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第9章 勇者RENの冒険
最終話
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「フム、存外にしぶとい……」
アークネスはさらに目の光を強めた。
「行くぞ、REN! ニュート!」
「「応っ!!!」」
オレはソウともニュートとも戦った経験から、二人の攻撃の仕方がよくわかっていた。
二人の合間を狙って攻撃を差し込んでいく。
三人の波状攻撃は絶え間なく、アークネスをやがて防御一辺倒に押し込んでいった。
「行けるっ! 行けるぞっ!」
ソウの声に弾みがつく。ここにきて、三人の攻撃に連携が生まれてきたのだ。
少しづつだが、アークネスの鎧に傷を増やすことが出来ている。まだ、本体へのダメージはないかもしれない。だが、確実に鎧の再生速度を上回るペースで攻撃が通っていた。
「ぐぬぅぅぅぅっ!!! ちょこまかと動き回りおって!」
アークネスは忌々しそうな声を上げる。それこそが我々の攻撃に苦戦している証拠だろう。
「一気に叩き込むぞっ!!!」
「ああっ!」「言われるまでもないっ!」
三人の息がピッタリ合った連携が次々に決まっていく。そして少しずつだが、鎧につけた傷を広げていき、今では左肩や、胸の部分のプレートに大穴を開けていた。
「くっ! 貴様ら~~~~~っ、いつまでも調子の乗りおって!」
アークネスを中心に大きな魔法陣が描かれる。
「いかん、距離を取れ!」
ソウの合図と共に、その場を離れた。
放たれたのはアークネスを中心とした爆発魔法。
辺りの地面を大きく抉る魔法だ。
三人共うまく距離をとって躱すことができた。
だが、アークネスは嗤っていた。
「フンッ!!!」
気合いと共に奴は胸と腕に目いっぱいの力を込めた。すると、奴の着ていた鎧がはじけ飛んだのだ。
今、アークネスはボロボロになっていた鎧を全て脱ぎ捨てたのだ。
「我の本気、とくと見るがいい!!!」
アークネスの姿が消えた。
「早いっ!」
ニュートは一瞬でアークネスの姿を見失ったようで左右を確認した。だが、その時点でもう対応が遅かった。
強烈な一撃がニュートの横から薙ぎ払われ、体ごと宙に吹き飛ばされる。
「「ニュートっ!」」
オレとソウが同時に叫ぶ。
鎧を脱ぎ捨てたアークネスのスピードはオレの目を持ってしても視認し得なかった。
その事実にオレの肌が泡立つ。
「次は貴様だっ!!!」
アークネスはオレに狙いを定めたように睨み、そして、その姿を消した。
「RENっ!!! 危ないっ!」
オレの体はソウによって突き飛ばされた。
「ソウっ!!!」
体を飛ばされながらソウを見た時には、すぐそばにまでアークネスが剣を突き出していた。
強力かつ、俊敏なアークネスの突きがソウの体を貫く。
「グフッッッ!!!!!」
ソウは口から大量に吐血しながら地に落ちた。腹には大きな穴が空いており、ソウは瞬く間に呼吸すら絶え絶えとなった。
「ソウーーーーーーッッッ!!!」
オレはすぐに駆け寄った。
まさか、ソウがここまでやられるとは想像すらしていなかった。
鎧を脱いだアークネスののスピードは、オレの想像を遥かに上回っていたのだ。
「RENっ! 急いでそいつの手当をっ! アークネスはオレが引き受けるっ!」
ニュートが空を飛びながら、アークネスを急襲し、そのまままた浮かび上がっていく。
オレは急いでソウを生き返らせるためにリザレクションを唱えた。
「ソウ……、生き返ってくれッッッ!!!」
だが、RENが魔法を使っている間、アークネスと戦えるのはニュートただ一人。
「RENッ! 急いでくれッ!」
ニュートは必死に空を飛び、アークネスの剣を躱し続けている。
「この蚊トンボめッ! すぐに落としてくれるッ!」
アークネスの剣は容赦なく振られていく。その衝撃波を躱すだけで、もはやニュートに攻撃をしかける暇などなかった。
「グッ!!! RENッ!!!」
ニュートの体が剣の風圧に巻き込まれた。そして、百メル以上離れた山にまで飛ばされ、激突する。
「次は貴様で終わりだッッッ!!!!!」
アークネスがオレに向かって突進してくる。
「は、早くッ! 生き返ってくれ!!! ソウッ!」
「RENッッッ!!! ここはまかせてっ!!!」
遠くから聞こえる声。それはイヴリスだった。
その両隣にはズールとミリィの姿もある。三人は手を組み、魔力をお互いに融通させ、イヴリスに集中していた。
そのイヴリスの頭上に現れたのは太陽。それも試合で見せたものよりも大きな太陽がアークネスに向かって動き出した。
「このデカブツめっ! これでもくらええええええっっっ!!!!!」
「イヴリスよっ! 我が魔力全てお主に託す!」
「…………仕方ないから私も協力してあげるわ」
三人の魔力を吸収したイヴリスの太陽はより大きさを増し、1回戦で見せた時の倍以上の大きさにまでなっている。
「フンッ!!!!! 小癪なりっ!!!!! 我が怒りの剣を喰らうがいい!!!!!」
アークネスはイヴリスの太陽と真っ向から勝負を仕掛けた。
手に持った剣に魔力を込め、上段から振り下ろす。
そして、巨大な太陽とアークネスの剣が激突した。
吹き荒れる爆風。ほとばしる稲妻。溶けるように消えていく大地。
その全てがインパクトの強さを物語っている。
アークネスを包み込むように爆発の光が辺り一帯を覆い尽くした。
「ハァッハァッ、……こ、これでどう? もう私も動くことも出来ないわ」
片膝を地について肩で息をするイヴリスの隣には、座り込むズールとミリィの姿があった。
だが、爆発の煙が晴れた時、イヴリス達三人の目が驚愕に見開いた。
「フハハハハハハハハハッッッ!!!!! 今の一撃で動けなくなったか! ならばっ! すぐに止めを刺してやろうッッッ!!!」
アークネスは健在であった。その剣にわずかなヒビやカケが見られるが、本人は全くの無傷だったのだ。
「クッ! 悔しいけど……ここまでのようね」
うなだれるイヴリス。
「小娘よ。お主は諦めるのが早すぎる。だから試合に勝てんのだ」
イヴリスの背後からかかる声。
「誰? こんなところに来るなんて……。お、お前はっ!!!」
振り向いたイヴリスは驚きの声を上げる。
そこに現れたのはジーク。その後ろにはトーナメントに参加していたキュイジーヌ、マリーン、バッジ、そして、驚いたことにグリーナの姿までもが並んでいた。
「だが、お主の魔法は悪くない。そのまま使わせてもらおう!」
ジークは両手を空に掲げた。
そこに現れたのは巨大な隕石。その隕石の内側からマグマが吹き出し始めた。そのマグマは隕石の表面を覆い尽くし、まるで先程の太陽のような見た目に変化した。
「よし、皆のもの。頼む!」
ジークの掛け声に皆が一斉に魔力をジークへと集め始めた。
「ぬぅぅぅっ!!! これほどとはな……、これであの邪神を消滅させてくれるわッ!!!」
ジークは両手をアークネスに向かって振り下ろす。
巨大な隕石はまるで太陽のように真っ赤に燃え上がり、そして、皆の魔力の供給を経て、イヴリス達が放ったフォーリングサンのさらに倍以上の大きさにまで成長していた。
「うぬうぅッッッ!!! どこまでも邪魔ばかりしおって、この蚊トンボめらが!!!」
アークネスは、両手の剣をクロスさせ、落ちてくる隕石に真正面から斬りかかる。
先の衝突よりもさらに大きな衝撃が辺りを覆い尽くす。
すでに森は焼け落ち、山は削れ、大地は荒れ尽くした。
だが…………、それでも爆心地に立ち続ける者がいた。
「ぐぬ!!! これほどの魔法に耐え抜くとは!!!」
ジークは叫んだ。
アークネスは顔を笑みに歪めた。
「クックック……、今の魔法は効いたぞ。貴様……部下に欲しいくらいの腕前だ。まさか我が剣をボロボロにするとはな……、だが……我に歯向かった者には死あるのみ! 消えてもらうっ!!!」
アークネスはヒビにまみれた剣を二本とも捨て去った。そして再び、アークネスは動き出す。完全に丸腰となった今も戦意が衰えてはいなかった。それどころか、より早いスピードでの移動となっていた。
「死ねいッッッ!!!」
アークネスがジーク達を目掛けてパンチを放っていく。数百メルの距離があっという間になくなる。
「RENよ……、時間は稼いだぞ」
ジークの口角が上がった。
「「待たせたなっ!!!」」
RENとソウがアークネスを両側から挟み込むように刀で斬りつけた。
アークネスは剣を失っており、鎧も纏っていない。二人の攻撃はクリーンヒットし、アークネスを大きく吹き飛ばした。
「REN!」
「ソウ!」
オレはソウに決意の視線を送る。ソウも決心した目を返してくれた。
「オレを忘れてもらっちゃ困るぜ?」
肩で息をしながらも駆けつけたのはニュートだった。
「大丈夫だったか!」
「当たり前だ! 奴をブチ殺すまで死ねるか! それよりも早く準備しろ! 三人のフルパワーを合わせなければ、奴を倒すことは出来まい」
「あぁ!」
「REN! 行くぞ!」
オレは刀を上空に構えた。雲ひとつなかった青空が一瞬にして暗くなる。そして稲妻が縦横に走り始めた。
ソウは両手にホーリーソードを出し、上方で二本のソードを一つに合わせた。その神聖な光は融合し、遥か上空にまで伸びていく。
ニュートは全ての魔力を口元に集結させた。ドス黒いオーラにその体が包まれる。
アークネスがゆらりと立ち上がる。
「今だッッッ!!!」
三人の攻撃が始まる。
オレの刀へ大量の稲妻が落ち、そして、巨大な稲妻の剣が出来上がった。その剣を上段から一気に叩きつける。
ソウのホーリーソードは魔力を帯びるごとに巨大化していき、今や上が見えないほどに伸びていた。その超巨大な聖なる剣を振り下ろす。
ニュートは大きく口を開いた。さらに口の周りに魔法陣を展開し、風魔法によるブレスの強化を入れた。そして、今、最強のブレスが吐き出された。
三つの攻撃は途中で一つに混じり合い、稲妻の剣と神聖なる剣、毒と呪いのブレスが一つの太いビームのようになり、アークネスの体を覆い尽くす。
「がはッッッ!!! な、なぜだっ? 我が、負けるだと……」
三人の最強の攻撃はアークネスの体を完全に無に返すのだった。
***
「これで貴様には恩を返したぞ……」
「あぁ、助かったよ」
フンッと鼻息を荒くしてニュートは帰っていった。
「またな……」
オレは正直に驚いた。ニュートからそんな言葉が出るとは思っていなかったのだ。
「いい仲間が出来たな」
隣で笑顔になっているのはソウだ。
「でもどうしてこのトーナメントに来たんだ? それも途中から……」
「うむ、以前にイクスっていう邪神を倒したんだが……、それで悪神達の権威が弱まりすぎたようでね。奴らが何かをしかけてくる、という情報があったんだ。それで駆けつけたんだが、トーナメントの開始には間に合わなくてね」
「なるほど……。助けた皆はどうするんだ?」
「あぁ、こんなに強い者たちだ。残らずアルティメットハンターズに加入してもらう!」
ソウは拳を高々と上げた。
「そっか。勧誘のために皆を死なないようにしていたって所か」
「あぁ、こんな馬鹿らしい戦いで死ぬことなんてないだろう?」
ソウはニカッと笑みを浮かべた。
「ふぅ、それじゃオレもそろそろ行くか……」
「ん? オレと一緒に来ないのか? お前の強さはもう……」
「会っておきたい人がいるんだ。その後に合流するよ」
オレにはどうしても会いたい人たちがいる。獣人の国へ行かねばならない。
「そうか……、友の帰還を待っている!」
オレはソウの言葉に胸を熱くしながら、この場を立ち去る。
オレの歩く先にはイヴリスとズール、ミリィが待っていた。
「もちろん、私はついていくわよ? 嫌だって言っても追いかけてあげるんだから!」
「むろん、我もだ。よもや置いていくまいな?」
「…………私を救ったのはアナタ。責任はとってもらう」
三人の言葉にフッと笑いがこみ上げる。
「あぁ、行こう! まだまだオレ達の知らない世界、冒険が待っている!」
完
アークネスはさらに目の光を強めた。
「行くぞ、REN! ニュート!」
「「応っ!!!」」
オレはソウともニュートとも戦った経験から、二人の攻撃の仕方がよくわかっていた。
二人の合間を狙って攻撃を差し込んでいく。
三人の波状攻撃は絶え間なく、アークネスをやがて防御一辺倒に押し込んでいった。
「行けるっ! 行けるぞっ!」
ソウの声に弾みがつく。ここにきて、三人の攻撃に連携が生まれてきたのだ。
少しづつだが、アークネスの鎧に傷を増やすことが出来ている。まだ、本体へのダメージはないかもしれない。だが、確実に鎧の再生速度を上回るペースで攻撃が通っていた。
「ぐぬぅぅぅぅっ!!! ちょこまかと動き回りおって!」
アークネスは忌々しそうな声を上げる。それこそが我々の攻撃に苦戦している証拠だろう。
「一気に叩き込むぞっ!!!」
「ああっ!」「言われるまでもないっ!」
三人の息がピッタリ合った連携が次々に決まっていく。そして少しずつだが、鎧につけた傷を広げていき、今では左肩や、胸の部分のプレートに大穴を開けていた。
「くっ! 貴様ら~~~~~っ、いつまでも調子の乗りおって!」
アークネスを中心に大きな魔法陣が描かれる。
「いかん、距離を取れ!」
ソウの合図と共に、その場を離れた。
放たれたのはアークネスを中心とした爆発魔法。
辺りの地面を大きく抉る魔法だ。
三人共うまく距離をとって躱すことができた。
だが、アークネスは嗤っていた。
「フンッ!!!」
気合いと共に奴は胸と腕に目いっぱいの力を込めた。すると、奴の着ていた鎧がはじけ飛んだのだ。
今、アークネスはボロボロになっていた鎧を全て脱ぎ捨てたのだ。
「我の本気、とくと見るがいい!!!」
アークネスの姿が消えた。
「早いっ!」
ニュートは一瞬でアークネスの姿を見失ったようで左右を確認した。だが、その時点でもう対応が遅かった。
強烈な一撃がニュートの横から薙ぎ払われ、体ごと宙に吹き飛ばされる。
「「ニュートっ!」」
オレとソウが同時に叫ぶ。
鎧を脱ぎ捨てたアークネスのスピードはオレの目を持ってしても視認し得なかった。
その事実にオレの肌が泡立つ。
「次は貴様だっ!!!」
アークネスはオレに狙いを定めたように睨み、そして、その姿を消した。
「RENっ!!! 危ないっ!」
オレの体はソウによって突き飛ばされた。
「ソウっ!!!」
体を飛ばされながらソウを見た時には、すぐそばにまでアークネスが剣を突き出していた。
強力かつ、俊敏なアークネスの突きがソウの体を貫く。
「グフッッッ!!!!!」
ソウは口から大量に吐血しながら地に落ちた。腹には大きな穴が空いており、ソウは瞬く間に呼吸すら絶え絶えとなった。
「ソウーーーーーーッッッ!!!」
オレはすぐに駆け寄った。
まさか、ソウがここまでやられるとは想像すらしていなかった。
鎧を脱いだアークネスののスピードは、オレの想像を遥かに上回っていたのだ。
「RENっ! 急いでそいつの手当をっ! アークネスはオレが引き受けるっ!」
ニュートが空を飛びながら、アークネスを急襲し、そのまままた浮かび上がっていく。
オレは急いでソウを生き返らせるためにリザレクションを唱えた。
「ソウ……、生き返ってくれッッッ!!!」
だが、RENが魔法を使っている間、アークネスと戦えるのはニュートただ一人。
「RENッ! 急いでくれッ!」
ニュートは必死に空を飛び、アークネスの剣を躱し続けている。
「この蚊トンボめッ! すぐに落としてくれるッ!」
アークネスの剣は容赦なく振られていく。その衝撃波を躱すだけで、もはやニュートに攻撃をしかける暇などなかった。
「グッ!!! RENッ!!!」
ニュートの体が剣の風圧に巻き込まれた。そして、百メル以上離れた山にまで飛ばされ、激突する。
「次は貴様で終わりだッッッ!!!!!」
アークネスがオレに向かって突進してくる。
「は、早くッ! 生き返ってくれ!!! ソウッ!」
「RENッッッ!!! ここはまかせてっ!!!」
遠くから聞こえる声。それはイヴリスだった。
その両隣にはズールとミリィの姿もある。三人は手を組み、魔力をお互いに融通させ、イヴリスに集中していた。
そのイヴリスの頭上に現れたのは太陽。それも試合で見せたものよりも大きな太陽がアークネスに向かって動き出した。
「このデカブツめっ! これでもくらええええええっっっ!!!!!」
「イヴリスよっ! 我が魔力全てお主に託す!」
「…………仕方ないから私も協力してあげるわ」
三人の魔力を吸収したイヴリスの太陽はより大きさを増し、1回戦で見せた時の倍以上の大きさにまでなっている。
「フンッ!!!!! 小癪なりっ!!!!! 我が怒りの剣を喰らうがいい!!!!!」
アークネスはイヴリスの太陽と真っ向から勝負を仕掛けた。
手に持った剣に魔力を込め、上段から振り下ろす。
そして、巨大な太陽とアークネスの剣が激突した。
吹き荒れる爆風。ほとばしる稲妻。溶けるように消えていく大地。
その全てがインパクトの強さを物語っている。
アークネスを包み込むように爆発の光が辺り一帯を覆い尽くした。
「ハァッハァッ、……こ、これでどう? もう私も動くことも出来ないわ」
片膝を地について肩で息をするイヴリスの隣には、座り込むズールとミリィの姿があった。
だが、爆発の煙が晴れた時、イヴリス達三人の目が驚愕に見開いた。
「フハハハハハハハハハッッッ!!!!! 今の一撃で動けなくなったか! ならばっ! すぐに止めを刺してやろうッッッ!!!」
アークネスは健在であった。その剣にわずかなヒビやカケが見られるが、本人は全くの無傷だったのだ。
「クッ! 悔しいけど……ここまでのようね」
うなだれるイヴリス。
「小娘よ。お主は諦めるのが早すぎる。だから試合に勝てんのだ」
イヴリスの背後からかかる声。
「誰? こんなところに来るなんて……。お、お前はっ!!!」
振り向いたイヴリスは驚きの声を上げる。
そこに現れたのはジーク。その後ろにはトーナメントに参加していたキュイジーヌ、マリーン、バッジ、そして、驚いたことにグリーナの姿までもが並んでいた。
「だが、お主の魔法は悪くない。そのまま使わせてもらおう!」
ジークは両手を空に掲げた。
そこに現れたのは巨大な隕石。その隕石の内側からマグマが吹き出し始めた。そのマグマは隕石の表面を覆い尽くし、まるで先程の太陽のような見た目に変化した。
「よし、皆のもの。頼む!」
ジークの掛け声に皆が一斉に魔力をジークへと集め始めた。
「ぬぅぅぅっ!!! これほどとはな……、これであの邪神を消滅させてくれるわッ!!!」
ジークは両手をアークネスに向かって振り下ろす。
巨大な隕石はまるで太陽のように真っ赤に燃え上がり、そして、皆の魔力の供給を経て、イヴリス達が放ったフォーリングサンのさらに倍以上の大きさにまで成長していた。
「うぬうぅッッッ!!! どこまでも邪魔ばかりしおって、この蚊トンボめらが!!!」
アークネスは、両手の剣をクロスさせ、落ちてくる隕石に真正面から斬りかかる。
先の衝突よりもさらに大きな衝撃が辺りを覆い尽くす。
すでに森は焼け落ち、山は削れ、大地は荒れ尽くした。
だが…………、それでも爆心地に立ち続ける者がいた。
「ぐぬ!!! これほどの魔法に耐え抜くとは!!!」
ジークは叫んだ。
アークネスは顔を笑みに歪めた。
「クックック……、今の魔法は効いたぞ。貴様……部下に欲しいくらいの腕前だ。まさか我が剣をボロボロにするとはな……、だが……我に歯向かった者には死あるのみ! 消えてもらうっ!!!」
アークネスはヒビにまみれた剣を二本とも捨て去った。そして再び、アークネスは動き出す。完全に丸腰となった今も戦意が衰えてはいなかった。それどころか、より早いスピードでの移動となっていた。
「死ねいッッッ!!!」
アークネスがジーク達を目掛けてパンチを放っていく。数百メルの距離があっという間になくなる。
「RENよ……、時間は稼いだぞ」
ジークの口角が上がった。
「「待たせたなっ!!!」」
RENとソウがアークネスを両側から挟み込むように刀で斬りつけた。
アークネスは剣を失っており、鎧も纏っていない。二人の攻撃はクリーンヒットし、アークネスを大きく吹き飛ばした。
「REN!」
「ソウ!」
オレはソウに決意の視線を送る。ソウも決心した目を返してくれた。
「オレを忘れてもらっちゃ困るぜ?」
肩で息をしながらも駆けつけたのはニュートだった。
「大丈夫だったか!」
「当たり前だ! 奴をブチ殺すまで死ねるか! それよりも早く準備しろ! 三人のフルパワーを合わせなければ、奴を倒すことは出来まい」
「あぁ!」
「REN! 行くぞ!」
オレは刀を上空に構えた。雲ひとつなかった青空が一瞬にして暗くなる。そして稲妻が縦横に走り始めた。
ソウは両手にホーリーソードを出し、上方で二本のソードを一つに合わせた。その神聖な光は融合し、遥か上空にまで伸びていく。
ニュートは全ての魔力を口元に集結させた。ドス黒いオーラにその体が包まれる。
アークネスがゆらりと立ち上がる。
「今だッッッ!!!」
三人の攻撃が始まる。
オレの刀へ大量の稲妻が落ち、そして、巨大な稲妻の剣が出来上がった。その剣を上段から一気に叩きつける。
ソウのホーリーソードは魔力を帯びるごとに巨大化していき、今や上が見えないほどに伸びていた。その超巨大な聖なる剣を振り下ろす。
ニュートは大きく口を開いた。さらに口の周りに魔法陣を展開し、風魔法によるブレスの強化を入れた。そして、今、最強のブレスが吐き出された。
三つの攻撃は途中で一つに混じり合い、稲妻の剣と神聖なる剣、毒と呪いのブレスが一つの太いビームのようになり、アークネスの体を覆い尽くす。
「がはッッッ!!! な、なぜだっ? 我が、負けるだと……」
三人の最強の攻撃はアークネスの体を完全に無に返すのだった。
***
「これで貴様には恩を返したぞ……」
「あぁ、助かったよ」
フンッと鼻息を荒くしてニュートは帰っていった。
「またな……」
オレは正直に驚いた。ニュートからそんな言葉が出るとは思っていなかったのだ。
「いい仲間が出来たな」
隣で笑顔になっているのはソウだ。
「でもどうしてこのトーナメントに来たんだ? それも途中から……」
「うむ、以前にイクスっていう邪神を倒したんだが……、それで悪神達の権威が弱まりすぎたようでね。奴らが何かをしかけてくる、という情報があったんだ。それで駆けつけたんだが、トーナメントの開始には間に合わなくてね」
「なるほど……。助けた皆はどうするんだ?」
「あぁ、こんなに強い者たちだ。残らずアルティメットハンターズに加入してもらう!」
ソウは拳を高々と上げた。
「そっか。勧誘のために皆を死なないようにしていたって所か」
「あぁ、こんな馬鹿らしい戦いで死ぬことなんてないだろう?」
ソウはニカッと笑みを浮かべた。
「ふぅ、それじゃオレもそろそろ行くか……」
「ん? オレと一緒に来ないのか? お前の強さはもう……」
「会っておきたい人がいるんだ。その後に合流するよ」
オレにはどうしても会いたい人たちがいる。獣人の国へ行かねばならない。
「そうか……、友の帰還を待っている!」
オレはソウの言葉に胸を熱くしながら、この場を立ち去る。
オレの歩く先にはイヴリスとズール、ミリィが待っていた。
「もちろん、私はついていくわよ? 嫌だって言っても追いかけてあげるんだから!」
「むろん、我もだ。よもや置いていくまいな?」
「…………私を救ったのはアナタ。責任はとってもらう」
三人の言葉にフッと笑いがこみ上げる。
「あぁ、行こう! まだまだオレ達の知らない世界、冒険が待っている!」
完
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【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
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16話も17話も内容一緒ですね。
ご指摘ありがとうございます。
遅れてはしまいましたが、修正を終えております。
また、新しく19話と20話をアップさせていただきました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。