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四章
着いたけど…
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「彼奴等から聞いた場所は、ここら辺だと思うんだけどな?」
「人影とかなくなったんですけど…本当にこの辺りであっているんですよね…」
なかなか探している店が見つからなくて、彷徨うようにして歩くバルドの後ろ姿を、コンラットは不安そうな顔を浮かべながら見ていた。従魔を取り扱っている店らしいけど、僕も不安になるくらい誰も通らない。
学院を出て暫くの間は屋台などもあり、人の往来もあって賑わっていた。バルド達が言っていた路地も、人影は少なかったけれど、まだ往来もあった。だけど、そこから一本道を外れたら、途端に人影はなくなり、全く違う雰囲気になって、違う世界に来たようなきになる。だけど、不安な僕達と違って、バルドはこういった道に慣れているのか、慌てた様子はない。
「大丈夫だって!道は此処で合っているはずだし、この向こうが大通りだろうから」
耳を澄ませば、少しだけ大通りの賑わいの声も聞こえては来るから、バルドが言っているのは本当なんだとは思う。
「ネア。本当に、この辺りの治安は大丈夫なんですよね…?」
バルドの言葉だけでは不安なのか、この辺りの事を知っていそうなネアへと訊ねていた。
「いや、少し前に管理地区から外れたから、治安はもう保証できないぞ」
「今すぐ引き返しましょう!?」
何でもない事のように言い放った言葉に、コンラットは少し取り乱したように叫びながら、前を歩いていたバルドの腕を掴む。だけど、そんなコンラットの様子を見ても、バルドは笑うだけで、引き返す気はないようだった。
「だから大丈夫だって、コンラットは心配性だな」
「大丈夫じゃないです!それに、こんな路地裏の店に行かなくても、もっと他にも良いお店があるはずじゃないですか!?」
「無理だって、他の店だと、子供は返れって門前払いされるらしいんだよ。だけど、そこの店は子供だからって追い返したりもしないし、従魔を触らせてくれたりもするんだってよ!」
「お前等の名前出せば、何処の店に行っても、門前払いなんかさえないだろ?」
楽しげに言ったバルドだったけれど、ネアの言葉を聞くと嫌そうな顔を浮かべた。
「俺は嫌だぞ!そんな店に行くの!無駄に媚び諂われるのなんて、パティーだけで十分だ!」
「それは…僕も…嫌だな…」
バルドの言葉で、パーティとかで向けられる視線を思い出し、一緒になって渋い顔をしていると、まるで自分には関係ない事のような態度で言った。
「まあ、俺達はほぼ無視か、荷物持ちの付き人扱いされるだけだろうから、何も問題ないだろうけどな」
「はぁ!?問題あるだろ!お前等をそんな扱いする店なんかに、俺は絶対行かないからな!!」
「僕も!行かないよ!」
「例え話に、そんなに本気になるなよ…」
僕達が憤りを顕にしていると、ネアは一歩引いたような顔を浮かべており、コンラットはその隣で、素直に喜んで良いのか分からないような顔をしていた。
「私達の事は、そんなに気にしなくても良いんですよ」
「気にしない訳ないだろ!もしそんな奴がいたら、俺がやっつけてやるから、直ぐに言えよ!」
力強く言うバルドの横で、僕が頷いていたら、何とも微妙そうな顔をしながら視線を逸らしていた。
「気が向いたら、考えます…」
「考えないで言えよ!俺も何かあったら言うからよ!」
「そんな事をして貰うよりだったら、此処からもう帰りませんか?」
「だから、俺だけじゃないくて、今はネアも一緒なんだから大丈夫なんだって!」
「それはそれで、何だか納得出来ない自分がいるんですよね…」
仕切りに帰りたがるコンラットを説得するように、ネアの事を話題にするけど、少し不満そうな様子だった。剣術の授業では、一番成績が良いのはバルドだけど、その次に成績が良いのがネアだった。だから、真面目に授業を受けていないのに、どっちの成績が良い事に、コンラットは少し納得出来ないみたいだった。
「親父達からも色々護身術なたっているから、ネアと一緒なら街のゴロツキ程度になら勝てると思うぞ!」
「まあ、ゴロツキ1人程度なら、俺がいなくても大丈夫だろうな」
「だろ!ネアも強いから、何かあっても大丈夫だぞ!」
胸を張って言うバルドだったけれど、僕としては、何も起こらないで終わって欲しい。
「でも、ネアと手合わせしていると、たまに手を抜かれてるような気がするんだよな?」
「当たり前だろ。学院の授業で、わざわざ本気なんか出すか」
「出せよ!」
急に大声で騒ぐバルドに、ネアは何とも煩そうな視線を向ける。
「感覚のずれを治すのが面倒なんだよ。そんな事を言う前に、まずは店を探す方を優先しろよ。お前しか店の場所を知らないんだからな」
「うー…っ…ネア!後で話しがあるからな!」
「はいはい」
納得できず、少し怒りを顕にしながらも、バルドは再び前を向いて店を探し始めた。ネアは、そんな様子に軽口で答えながら、気にした様子は見せず、コンラットも渋々と言った様子で歩いていた。そんなみんなを見ながら、僕は隣を歩いていたネアに話し掛けた。
「ねぇ?ネアは、その店が何処にあるか知らないの?」
ネアの所にいるならば、此処でお店を無理に探さなくて良いかと思ったけれど、ネアは僕の問に、軽く首を横に振った。
「知らないな。自分達で持っているものを、わざわざ他所に借りに行ったりしない。それに、もし借りるとしても、信用と付き合いがある店から借りるからな」
「従魔がいるの?」
「商団で持っているだろうが、王都にはいないな。他所の街とかになら少しならいたはずだが、従魔は色々と管理が大変だから、あまり保持してはいないと思う」
「あっ!たぶん、この店だ!」
僕達が歩きながら話していたら、キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていたバルドが、何かに気付いたように声を上げて足を止めた。
「本当に…此処…?」
「あまり、入りたいと思う店ではありませんね…」
「そもそも、店としてやっているのか…?」
バルドが止まった場所は、こじんまりした門の前だった。手前にお店らしき建物があって、奥の方には小屋みたいな建物が見えるけど、所々がボロボロになっていて、僕には廃墟のようにも見える。
今までこういった店には入った事がなかったから、一歩踏み出すのに、どうしても二の足を踏んでしまう。だけど、バルドは僕達の様子を気にした様子もなく、意気揚々とした様子で言った。
「そんなの入ってみれば分かるだろ!あれ?開かない?」
店の門を開けて入ろうとしたバルドだったけれど、門に鍵が掛かっているのか、押したり引いたりしても、扉が開かないようだった。
「おかしいな?今日は、休みって聞いてないんだけどな?」
「やっぱり、店の場所を間違えたんじゃないですか?」
「いいや!外観が凄くボロいから、見たら直ぐに分かるって言ってたから、絶対に此処だ!」
確かに、他の建物よりも凄いけど、何と言うか、その子は、良くこのお店に入ろうと思ったなぁ…。僕がそんな事を思っていると、先に我に返ったコンラットが口を開いた。
「で、でも、鍵も掛かって入れませんし、もう一度確認してから、また後日来た方が良いんじゃないんですか?」
「うーん……せっかく来たけど…今日は仕方ないか…」
僕達が帰ろうかと話していたら、僕達に声を掛けて来る人がいた。
「君達、こんな所でどうしたんだ?学院帰りみたいだけど、私の店に何か用事か?」
制服を着た僕達に声を掛けて来たのは、30代前半くらいの少し細めの男性で、質素な服を着ていた。服装からは店をやっている人には見せないけど、口ぶりから察すると、このお店の人のようだった。
「あの!此処に来たら、従魔を見せて貰えるって友達に聞いたんだけど!?」
「ああ、あの子達に聞いたんだね。ごめんね。誰も来ないと思っていたから、少し買い物に行っていたんだ。今、鍵を開けるから待っていてね」
バルドの言葉に納得したように返事を返すと、荷物を脇に抱えながら横切ると、鍵を取り出した。
「はい。どうぞ」
鍵を開け終ると、中から門を開いて向かい入れてくれた。
「あっちにいるのか!?」
「うん、いるよ。でも、大きい声を出すと驚いてしまうから、あまり大きな声は出さないでね」
「おぅ!」
「あっ!ちょっと、バルド!?」
駆け出して行ったバルドを追い掛けるようにして入っていたコンラットの後を付いて行くように、僕もネアと共に門を潜ったら、今気付いたような驚いたような顔で僕を見ていた。
「銀髪…?まさか…ね…」
「?」
「いや、何でもないよ。私が勝手に少し勘違しただけだ。こんな寂れた場所に来るわけがないのに、馬鹿な事を考えてしまった。ほら、私に何かにかまっていると、友達に置いて行かれてしまうよ」
何かを言っている声と視線を感じて振り返れば、何処か慌てたように首を振りながら、1人で納得し初めた。意味も分からず、少し見上げるように見ていると、みんなが向かった奥の小屋の方を指さしながら、僕の背を軽く押した。
僕はその手に従うようにみんなの後に付いて行くと、小屋には、教科書と挿絵で見た事があるような生き物がいて、好きに触っているようだった。
「触っても良いの?」
「手前側小屋にいる子は触っても良いけれど、奥にいる子には近付がないようにね。魔道具で制御されていると言っても、少し攻撃敵で危ないから」
「うん」
僕は頷きながら返事を返して見渡すと、バルド達は僕より大きな従魔がいる方にいたから、ネアがいる方に行く事にした。
ネアは僕が来たのにも気付いていない様子で、1メートルくらいある大きな従魔に、顔を埋めるようにして撫でていた。
「何だか猫みたいだね」
「あぁ…」
「毛が長いんだね」
「もふもふ…」
僕の声が聞こえているのか分からない声で返事を返しながら、普段見ないような幸せそうな顔をしていた。
「あッ!待って!そっちのその子は!」
僕達がのんびりしていると、さっきまで一緒にいたお店の人の慌てたような声が聞こえた。何だろうと思って振り返ったら、一番奥にいた従魔の小屋の前で、仰向けに転がっているバルドの姿が目に入った。
「大丈夫かい!?急いで止めたんだけど、何処か怪我とかしてないかい!?」
興奮した従魔を宥めながら、心配と焦りなどが混ざったような視線を向けていた。
「大丈夫!ただの擦り傷くらいで、普段の怪我比べれば、怪我になんて入らないから!」
「ごめんね…この子は、人間を嫌っていて、人間に対して攻撃的なんだ…」
転んで付いた土を払いながら立ち上がるバルドに、申し訳なさそうな顔をして謝って来た。
「良いって!俺が勝手に近付いたのが悪いんだから!」
「そうですね。人の話しを聞いていなかった貴方が悪いです」
「これに懲りたら、もう少し反省しろ」
「お前等!少しは俺の事を養護してくれても良くないか!?」
僕と一緒に騒ぎをやって来たネアや、側にいたコンラッドに注意されているバルドを横目に、僕は横にいた店の人へと視線を向けた。
「どうして人間嫌いなの?」
「あの子は、密猟者に捕まった子なんだ」
「密猟者なんかいるの?」
「いるよ。むしろ、珍しい生き物が多いから、そういった密猟も多いんだよ。だけど、そういった子は人間嫌いになる傾向があって、引き取りてもあまりいないだ。それに、人間を襲うかもしれないから、外に離すわけにもいかないんだ。だから、殺傷処分されて、素材として売りに出されたりするんだけど、何だか可哀想で引き取っていたら、お金がなくなってね…」
「お人好し過ぎて商人には向いてないと思うが、気持ちは分かる。俺も、猫のためなら破産しても良い」
納得するようにして頷くネアに、店の人はどんな顔をして良いのか分からないような顔を浮かべていた。
「別に破産するつもりはないんだけどね…。君達みたいな子達は来てくれるけど、お客さんはあまり来ないから、修理費とかもないんだ…」
「こんな路地裏ではなく、もっと大通りの方に店を構えたら、人が来るんじゃないんですか?」
コンラッドの言葉に、目尻を下げながら言った。
「そもそも、場所代が払えないからね…」
何とかならないかと思った僕は、何とか出来そうな人の顔が浮かんだ。
「そうだ!僕!父様達に何とかならないか聞いてみる!」
「良いな!俺も親父が帰って来たら言ってみる!」
「それなら、大丈夫そうですね」
「むしろ、駄目になる方が難しいな」
「えっと、君達の父親は、どっかの商団の子か何か?」
一人だけ、よく分かってなさそうな顔で尋ねて来たから、僕達は、軽く首を振った。
「いや、それはネアだけで、俺の親父は騎士団長だ」
「僕の父様は、宰相をやってるよ」
僕達が答えると、1人だけ時間が止まったように動かなくなった。
「え…っ…?じょうだん…だよね…?」
「冗談じゃないぞ。こいつ等が言っている事は本当だ」
まるで信じたくない言葉を言われたような顔をしていたけど、ネアの言葉を聞いた途端、顔色を悪くしながら取り乱し始めた。
「えーーっ!!!?何でこんな場所に、そんな人達が来ているんだい!?ご、護衛は!?」
慌てたように店の外ヘと飛び出すと、慌てたように左右を見ては、通りの道を確認しだしていた。
「まあ、普通はそんな反応ですよね」
「本人達がそれを一番理解してないってのが、また何と言うかな」
2人が何か言っていたけれど、敢えて聞こえない振りをした。
「人影とかなくなったんですけど…本当にこの辺りであっているんですよね…」
なかなか探している店が見つからなくて、彷徨うようにして歩くバルドの後ろ姿を、コンラットは不安そうな顔を浮かべながら見ていた。従魔を取り扱っている店らしいけど、僕も不安になるくらい誰も通らない。
学院を出て暫くの間は屋台などもあり、人の往来もあって賑わっていた。バルド達が言っていた路地も、人影は少なかったけれど、まだ往来もあった。だけど、そこから一本道を外れたら、途端に人影はなくなり、全く違う雰囲気になって、違う世界に来たようなきになる。だけど、不安な僕達と違って、バルドはこういった道に慣れているのか、慌てた様子はない。
「大丈夫だって!道は此処で合っているはずだし、この向こうが大通りだろうから」
耳を澄ませば、少しだけ大通りの賑わいの声も聞こえては来るから、バルドが言っているのは本当なんだとは思う。
「ネア。本当に、この辺りの治安は大丈夫なんですよね…?」
バルドの言葉だけでは不安なのか、この辺りの事を知っていそうなネアへと訊ねていた。
「いや、少し前に管理地区から外れたから、治安はもう保証できないぞ」
「今すぐ引き返しましょう!?」
何でもない事のように言い放った言葉に、コンラットは少し取り乱したように叫びながら、前を歩いていたバルドの腕を掴む。だけど、そんなコンラットの様子を見ても、バルドは笑うだけで、引き返す気はないようだった。
「だから大丈夫だって、コンラットは心配性だな」
「大丈夫じゃないです!それに、こんな路地裏の店に行かなくても、もっと他にも良いお店があるはずじゃないですか!?」
「無理だって、他の店だと、子供は返れって門前払いされるらしいんだよ。だけど、そこの店は子供だからって追い返したりもしないし、従魔を触らせてくれたりもするんだってよ!」
「お前等の名前出せば、何処の店に行っても、門前払いなんかさえないだろ?」
楽しげに言ったバルドだったけれど、ネアの言葉を聞くと嫌そうな顔を浮かべた。
「俺は嫌だぞ!そんな店に行くの!無駄に媚び諂われるのなんて、パティーだけで十分だ!」
「それは…僕も…嫌だな…」
バルドの言葉で、パーティとかで向けられる視線を思い出し、一緒になって渋い顔をしていると、まるで自分には関係ない事のような態度で言った。
「まあ、俺達はほぼ無視か、荷物持ちの付き人扱いされるだけだろうから、何も問題ないだろうけどな」
「はぁ!?問題あるだろ!お前等をそんな扱いする店なんかに、俺は絶対行かないからな!!」
「僕も!行かないよ!」
「例え話に、そんなに本気になるなよ…」
僕達が憤りを顕にしていると、ネアは一歩引いたような顔を浮かべており、コンラットはその隣で、素直に喜んで良いのか分からないような顔をしていた。
「私達の事は、そんなに気にしなくても良いんですよ」
「気にしない訳ないだろ!もしそんな奴がいたら、俺がやっつけてやるから、直ぐに言えよ!」
力強く言うバルドの横で、僕が頷いていたら、何とも微妙そうな顔をしながら視線を逸らしていた。
「気が向いたら、考えます…」
「考えないで言えよ!俺も何かあったら言うからよ!」
「そんな事をして貰うよりだったら、此処からもう帰りませんか?」
「だから、俺だけじゃないくて、今はネアも一緒なんだから大丈夫なんだって!」
「それはそれで、何だか納得出来ない自分がいるんですよね…」
仕切りに帰りたがるコンラットを説得するように、ネアの事を話題にするけど、少し不満そうな様子だった。剣術の授業では、一番成績が良いのはバルドだけど、その次に成績が良いのがネアだった。だから、真面目に授業を受けていないのに、どっちの成績が良い事に、コンラットは少し納得出来ないみたいだった。
「親父達からも色々護身術なたっているから、ネアと一緒なら街のゴロツキ程度になら勝てると思うぞ!」
「まあ、ゴロツキ1人程度なら、俺がいなくても大丈夫だろうな」
「だろ!ネアも強いから、何かあっても大丈夫だぞ!」
胸を張って言うバルドだったけれど、僕としては、何も起こらないで終わって欲しい。
「でも、ネアと手合わせしていると、たまに手を抜かれてるような気がするんだよな?」
「当たり前だろ。学院の授業で、わざわざ本気なんか出すか」
「出せよ!」
急に大声で騒ぐバルドに、ネアは何とも煩そうな視線を向ける。
「感覚のずれを治すのが面倒なんだよ。そんな事を言う前に、まずは店を探す方を優先しろよ。お前しか店の場所を知らないんだからな」
「うー…っ…ネア!後で話しがあるからな!」
「はいはい」
納得できず、少し怒りを顕にしながらも、バルドは再び前を向いて店を探し始めた。ネアは、そんな様子に軽口で答えながら、気にした様子は見せず、コンラットも渋々と言った様子で歩いていた。そんなみんなを見ながら、僕は隣を歩いていたネアに話し掛けた。
「ねぇ?ネアは、その店が何処にあるか知らないの?」
ネアの所にいるならば、此処でお店を無理に探さなくて良いかと思ったけれど、ネアは僕の問に、軽く首を横に振った。
「知らないな。自分達で持っているものを、わざわざ他所に借りに行ったりしない。それに、もし借りるとしても、信用と付き合いがある店から借りるからな」
「従魔がいるの?」
「商団で持っているだろうが、王都にはいないな。他所の街とかになら少しならいたはずだが、従魔は色々と管理が大変だから、あまり保持してはいないと思う」
「あっ!たぶん、この店だ!」
僕達が歩きながら話していたら、キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていたバルドが、何かに気付いたように声を上げて足を止めた。
「本当に…此処…?」
「あまり、入りたいと思う店ではありませんね…」
「そもそも、店としてやっているのか…?」
バルドが止まった場所は、こじんまりした門の前だった。手前にお店らしき建物があって、奥の方には小屋みたいな建物が見えるけど、所々がボロボロになっていて、僕には廃墟のようにも見える。
今までこういった店には入った事がなかったから、一歩踏み出すのに、どうしても二の足を踏んでしまう。だけど、バルドは僕達の様子を気にした様子もなく、意気揚々とした様子で言った。
「そんなの入ってみれば分かるだろ!あれ?開かない?」
店の門を開けて入ろうとしたバルドだったけれど、門に鍵が掛かっているのか、押したり引いたりしても、扉が開かないようだった。
「おかしいな?今日は、休みって聞いてないんだけどな?」
「やっぱり、店の場所を間違えたんじゃないですか?」
「いいや!外観が凄くボロいから、見たら直ぐに分かるって言ってたから、絶対に此処だ!」
確かに、他の建物よりも凄いけど、何と言うか、その子は、良くこのお店に入ろうと思ったなぁ…。僕がそんな事を思っていると、先に我に返ったコンラットが口を開いた。
「で、でも、鍵も掛かって入れませんし、もう一度確認してから、また後日来た方が良いんじゃないんですか?」
「うーん……せっかく来たけど…今日は仕方ないか…」
僕達が帰ろうかと話していたら、僕達に声を掛けて来る人がいた。
「君達、こんな所でどうしたんだ?学院帰りみたいだけど、私の店に何か用事か?」
制服を着た僕達に声を掛けて来たのは、30代前半くらいの少し細めの男性で、質素な服を着ていた。服装からは店をやっている人には見せないけど、口ぶりから察すると、このお店の人のようだった。
「あの!此処に来たら、従魔を見せて貰えるって友達に聞いたんだけど!?」
「ああ、あの子達に聞いたんだね。ごめんね。誰も来ないと思っていたから、少し買い物に行っていたんだ。今、鍵を開けるから待っていてね」
バルドの言葉に納得したように返事を返すと、荷物を脇に抱えながら横切ると、鍵を取り出した。
「はい。どうぞ」
鍵を開け終ると、中から門を開いて向かい入れてくれた。
「あっちにいるのか!?」
「うん、いるよ。でも、大きい声を出すと驚いてしまうから、あまり大きな声は出さないでね」
「おぅ!」
「あっ!ちょっと、バルド!?」
駆け出して行ったバルドを追い掛けるようにして入っていたコンラットの後を付いて行くように、僕もネアと共に門を潜ったら、今気付いたような驚いたような顔で僕を見ていた。
「銀髪…?まさか…ね…」
「?」
「いや、何でもないよ。私が勝手に少し勘違しただけだ。こんな寂れた場所に来るわけがないのに、馬鹿な事を考えてしまった。ほら、私に何かにかまっていると、友達に置いて行かれてしまうよ」
何かを言っている声と視線を感じて振り返れば、何処か慌てたように首を振りながら、1人で納得し初めた。意味も分からず、少し見上げるように見ていると、みんなが向かった奥の小屋の方を指さしながら、僕の背を軽く押した。
僕はその手に従うようにみんなの後に付いて行くと、小屋には、教科書と挿絵で見た事があるような生き物がいて、好きに触っているようだった。
「触っても良いの?」
「手前側小屋にいる子は触っても良いけれど、奥にいる子には近付がないようにね。魔道具で制御されていると言っても、少し攻撃敵で危ないから」
「うん」
僕は頷きながら返事を返して見渡すと、バルド達は僕より大きな従魔がいる方にいたから、ネアがいる方に行く事にした。
ネアは僕が来たのにも気付いていない様子で、1メートルくらいある大きな従魔に、顔を埋めるようにして撫でていた。
「何だか猫みたいだね」
「あぁ…」
「毛が長いんだね」
「もふもふ…」
僕の声が聞こえているのか分からない声で返事を返しながら、普段見ないような幸せそうな顔をしていた。
「あッ!待って!そっちのその子は!」
僕達がのんびりしていると、さっきまで一緒にいたお店の人の慌てたような声が聞こえた。何だろうと思って振り返ったら、一番奥にいた従魔の小屋の前で、仰向けに転がっているバルドの姿が目に入った。
「大丈夫かい!?急いで止めたんだけど、何処か怪我とかしてないかい!?」
興奮した従魔を宥めながら、心配と焦りなどが混ざったような視線を向けていた。
「大丈夫!ただの擦り傷くらいで、普段の怪我比べれば、怪我になんて入らないから!」
「ごめんね…この子は、人間を嫌っていて、人間に対して攻撃的なんだ…」
転んで付いた土を払いながら立ち上がるバルドに、申し訳なさそうな顔をして謝って来た。
「良いって!俺が勝手に近付いたのが悪いんだから!」
「そうですね。人の話しを聞いていなかった貴方が悪いです」
「これに懲りたら、もう少し反省しろ」
「お前等!少しは俺の事を養護してくれても良くないか!?」
僕と一緒に騒ぎをやって来たネアや、側にいたコンラッドに注意されているバルドを横目に、僕は横にいた店の人へと視線を向けた。
「どうして人間嫌いなの?」
「あの子は、密猟者に捕まった子なんだ」
「密猟者なんかいるの?」
「いるよ。むしろ、珍しい生き物が多いから、そういった密猟も多いんだよ。だけど、そういった子は人間嫌いになる傾向があって、引き取りてもあまりいないだ。それに、人間を襲うかもしれないから、外に離すわけにもいかないんだ。だから、殺傷処分されて、素材として売りに出されたりするんだけど、何だか可哀想で引き取っていたら、お金がなくなってね…」
「お人好し過ぎて商人には向いてないと思うが、気持ちは分かる。俺も、猫のためなら破産しても良い」
納得するようにして頷くネアに、店の人はどんな顔をして良いのか分からないような顔を浮かべていた。
「別に破産するつもりはないんだけどね…。君達みたいな子達は来てくれるけど、お客さんはあまり来ないから、修理費とかもないんだ…」
「こんな路地裏ではなく、もっと大通りの方に店を構えたら、人が来るんじゃないんですか?」
コンラッドの言葉に、目尻を下げながら言った。
「そもそも、場所代が払えないからね…」
何とかならないかと思った僕は、何とか出来そうな人の顔が浮かんだ。
「そうだ!僕!父様達に何とかならないか聞いてみる!」
「良いな!俺も親父が帰って来たら言ってみる!」
「それなら、大丈夫そうですね」
「むしろ、駄目になる方が難しいな」
「えっと、君達の父親は、どっかの商団の子か何か?」
一人だけ、よく分かってなさそうな顔で尋ねて来たから、僕達は、軽く首を振った。
「いや、それはネアだけで、俺の親父は騎士団長だ」
「僕の父様は、宰相をやってるよ」
僕達が答えると、1人だけ時間が止まったように動かなくなった。
「え…っ…?じょうだん…だよね…?」
「冗談じゃないぞ。こいつ等が言っている事は本当だ」
まるで信じたくない言葉を言われたような顔をしていたけど、ネアの言葉を聞いた途端、顔色を悪くしながら取り乱し始めた。
「えーーっ!!!?何でこんな場所に、そんな人達が来ているんだい!?ご、護衛は!?」
慌てたように店の外ヘと飛び出すと、慌てたように左右を見ては、通りの道を確認しだしていた。
「まあ、普通はそんな反応ですよね」
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2人が何か言っていたけれど、敢えて聞こえない振りをした。
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ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
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