落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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五章

次から次に

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ティから魔法で縄を切って貰ってようやく自由になれたけど、ずっと同じ姿勢で横になっていたからか身体が痛い。そんな硬くなった身体をほぐすように動かしていると、こっちを見ている視線を感じてそっちへと視線を向ければ、こちらの様子を静かに観察しているロウさんがいた。

「止めなくて良かったの?」

僕が言う言葉ではないけれど、僕の縄が切れて自由になっても、ロウさんがあまりにも無反応な対応だったため、それで良いのかなと思って声を掛ければ、諦めきったような声が返ってきた。

「止めようとした所で無意味そうだからな。その小さいのには勝てたとしても、あっちには勝てそうにない」

「私には勝てそうってどういう意味よ!?」

「何だ。小さい人の子なのに、良く分かってるじゃないか」

「ちょっと!アンタも肯定してんじゃないわよ!!」

茶色に芝桜の柄が入った着物を着ている人がロウさんの事を軽快に褒めれば、ティは自分を無視しするなというように抗議の声を上げる。だけど、急に現れた2人組と口論しながらも、その姿はどこか親しげに見える。そして、褒められた方のロウさんは大して嬉しそうではなく、自分から矛先がずれたのならそれで良いという感じだった。

僕にとってはティの知り合いらしい不思議な人達としか感じなかったけれど、相手の強さが分かる人にはとっては違う印象なようだった。だけど、見ただけで相手の力量が分かるなんて兄様みたいだなと頭を過ぎれば、途端に町に残っている兄様に思いを馳せる。もしかしたら、今頃は宿からいなくなっている僕を心配して、町の中を探し回っているんじゃないかと想像していると、何も喋らなくなってしまったこちらの状況の説明でも求めるかのように、未だに不満を口にしていたティへと声を掛けた。

「それで、これはどういう状況だったんだ?人に狙われ易いお前が身軽だと言うのに、同じ人の子が捕まっているとは?それに、片方だけ縛られているというのは何とも奇妙だ」

同じ人同士で何を争っているのか理解出来ないとでもいうような言い方に、やっぱり人ではなかったのかと認識を改めていると、ティはまともに相手にされないていない事を不満に感じたようで、どこか投げやりぎみに答えていた。

「コイツがヘマをして誘拐されたから、私がわざわざ助けて上げようとしてた所よ。そんで、そっちはその仲間」

ティがはっきりと明言するも、まだこの状況に多少の疑問は残っているようだった。でも、大人の対応でもするかのように、その疑問はあえて口には出さず、ティを気に掛けるように声を掛けていた。

「そうなのか?では、俺達の助けなどはいるか?」

「いらないわ!」

せっかく僕達に救いの手を差し伸べようとしたくれたのに、ティはその手を叩き落とす勢いで否定の言葉を口にする。

堂々と言い切ったティには悪いと思うけど、町までの道が分からないうえに、僕にはそこまで歩いて行けるだけの体力もないから、僕達だけで町に戻るのはとてもじゃないけど無理そうだ。ロウさんが手を貸してくれない以上は、誰かに町まで送って行ってもらうしかないから、助けて貰えるなら助けてもらいたいと思って、僕は彼等と顔見知りであるティをまず説得しようと声を掛ける。

「ねぇ?せっかくだし、助けてもらおうよ?」

「イヤよ!あのジジイの手下の手なんて貸りないわ!」

「でも、兄様が心配してるかもしれないから速く帰りたいし…町の中を探してると思うから…」

「確かに、アイツなら町一つを壊す勢いで探してそうね」

僕の言葉に真面目くさったように言うティの言葉は少し大げさなような気もするけれど、僕の話しに耳を傾けてくれる気はあるようだった。

「ティだって、勝手に宿を出た事を僕と一緒に兄様から怒られたくないでしょう?」

「それは…って!怒られるの私だけなんじゃないの!?だ、だけど、アンタが私の変わりに謝りたいって言うなら、少しくらいなら手を貸りてあげても良いわよ…」

説得するために兄様の名前を出せばその効果は絶大で、嫌そうな顔をしながらも渋々といった様子で頷く。だけど、ここまで無言で立っていた青に水蓮の柄が入った着物を着た人が、不機嫌そうな声を上げる。

「助けはいらないと言ったと思えば、その舌の根が乾かぬうちに助けを求めるとは、お前はそれで恥ずかしくないのか?」

「何よ!アンタになんか頼んでないでしょう!?」

「そっちこそ何を言っている?私以外に誰が穏便に此処から移動させるんだ?言っておくが、グレイは移動魔法を使えないからな」

「そうだな。俺は大雑把だから、地割れや崖崩れを起こしてこの辺りを一層するくらいしか出来ないな」

天気の話でもするような気軽さで言った言葉は、物騒としか言いようがない。だけど、本当にそれを実行する事が出来るとでもいうような堂々とした様子は、どこか父様に近い雰囲気があった。でも、僕が信じられないような目を向けると、父様は冗談だよと笑い飛してくれるけど、グレイと呼ばれた人は僕の驚きにも気付かず、不機嫌そうに立つ隣の男へと返事を返す。

「困っているんだ。意地悪をぜずに手を貸してやれば良いじゃないか?」

「向こうは私の手を借りたくはないと言っているんだぞ?ならば、後は本人の好きさせれば良いではないか?」

「キール。あの方から様子を見るよう頼まれたのだから、そういうわけにもいかないだろう?それに、悪しき者に長居されるのはお前も不快だろう?」

「それはそうだが、面倒ごとの種を持ち帰りたくはない」

そう言ってこちらを拒絶するように睨む表情は兄様と似たような所があるけれど、それでも本心では怒っていなかったり、兄様なりの優しさがあったりするから怖く感じる事はない。だけど、この人は僕達に対して優しくする気がないのがはっきりと分かるだけに、見慣れているはずの表情も冷たく感じる。僕の近くにいたからか、そんな僕の様子に気付いたティが庇うような事を言ってくれた。

「アンタ、自分よりも小さいのを脅して恥ずかしくないの?」

「俺は年齢で差別しないだけだ。それと、お前はいい加減に人の名を覚えろ」

「確かに、ティターニアからは一度も名を呼ばれた事がないな」

「覚える必要がないから覚えないだけよ!アンタも、あんな奴にいちいち萎縮してんじゃないわよ!こんな表情なんて何時も見慣れてるでしょう!!」

「いや…全然違うよ…」

ティも兄様と比べたんだろうけど、その違いに気付いていないようだった。僕が静かに否定すれば、それが気に入らなかったように不貞腐れたような態度を取る。

「アイツは私に対して何時もあんな感じよ!とにかく自身の事を強調して回ってる小さい奴らなんて、気にしなくて良いのよ!!」

「言っておくが、これは好きで着ているわけではない。あの方が、遠目からでも一目で見分けが付く方が良いと言うから着ているだけだ」

「えっ?なに?そんな理由で自分と同じ色の着物を着てたの?それに、遠目だと見分けつかないとかあのジジイ大丈夫なの?」

「名を覚えられないお前も、あの方とそんなに変わらないだろう」

「はぁっ!?アイツと私を一緒にするんじゃないわよ!!」

同じ扱いが不満だったのか、猛然とした勢いで抗議するけれど、相手はそこに何の違いもないと思っているようで、冷めきった目でティの事を見ていた。そんな中、グレイという人はティのやり取りを楽しんでいるような節があるけれど、そんな2人の間を取り持つように穏やかな声を出しながら間へと割って入る。

「まぁまぁ、とりあえず今は落ち着こう。お互い言いたい事もあるだろうが、その話の続きをする前に一度場所を移した方が良さそうだ」

自身の後ろにある扉へとチラリと視線を向けると、少しおどけたような様子で声を掛ける。だけど、気配が読める人達はそれだけで何が言いたいのか十分に伝わったようだった。

「キール。連中が来る前に、私を含めた全員の移動を頼む」

「はぁ…全員を運べば良いんだな…」

状況が理解出来ているからか、面倒くさそうにしながらもその人が魔法を発動する。すると、僕等の周囲が水にでも包まれたように青色へと変わり、音もなくそれが弾けたと思えば、馬車の中から森の中へと移動していた。昨日、似たような経験をしたから僕にそこまで驚きはなかったけど、これを経験した事がない人は、当然のごとく驚きの声を上げていた。

「はぁっ!?森の中にいるってどういう事だよ!?っか何で俺まで運んでんだよ?」

「全員と言われたからそうしただけだ。それに、わざわざお前だけを避けて魔法を使う方のが手間だった」

見えた目が几帳面そうなだけに、何とも大雑把な事を平然と口にする落差に付いていけず、ロウさんは面食らったように呆然としていた。だけど、そんなロウさんの事なんてお構い無しに状況は矢継ぎ早しに変わっていく。

「女王だけが来るかと思えば、何とも賑やかな客人も来たものじゃのう?」

背後から聞こえてきた声に振り向けば、そこには年老いて渋みがある声の主が、何とも楽しげな様子でこちらを見ながら笑っていた。
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