落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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四章

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「ねぇ?昨日話していた人が誰だったか、バルドは分かった?」

昨日、兄様に聞いても教えて貰えなかった僕は、バルドだったら知っているかなと思って聞いてみた。僕と違って学院内での知り合いも多いし、こういった話しも好きそうだから、話題を出したら直ぐに反応を返してくれると思っていたのに、僕の予想とは違っていた。

「あぁ…悪い…聞く暇なかった…」

覇気もなく、朝から何処か疲れたような雰囲気を醸し出して来るバルドを不思議に思った僕は、理由を訪ねてみた。

「昨日、何かあったの?」

「昨日帰ったら、母さんが新年祭で着るドレス選びをしてたんだよ…ドレスなんか、どれでも良いじゃんかなぁ…?」

ドレスの制作には時間が掛かるため、僕の母様も、今ぐらいからカタログなどを見ながら準備を始めていた。

「毎回、どれが良いか意見を聞かれるんだけどよ……どれも同じにしか見えないんだよ…。でも、それを言うとそれじゃ駄目だって小言を言われるし…」

そう言いながら突っ伏したバルドは、本当にうんざりしているようだった。僕の母様は、そういった事を父様に相談するから、僕はあまり聞かれた事はない。

「なんか、新年祭も面倒くさくなって来た…」

「何を言っているんですか。最初の頃は、貴方が一番パーティーを楽しみにしていたでしょう?」

ドレス選びに付き合わされたせいか、パーティに行く気もなくなったみたいだった。

「だってよ……パーティも毎回似たような感じで、何も事件とか起こらないから、いても退屈なんだもんよぉー…」

「城で開催される催しで、事件なんか起きたら大問題でしょう。それに、そんな事が起きれば、一番に責任を取らなきゃいけない方が誰だと思ってるんですか?」

「分かってるよ!だから、例えだよ!例え!」

苦言を呈するコンラットに、バルドはそんな事は分かっているとでも言うような、不貞腐れた顔をしていた。

「でも、前はご飯を食べるくらいの楽しみはあったけど、今は無理に城で食わなくても良いような気がするしさぁ…城の中とか探検したら駄目かなぁ…?」

「駄目に決まっているでしょう」

駄目もとで言っただろうけど、コンラッドにきっぱりと否定されて、さらに気落ちしているようだった。だけど、僕もバルドの気持ちはなんとなく分かるような気がする。それに、父様達もそうだけど、パーティーを好きな人が周りに誰もいないから、なおさら嫌な物に感じる。

「僕も、馬車の渋滞に巻き込まれるのはいや…」

「あぁ…俺も、じっとしてるの苦手だから嫌い…」

僕達2人でうんざりしたような顔をしていると、少し慌てた様子でコンラットが口を開いた。

「わ、私の家は無理ですけど、2人の家なら、優先的に城に入る事だって出来るんじゃないですか?」

「えっ?うーん…入れる事は入れるらしいけど、親父はそういうの嫌いだから使わないんだよなぁ…。兄さんが言うには、親父は警備状況が気になるから速めに行くけど、あまり速く行っても部下を信頼してないように周りに受け取られるから、あの時間に行くって行ってたしな」

ベルハルト様に合わせて速めに行っているのは知っていたけれど、そういった理由だとは知らなかった。僕の父様は、パーティーで挨拶回りくらいしかしている所は見た事があるけど、仕事をしている様子は見た事がなかった。

「親父も、無理に自分に合わせなくて良いって言うんだけどよ。母さんと兄さんは親父と一緒に行くって言うし、それなのに、俺と兄貴だけ遅れて行くってのもなぁ…リュカの方はどうなんだ?」

僕が考え事をしていると、バルドが僕の方へと話しを振って来た。

「僕の父様は、何も言ってなかったと思うよ」

みんなにそう言った後、僕は父様に、友達と一緒に参加するために、時間を合わせて行きたいとしか伝えていなかったと言うのを思い出した。

「母さんが言うには、他国の貴賓を招いてのパーティとかだと、城で出迎える必要も出て来るから、親父も朝から城に待機してたりするらしいけどな」

「へえー、それなら、僕の父様もかな?」

「ん?俺もよく知らないけど、多分そうなんじゃないか?貴賓が来るようなパーティーなんて、今まで出た事なんかないからな」

そう言われて、僕もそんなパーティーに出た事なかったなと思ったと思っていると、バルドがため息交じりに言った。

「でも、もう少しパーティが少なくても良いよなぁ…」

「そうか?俺としては、毎月あっても良いくらいだけどな」

それまで、黙って僕達の話しを聞いていたネアが、少し楽しげな顔を浮かべながらそう言った。僕達の気持ちとは裏腹に、ネアにとってはパーティは歓迎するものみたいだ。

「えーっ、年に数回でもかんべんなのに、そんなに行きたくねぇよ!そもそも、お前パーティーに参加しないじゃんか!」

ネアの言葉に反論するかのようにバルドが声を上げるけれど、ネアは何も分かってないなとでも言うような笑みを浮かべていた。

「俺は参加はしないが、パーティーで使う食材や備品の納品はしているぞ。だから、催し物がある時期は、一番儲かって良い」

「確かに、商人にとってはそうでしょうね…」

戸惑っている僕達を他所に、ネアはまるで金づるでも見るかのような目線を送って来る。そんなネアに、僕達はどんな反応したら良いか分からず、微妙な視線だけを返していると、そんな空気を変えるかのように、コンラットが口を開いた。

「そ、そういえば、あの方は今年、パーティーに参加されるのでしょうか?」

「あの方って?」

誰の事を言っているのか分からなかった僕は、首を傾げながらコンラットへと聞き返した。

「誰って、カレン様の事ですよ」

「何!?カレン様が、パーティーに参加なさるの!?」

いったい何処から聞いていたのか、アリアが急に僕達の会話に混ざって来ると、食い気味にコンラットに問いただしていた。

「い、いえ!ただ、来るのかなと話していただけです」

「何よ、紛らわしいわね」

僕達の会話に勝手に混ざって来て理不尽な文句を言ってくるアリアに、少しの不満を抱きつつ、僕はアリアに声を掛けた。

「アリアは、カレン様の事知ってるの?」

「当然よ!強くて格好いい大人の女性に憧れないわけがないわ!」

普段とは別の意味で目を輝かせながら、胸を張って言うアリアに少し戸惑うけれど、何時もと変わらず、こちらの様子を気にした素振りもないアリアは喋り続けていた。

「ほら、私の領地がある北って魔物が多いでしょ。だから、たまに私兵では手に負えない奴が出るのよ。まあ、そんな時は、ギルドに依頼して手伝って貰うんだけど、そんな時にカレン様が来たのよ!まだ実際に戦っている所は見ていないけれど、聞いた話じゃ剣も魔法も優れているらしいわ!なにより、国を通しているからか、Aランクと同等の依頼料で受けてくださるの!だから、出来るだけカレン様に指名依頼するように、お父様に頼んでいるの!だって、そうしたらカレン様ともお会いできるし、お金も安く済むでしょ!?」

「それ…憧れてる奴が言うセリフじゃねぇだろ…」

バルドは未だに苦手なのか、何処か一歩引いた様子でアリアの事を見ていた。

「金と憧れは違うわよ。それに、依頼料が同じなら、より高ランクにの方に依頼した方が確実で良いでしょ?」

相変わらず、何処か現実主義なアリアに微妙な笑みを返していると、何故か急に不機嫌な顔を浮かべ出した。

「だからこそ、最近出回っている噂話には、本当に腹が立つわ…」

そう言ったアリアの目は、完全に座っているように見えた。

「え、えっと…どんな噂なの…?」

今のアリアに声を掛けるのは少し怖かったけれど、僕がアリアに理由を訪ねると、直ぐにまくし立てるように喋り出した。

「ちょっと、聞いてよ!帝国内の作物が誰かに燃やされたそうなんだけど、それをやったのがカレン様だって言う噂を帝国が流しているらしいのよ!ルークスなんて、明らかに名指して抗議して来ているらしくって!!全く、あんな馬鹿な国と仲良くしようとしている人間の気が知れないわ!!そんな事をする犯人なんて、どうせ陰険で根暗な奴に決まってるんだから、カレン様とは全く違うわよ!」

「別に、陰険で根暗って決まったわけでもないだろ…」

「決まってるわよ!どうせ、顔も不細工よ!」

アリアの中では既に決定事項なようで、バルドが言った言葉は届かないようだった。

「でも、どうしてカレン様に容疑が掛かったの?」

一緒に旅行に行った時の様子を思い出しても、そんな事をするような人には見えなかったし、そんな嫌疑を掛けられるような人でもなさそうだった。

「カレン様は、火の魔法を得意としていて、敵なんかもあっという間に黒焦げにしてしまう火力を持っているのよ。だから、きっとそれだけを理由に犯人にしてるのよ!あのゴミ帝国!」

「それって、何時くらいの出来事なの?」

「えっ?確か、夏休みの期間中だったと思うわ」

怒りを顕にしていて、今にも呪いでも掛けてそうな様子のアリアに少し気になった事を訪ねれば、意表を突かれたような顔で答えた。そんなアリアから、僕はコンラッドの方へと視線を向けた。

「ねぇ、帝国に行くのって、どれくらいの時間が掛かるの?」

「そうですね。一ヶ月…くらいでしょうかね?」

「そんなに掛かるの?」

「この国からは直通の交易船は出でないからな。だから、1度隣のハンデルを経由して行く必要があるんだよ」

商会にいるせいか、ネアの方がコンラッドよりもそういった事に詳しそうだった。だけど、その話しを聞いた僕は、改めてアリアに向き直る。

「それなら、カレン様には絶対に無理だよ」

「どうして、そんなにはっきりと言えるのよ?」

僕達の中で、1人だけ事情が分かっていないアリアは、不思議そうな顔を浮かべていた。

「だって僕達、その時カレン様と一緒に旅行に行ってたから」

「はぁ!?何時!?何処で!?」

僕の言葉を聞くやいなや、凄い剣幕で詰め寄ってくるアリアに、一緒にラクスの街に行った事を話し終われば、わなわなと身体を震わせなら目を吊り上げていた。

「貴方達だけ旅行に行くなんてずるいわよ!!何で私を誘ってくれなかったのよ!?」

「俺達の旅行に、何でお前を誘うんだよ」

「カレン様がいるなら誘いなさいよ!気が利かないわね!こんな事なら私も実家なんか帰らずに、ラクスに行けば良かったわ!夏になると無駄に高くなる宿になんかに泊まりたくもないと思っていたけれど、カレン様に会えるならそれすらも我慢したのに!」

アリアは心底悔しそうな顔を浮かべていたけれど、ふと何かに気付いたように顔を上げた。

「アンタ達と一緒にいたって事は、カレン様はこの国に帰って来られているのよね?」

「たぶん?」

あの時、国を出ると言っていたから、まだこの国にいるかどうかも分からなかった僕は、曖昧な返事だけを返した。だけど、やっぱりその言葉も、アリアにはあまり届いていないようだった。

「こうしちゃいられないわ!カレン様とパーティーでお会いして大丈夫なように、今から準備しなくちゃ!!」

僕達の存在なんか忘れたように、こっちには見向きもしないで走り去って行った。そんな
アリアの背を見ながら、ネアがボソリと呟いた。

「本当に、嵐みたいな女だな…」

「俺、やっぱり苦手…」

僕も、心の中でその言葉に同意しつつ、みんなと一緒にその背を見送っていた。

後日、僕が朝訪ねた事をバルドがお兄さんに聞いてみたそうだけど、黙秘して教えて貰えなかったそうだ。
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