落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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四章

中では

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少しの隙間からでは父様が何をしているのか見えず、もう少しだけ中を覗き込もうと錆びついた扉を両手で押すと、静かな部屋の中にキィーという軋むような音を響かせながらゆっくりと扉が開いて行く。すると、その音に反応するかのように、父様が軽くこちらを振り向くような仕草を見せる。けれど、光の影になっている場所にいるからか、此処からでは父様の表情は良く見えない。

「誰だ?」

静かに発せられたその抑揚がない声は今まで聞いた事がない程冷え切っていて、僕はその声に、本当に父様なのか分からなくなる。後ろ姿だけは父様に見える人影に、何処か確認するような声で問い掛ける。

「…父様?」

「あぁ、リュカか…」

僕が声を上げると、まるで今気付いたような様子でその人影は僕の名前を呼んだ。さっきよりは声の調子が少しだけ和らいだけれど、何処か殺気立ったような何処か違った雰囲気に、再度僕は恐る恐る声を掛けた。

「…何してるの?」

「少しゴミ掃除の続きをしていたんだよ」

僕の質問に何でもないような様子で答えるけれど、何時もだったら僕の側までやって来てから父様は質問に答えてくれる。なのに、今日はそんな素振りもなく、その場から動く様子がない。それに、それ以上何も説明しようともしない父様に、ティは痺れを切らしたように声を張り上げる。

「ゴミ掃除って、此処は町からも遠いでしょう!?何でこんな所にいるのよ!?」

「お前こそ、外には見張りがいたはずだが、どうやって此処に入って来たんだ?」

「ちゃんと私の質問に答えなさいよ!それに、この森を管理している私が何処に行こうと、私の勝手でしょう!!」

はぐらかしてばかりでこちらの質問に答えようとしない父様に、ティは詰め寄るように距離を縮めながら近付いて行く。僕もそれに続くようにティと一緒に父様の方へと行こうとすると、そんな僕達に容赦のない声が飛ぶ。

「止まれ」

掛けられた鋭い声に、ティと共に驚きでその場でピタリと動きを止めた。すると、父様も思っていないような声が出たからなのか、何処か誤魔化すように急に優しげな声を上げた。

「急に荒げたような声を出してすまないね。少々こちらが汚れているうえ、色々と物が転がっていて危ないんだ。だから、それ以上はこちら側へと来ては行けないよ?」

父様は僕に謝りながらも、最後の方の言葉は何処か決定事項を告げているような響きがあった。父様らしくもない言動を取る姿に、どうすれば良いのか分からずにティと目配せしながら、戸惑ったように動きを止めていると、そんな僕達に後ろから声を掛けて来る人がいた。

「リュカ。あまり父上の邪魔をしてはいけない。父上の片付けが終わるまでは、私達は外に出ていた方が良い」

「う、うん…」

いつの間にか僕の背の後ろへとやって来ていた兄様が、僕の肩に手を置きながら外へと促すように声を掛けて来る。僕はその声に返事を返すけれど、やっぱり父様の事が気になってその場から動かずにいると、びっくりするような大きな声が頭上から落ちて来た。

「ちょっと、私はアイツに一泡吹かせるまで戻らないわよ!」

「……」

素直に言う事を聞かないティに、兄様が少し苛立ったように無言の圧力を掛けるけれど、今度はティが意地でも張ったようにその場から動こうとしなくなった。そんな様子のティに、こちらを少し振り向きながら父様が声を掛けた。

「お前はさっさと戻れ」

「イヤよ!」

「はぁ…私が後で何でも言う事を何でも一つだけ聞いてやる…」

「本当!?」

「あぁ…」

「そういう事なら仕方ないわね!今回は私が譲って上げるわ!!それじゃあ、さっさとこんな辛気臭い場所なんか出るわよ」

ため息混じりに言った父様の言葉に、ティはさっきまで渋っていたのが嘘のように上機嫌になって答えた。それどころか、まるで速くしろとでも言うように僕達を先導するように前を飛び始めた。そんな変わり身の速さに兄様は呆れた視線を投げつつも、ティの気が変わってしまうのを嫌がったのか、文句も言わずにティに続くように扉の方へと歩き出す。僕は兄様の後に続きながらも、1度父様の方を振り返ってからみんなが待つ外へと歩き出した。

さっきまでいた場所まで戻って来ると、僕が居た時と同じような場所でみんなが待っており、そんな中バルドは僕にこっそりと耳打ちでもするかのように側へと寄って来て、何とも楽しげな声を上げた。

「入っちゃ駄目だって言われてたのに入るなんて、リュカも案外大胆だよな!でも、俺は良いと思うぞ!」

「バルド…そこは褒めては駄目でしょう…」

何処か褒めるように言うバルドに、コンラットが苦言を呈するように言うけれど、バルドはキョトンとしたような顔を浮かべる。

「そうか?大人が理由なく駄目って言う場所にこそ、新しい発見と冒険があるって兄貴が言ってたぞ?」

「…そんな発見や冒険もいりませんよ」

「いや、意外と分かるような気がする。噛まれたり引っ掻かれようと、手を出さずにはいられない心理だな」

「ネア…貴方が言っているのは、また別の話しですよね…?」

触り過ぎてルイから鬱陶しがられたのか、待てを強いられている犬みたいにじっとしているネアに、疲れたような視線が向くけれど、ネアはルイだけを見ていてこちらを見ようともしない。

「リュカ。お願いですから、この2人にだけは似ないで下さいね…」

周りの暴走を止めるのが自分だけになるのを恐れたように、コンラットは何処か懇願でもするかのように僕に言って来た。そんな僕達が話している横で、カレン様は無言を貫いている兄様へと声を掛けていた。

「ねぇ…?中に入った時、怒ってなかったわよね…?私、後で何か言われたりしないわよね…?」

カレン様が何処か懇願でもするように兄様に声を掛けるが、兄様は何処か惚けたような冷たい声を上げる。

「さぁ、私はそんな事しりません。父上に直接聞いて下さい」

「さぁって!今回の件は、貴方も同罪みたいなものでしょう!!」

「父上から見張りを頼まれていたのは私ではありませんので、私に責任転換をするのは止めて下さい」

「本当に似なくて良い所だけ似てて可愛くない!」

「ありがとうごさいます」

「褒めてない!」

冷たい態度で切り捨てながら対峙する兄様と、何処となく必死さを感じさせるカレン様が言い争っていると、後ろの方から扉が開く音が聞こえ、冷たい風が吹き込んで来るような気配を感じた。

「何とも賑やかだな」

「…っ!!は、速かったわね!そっちはもう片付いたの!?」

「お前は何を言ってるんだ?片付いたからこそ、此処にいるんだろう」

「そ、そうね…」

さっきまでの会話が父様に聞かれている事でも恐れたように、近付いて来た父様に誤魔化すように言葉を発するけれど、全て玉砕するかのように打ち負かされていた。でも、その顔は何処かホッとしたような顔をしていた。

「……アルが怒ってないようで良かったわ」

カレン様がそっと横を向きながら、父様に気付かれないように小さく呟く。父様はそんな声に気付いていないのか、それとも気付かない振りをしているのか、普段と変わらないような様子で僕達の側へとやって来ると、少し屈みながら僕に話し掛けて来た。

「リュカ。先程は手が離せず聞けなかったが、森では何もなかったか?」

「うん。兄様が来てくれたから、何もなかったよ」

「そうか。他の者にも怪我はないようだな。先にオルフェが行ってくれて助かった」

「いえ、私は殆ど何もしていませんので…」

僕の言葉に、父様はみんなの様子を見渡しながら兄様へと声を掛けるが、兄様は父様からの言葉に少しきまり悪そうに答えていた。そんな兄様の様子に、父様は不思議そうな顔を浮かべていたけれど、兄様が話したくない事を無理に聞き出すつもりはないのか、視線をその後ろへとずらす。

「イグニスの姿が見えないようだが、何かあったのか?」

「あぁ…アイツはまたやらかしたので、お仕置きを兼ねてその場に置いて来ました。無駄に丈夫なので、数週間くらい放置しているつもりです」

兄様が少し意地悪そうな笑みを小さく浮かべながら言っている後ろで、アクアが少し慄いたように身動ぎした。兄様はその様子に気付いているかのように僅かに視線を動かすも、今言った事を撤回する気がない様子で軽く鼻で笑っていた。そんな兄様の様子に、父様は少し苦笑したような表情を浮かべる。

「悪気はないはずだ。だから、程々にな」

「…はい」

素直に父様に返事は返しているも、兄様にはまるで聞く気がなさそうな雰囲気だった。僕がこれからのイグニスを不憫に思っていると、飽きて来たのかティの騒がしい声が響く。

「そんな終わった話しよりも、さっき中で約束した事を忘れたりしないでよ!?」

「お前とは違うんだ。そんなのは当たり前だろう。相変わらずお前は煩いな」

「煩いって何よ!!?」

うんざりしている父様とティが喧嘩になりそうになると、それをなだめるようにカレン様が2人の間へと入って行った。

「まぁまぁ、別にそんな事で喧嘩しなくても良いんじゃない?それに、さっきだって煩くしてても気付かなかったんだから、大目に見て上げたら?」

「そうだな。先程は見張りを頼んだ者を信用していたため、少し油断していて気付かなかったよ」

「うっ…!」

カレン様が言った言葉に、父様が嫌味でも言うような様子で返す。仲裁でもして点数を稼ごうとでもしたカレン様だったけど、返ってぶ蛇にでもなったように父様の矛がカレン様の方へ向いて、父様から冷めた目を向けられていたカレン様は、たじろいだように一歩下がっていた。

「これも、一緒に此処に置いて行くか?」

「良いですね」

「良いですねって、あの女がいる場所に置いて行こうとしないでよ!私コレでも王族なんだけど!?」

冗談で言ったのか分からないような父様達の会話に、カレン様は悲痛な叫び声のような物を上げており、それは静かな森の中には良く響いた。
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