落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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四章

少しだけ

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「イグニス。暫くの間、私が呼ぶまでは絶対にそこから動くな」

急いで駆け付けた兄様の立つ瀬がなかったからか、押し潰してしまった事が知られてしまったイグニスは、少し無情とも言えるような命令を下されていた。だけど、下にある物を考えるとそこから動いて欲しくないという事もあって、その決定に異議を唱える者は僕を含めて誰もいない。僕が出来るのは、兄様の許しが速く出る事を祈るだけだ。

僕達は、色んな意味でそこから動けなくなったイグニスに、気絶したままの男の監視を任せながら、来た道を歩いて引き返すけれど、後ろからは許しを乞うような声が聞こえて来る。そのうえ、アクアも時おり後ろを振り返りながら付いてくるからか、何とも後ろ髪を引かれるような心地になる。

そんな中、さすがにティでさえも少し気まずそうな顔をしながら静かにしていたけれど、そんな沈黙とも言える空気に耐えきれなくなった僕は、思い切って兄様へと声を掛ける事にした。

「兄様は、父様と一緒にいたんだよね?父様は何処にいるの?」

「そうだな。まだ姿が見えないなら、掃除が終わっていないのかもしれない。私も手伝ってはいたんだが、思いの外片付ける物が多かったからな」

「それじゃあ、父様は今も片付けてるの?もし終わってなかったら、僕達も手伝った方が良い?」

少し間を置きながら答える兄様に、みんなでやった方が速く終わるかと思って問い掛ければ、兄様は軽く首を振って答える。

「知らせを受けた頃には、残りも少なくなっていたからな。その後、何もなければそろそろ終わっているはずだ。それに、父上の他にもう御一方、側にいるからな…」

その人物の事が嫌いなのか、その人の事になった途端、兄様は何処か不機嫌さを滲ませたような声で言う。だけど、誰も思い当たる人がいなくて、誰の事を言っているのか兄様に聞こうと思って口を開こうとすると、それよりも速くティが調子を取り戻したかのように騒ぎ出す。

「それにしても、今回も速く方が付くなんてさすが私ね!」

僕達が話している事によって、さっきまでの気まずさも薄れて来たのか、得意げな顔をしながら言う。けれど、助けてくれたのは兄様達であって、ティは何もしていないと思う。だけど、その事を僕達がティに口にする暇すらない。

「だけど、ルイ!今度からは、あんな見るからに怪しい奴がいたらさっさと報告しなさいよ!」

「何言ってるにゃ?ルイが見たのはあんにゃ奴じゃにゃいにゃ」

「はぁっ!?違うの!?」

「そうにゃ。あんにゃ怪しい奴がいたら、さすがにルイも忘れずにちゃんと言うにゃ」

「ルイ!何でそれを速く言わなかったニャ!」

「それは、誰からも聞かれにゃかったからにゃ」

「それじゃあ!まだ他にもあんな怪しい奴がいるかも知れないって事じゃない!?」

ティとウルからの問い掛けに、あっけらかんとした様子で答えるルイに、ティは驚き焦ったような声を上げる。だけど、それに答えたのはルイじゃなくて兄様だった。

「その件なら問題ない。あの男の他に残党がいたとしても、もう既に片付いているからな」

「そうなの?」

「あぁ、だから心配する必要はない」

「そうにゃ。大丈夫にゃ」

極めて冷静に言う兄様に僕が納得して掛かっていると、それに同意するようにルイが頷きながら言う。兄様が言う事なら素直に信用出来るのに、ルイに相槌を打たれると何故か急に心配になる。

「ちょっと!何でアンタはそんな直ぐに納得しようとしてるのよ!?それに、大丈夫って言うならルイが見たって言う奴は何処にいるのよ!?」

「あそこにいるにゃ」

怒りが籠もったような声を上げていたティに、拍子抜けるような声でルイが答える。そんなルイに言われてみんなが前へと視線を戻せば、いつの間にか教会があった場所まで戻って来ていて、そこには見た事がある人が立っていた。

「カレン様!?」

「何でこんな所にいるんですか!?」

「えっ!?アンタらも知ってるの!?」

此処にいるはずのない人の影に僕達は驚きの声を上げるけれど、兄様は既に知っていたのか、至って代わり映えしない様子で問い掛けていた。

「まだ終わっていなかったのですか?それに、此処に1人でいるという事は父上は中ですか?」

「掃除は此処で終わりよ。だから、私は誰も中に入れないための見張りで残ってるの」

淡々としたような会話をしている2人の様子に、最後に別れた時の険悪なムードを思い出した僕は、もう1人いると言った時の兄様が何で不機嫌そうだったのかが分かったような気がした。でも、ティがカレン様を知っているようだったのが気になる。

「ティはカレン様を知ってるの?」

「もちろん知ってるわ!」

「あの人は、前に怪しい奴が来た時に来てくれた方なのニャ」

「そうなんだ」

僕が知り合いだった理由を知って納得している間も、ティの矛先はルイへと完全に向いたままで、文句を口にしていた。

「でも、それならそうと最初から言いなさいよ!」

「だから、ルイは最初から大丈夫だって言ったにゃ」

「怪しい奴って言ってたでしょ!?」

「顔を隠しにゃがらずっとウロウロしてたら、知り合いでも十分怪しいにゃ」

「もう!ルイは人騒がせなのよ!!」

「……弟がすまないニャ」

人騒がせなルイに変わって、ウルが申し訳なさそうな声で謝罪していた。

「こっちこそ、余計な心配をさせて悪かったわ」

「それにしても、王族でもある方が、何で此処にいるんですか?」

「何?私が此処にいちゃいけないの?」

「いえ!そういうわけでは!!」

カレン様が少し不安そうな声を上げて答えれば、問い掛けた方のコンラットは酷く慌てたような声を上げる。すると、カレン様はその様子にクスッと笑うような顔を浮かべた。

「冗談よ。私は、中にいるアルに捕まったから此処にいるの」

若干不満そうに言うカレンに、僕はふっと思った事を問い掛ける。

「そういえば、何で掃除に見張りなんかいるの?」

「そうね。物を退かしたりする時に、下手に人がいたら危なかったりする時もあるでしょう?」

僕の問い掛けに、何故かカレン様は少し考えるような仕草をしてから答えていていた。僕は、その事に疑問を感じながらも、次の問を口にする。

「じゃあ、誰もって事は僕達も入っちゃ駄目なの?」

「別に良いわよ」

「……」

てっきり駄目と言われるかと思っていたのに、その質問にはあっさりとした口調で答えられ、その事に僕が拍子抜けしていると、兄様の無言で鋭く睨むような視線がカレン様へと飛ぶ。すると、少し焦った様子で言い訳地味た事を口にした。

「こき使われた分、少しはアルに意趣返ししたって良いでしょう!?」

「ふっ、その結果どうなろうとも、私は感知しませんよ…」

「や、やっぱり、さっきの言葉はなかった事にして!」

鼻で笑うように言う兄様の言葉に、カレン様は思い留まったかのようにさっきの言葉を取り消そうとするけれど、残念ながら此処には人の話しを聞かない人がいた。

「何言ってるの!?入るだけでアイツに仕返しが出来るのに、行く以外の選択肢なんてないでしょ!さぁ!行くわよー!!」

「あっ!!ちょっと!!」

兄様に気を取られてたうえ、ティが小さくて油断してたのもあったのか、カレン様の横を簡単にすり抜けて言った。だけど、カレン様の方も静止の声を掛けはしても、何故かティの行動を止めようとはしない。

掛け声よろしく教会の扉へと真っ直ぐに飛んでいったティだったけれど、扉との体格差があり過ぎるせいで扉を開ける事が出来ず、みんなが見つめる中そこで立ち往生していた。

「まぁ、そうなるわよね」

カレン様は何処か結果が分かりきっていたような声を上げる。だけど、扉から入れないなら割れた窓とかから入れば良いと僕は思うのに、ティはそれすらにも気付かないようだった。だけど、ティは真っ直ぐにしか進めないと言っていたルイの言葉を思い出し、何処か納得してしまっていた。

「ねぇ?ティを連れ戻さなくて良いの?」

「私達が連れ戻す前に、父上が扉を開ける方が速い」

「そうね。扉の前であれだけ煩かれば、誰でもこの騒ぎにも気付くでしょう」

扉の前で騒いでいる声に父様が気付いていないわけがないと、兄様達はティの行動を止める気はないようだった。だけど、もし父様が仕事をしているなら、それを邪魔したらいけないと思って、僕はティがいる場所へと駆け出す。

「僕、父様の邪魔にならないように、ちょっとティを止めてくる!」

「リュカ!」

兄様は僕の行動に驚いたような声を上げるも、無理に引き止めても良いのか迷うような素振りを見せていた。そんな兄様達を残して、墨はティの側へと駆け寄ると、僕が来た事がとちょうど良いとばかりにティが声を掛けて来た。

「この扉が重くて開かないから、私の変わりに開けて!」

「開けてって、兄様達が入っちゃ駄目って言てるよ」

「見張りでいた女は入って良いって、さっき言ってたじゃない!それに、アンタはアイツが中で何してるのかとか気にならないの!?」

「それは…ちょっとは気になるけど…」

こっちを見ている兄様やみんなの姿を横目で見ながら、僕が曖昧な返事を返していると、その隙を突くようにティは僕に言葉を投げて来る。

「それなら、除いて見てみたいでしょう!?それに、少しくらいならバレたりしないわよ!!」

「そうかな…」

「そうよ!」

「うーん…じゃあ、少しだけなら…」

ちょっとだけなら大丈夫かと、僕の中にある好奇心に負けて扉を少し開けて除くと、外見と同じように中も礼拝堂のようになっていた。それに、お祈りのする時のために置かれいるのか、規則正しく並んだ長椅子が左右に並んでおり、1番前にある祭壇の上にあるステンドガラスの窓からは、差し込んだ光が部屋の中を照らしていた。そして、その光が差し込まない1番前に椅子の席の前で、下を向いたようにして佇む父様の後ろ姿があった。
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