落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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三章

新学期

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試験の問題は解けたという自信はあった。だけど、それでもクラス発表がされるまでの間は、まるで生きた心地がしなかった。

クラスが発表の日、みんなと確認しに行ったけれど、ただ紙で確認するよりも、横で僕以上に喜んでいるバルドや、学期の概要が書かれた紙と一緒に渡された成績表を見て、悔しそうにしているコンラットと、興味なさそうな顔をしているネア達を見ていた方が実感がわいた。

新学期初日に学院に行くと、まずは今学期についての説明などを受けた。

学年が変わった事によって、授業でやる科目が増えたりなどの変化があった。その他にも、クラスのメンバーが数人変わったりしたりした。だけど、僕にとっては厄介な人が増えただけのような気がした…。

「お兄様を紹介してよ!」

さっきから僕の席の隣に立って、同じ事を仕切りに頼み込んで来られたせいで、もう疲れてきてもう相手にしたくない…。

「何時まで続くんだ…」

「貴方にも、原因があるでしょう…」

疲れきった僕の変わりに、コンラットが冷たい視線をバルドへと投げる。

こんな事になったのは、クラスでの自己紹介が終わった後にまで時間が遡る。

クラスのメンバーが変わった事によって、今学期の説明が終わった後に、お互いの自己紹介を再度する事になった。だが、去年と違って担任がリータス先生だったため、冗談や笑いなどは一切なく、ただ淡々と完結に自己紹介が終わって行く。

その結果、予定よりも速めに終わってしまった事により、少し速めの休憩時間が与えられた。

先生もクラスから出て行ったため、思いかけず出来た休憩時間を、みんなと話しでもしながら過ごそうと思っていたら、僕に声を掛けて来る女の子がいた。

「貴方、前にあった事があるわよね?」

「誰…?」

外見は綺麗に着飾っているけれど、何となく嫌な感じがじてそっけない返事を返す。そんな僕の態度が気に入らなかったのか、女の子の眉がみるみるうちにつり上がって行く。

「誰じゃないわよ!!お兄様の卒業式の日に、私にぶつかっって来たじゃない!!」

女の子の一言で、誰だったのかを思い出した僕は、すぐに反論をその子に返した。

「あの時は、そっちが僕にぶつかって来たんでしょう!!」

「何よ!私が悪いって言うの!?一緒にいたお兄様とは、本当に大違いね!!」

「お兄様?」

その子が言った思いもよらない一言で、ふと我に返って疑問が頭に浮かぶ。あの日は確かに兄様の卒業式だったけれど、あの時は兄様とは一緒にいなかったはずだ?

「そうよ!か弱い私に手を差し伸べながら、優美に優しく微笑んで下さった素敵なお兄様…」

か弱いかは分からないけれど、顔を紅潮させながら潤んだ瞳で上を見上げる様子は、まるで夢見る乙女のようだった。

「あの後、すぐに帰る事になってしまって、お兄様の卒業式は残念ながら拝見する事は出来なかったけれど、あの方の弟と一緒のクラスになったのなら、これはもう運命よ!」

「何処が運命なの…」

運命じゃなくて、ただの成績順のクラス分けだと思う…。兄様呼びも気になるけれど、卒業式で兄様の顔を見ないで帰ったから、父様と兄様を盛大に勘違いしているようだった。

「なぁ?あいつ、俺達の存在忘れてないか?」

「その方がいい。関わっても碌な事はない」

「そう思うなら静かにしてて下さい。こっちに飛んで来たらどうするんですか」

傍観を決め込むように、小さく小声で話しているみんなの声を聞きながら現実逃避していたら、知らない間に彼女の中で何かが勝手に決まったようだ。

「貴方の事はあまり好きじゃないけれど、あの方の弟と言うのなら仲良くして上げてもいいわ」

上から目線で僕に得意げな表情を向けてくるその子に、さっきから盛大に勘違いしている事を僕は指摘した。

「あの時一緒にいたのは、兄様じゃなくて僕の父様だよ…」

「えー!?お兄様じゃないの!?」

僕の一言に、その子は目を大きく見開きながら驚いた後、不思議そうな顔をして言った。

「夫婦にしては、あまりにも歳が離れすぎてない?」

「母様の方が、父様よりも年下だよ…」

もし、母様にでも聞かれでもしたら、間違いなく怒られるよ…。

僕がその場面を想像して震えている横で、僕が訂正した言葉が聞こえていなかったのかのように話しが進んで行く。

「今の世の中、年上より若い子の方が良いと思うのよね」

もうどうしたら良いか分からない僕を気持ちを他所に、周りから聞こえて来る外野の声が煩い。

「そっちの方が、歳離れてないか?」

「頭に花が咲いてるんだろ」

「ああ、暖かくもなって来ましたからね」

「聞いてるだけじゃなくて、助けて欲しいんだけど…」

僕が救いを求めるように言ったら、バルドは視線をこちらに向けながら平然と言った。

「俺らの話し、聞くと思うか?」

「………」

僕達が会話をしている今も、1人で喋り続けている様子を見る限り、全くそう思えない。バルドの言葉に、僕は何も言い返せなかった…。

「最初は愛人の立場でも、私の方が若いから待っているだけでも正妻の座にはなれるわね」

僕達の声が聞こえていないように、僕も横から聞こえて来る不穏な言葉に耳を塞ぎたくなる。僕の前で言ってていいの?と言う疑問と共に、とにかく不快でしかない。

「それにしても、兄貴の方じゃなくて、そのまま父親の方に行くのは凄いな」

「バルド!!」

「へ?」

バルドが言った不用意な言葉をコンラットが止めるも、すでに時が遅かった。

「そうよ!お兄様もいるのよね!」

兄様がいる事を思い出した事で、父様じゃなくて兄様の方に矛先が向いた。その事によって、今度は兄様の事を紹介するように言うようになったのだ。

「お兄様の事を紹介してよ!絶対!私の事を気に入って下さるわ!」

「どっから来るんだよ…その自信…」

僕もいい加減に嫌気がさして来たので、声を上げようとしたら、彼女の後ろの方から声が聞こえて来た。

「貴方の行動は、あまりにも淑女としてはしたないのではなくて?」

その子が後ろを振り向く事で、声を掛けて来た令嬢の姿が僕にも見えた。

話した事はなかったけれど、一年間同じクラスだったため、彼女の事は見覚えがあった。

薄紫色の髪に金色の目をしており、今日は華やかな赤いドレスを身にまとっていた。

「貴方には関係ないでしょ!!関係ない人は引っ込んでいてちょうだい!!」

食って掛るように声を上げられても、彼女は怯んだりする様子もなく言いきった。

「関係なくありませんわ。学院でそんな真似をされたのでは、貴族の令嬢としての示しが付きませんし、下の者達にも誤解を与えかねなくて大変に迷惑ですわ。それとも、辺境では殿方に殿方を紹介して貰うのが常識だとでも言うのかしら?」

「そんなわけないでしょう!!」

「それならば、自信の行動がどれだけ恥じる行為か分かりますわよね?」

「うっ…」

自身で言った事もあり、彼女の言葉に反論の言葉が見つからないようで、悔しそうな顔をしながら睨んでいた。

「今日の所は、これで勘弁して上げるわ!」

その子は吐き捨てるように言った後、自分が座っていた席の方へと、逃げるように走って行った。

「ありがとうございます」

助けて貰った事に付いてお礼を言おうとしたら、見た目や話し方も合わさって、自然と口調が敬語になってしまった。

「礼には及びませんわ。淑女として、あまりにも見苦しかったので注意しただけです。同じ女性として、あれが一般的とは思わないで下さいね」

そう言って去って行く後ろ姿には、何だか兄様とは違った格好良さがあった。

「なんか、母さんを思い出した…」

バルドは複雑そうな顔で見送っているけれど、みんなに言いたい事が1つある。

「みんな、僕の事、見捨てたよね?」

僕から、素知らぬ顔で視線をそらして誤魔化そうとするみんなに、僕は冷たい目を向けるのだった。
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