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ご当地アイドル、危ない男に一目惚れされる
私のファン一号
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一度バックヤードに引っ込んでからというもの、私は絶賛後悔をしていた。
せっかく私の事を応援してくれる人が初めて現れたっていうのに、私の対応はきっとよくなかった……。
私の身の回りにスーツを着た人なんて今まで居なかったのもあって、緊張しちゃった……。
それに東京から来たって言っていたのに最後は挨拶もできなかったし、自分はなんて最低な奴なんだ……こんなんじゃアイドル失格だよ……。
もし今度会った時のために私の何か自分のグッズでもいつか作ろうかな……。
そう思ってバックヤードをとぼとぼ歩いていると、私はある事を思い出した。
そうだ! ここには缶バッチが作れる機械があったんだった!
本当はこの道の駅のグッズを作ったり、売り場の「果物担当」とかのアピールのための缶バッチマシーンだけど貸してもらおうかな!
私はちょっとそれをお借りし、急いでお店のパソコンを使って私のいい感じの写真を印刷しそれを缶バッチにしてみることにした。
自分の顔が印刷された写真で缶バッチを作っている間は、なんとも言えない気持ちですっごく恥ずかしかったけど、いざ完成してみるとなかなかの出来栄えだ!
アイドルになろうと決めたときに練習した自分のサインを初めて書いて、私はそれをそっとエプロンのポケットに忍ばせる。
まだあのイケメンさん、幸村さんだっけ? まだ居るかなって思って勢いよくお店からでたけど、よく考えたら缶バッチ作るのにけっこうな時間がかかっちゃったからもう帰っちゃったかも……と、しょんぼりしながら外を歩いて居ると、お店の駐車場に車にもたれかかっている幸村さんの姿が!
「幸村さん‼」
私が急いで駆け寄ると、幸村さんはびっくりしたような顔をしていて、そんな顔もカッコいいなと思いながらも、いやいや彼と私はアイドルとファンなのだ! ここはプロとして接しなきゃ! と私は息を整え、冷静を装って幸村さんに話しかける。
「幸村さん! あの、あのこれ、私の缶バッチです! あげます!」
「え? でもさっきグッズは無いって言ってなかった……?」
「だからさっき作ってきました!」
「え……⁇ 作ったの? どうやって⁇」
「缶バッチ作れる機械で! あの、小学校の時とかバザーで缶バッチとか作ったりしませんでした? あれです!」
「いや僕あんま小学校行ってなかったから……でも、本当にいいの? 手作りってことでしょ?」
「もちろんです! 私の記念すべきファン一号の幸村さんにあげます! しかもこれは世界に一つだけのスペシャルな缶バッチです! せっかく東京からこんな田舎に来てくださったのに、何にもなくてごめんなさい……。でもいつかもっと立派なアイドルになったら絶対にもっと素敵なグッズ作ります! その時は買ってください! だからまたいつか私に会いに来てくださいね! 約束ですよ!」
私が照れながらそう言うと、幸村さんはポカンとした顔から、パァァ! と音が付きそうな感じで明るい顔になり、
「うん♡ 俺が永遠に君の最前管理してあげるからね?」
と、よく分からないことを口走っていた。
幸村さんってたぶん、私よりすっごく年上だし、大人だから私の知らない難しい言葉を使うのかなぁ?
あと、今まで『僕』って言ってたのに『俺』って言ってるのを聞いてちょっとドキッとしちゃう。
「あかりちゃん、今日は本当にありがとうね。俺、来てよかった。最後に握手してもらっていい?」
「よろこんで! 私なんかでよければ!」
「あかりちゃんだからいいんだよ♡ あかりちゃんとしかしたくないし。それに今日は俺が『カギ閉め』だね?」
「かぎしめ?」
「え? 握手会とかの最後のお客さんの事をそういうんじゃないの?」
「そうなんですね! 幸村さんは物知りですね! 東京の人だからですか?」
「……あかりちゃんは東京では活動はしないの?」
「う~ん……そりゃいつかは東京進出ってやつしたいですけど、私はあくまでご当地アイドルですから! しばらくはここで活動します! って言っても、東京の事務所とかからスカウトなんてされたら嬉しくて行っちゃうかもですけど!」
ふふっ! 今まで自分の夢とかを誰かに話すのは恥ずかしかったけど、幸村さんになら話せちゃう!
きっと幸村さんは東京の人だから私の夢なんか馬鹿にしないって思えるからかな?
だって東京って場所はきっと夢見る人がいっぱい居るキラキラなところなのだ!
「じゃあ今日はこれで! 幸村さんお気を付けてお帰りくださいね!」
「待って? これ俺から。受け取って?」
「ご当地のお菓子だ! あれ? 開いてる? 幸村さんも食べましたか? ここの美味しいですよね! 今日はいっぱいお買い物もありがとうございます!」
「こちらこそあかりちゃんに会えて本当によかった」
「ありがとうございましたー!」と私は元気に手を振り、また道の駅に戻る。
今日は本当に凄い一日だった!
テレビの力って凄いね!
その日の夜、音楽番組を見ながら、私もこうやっていつかは全国放送の歌番組にアイドルとして出てみたいなぁ~と思いながら今日を振り返る。
初めて私にファンができちゃった! 嬉しい! もっと頑張ろう!
そういえば幸村さんにお菓子貰ったんだった! それでも食べようかなと思って、私は箱の中みを見て固まる。
そこにはお菓子の箱いっぱいに札束が入っていたのだ……。
私は思わずそれを見て腰を抜かしたのだった。
そして、なんと、幸村さんはまた次の日も普通に道の駅に居たし、私がお金を返そうとすると今度は黒い何でも買えるという魔法のカードを差し出してきてとっても怖かった……。
シンプルに怖い。
この人は何者なの⁇
◇◇
「駆……。俺、アイドルのプロデューサーになろうかな」
「はぁ?」
「いや、スポンサーの方がいいかな? それかアイドル事務所の社長でもいいな」
「な、なんで?」
「あかりちゃん、スカウトが来たら東京に来るって言ってたし。だったら俺がスカウトすればよくない? 『アイドルって儲かりますよ。新しいシノギにどうですか?』って俺が組長に言えばどうせ好きにしろって言われるだろうし? 俺、あの子傍にずっと痛いし」
「……もう好きにしなよ……兄貴……俺を巻き込まないで……」
これは、幸村 静というヤクザがとあるご当地アイドルに一目惚れして、厄介オタクになるお話である。
せっかく私の事を応援してくれる人が初めて現れたっていうのに、私の対応はきっとよくなかった……。
私の身の回りにスーツを着た人なんて今まで居なかったのもあって、緊張しちゃった……。
それに東京から来たって言っていたのに最後は挨拶もできなかったし、自分はなんて最低な奴なんだ……こんなんじゃアイドル失格だよ……。
もし今度会った時のために私の何か自分のグッズでもいつか作ろうかな……。
そう思ってバックヤードをとぼとぼ歩いていると、私はある事を思い出した。
そうだ! ここには缶バッチが作れる機械があったんだった!
本当はこの道の駅のグッズを作ったり、売り場の「果物担当」とかのアピールのための缶バッチマシーンだけど貸してもらおうかな!
私はちょっとそれをお借りし、急いでお店のパソコンを使って私のいい感じの写真を印刷しそれを缶バッチにしてみることにした。
自分の顔が印刷された写真で缶バッチを作っている間は、なんとも言えない気持ちですっごく恥ずかしかったけど、いざ完成してみるとなかなかの出来栄えだ!
アイドルになろうと決めたときに練習した自分のサインを初めて書いて、私はそれをそっとエプロンのポケットに忍ばせる。
まだあのイケメンさん、幸村さんだっけ? まだ居るかなって思って勢いよくお店からでたけど、よく考えたら缶バッチ作るのにけっこうな時間がかかっちゃったからもう帰っちゃったかも……と、しょんぼりしながら外を歩いて居ると、お店の駐車場に車にもたれかかっている幸村さんの姿が!
「幸村さん‼」
私が急いで駆け寄ると、幸村さんはびっくりしたような顔をしていて、そんな顔もカッコいいなと思いながらも、いやいや彼と私はアイドルとファンなのだ! ここはプロとして接しなきゃ! と私は息を整え、冷静を装って幸村さんに話しかける。
「幸村さん! あの、あのこれ、私の缶バッチです! あげます!」
「え? でもさっきグッズは無いって言ってなかった……?」
「だからさっき作ってきました!」
「え……⁇ 作ったの? どうやって⁇」
「缶バッチ作れる機械で! あの、小学校の時とかバザーで缶バッチとか作ったりしませんでした? あれです!」
「いや僕あんま小学校行ってなかったから……でも、本当にいいの? 手作りってことでしょ?」
「もちろんです! 私の記念すべきファン一号の幸村さんにあげます! しかもこれは世界に一つだけのスペシャルな缶バッチです! せっかく東京からこんな田舎に来てくださったのに、何にもなくてごめんなさい……。でもいつかもっと立派なアイドルになったら絶対にもっと素敵なグッズ作ります! その時は買ってください! だからまたいつか私に会いに来てくださいね! 約束ですよ!」
私が照れながらそう言うと、幸村さんはポカンとした顔から、パァァ! と音が付きそうな感じで明るい顔になり、
「うん♡ 俺が永遠に君の最前管理してあげるからね?」
と、よく分からないことを口走っていた。
幸村さんってたぶん、私よりすっごく年上だし、大人だから私の知らない難しい言葉を使うのかなぁ?
あと、今まで『僕』って言ってたのに『俺』って言ってるのを聞いてちょっとドキッとしちゃう。
「あかりちゃん、今日は本当にありがとうね。俺、来てよかった。最後に握手してもらっていい?」
「よろこんで! 私なんかでよければ!」
「あかりちゃんだからいいんだよ♡ あかりちゃんとしかしたくないし。それに今日は俺が『カギ閉め』だね?」
「かぎしめ?」
「え? 握手会とかの最後のお客さんの事をそういうんじゃないの?」
「そうなんですね! 幸村さんは物知りですね! 東京の人だからですか?」
「……あかりちゃんは東京では活動はしないの?」
「う~ん……そりゃいつかは東京進出ってやつしたいですけど、私はあくまでご当地アイドルですから! しばらくはここで活動します! って言っても、東京の事務所とかからスカウトなんてされたら嬉しくて行っちゃうかもですけど!」
ふふっ! 今まで自分の夢とかを誰かに話すのは恥ずかしかったけど、幸村さんになら話せちゃう!
きっと幸村さんは東京の人だから私の夢なんか馬鹿にしないって思えるからかな?
だって東京って場所はきっと夢見る人がいっぱい居るキラキラなところなのだ!
「じゃあ今日はこれで! 幸村さんお気を付けてお帰りくださいね!」
「待って? これ俺から。受け取って?」
「ご当地のお菓子だ! あれ? 開いてる? 幸村さんも食べましたか? ここの美味しいですよね! 今日はいっぱいお買い物もありがとうございます!」
「こちらこそあかりちゃんに会えて本当によかった」
「ありがとうございましたー!」と私は元気に手を振り、また道の駅に戻る。
今日は本当に凄い一日だった!
テレビの力って凄いね!
その日の夜、音楽番組を見ながら、私もこうやっていつかは全国放送の歌番組にアイドルとして出てみたいなぁ~と思いながら今日を振り返る。
初めて私にファンができちゃった! 嬉しい! もっと頑張ろう!
そういえば幸村さんにお菓子貰ったんだった! それでも食べようかなと思って、私は箱の中みを見て固まる。
そこにはお菓子の箱いっぱいに札束が入っていたのだ……。
私は思わずそれを見て腰を抜かしたのだった。
そして、なんと、幸村さんはまた次の日も普通に道の駅に居たし、私がお金を返そうとすると今度は黒い何でも買えるという魔法のカードを差し出してきてとっても怖かった……。
シンプルに怖い。
この人は何者なの⁇
◇◇
「駆……。俺、アイドルのプロデューサーになろうかな」
「はぁ?」
「いや、スポンサーの方がいいかな? それかアイドル事務所の社長でもいいな」
「な、なんで?」
「あかりちゃん、スカウトが来たら東京に来るって言ってたし。だったら俺がスカウトすればよくない? 『アイドルって儲かりますよ。新しいシノギにどうですか?』って俺が組長に言えばどうせ好きにしろって言われるだろうし? 俺、あの子傍にずっと痛いし」
「……もう好きにしなよ……兄貴……俺を巻き込まないで……」
これは、幸村 静というヤクザがとあるご当地アイドルに一目惚れして、厄介オタクになるお話である。
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