落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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三章

書類 (べナルト視点)

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部屋で何時ものように書類仕事をしていると、ノックの音が聞こえ、来訪客が来た事を告げられた。

何時ならもう少し速い時期に依頼を持って来るため、こちらとしては既に準備を終わらせて来るのを待っていた。なので俺としては、ようやく来たかと言うという気持ちだった。

「書類を持って来た」

扉から入って来るなり要点だけを告げる様は、昔から変わらずに生意気なままだ。

学院時代の頃からコイツの事を知っているが、年々父親に似てきている気がする。まあ、こっちの方は、アレと違ってまだ人間味もあって可愛い方なんだが…。

それにしても、普段なら家老の執事が持ってくるのに、今年はどういうわけか倅の方が持って来た。例の1件のせいかと頭をよぎったが、去年の夏は普段と変わらなかった事から、おそらくは違うだろう。

それに、前までなら周辺の魔物討伐を選考に漏れた連中に任せていたが、そのせいで前のような問題が起こってしまったため、采配には気を配るように対策を変更し、それにしっかりと対応している。

「まずは、書類を確認させて頂く」

気になる点はあるが、まずは仕事を優先させるため、書類が入っている封を受け取る。まあ、開かずとも何の書類かは察しがついているのだが、何事も形式というのは大事だ。

「直ぐに返答を持って帰りたい」

封筒を渡すのと同時にそのような事を言ってきたが、既に書類の準備も終わっているため、後は書類にサインをして受理書を渡すだけで終わる。そう思って開けた封の中には、別の書類が入っていた。

「な、何だこれは!?」

封の中に入っていたのは、Sランク冒険者の貸し出し許可を求める書類だった。

Sランク冒険者など、どの国にも数名いるかどうかの人数しかいない。しかも、圧倒的な戦力を持っており、1人で一軍相手にも引けを取らないレベルの強さを持っている。そのため、Sランクの冒険者が戦争に参加するのを防ぐ目的をかねて、依頼などをする時は必ずギルドの通して許可を取る事が各国の間で決まっている。

ギルドは各国とも繋がっており、Sランク冒険者がどのような依頼をしているかを把握する事も出来る。だから、言い方は悪いが、Sランク冒険者の動向は各国からの監視対象になっていると言える。

まあ、目の前にいる奴みたいに、ギルドにも軍にも所属してない奴もいるが、そんな奴は滅多にいない。だからこそ、そんな人間の囲い込みに各国がしのぎを削っているのだが、こいつには関係ない話しだろうな…。

とにかく、そんな冒険者にここいらの魔物を根こそぎ狩られたのでは、他の冒険者達が干上がってしまう。何としてでも、これを取り下げて貰わなければ!

「野生のドラゴンなどの強敵が出たなら分かるが、ただ周辺のいるだけの魔物をSランク冒険者狩らさせるのは、他の冒険者のためにも許可出来ない」

俺は、冒険者の生活を守るために、例え脅されたとしても一歩も引かない覚悟で俺は言ったのだが、そんな決意は軽くいなされた。

「違う。魔物狩りではなく、護衛として連れて行きたい」

「ご、護衛…?」

魔物の方が恐れを成して逃げ出すようなレグリウス家の人間に、果たして護衛が必要な時などあるだろうか?それとも、他国からの要人でも極秘裏にでも来るのか?

「他国から、誰かやって来る予定でもあるのか…?」

「そんな予定はない。旅行中の護衛を頼みたい」

「いったい…何処まで行くんだ…?」

今回の旅行は、辺境の奥地にでも出かけるのだろうか?それならば納得できる戦力ではあるが、彼らが臆するような魔物が出る場所などこの国にはない。ま、まさか…

「ラクスまでだ」

過剰とも言える戦力に、最悪の事態まで想像してしまった。だが…

「そこのギルドマスターなら、既に信用できる者を置いている。わざわざSランクに護衛を依頼する意味などないと思うが?」

その事は既に報告として上げている。当然、コイツも知っているはずだ。それに、あの町でコイツ等に喧嘩を売る人間なんかもはやいない。

「それは私も知っている。依頼は、念のためだ」

念のためって…Sランクへの依頼料は、かなりの高額なんだかな…

「それに、今回は騎士団長が同行する」

「剣鬼が!?」

思いも寄らない人物の名に、悲鳴に似たような声が出る。

剣鬼は城に仕えているから冒険者登録をしていないが、Sランク冒険者と同等かそれ以上の実力を持っている。まだ常識人な方ではあるが、そんな人物を一緒に連れて行くなんて、過剰戦力にもほどがある!!

「お前等2人だけでも過剰なのに、そんな戦力集めて何しに行くんだよ!?あの街を戦場にでもする気か!?」

「ただの旅行だ。それに、私と父上は一緒には行かない」

コイツ等が行かないとしても、それでも過剰戦力である事は変わらない。だから、何としても断りたい。

「それで、許可するのか?」

「許可はしたいが…今は…Sランク冒険者は不在でな…」

好都合な事に、今は遠出の依頼をこなしているため、しばらく帰って来る予定はない。そのため、不在を理由に断ろうとしたが、こちらの手を読んでいたのか、既に奴の方で段取りは終わっていた。

「それは問題ない。こちらに帰って来るとの知らせを、既に本人から貰っている。だから、後はギルドからのサインだけだ」

「そんな連絡は受けてないぞ!」

依頼を達成すれば、ギルドに報告義務があるため、ギルドを通して連絡が入るはずだ。

「相手は、カレン様だ」

「ああ…」

火旋姫か…。それならば、こちらより速く連絡が来ているのにも納得出来る。だが、既にトラブルの予感しかない…。

ただでさえ断りたい案件だったのに、さらに断りたい理由が増えた。だが、王族の捺印が押されている申請書を、そんな理由で付き返す事も出来ない。そもそも、たかが旅行に行くためだけに、王族の許可を取ってる奴らなんざ、こいつ等のくらいしかいない…。俺は、奴の差し出す許可書にサインして、渡すしかなかった。

奴が部屋を出て行った後、入れ違いに書類担当の職員が部屋へと入って来た。

「書類を受け取りに来ました」

「その必要はない」

「どう言う事ですか?」

「今回は、依頼じゃなかっただけだ」

まあ、剣鬼やら火旋姫が居れば、魔物狩りする必要もないわな。

「それにしても、アイツは何故来たんだ?」

未だ不思議そうな顔をしている職員を傍らに、俺は疑問を口にする。

こんな子供のお遣いみたいな事を、わざわざするような奴ではなかったと思うんだが?

「そういえば、最初来た時に、今学期に行われる実習の計画書を見せてくれと言われましたよ?」

俺の疑問に答えるように言った者に、俺は少し眉を寄せながら確認のために聞き返す。

「計画書?それで、見せたのか?」

「いいえ、学院の許可なくお見せ出来ないご説明しましたら、ギルドに預けて私財から寄付金を置いて行かれました」

「寄付金?」

規則通り、見せてはいないようで安心した。しかし、身内がいる時は、より安全を高めるために寄付金を置いて行く貴族はよくいる。アレの父親は、あり得ないくらい置いていった。だが、赤の他人のためにするのは、絶対に無いとは言わないが、基本、他人に興味がないアレがするとは、とてもじゃないが思えない。

「あー!もう止めだ!止めだ!」
 
だんだん考えるのも馬鹿馬鹿しくなった俺は、とりあえず、これから起きる嵐の予感を知らせるため、ラクスのギルドマスターへと手紙を書く事にした。

後日、奴の所の執事が、やる意味が分からない魔物討伐の依頼書を持ってやって来た。まあ、こっちとしては、金になるから良いんだけどよ…
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