高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

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特別編6

第5話『福王寺姉妹-前編-』

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 立ったままで話すのは何だからと、俺達はテーブルを囲む形で座ることに。その際、福王寺先生が全員分のアイスティーを出してくれた。少しだけど、晴れて暑い中を歩いてきたので、冷たい飲み物は有り難い。
 結衣と俺が隣同士に座る。俺達の左斜め前に胡桃と伊集院さん。右斜め前に中野先輩。そして、正面には福王寺先生と妹さんが姉妹で隣り合って座る。

「隣同士で座ると、より美人姉妹な感じがするのです」
「そうだね、姫奈ちゃん。見惚れちゃうなぁ」
「華頂ちゃんの言うこと分かる。オーラが凄いよね。ここまで美人な姉妹を間近で見るのは初めてだわ。もちろん、高嶺ちゃんや華頂ちゃん姉妹も魅力的だけど、高嶺ちゃん姉妹は柚月ちゃん、華頂ちゃん姉妹は華頂ちゃんが可愛い系だからさ」

 写真を見たことのない胡桃、伊集院さん、中野先輩は福王寺姉妹のことを食い入るようにして見ている。あと、俺も美人な姉妹を見るのが初めてなので、先輩の言葉に心の中で何度も頷く。

「写真の妹さんも綺麗だったけど、実際に見るとより綺麗だよね、悠真君」
「そうだな」
「こ、ここまでたくさん美人だとか綺麗だとか一度に言われるのは初めてなので、ちょっと照れてしまいますね。あと、私のことは名前で呼んでくれてかまいませんよ」

 そう言って、妹さん……遥さんは頬をほんのりと赤くしながら俺達のことを見てくる。そんな遥さんがとても可愛らしい。
 こほん、と遥さんはわざとらしく、それでいて可愛らしい咳払いをした。

「改めて自己紹介しましょう。福王寺遥といいます。栄應義塾えいおうぎじゅく大学理学部化学科の1年です」

 栄應義塾大学って、全国で五本指に入るほどの偏差値を誇る私立大学じゃないか。かなり頭がいいんだな。
 俺と同じような認識なのだろうか。結衣達女子高生4人は「おぉ」とか「凄い」と声を上げている。

「ちなみに、私は栄應の数学科の卒業生だよ」
「そうなんですか! 私、初めて知りました」
「へぇ、杏樹先生ってかなり頭がいいんですね。あたし、先生の授業は一度も受けたことがないですし、素の姿を知っているのであんまり……」

 栄應義塾レベルの大学の卒業生だとは思えなかったのかな、中野先輩は。なかなか失礼なことを言っているけど、福王寺先生も遥さんも笑みを浮かべたままだ。

「でも、栄應義塾卒なのも納得なのです。難しい問題もとても分かりやすく教えてくれますし。質問したときも丁寧に教えてくれたのです」
「あたしも納得です。あたし、中学までは数学はあまり好きじゃなくて、苦手意識もありましたけど、高校生になって杏樹先生の授業を受け始めてから、少しずつ数学が好きになっていますもん」

 伊集院さんと胡桃は絶賛しているな。どうやら、高校での福王寺先生の授業が2人にとって数学にいい影響を及ぼしているようだ。入学した直後から、先生の数学の授業は分かりやすいと生徒の間で評判がいい。

「俺も数学は好きですけど、福王寺先生の授業は中学のときの先生と比べて、分かりやすくて身につきやすいなって思っています」
「私もそれは同感。悠真君とは中学が違いますけど」
「……さっきの遥の気持ちが分かるよ。生徒から、授業の評判がいいのは知っていたけど、一度にここまでたくさん褒めてくれたことはないから、ちょっと照れるね」

 ふふっ、とはにかむと、福王寺先生はアイスティーをゴクゴクと飲んだ。美しい見た目だけでなく、照れやすい内面も姉妹で似ている。
 福王寺先生の横で、遥さんは感慨深そうにしている。

「姉さん自身から、学校で評判がいいらしいと聞いていましたけど、教え子の方から実際に姉さんを褒める言葉を聞けて……嬉しいですね。感動もしています」

 そう言う遥さんの声は少し震えており、両目には涙が浮かんでいた。福王寺先生のことがとても好きなのだと分かる。
 福王寺先生は姉らしい優しくて温かみの感じられる笑みを浮かべ、遥さんの頭を撫でた。姉妹の素敵な光景だ。

「遥には私からみんなの写真を見せて、名前も教えているけど、せっかくだから自己紹介しましょうか。じゃあ、まずは私が受け持っている子から、出席番号順で」
「ということは、俺が最初ですね。初めまして、低田悠真といいます。部活は入っていないですけど、ムーンバックスでバイトしています。漫画やアニメが大好きです。あと、福王寺先生から聞いているかもしれませんが、結衣と付き合ってます」

 そう言うと、結衣が「えへへっ」と笑って、俺に腕を絡ませ、頬にキスしてきた。俺達の関係性がとてもよく分かる自己紹介になったと思う。
 あと、目の前でキスした光景を見たからか、遥さんの頬が赤くなっている。常にクールで、たまに微笑むくらいのイメージだったけど、意外と表情豊かな人なのかもしれない。

「次はあたしですね。伊集院姫奈と申します。初めまして。結衣と胡桃と一緒に、杏樹先生が顧問のスイーツ部に所属しています。よろしくお願いします」
「初めまして、高嶺結衣です。悠真君と付き合っています。杏樹先生にはクラス、授業、部活でお世話になっています。料理もスイーツ作りは大好きで、この後食べるチョコレートタルトも手作りしてきました。一緒に食べましょう」

 チョコレートタルトというワードを聞いたから、お腹が空いてきたな。昼食を食べたとはいえ、朝からバイトしていたし。

「楽しみにしているわ、結衣ちゃん。次は胡桃ちゃん、最後に千佳ちゃんね」
「まずはあたしですね。初めまして、華頂胡桃といいます。3人とはクラスが違いますけど、先生とは授業と部活でお世話になってます。あと、漫画や小説が好きで、入学直後から書店でバイトをしています。よろしくお願いします」
「トリですね。文系クラス2年の中野千佳です。悠真と一緒にムーンバックスのバイトをしていて、彼の指導係でもあります。ここにいる1年生4人のおかげで、こうして先生の誕生日をお家で祝える関係になりました。よろしくお願いします」

 これで、高校生5人全員の自己紹介が終わった。自分と違う学年の人もいるけど、自己紹介をすると入学したときのことを思い出す。当時に比べると、いい自己紹介ができたかなと思っている。
 入学した頃には想像もしていなかった日々を俺は過ごしていると思う。今日が初対面の遥さんを除いた、この部屋にいる人達のおかげで。隣に座っている恋人が告白してくれたのが、全ての始まりだと言っても過言ではない。

「悠真さんに結衣さん。姫奈さん、胡桃さん、千佳さん」

 遥さんはそれぞれの顔を見ながら名前を言っていく。さん付けで呼ばれることは全然ないから新鮮でいいな。
 遥さんはクールで落ち着いた笑みを浮かべながら、

「みなさん、よろしくお願いしますね。あと、これからも姉がお世話になります」

 落ち着いた声色でそう言い、頭を下げた。
 こういうときにも、福王寺先生のことをしっかりと言えるなんて。本当にお姉さん想いの方だな。それが嬉しいのか、先生は柔らかい笑みを浮かべて、遥さんに頬をスリスリしているのであった。
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