!
後方から凄まじい轟音が鳴る。電磁バリヤーに何かがぶつかった音。すぐさま振り返ると、そこには電磁バリヤーを打ち破り、私の体に迫るジークの剣があった。
「しまった」
ジークの剣は勢いよく私の体を斬りつけてきた。躱す時間もなく、左肩から大きく斜めに剣が私の身体を走った。
「キャアアアアアアアァァァッッッ!!!」
「あああーーーーッッッ!!! ジークの剣がついにミリィを捉えましたーーーッッッ! あれは相当なダメージになりそうです!」
「今の一撃は深く当たりましたね! 下手をすると今の一撃で終わってしまうかもしれませんよ!」
「ミリィの切られた跡から赤黒い……、これは血液でしょうか? 液体が流れていきます! 果たして大丈夫なのか?」
ジークは容赦なくトドメの一撃を放ってくる。首を狙った横に向かう一凪。
なんとか小刀で受け止めたが、私の力が及ばずジークの剣に突き飛ばされるように舞台に転がった。
私の体を流れる疑似血液が舞台に広がるように漏れ出していく。
マズイ。これ以上流れたら戦闘不能になってしまう。
急ぎで、異次元格納庫から修復キットを取り出した。スプレー状の瞬間固着剤だ。これを吹き付け、胸の傷を取り敢えず塞ぐ。
「ほぅ? これはまた珍しい道具を使用しているな。だが、抵抗など無駄だ。さっさと降参すれば死ななくても済むのだぞ? 若き戦士よ」
「だ、誰が降参など……、我が祖国のために……、まだ死ぬわけにはいかないッ!」
私がジークを睨むと、またしても奴の姿が一瞬にして消え去った。
そして、突如として横から斬り掛かってきた。
「くううッッッ!!!」
かろうじて防いだ。この攻防でマザーからの解析結果がようやく届いた。
調子にのるのもここまでよっ! この解析結果があれば……、
そ……、そんな……。
ミリィは驚いた。解析の結果、ジークが行っているのは完全なる瞬間移動。つまり、一瞬だが、魔力で自分の体をワープさせていた、というもの。空間を魔力でつなぎ合わせ、そこを移動していたのだ。そして、解析・分析の結果、ジークがどこから現れてくるのかはランダム性が高く、予測不能というもの。
通常の相手ならば、得意とする攻撃が数パターンあり、そこから次の攻撃が高確率で割り出せた。
だが、ジークはそんなレベルではなかったのだ。
「クックック……、どうした? そんなに驚いた顔をして? 今頃、自分の絶望的な状況に気づいたとでも言うのか?」
ジークの笑い声は露骨にこちらを見下していた。
「いいことを教えてやろう。ワシの剣に型などはない。完全なる無型。ゆえに分析で次の攻撃を読むなど……無意味なのだ。大昔にそんな分析家との格闘など山程に経験しておるからの。真の強者とはそんな計算など関係ない世界に棲んでおるのだ。だが、お主はまだその領域に来てはおらぬ。圧倒的な経験不足なのだよ、お主は……」
徐々に私の心を無力感が募り始める。
そうか、これが……、絶望。
私は絶望感がじわじわと心の中を占めてくる中、最後の気力を振り絞るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる