203 / 219
第9章 勇者RENの冒険
第200話 RENの反撃
しおりを挟む俺は持っていた剣をその場に置いた。
その姿を見て、ジークはゆっくりと近づいてきた。
「トドメを刺してやろう。ひと思いに死ぬがいい」
ジークは剣を上方から振り下ろした。だが……、
ガギィィィィィン!!!
「ぬうっ? なんだ? その剣はッ!」
驚いたのはジークだつた。俺はアイテム袋から一振りの刀を取り出したのだ。
それは刀身が黒く光る日本刀。刃はいくつもの波模様が複雑に絡み合い、見る者を虜にしそうなほどの美しさを持っていた。
そして何より特筆なのはその硬さであった。
ピシッ!
ジークの手元から何かが割れる音が鳴る。
それは神剣ヴォルグスネーガから放たれた音だった。それを見たジークの目がさらに赤い光を大きくした。
ヴォルグスネーガの刃はほんの僅かだが欠けていたのだ。
「そ……それは、一体?」
ジークの声色に初めて焦りの色が生じる。
これは元チームリーダー、リズの打った刀。製作者の魂が込められた、超越級の代物。俺が見てきた刀の中でも間違いなくトップクラスのものだった。
「これを抜いた以上、容赦はできんぞ? 覚悟を決めるがいい」
「ぬかせ! 覚悟なぞ、とうに済ましておるわ! ワシを妨げる者なぞ、許さんッ!!!」
激昂するジークとの激突は第二ラウンドへ突入するのだった。
「こ、ここで、RENの剣が、謎の刀になりました! 果たしてどれほどの刀なんでしょうか!!!」
「見たところ、前の剣よりも魔力は少ない……といいますか、全く感じないですね! とういった性質なのか? さっぱり検討もつきません! ジークのヴォルグスネーガにどこまで対抗できるのか? 注目したいですね!」
「ついに出たか……」
控室でつぶやくように言ったのはズールてあった。
「何か知ってるの? あんなの初めて見たんだけど……」
隣で面白くなさそうな顔つきをしていたのはイヴリスだ。
「あぁ、RENと組手をしていた時に見せてもらった。正直に言って、震えたよ。あれはこの世の理すらも切り裂くんだ」
「理? どういうこと?」
イヴリスだけでなくミリィも隣で眉を寄せていた。
「我には詳しい事はわからん。だが、あの刀はこの世のあらゆる物を斬る為に生み出された神剣、ということだ」
「あらゆる物を斬る……」
ミリィはなにやら難しい顔つきで顎に手を当てる。
「あぁ、試しに様々な攻撃を仕掛けてみたのだが、すべての攻撃がまるで通用せずに斬られたのだ。嘘みたいな話だろうがな。こればかりは本当のことよ。今に目の前で起きることが全てだ」
控室にいた三人はRENの取り出した刀を注視するのだった。
「テヤアアアァァァァッッッ!!!」
俺の刀とジークのヴォルグスネーガが撃ち合う度に煌めく金属片が僅かずつ飛び散っていった。
その金属片は全てヴォルグスネーガのものだった。俺の刀は刃こぼれはない。
ジークはその刃こぼれを見て開いた口が塞がらなくなっていた。
「RENよ、その剣は一体なんなのだッ! ワシのヴォルグスネーガが傷つくなどッ! ありえんッッッ!!!」
「この刀こそ、お前を死者の国へと送る神剣。その呪われし剣と共に葬ってくれよう!」
「抜かせっ! ワシは……ワシはッ!」
ジークは一旦距離をとり、自分の剣をじっくりと見つめた。
恐らく次の一撃は奴のありったけの力で打ち込んで来るだろう。もう、刃が削られてしまい、剣として使うのは限界が近いのだ。
「ジークが機を伺っているのでしょうか? じっと動きませんッ!」
「RENの刀は一体何なんでしょうね? まさかあのヴォルグスネーガを上回る剣があったとは……素直に驚きです! ジークは次が最後の剣撃になるかも知れません! なにしろ、刃が削れてしまってますからね!」
「このワシが、よもやここまで苦戦するとはな……。だが、ワシは諦めんッ! 必ずや神共に天誅を与えるまではなッ!」
ジークが襲いかかってきた。また姿を消すように移動し、俺のサイドから斬りつけてきた。それも今までのような斬り方ではない。体重を乗せきり、突進を兼ねた捨て身の一撃だ。
その素早い動きに対して、俺は最小限の動きだけで対応していく。
視界に映るもの全てがまるでスローモーションのように遅くゆっくりと動いていった。
俺は今、視えていた。舞台の動き全てが把握できるのだ。
そして、ジークの剣の軌道も、折り込んだフェイントも、足捌きも、全てがハッキリと視えていた。
ここだッ!
俺の刀は振り下ろされるジークのヴォルグスネーガに入っていた僅かな傷、そこに横方向からピンポイントでぶつかり合った。
キィィィィィィィン!!!
まるで上質のベルでも鳴らしたかのような美しい音色が舞台に広がった。
そして、ジークの遥か後方に回転しながら落ちていく刃があった。
それは地面に刺さり込み、動きを止めるのだった。
「ジークの、ヴォルグスネーガがッッッ!!! 折れました~~~~~ッッッ!!!」
0
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる