落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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五章

探しもの

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「あっ!ネア!」

夕方になり、帰るみんなを門まで送って行こうと歩いていると、何だか元気がなさそうなネアの姿が見えた。

「どうしたの?ルイ、見つからなかった?」

「いや…姿は見つけられたんだが、煩いのに邪魔された…」

僕が駆け寄って問い掛ければ、ネアは本当にがっかりした様子でそう言って肩を落とした。だけど、姿が見えないと思ったらティはルイの方に行っていたみたいだ。でも、隠れているルイを探し当てている時点で、ネアは凄いと思う。

ルイは、他人から甘やかされるのも好きみたいだけど、たまにそれが面倒にもなるみたいで、時おり姿を隠してしまう。前に一度、夕食になっても姿を現さないルイを心配して、使用人や騎士にも手伝って貰って探した事があったけれど、朝になったらひょっこりと現れた時は、少し脱力してしまった。それに、屋敷が広いだけにルイに一度隠れられると何処に行ったのか探せなくなってしまうため、そうなったら向こうから出て来て貰うまで待っているしかなく、本当にルイは気まぐれな性格をしていた。

だからこそ、ネアもあちこちを探したのか服の袖に土が付いていた。そんなネアに、観察するような視線を向けている人がいた。

「何だよ。急に人の顔をジロジロと見て」

「いやさ、こうして見ると、ネアって意外と表情や態度に出ていたんだなと思ってさ」

「はぁ?」

バルドの口から急に出て来た意味の分からない言葉に、ネアは唖然としたような顔をしながら驚きの声を上げる。

「ネアって他人に興味がなくて冷たいようだけど意外と優しい奴で、たまに本気で馬鹿なんじゃないかと思ったりもするけど、無駄に成績は良いんだよなぁ」

「お前は俺を褒めてたいのか、それとも貶したいのかどっちだ?」

頷きながら言うバルドの言葉が、いったい何を言いたいのか分からないといった感じで困惑の声を上げる。

「俺達はネアの味方だって事だ!」

「いや…本当にお前が何を言ってるのか分かんないんだが…?」

的外れとしか言えない回答に、ネアはバルドへと訝しげな目を向けながら問い掛けながら、説明でも求めるようにコンラットへと視線を向ける。だけど、視線を向けられた方のコンラットは軽く左右に首を振るだけだった。

「ネア、今日は何も聞かないで上げて下さい」

「はぁ…?」

ネア一人だけ何が起こっているのか分かっていないという珍しい状況で、何とか把握しようと僕の方にも視線を向けてくるけれど、たまには普段とは逆の事が起きていても良いかなと思い、僕は曖昧な笑みだけを返しておいた。

「ようやく帰ったかにゃ?」

ネア達の姿が見えなくなると、ルイが何処からともなくゆったりとした様子で姿を現した。

「いったい何処行ってたの?」

「ルイが何処に行こうが、それはルイの勝手にゃ」

僕の問い掛けても、後ろ足で耳を描きながらのらりくらりした態度を取るルイ。僕が聞いても答えてくれなさそうな様子に、その場にルイを置いて部屋へと戻ろうと屋敷の方へと歩きだせば、何故かルイに呼び止めれらた。

「待つにゃ」

「何?」

「ルイも一緒に連れて行くにゃ」

「……」

振り替えって立ち止まっていると、ルイは僕の足元までやって来てちょこんと座り、まるで抱っこしろとでも言うように軽く前足を上げた。僕はそんなルイを言われるがまま無言で抱っこすると、少し腕に来る重みを感じながら、屋敷の方へと歩き出す。すると、腕の中で楽な姿勢を取り終えたルイが、何の気なしに呟いた。

「アイツ使えるだけじゃにゃくて、ルイを見つけるにゃんてやる奴にゃ」

「アイツってネアの事?」

「そうにゃ。生け垣の下にある囲いの影にいたのに、まさか見つかるとは思わなかったにゃ」

感心したようにルイは言うけれど、僕はその言葉に驚いてしまった。

ルイの言う通り、庭の外観を損なわないように木の根元を隠すように囲いに覆われている場所もあるけれど、そういう場所は大抵枝が生い茂っていて、仲を余程覗き込まないと中は見えないと思う。だから、それを実際に探そうとしたら、ある程度場所を知っていても探すのは大変だ。ネアの服の袖に土が付いていたのを思い出しながら、僕は心の中で納得の声を上げていた。

そんなふうに僕がルイと話しながら屋敷の廊下を歩いていると、少しだけ疲れたような声を上げながら頭の上に乗ってくる気配があった。

「あぁー、結局見つからなかったわ」

「何か探してたの?」

慣れた様子で僕の頭の上で寛ぎながら、何かを探していたかのような口ぶりが気になって上目遣いで問い掛けると、頭の上から僕の顔を覗き込むようにティが顔を出した。

「私が知っている奴の魔力がした気がしたのよ。だから、その付近を探してみたのに、何故か何処にもいなかったのよね?最後にあってからだいぶ経つし、誰かと勘違いしたかしら?」

「最後って、どれくらい前なの?」

「えっ?どれくらいだったかしら?」

僕の言葉で考え出すティ。父様の時もそうだったけど、時間の感覚がズレているせいかティの昔がどれだけ前か分からない。それに、父様の時は覚えていた事を考えると、それ以上前の人って言う可能性もある。だけど、そんな年配の人で、魔法を使える人なんてこの屋敷にはいない。だから、たぶんティの勘違いだと思うけど、ティはそうは思っていないのか、僕の腕の中にいるルイへと問い掛ける。

「ルイは知らない?」

「女王の交友関係にゃんて、ルイが把握してると思うのにゃ?」

「全く思わないわね!」

ルイの言葉に、ティはもの凄く納得したような声を上げながら頷く。2人の話しを聞きながら歩いていると、向こう側から父様と母様が連れ立って歩いてくるのが見えた。

「あっ!エレナ!」

母様の姿が見えると、ティは途端に興味を失ったかのように母様の方へと駆け寄り、そっと肩の上に止まった。そんなティに、母様は何処か心配したような様子で声を掛けた。

「お茶会の途中で急に部屋を飛び出したから心配してたのよ?何かあったの?」

「さっきは理由を言わずにごめんなさい。でも、何か私の勘違いしてたみたい」

「そう、それなら良かったわ」

ティは母様とのお茶会を途中で飛び出していたようで、何でもないと言ったティの声に、母様は安堵したような声を上げていた。だけど、その隣にいる父様は些か不機嫌そうな顔をしていた。

「あまりエレナに心配掛けるな」

「アンタに言われる筋合いないわよ!」

途中で退席した事は悪いとは思っているようで、母様に対しては申し訳なさそうに頭を下げていたのに、嗜めるような事を言った父様には食って掛かった。そんなティに、母様は優しげに声を掛ける。

「ティ。アルもティを心配して言っただけだから、怒っているわけじゃないのよ?」

「いや…心ぱ…」

「エレナには悪いけど、アレが私の心配をするなんてないと思うわ!それよりも、そろそろ夕飯でしょ!?今日のデザートは何!?」

「まぁ、ティたら。でも、確かに時間になりそうだから、オルフェを誘ってみんなで行きましょうか?」

「えぇ!速く行きましょう!!」

デザートだけを食べようとしているティに、楽しそうな笑みを浮かべながらティの言う通りに食堂へと歩き出す母様。僕は、途中で言葉を遮られ、デザートに負けて取り残された父様へと声を掛けた。

「父様?」

「ん?何かな?」

「他の人と、魔力が同じだったりする事ってあるの?」

魔力の気配は一人一人違うと習った事があった。だから、魔力の気配には敏感そうなティが間違える程、同じ気配を持っていたりする人がいるのかと思って問い掛ければ、父様は母様達の背を追いながら少し考えるような仕草をし、静かに口を開いた。

「確かに魔力の波長は人それぞれではあるけれど、絶対にないとは言い切れないね。だけど、何でそんな事を聞くんだい?」

「あのね。さっき、ティが知ってる魔力がしたけど勘違いだったって言ってたから」

「そうなんだ。まぁ、この屋敷内出入り人間は限られているから、誰だったかは直ぐに特定出来るけれどね」

「ふ~ん」

誰だったかを知りたくて聞いたわけじゃなかったから、僕が父様の言葉に軽い相槌を打っていると、別れ道に差し掛かった所で、仕事部屋に戻ろうとしていたのか、書類を抱えた使用人を後ろに引き連れた兄様と鉢合わせた。

「皆で連れ立って、何かあったのですか?」

「いや、私が屋敷へと帰って部屋へと戻ると、エレナから急にお茶会を飛び出して行ったアレが心配だと言われてな。それで、共に屋敷の中を探していたのだが、リュカと一緒にいた所を見つけたと言うだけだ」

「そうでしたか」

アレで誰の事を言っているのか兄様は分かったようで、おしゃべりに夢中でまだこちらに気付いていない様子のティに納得した視線を向けていた。兄様が先ゆく2人を見ていると、父様が何処か心配そうな様子で声を掛けた。

「オルフェはまだ仕事か?終わらぬようなら、割り振る量を減らして私の方で受け持つが?」

「いえ、再来週までに済ます仕事を前倒しでしていただけですので、その必要はありません」

「そうか…それならば良いのだが…」

父様の問い掛けをきっぱりと否定する兄様に、父様は何処か残念そうで納得してなさそうな様子を見せる。だけど、兄様の自立心を尊重したいのか、それ以上は何も言う事もなかった。でも、兄様もそんな父様の気持ちに気付いていてはいるようで、少しきまり悪そうな顔を浮かべる。

「ですが、そろそろ食事の時間ですので、今日の所はもう止めて置こうと思います」

父様の思いを汲むように、兄様は後ろに控えている使用人に書類を各部署に届けるように素早く指示を出し始めた。でも、後ろへと視線を向けようとした際に、ルイを抱っこしている僕に兄様が少し羨ましそうな視線を向けたような気がしたから、僕は指示を出し終えた兄様へとお願い事を口にした。

「兄様、腕が疲れて来たから少し変わってくれない?」

「……分かった」

僕の言葉に少し躊躇いは見せたけれど、兄様は眠そうにだらけているルイを優しく持ち上げ、ルイが安定するようにそっと胸に抱き寄せる。すると、兄様はその温もりに癒やされているような顔をしながらも、少し眉を下げながら僕の方へと視線を向ける。

「リュカ。気持ちは有り難いたいが、私に対する気遣いはしなくて良い」

腕が痺れて来たのは本当だったんだけど、僕が困っていると言えば兄様も素直に成れるかなと思って言った言葉だった。だけど、そんな僕の考えなんて兄様にはお見通しみたいだった。

「だが、ありがとう」

「うん!」

それでも柔らかな表情で笑いながらお礼を口にしてくれた兄様に僕が元気な返事を返すと、そんな僕達の様子を父様も優しげな笑みを浮かべていた。そんな和やかな空気の中にいる僕達の耳に、それを壊すような大きな声が聞こえて来た。

「何で男だけで突っ立って何してるのよ!って!!そっちにいるなら、さっさとこっちにも教えなさいよね!!」

「はぁっ…相変わらず煩い奴だ…」

「ですが、行かないと言うわけには行かないですね…」

「そうだな…行くか…」

「…はい」

ようやく後ろの状況に気付いたようで、ティは憤ったような声を上げるけれど、煩い事が嫌いな父様達は揃って苦い顔を浮かべていた。だけど、ティと一緒にいる母様を待たせるのは本意ではないようで、少し疲れたような表情を浮かべる父様達と一緒に、ゆっくりと僕も歩き出した。
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