258 / 329
五章
新年祭の終わり
しおりを挟む
ようやく新年際が終わりに近付いて来た頃、何時もより少しだけ疲れていそうな父様が、珍しく1人で僕の所までやって来た。
「リュカ。そろそろ屋敷へと帰ろうと思うんだけど、お友達との時間はもう良いかな?」
官職に付いるという理由もあって、何時もは嫌そうにしながらも国賓が帰るまでは残っているのに、今日は先に帰ってしまっても良いんだろうかと思いながら、僕は父様へと聞き返した。
「僕は良いけど、もう帰っても良いの?それに、母様は?」
「レクスからも、今日は少し速く帰って良いと少し前に許可は貰っているよ。エレナは、巻き込まれるといけないから、今はラザリアの所で待って貰っているよ」
後ろで小さなバルドの呟きを聞きながら、父様が視線を向けた方向を一緒に見れば、そこにいた陛下と目線が合った。すると、僕達の視線の意味を直ぐに理解したのか、笑みを浮かべながら小さく頷くような仕草をしていた。どうやら、陛下とさっき話していた時にでも、許可を貰っていたようだ。
「兄様には?もう声掛けたの?」
「オルフェにはこれから声を掛けるつもりだよ。リュカも、少しだけ此処で待っていなさい」
僕にそう言うと、父様は兄様を探しに会場の中心部の方へと戻って行った。だけど、会場に戻って来た時にも見た兄様の状況を知っていただけに、父様もそれに巻き込まれるんじゃないかと不安になる。少し心配になった僕は、2人に別れの挨拶をすると、父様の姿を探しながら後を追い掛けた。
最初は、この広い会場で父様達を見つけられるかと少し不安だったけれど、兄様のいる所は思ったよりも分かりやすくて、2人は直ぐに見つかった。父様は兄様を取り囲んでいた令嬢達と何か話しているようで、父様と向かいあっている令嬢達は顔を赤らめていた。だけど、父様の方は笑みを浮かべながらも、何処か興味なさそうな冷めた様子だった。
その間、中心部にいた兄様はというと、父様が注意を引いているその隙に令嬢達の輪を抜け出すと、さり気なく父様の横に並び立つような立ち位置へと移動していた。だけど、それに気付いた令嬢達は直ぐに兄様にすり寄ろうと距離を縮めた。だけど、そんな令嬢達に父様が何かしら言葉を発すると、名残惜しそうな顔をしながら歩みを止めていた。そんな令嬢達に、父様は満足そうな笑みを浮かべると、その場を去るようにその令嬢達に背を向けると、父様は僕の姿に気付いたようで、振り返る様子もなく僕の方へと真っ直ぐに近付いて来た。
「何を話していたの?」
「少し、淑女としての立ち居振る舞いについて話していただけだよ」
僕の所まで来た父様に声を掛けると、父様は少しだけ意地悪そうな笑みで返した。そんな父様の影越しから彼女等の様子を見て見ると、呼び止めたくとも出来なかったような恨みがましいような目でこっちを見ていた。
「さぁ、新しい者達が集まって来ないうちに、皆で屋敷へと戻ろうか?」
そんな令嬢達に父様は気付かない振りをしているのか、動けずにいる僕に声を掛けると、促すようにしながらその場を後にしようとする。だから、僕もその声に従うように待たせていた母様の事を迎えにために、その場を静かに後にした。
父様に続くように母様がいる所に迎えに行くと、母様は何故か少しだけ不機嫌そうな顔をして待っていた。でも、僕や兄様の方にその視線が向くと、その表情が少しだけ緩む。そんな母様に父様が話し掛けると、途端に母様は攻めるような視線に戻っていて、意味が分からない父様は少したじろいだ様子を見せていた。だけど、それを横で見ているラザリア様は、扇で口元を隠しながら笑っているようだった。
母様は怒ってもしょうがないとでも言うように、父様を見ながら軽くため息を付くと、屋敷へと帰るために会場を後にしようと外の方へと歩き出す。そんな母様を父様と追いながら、外に待たせている馬車へと向かうけれど、何故かそこまで行く道すがら、兄様はまるで僕達から距離を取って付いて来ていた。
「父様?何で、兄様は僕達から離れて歩いてるの?」
「リュカ。そこは察して上げなさい」
「?」
母様の機嫌を伺いなら歩く父様はそう言うけれど、いったい何を察すれば良いのか分からず、僕は疑問を浮かべながら後ろを振り返りつつ付いて行く。だけど、外に待たせていた馬車までやって来て僕達がそれに乗っても、兄様はその前で立ち止まったまま馬車に乗って来ようとはしない。
「私達は気にしないから、オルフェも乗りなさい」
「兄様?乗らないの?」
何処か気遣うような声で言う父様の後に続いて僕も声を掛ければ、何だか兄様らしくもない何処か消え入りそうな小さな声で呟いた。
「今の私は…その…臭うだろう…」
躊躇いながら言ったその言葉は、兄様にはおよそ似つかわしくない言葉だった。何時もグリーン系の爽やかな匂いがしていて、夜に会った時だって石鹸の良い匂いしかしない。だからこそ、意味が分からずに兄様を見つめると、兄様は決まり悪そうな顔で一歩後ろへと下がった。
「でも、何の匂いもしないよ?」
「今は風で匂いが飛んでいるが、近場に寄れば嫌でも分かる。だから、私が馬車に乗れば迷惑になる」
僕は試しに馬車を降りて兄様に近付いてみると、兄様の服に色んな香水の匂いが染み付いていて、鼻が曲がりそうになりそうな凄い悪臭となっていた。おそらく、令嬢達にずっと囲まれたせいで付いた匂いなんだろうけど、どうしてもその不快な匂いに僕の鼻の上にもシワがよる。
「……歩いて帰る」
僕の表情を見た兄様は、馬車に背を向けて早々に一人で帰ろうとする。だけど、王城は同じ貴族街にあるとしても、此処から屋敷まではかなり距離がある。だから、もし此処から歩いて帰ろうとしたら、それなりの時間が掛かってしまうため、兄様にそんな事をさせられない僕は急いで兄様を止めた。
「兄様の服が臭いだけで、兄様は臭くないから大丈夫だよ!!」
「リュカ。それは何の慰めにもなっていないよ…」
僕の言葉でさらに落ち込む様子を見せる兄様に、父様は憐れにも似た視線を向けながら僕を軽く嗜める。そして、その視線を兄様へと向けた。
「オルフェ。それはオルフェが悪いわけではないのだから、そこまで私達に気を使う必要はない。それに、匂いなど窓を開ければ済む話しだ」
「そうよ。こんな寒空の下、オルフェ一人で帰らせるわけがないでしょう?」
「兄様!風邪引いちゃうよ!」
母様も心配そうに声を掛けるも、まだ何処か迷っている様子で兄様は乗るのを躊躇っていた。そんな兄様を何とか説得して馬車に乗せたけれど、馬車の扉が閉まると僕達から出来るだけ離れるためなのか、その扉に寄りかかるようにして座り、静かに馬車の窓を開けた。すると、その開け放たれた窓から外から冬の寒い空気が入って来たけれど、それは一瞬の事で、直ぐに暖かい風へと変わった。
「そこまで気を使う必要などないというのに…」
兄様の方を見ながら苦笑して言う父様の口振りからすると、兄様が何かしてくれたようだけど、僕には兄様が何をしたのかが全く分からない。だけど、窓に寄り掛かるようにして座る兄様は本当に疲れ切っている様子で、父様のそんな声も聞こえていないようだった。そんな様子の兄様を見て、父様の笑みにも同情めいたものが混じる。
「こればかりは、私もオルフェを応援する事しか出来ないな」
「父上は、どうされていたのですか?」
兄様が助言でも求めるように父様に問い掛ければ、父様は虚を突かれたような顔で、少し昔を思い返すような仕草をする。
「そうだね。あの頃の私にはしっかりとした防波堤がいたうえ、これ見よがしに近付いて来る者なんて、あれの半分くらいしかいなかったからな」
「やっぱり…半分はいたのね…?」
「いや!私は全く相手にした事などなかった!それは、ラザリアに聞いてくれればはっきりするはずだ!」
まるで無実でも訴えるかのように語る父様だったけど、そんな様子を見せる母様は、会場で見せたような冷ややかな視線を向けていた。
「えぇ、さっきの様子を見ても、アルが周囲から好意を寄せられていたのは想像出来ましたから。それに、今でも色々なご婦人方から手紙が届いているようですしね」
「何故…それを…」
「貴方が言うそのラザリア様が教えてくれましたわ」
「余計な事を…だが…何処からアイツに情報が漏れたんだ…?」
母様が不機嫌そうにしていた理由が分かったからか、父様は少し仄暗いような笑みを浮かべながらも、何処か訝しげな表情で何か考え込んでいるようだった。だけど、何の助言にもならなかった事に、兄様は静かに落ち込んでいるようだった。
「兄様はどんな人が好きなの?」
今までそういった話しを兄様から聞いた事がなかったから、少し興味本位で問掛けれてみれば、何処か虚ろな目に鳴りかけながら外を見ていた兄様が、僕の方を振り返りながら答えた。
「そうだな…。とりあえず、ベタベタ触って来ない人間。化粧や香水がキツくない人間。無駄に煩くない人間。けばけばしい服を着ない人間だな…」
まるで呪文のように一息で言った言葉は、好きな人間というよりも、嫌いな人間の事を言っているようだった。それに、兄様が今上げた人達は、今日のパーティで兄様を取り囲んでいた人達の事を言っているようだった。そんな兄様の返答を聞いた父様は、怒っていたのも忘れたように、何と声を掛けたら良いのか分からず、言葉を探して迷っているようだった。
「まあ…気長に探しなさい…」
だけど、結局は言葉を見つける事が出来ず、父様は無難な労いの言葉だけを兄様へと掛ける。だけど、それを聞いた兄様の目は、まるで死んだような暗い目へと変わって行く。まるで女性嫌いになりそうな勢いの兄様の表情に、父様は他人事ではないような同情めいた視線を向けていたけど、何の打開策がない父様にはどうする事も出来ない様子だった。
「リュカ。そろそろ屋敷へと帰ろうと思うんだけど、お友達との時間はもう良いかな?」
官職に付いるという理由もあって、何時もは嫌そうにしながらも国賓が帰るまでは残っているのに、今日は先に帰ってしまっても良いんだろうかと思いながら、僕は父様へと聞き返した。
「僕は良いけど、もう帰っても良いの?それに、母様は?」
「レクスからも、今日は少し速く帰って良いと少し前に許可は貰っているよ。エレナは、巻き込まれるといけないから、今はラザリアの所で待って貰っているよ」
後ろで小さなバルドの呟きを聞きながら、父様が視線を向けた方向を一緒に見れば、そこにいた陛下と目線が合った。すると、僕達の視線の意味を直ぐに理解したのか、笑みを浮かべながら小さく頷くような仕草をしていた。どうやら、陛下とさっき話していた時にでも、許可を貰っていたようだ。
「兄様には?もう声掛けたの?」
「オルフェにはこれから声を掛けるつもりだよ。リュカも、少しだけ此処で待っていなさい」
僕にそう言うと、父様は兄様を探しに会場の中心部の方へと戻って行った。だけど、会場に戻って来た時にも見た兄様の状況を知っていただけに、父様もそれに巻き込まれるんじゃないかと不安になる。少し心配になった僕は、2人に別れの挨拶をすると、父様の姿を探しながら後を追い掛けた。
最初は、この広い会場で父様達を見つけられるかと少し不安だったけれど、兄様のいる所は思ったよりも分かりやすくて、2人は直ぐに見つかった。父様は兄様を取り囲んでいた令嬢達と何か話しているようで、父様と向かいあっている令嬢達は顔を赤らめていた。だけど、父様の方は笑みを浮かべながらも、何処か興味なさそうな冷めた様子だった。
その間、中心部にいた兄様はというと、父様が注意を引いているその隙に令嬢達の輪を抜け出すと、さり気なく父様の横に並び立つような立ち位置へと移動していた。だけど、それに気付いた令嬢達は直ぐに兄様にすり寄ろうと距離を縮めた。だけど、そんな令嬢達に父様が何かしら言葉を発すると、名残惜しそうな顔をしながら歩みを止めていた。そんな令嬢達に、父様は満足そうな笑みを浮かべると、その場を去るようにその令嬢達に背を向けると、父様は僕の姿に気付いたようで、振り返る様子もなく僕の方へと真っ直ぐに近付いて来た。
「何を話していたの?」
「少し、淑女としての立ち居振る舞いについて話していただけだよ」
僕の所まで来た父様に声を掛けると、父様は少しだけ意地悪そうな笑みで返した。そんな父様の影越しから彼女等の様子を見て見ると、呼び止めたくとも出来なかったような恨みがましいような目でこっちを見ていた。
「さぁ、新しい者達が集まって来ないうちに、皆で屋敷へと戻ろうか?」
そんな令嬢達に父様は気付かない振りをしているのか、動けずにいる僕に声を掛けると、促すようにしながらその場を後にしようとする。だから、僕もその声に従うように待たせていた母様の事を迎えにために、その場を静かに後にした。
父様に続くように母様がいる所に迎えに行くと、母様は何故か少しだけ不機嫌そうな顔をして待っていた。でも、僕や兄様の方にその視線が向くと、その表情が少しだけ緩む。そんな母様に父様が話し掛けると、途端に母様は攻めるような視線に戻っていて、意味が分からない父様は少したじろいだ様子を見せていた。だけど、それを横で見ているラザリア様は、扇で口元を隠しながら笑っているようだった。
母様は怒ってもしょうがないとでも言うように、父様を見ながら軽くため息を付くと、屋敷へと帰るために会場を後にしようと外の方へと歩き出す。そんな母様を父様と追いながら、外に待たせている馬車へと向かうけれど、何故かそこまで行く道すがら、兄様はまるで僕達から距離を取って付いて来ていた。
「父様?何で、兄様は僕達から離れて歩いてるの?」
「リュカ。そこは察して上げなさい」
「?」
母様の機嫌を伺いなら歩く父様はそう言うけれど、いったい何を察すれば良いのか分からず、僕は疑問を浮かべながら後ろを振り返りつつ付いて行く。だけど、外に待たせていた馬車までやって来て僕達がそれに乗っても、兄様はその前で立ち止まったまま馬車に乗って来ようとはしない。
「私達は気にしないから、オルフェも乗りなさい」
「兄様?乗らないの?」
何処か気遣うような声で言う父様の後に続いて僕も声を掛ければ、何だか兄様らしくもない何処か消え入りそうな小さな声で呟いた。
「今の私は…その…臭うだろう…」
躊躇いながら言ったその言葉は、兄様にはおよそ似つかわしくない言葉だった。何時もグリーン系の爽やかな匂いがしていて、夜に会った時だって石鹸の良い匂いしかしない。だからこそ、意味が分からずに兄様を見つめると、兄様は決まり悪そうな顔で一歩後ろへと下がった。
「でも、何の匂いもしないよ?」
「今は風で匂いが飛んでいるが、近場に寄れば嫌でも分かる。だから、私が馬車に乗れば迷惑になる」
僕は試しに馬車を降りて兄様に近付いてみると、兄様の服に色んな香水の匂いが染み付いていて、鼻が曲がりそうになりそうな凄い悪臭となっていた。おそらく、令嬢達にずっと囲まれたせいで付いた匂いなんだろうけど、どうしてもその不快な匂いに僕の鼻の上にもシワがよる。
「……歩いて帰る」
僕の表情を見た兄様は、馬車に背を向けて早々に一人で帰ろうとする。だけど、王城は同じ貴族街にあるとしても、此処から屋敷まではかなり距離がある。だから、もし此処から歩いて帰ろうとしたら、それなりの時間が掛かってしまうため、兄様にそんな事をさせられない僕は急いで兄様を止めた。
「兄様の服が臭いだけで、兄様は臭くないから大丈夫だよ!!」
「リュカ。それは何の慰めにもなっていないよ…」
僕の言葉でさらに落ち込む様子を見せる兄様に、父様は憐れにも似た視線を向けながら僕を軽く嗜める。そして、その視線を兄様へと向けた。
「オルフェ。それはオルフェが悪いわけではないのだから、そこまで私達に気を使う必要はない。それに、匂いなど窓を開ければ済む話しだ」
「そうよ。こんな寒空の下、オルフェ一人で帰らせるわけがないでしょう?」
「兄様!風邪引いちゃうよ!」
母様も心配そうに声を掛けるも、まだ何処か迷っている様子で兄様は乗るのを躊躇っていた。そんな兄様を何とか説得して馬車に乗せたけれど、馬車の扉が閉まると僕達から出来るだけ離れるためなのか、その扉に寄りかかるようにして座り、静かに馬車の窓を開けた。すると、その開け放たれた窓から外から冬の寒い空気が入って来たけれど、それは一瞬の事で、直ぐに暖かい風へと変わった。
「そこまで気を使う必要などないというのに…」
兄様の方を見ながら苦笑して言う父様の口振りからすると、兄様が何かしてくれたようだけど、僕には兄様が何をしたのかが全く分からない。だけど、窓に寄り掛かるようにして座る兄様は本当に疲れ切っている様子で、父様のそんな声も聞こえていないようだった。そんな様子の兄様を見て、父様の笑みにも同情めいたものが混じる。
「こればかりは、私もオルフェを応援する事しか出来ないな」
「父上は、どうされていたのですか?」
兄様が助言でも求めるように父様に問い掛ければ、父様は虚を突かれたような顔で、少し昔を思い返すような仕草をする。
「そうだね。あの頃の私にはしっかりとした防波堤がいたうえ、これ見よがしに近付いて来る者なんて、あれの半分くらいしかいなかったからな」
「やっぱり…半分はいたのね…?」
「いや!私は全く相手にした事などなかった!それは、ラザリアに聞いてくれればはっきりするはずだ!」
まるで無実でも訴えるかのように語る父様だったけど、そんな様子を見せる母様は、会場で見せたような冷ややかな視線を向けていた。
「えぇ、さっきの様子を見ても、アルが周囲から好意を寄せられていたのは想像出来ましたから。それに、今でも色々なご婦人方から手紙が届いているようですしね」
「何故…それを…」
「貴方が言うそのラザリア様が教えてくれましたわ」
「余計な事を…だが…何処からアイツに情報が漏れたんだ…?」
母様が不機嫌そうにしていた理由が分かったからか、父様は少し仄暗いような笑みを浮かべながらも、何処か訝しげな表情で何か考え込んでいるようだった。だけど、何の助言にもならなかった事に、兄様は静かに落ち込んでいるようだった。
「兄様はどんな人が好きなの?」
今までそういった話しを兄様から聞いた事がなかったから、少し興味本位で問掛けれてみれば、何処か虚ろな目に鳴りかけながら外を見ていた兄様が、僕の方を振り返りながら答えた。
「そうだな…。とりあえず、ベタベタ触って来ない人間。化粧や香水がキツくない人間。無駄に煩くない人間。けばけばしい服を着ない人間だな…」
まるで呪文のように一息で言った言葉は、好きな人間というよりも、嫌いな人間の事を言っているようだった。それに、兄様が今上げた人達は、今日のパーティで兄様を取り囲んでいた人達の事を言っているようだった。そんな兄様の返答を聞いた父様は、怒っていたのも忘れたように、何と声を掛けたら良いのか分からず、言葉を探して迷っているようだった。
「まあ…気長に探しなさい…」
だけど、結局は言葉を見つける事が出来ず、父様は無難な労いの言葉だけを兄様へと掛ける。だけど、それを聞いた兄様の目は、まるで死んだような暗い目へと変わって行く。まるで女性嫌いになりそうな勢いの兄様の表情に、父様は他人事ではないような同情めいた視線を向けていたけど、何の打開策がない父様にはどうする事も出来ない様子だった。
0
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる