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番外編 翠のご両親に挨拶に行く日の話
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ピンポーンとインターホンが鳴って、すぐに「はーい、ちょっと待ってね」と優しい声が返ってくる。ドキドキは最高潮。心臓が飛び出てるんじゃないかってぐらい、ここ数年で一番緊張している。
「ただい、」
「えっ!?」
ガチャリと音を立ててドアが開いた瞬間、頭を下げた僕の隣に立っていた翠の体が後ろに吹っ飛んだ。僕に抱かれた玲の目もまん丸に見開かれていて、一体何が起きたんだとすぐには理解が追いつかない。一呼吸置いて「大丈夫?」と尻もちをついた翠に慌てて駆け寄れば、家の中から出てきた屈強な男の影が落ちる。
熊みたいな巨体にビビっていれば、緊迫感を切り裂く泣き声がその場に響き渡る。玲、大号泣。そりゃそうだ、目の前で父親が吹っ飛ばれたら、どんな子どもだってびっくりして泣いちゃうだろう。
「玲、大丈夫だから」
「ぱぱぁ」
短い手を必死に伸ばして翠を求めるから、その場に座ったままの翠に渡せば必死にぎゅっと抱きついている。ちゃんと親子の関係になれていることを実感して、そんな場合ではないのにちょっと涙腺が緩みそう。
すると、殴ったまま固まっている男の人を見上げた翠が意地悪に笑って声をかけた。
「玲はじーじのこと嫌いだってさ」
「っ、」
「もう、いつまで玄関先で話してるの。ごめんなさいね、陽さん。ほら、入って入って」
そうだろうとは思っていたが、翠とは似ても似つかない男の人が翠の父親だったらしい。雷に撃たれたようにショックを受けているお義父さんを、邪魔だと言わんばかりに横に押して現れた女の人は翠にそっくりだった。間違いない、翠の母親だ。そう確信する僕と玲を見て、お義母さんは優しく微笑みながら手招きした。そんな翠のご両親を前にガバッと勢いよく頭を下げる。
「あ、あの、春崎陽です。今まで挨拶に来られなくて、申し訳ございませんでした」
「陽さん、頭を上げて」
優しい声に導かれるように、恐る恐る顔を上げる。
「会いに来てくださって、すごく嬉しいわ。昨日からずっと楽しみにしていたの。早く中で話を聞かせてちょうだい」
「は、はいっ」
「もちろん玲くんもね」
「玲、ばーばだよ」
「ばーば……」
翠にあやされて泣き止んだ玲が、きゅるんとした瞳で小首を傾げる。我が息子ながら、なんてあざとさ。ずきゅんと胸を撃ち抜かれた様子のお義母さんは、頬がすっかり緩みきっている。
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