レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

文字の大きさ
205 / 219
第9章 勇者RENの冒険

第202話 三回戦第二試合 天使族代表 ルシフェル VS 蛇人族代表 ニュート

しおりを挟む

「オレの出番か……」

 背中につけた長い鞘からグレンを引き抜き、オレは歩いた。

 眩しい光がオレを照らす。湧き上がる大きな歓声。だが、ブーイング混じりの声援だった。今のオレはまさにアウェー。次第に大きくなっていくブーイングがオレを包み込む。

 花道から舞台を見れば、敵は微動だにせずにオレを睨んでいた。

 堕天使ルシフェル。蛇の国にいたオレですら名前を聞いたことがある男だ。

 過去に天使界最強と言われた戦士であり、凶暴な性格から天使界を追われ、放浪しながらも数々の伝説的魔獣を狩り続けていた。

 グレンを握る手に力が入る。

『む? やけに気合が入っているな。気負いすぎるなよ?』

『あぁ、わかっちゃいるんだがな……。オレはな……奴に用があるのさ』

『用だと?』

『そうだ。オレは確かめねばならぬ。奴に……』

 オレは歩を進めた。

 楽な相手ではない。タフな試合になるだろう。ルシフェルは殺気を隠すことなく、放ってきていた。巨大なオーラを身に纏い、奴の足元は空間が歪むように揺らめいていた。



「さぁ、ニュートが入場してまいりましたッ! バハルとギガース、二人の亜神を破り、番狂わせの下克上を二度も果たしてきた男が今、舞台に上がりますッ! ローファンさんはこの試合、どう見ますか?」

「そうですね。圧倒的な強さで勝ち進んできたルシフェル先輩に対し、ギリギリの勝利を重ねてきたニュート。対象的な二人ですが、いい勝負になるんじゃないでしょうか? 剣技に関しては、もしかしたらニュートが一枚上手ではないか? と思っています。ですがまぁ、このレベルになりますと僅かな誤差みたいなものでしょうから。一瞬たりとも見逃せない試合になることは間違いありませんよ!」

「それは楽しみですねぇ! さぁ、両者舞台にあがりました! 睨み合っております! まさに一触即発! 視線がぶつかり合いますッ!」

「三回戦第二試合、天使族代表ッ! ルシフェル! VS 蛇人族スネークマン代表ッ! ニュート! レディ………………、ゴーーーーーーーーーーッッッ!!!」

 ルシフェルは口角をあげたまま、こちらを睨んでいた。

「クックック、嬉しいですよ……。アナタのようなつわものを待っていましたよ。今までの戦いは少々物足りなかったものですから……」

 ルシフェルは剣を鞘から抜き放ち、正面に構えた。

「どこからでもかかって来てくださいね? 存分に打ち合いたい気分ですよ! やっと……、やっと本当の戦いが出来そうですからねぇ。昨日は喜びにうまく寝付けませんでした……、これからアナタを狩ることを思うとゾクゾクするというものです」

 ルシフェルの目は上向きになり、恍惚の表情で、喜びを顕にした。

「フンッ! テメェには聞きてえことがある。ラファーを殺ったのは……オメェか?」

 ルシフェルの眉がピクリと動く。そして、薄ら嗤いを浮かべながら奴は口を開いた。

「ほぅ? そうですか。ま、アナタは蛇人族。あの大蛇神の仲間であってもおかしくありません……。わざわざここまで、敵討ちに来たのですか?」

「やはり……テメェだったのか! ……あぁ、そうだッ! 覚悟しやがれッ! テメェはなにがあろうとも必ずあの世へ送ってやる!」

 オレは駆け出した。消えるようにその場からいなくなると、ルシフェルの正面から切りかかっていく。

 ギィンッ!

 軽く弾かれてしまう。だが、ここからだ。

 そのまま流れるように連撃を放っていく。

 だが、ルシフェルは余裕の表情でオレの剣を捌いていった。

「くっ! まだまだぁ!」

 幾度も剣を振るっていくが、奴はまるでダンスでも踊るかのように軽やかに躱していった。

 オ、オレの剣が、届かねぇっ!

 尽く弾かれ、躱され、いなされるオレの剣。

『ニュートッ! 何を焦っているのだ? 戦いは始まったばかり。ペースが早すぎる! 抑えるんだッ!』

 グレンから忠告が聞こえるが、オレの耳には入らない。

「ぬりゃりゃりゃりゃりゃあ~~~ッッッ!!!」

「フッ、バハルとギガースを倒した剣……期待し過ぎましたかねぇ? この程度の怒りに任せた剣など、私には通用しませんよ?」

 瞬間、ルシフェルの姿が消えた。

「ぬっ?!」

 見失ったルシフェルを見つけようと振り向いた時、オレの腕に衝撃が走った。

「ぐあああッッッ!!!」

 空に浮かんだのはオレの左腕。斬られた個所からどっと血が吹き出す。

 宙に浮いたオレの左腕は回転しながら地に落ちた。

 グレンはかろうじて右手で掴んでいたが、止血のため、ギュッと脇を絞り、オレは後退するため大きくジャンプした。

『ニュートっ! 大丈夫か?』

『あぁ、すまねぇ。油断しちまった』

 魔法で血止めをし、ルシフェルを確認すると、奴は笑っていた。クツクツと声を殺すように、肩を上下に揺らしながら……。

「やろぉ……」

『ニュートッ! 焦るんじゃないっ! おいっ! 聞いてるのかっ?』

 オレにはグレンの声はまだ届かなかった。ルシフェルへの怒りが、頂点に達しており、他のことに気にしていられない。

 オレがまた怒りに身を任せて一歩踏み出した時、体の自由が全く効かなくなった。

 この感覚には覚えがある。グレンが、オレの体を乗っ取ったのだ。

『おいっ! なにしやがる! 体を返せっ!』

『ニュートよ……、お前は今、冷静ではない。少し休んで頭を冷やすがいい!』

 グレンから嗜めるような声が聞こえる。

『なにっ?! おいっ! 奴はオレが倒すんだッ! 邪魔をするなっ!』

 もはや、グレンは返事をしなかった。

 そして、オレの体を操りルシフェルと対峙するのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...