高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

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2学期編3

第25話『称賛』

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『低田悠真君による弾き語りライブ以上となります。次は午後2時から、軽音楽部部員のバンド・金井小町かないこまちによるライブを行ないます』

 弾き語りライブが終わり、そんなアナウンスを聞きながら、俺はステージ横に戻る。
 すると、俺の次の番である軽音楽部のガールズバンド・金井小町のメンバー達が「良かったよ!」「ドキドキした!」と称賛してくれた。そんな彼女達に、

「ありがとうございます。ライブ頑張ってください」

 と、お礼と激励の言葉を言った。
 俺はギターをケースにしまい、帰宅するまでの間はこの場所でギターを預かってもらうことに。
 ステージ横を後にして、アリーナの端を歩いて出入口を目指す。ライブが終わったら、結衣達と体育館を出たところで待ち合わせする約束になっているのだ。
 弾き語りライブをした直後なのもあり、客席から多くの人の視線を浴びる。また、金井小町のライブがまだなので、「良かったよ!」「最高だった!」といった称賛の言葉を浴びながらアリーナを歩いた。
 アリーナを後にして、出入口から体育館を出た。

「悠真君!」

 体育館を出た瞬間、結衣が俺の名前を呼びながら俺に駆け寄ってくる。ニコニコとした笑顔で。そして、俺のことをぎゅっと抱きしめてきた。

「最高のライブだったよ! 感動したよ! 悠真君かっこよかった! 大好きっ!」

 至近距離から俺を見つめながらそう言うと、結衣は俺にキスしてきた。その瞬間、周りから「きゃあっ」と女性達の黄色い声が聞こえた。
 ライブ中から称賛の言葉をたくさん言われたけど、今の結衣の言葉が一番嬉しいな。そう思いながら、俺は結衣のことを抱きしめた。
 数秒ほどして、結衣の方から唇を離す。すると、目の前には結衣らしい明るい笑顔で俺のことを見つめる結衣がいた。

「ありがとう、結衣。俺も大好きだぞ」

 ちゅっ、と俺は結衣にキスをして、右手で結衣の頭を優しく撫でる。それが嬉しかったのか、結衣は「えへへっ」と可愛らしい声で笑った。

「ユウちゃん、最高のライブだったよ! 感動したよ!」
「感動のライブだったよねっ! 低変人様の『道』も聴けるとは思わなかったよ。僥倖な時間だったわ。伝説のライブ立ち会えた気がするよ……」

 芹花姉さんと福王寺先生はとても感動した様子でそう言った。特に先生は両目に涙を浮かべるほどで。先生が物凄く感動していることが窺える。まあ、先生は低変人の曲を披露すると言ったときに大きな声を上げていたからなぁ。

「杏樹姉さんは低変人の曲が大好きだからな」
「心酔していると言ってもいいほどですよね。私も好きなので杏樹姉さんの気持ちが分かりますが。本当にいいライブでした、低田君!」
「そうだね、遥。とても良かったよ、低田君」

 雄大さんと遥さんもライブをいいと思ってくれたか。嬉しいな。2人の言葉に共感したようで、福王寺先生は「本当に良かったよね!」と笑顔で言っていた。

「ゆう君、とっても良かったよ! どの曲の弾き語りも『道』も良かった!」
「胡桃の言う通りなのです! とても楽しくていいライブでした! この後のスイーツ部の屋台の仕事も頑張れるのです!」
「良かったよ、悠真! 凄い後輩だよ!」
「悠真さん、とても良かったです! あと、お姉ちゃんに大好きって言ったことにキュンキュンしちゃいました!」
「告白したのは文化祭らしくて良かったよね、柚月ちゃん。弾き語りも低変人さんの曲の演奏も上手だし、どの曲も知っている曲だから楽しめたよ、悠真君!」

 胡桃、伊集院さん、中野先輩、柚月ちゃん、月読さんが笑顔でライブの感想を言ってくれる。みんなにも楽しんでもらえて良かった。結衣に好きだって言ったことの感想を言われるとちょっと照れくささもあるけど。
 胡桃達の感想に共感しているのか、胡桃の姉の杏さんはうんうんと頷いて、

「本当に良かったよね。胡桃が言っていた通り、低田君は本当に上手だね」

 と笑顔で感想を言っていた。

「彼氏君、いいライブだったよ! どの曲も知っている曲だから、とても楽しかった! あと、ゆーゆは低田君に愛されてるねぇ~」
「結衣ちゃんと低田君がラブラブなのが納得だよ~。低田君、いいライブだったよ~」

 志田さんはニコニコとした笑顔で、御園さんはほんわかとした笑顔でそう言った。2人も俺が結衣に大好きだと言ったことに触れるか。ただ、数えるほどしか会ったことのない2人が、「愛されてる」とか「ラブラブなのも納得」と言ってくれるのは嬉しい気持ちが笑う。
 また、結衣は「えへへっ」と声に出して笑う。可愛い。

「悠真、ライブを楽しんでいたね。演奏も歌も良かったよ。とてもいいライブだった。お疲れ様。ちゃんとビデオカメラで撮影したからな」
「お父さんの言う通りとてもいいライブだったわ。あと、結衣ちゃんに告白するのもね」
「低田君とっても良かったわ! 結衣と柚月から聞いていたけど、本当に上手だったよ! あと、ラストで結衣に大好きだって言う姿は素敵だったわぁ」
「そうだね、母さん。低田君、凄く熱が伝わるいいライブだったよ」

 俺の両親と結衣の御両親がそんな感想を言ってくれた。父さんと結衣の父親の卓哉さんは優しい笑顔で、母さんと結衣の母親の裕子さんはワクワクとした様子で。
 その後も胡桃の御両親、伊集院さんの御両親、中野先輩の御両親、何人ものクラスメイト達が弾き語りライブについて良かったと感想を伝えてくれた。クラスメイト達の一部は結衣に大好きだと言ったのも良かったと言ってくれて。
 こんなにも多くの人達がライブを良かったと思ってくれて、それを伝えてくれて。本当に嬉しいな。去年までに芹花姉さんや家族と一緒に文化祭のステージを観たとき、金井高校の生徒になったらこんなに幸せな体験ができるとは想像もしなかった。

「みなさんに楽しんでもらえて嬉しいです。ライブに来てくれて、本当にありがとうございました。俺も楽しかったですし、結衣への想いも伝えられましたし、とても幸せな時間でした。ありがとうございました!」

 みんなの顔を見ながらそうお礼を言った。
 ――パチパチ!
 と、みんなが俺に向けて笑顔で拍手を送ってくれて。結衣も拍手したいのか、俺への抱擁を解いてきて。それと同時に俺が結衣の抱擁を解くと、結衣は一歩下がって笑顔で拍手する。ライブ中に比べると拍手の音は小さいけど、ライブ中と同じくらいに拍手の音が俺の胸に響き渡った。

「ありがとうございました」

 再びお礼を言って、俺は結衣達に向かって深く頭を下げた。
 来年の文化祭でもステージに出たいな。弾き語りか。それとも、結衣達と一緒に何かやるか。今日のライブのような時間を過ごしたい。

「ねえ、悠真君。弾き語りをしたから、喉が渇いたり、お腹が空いたりしてない? 最高のライブと大好きだって言ってくれたお礼に奢りたいな」

 結衣はニッコリとした笑顔でそう言ってくれる。
 ライブでは3曲弾き語りをしたし、どの曲も力を込めて歌った。だから、今は喉を潤したい気分だ。結衣がお礼に奢りたいと言ってくれているし、ここは結衣のご厚意に甘えさせてもらおうかな。

「ありがとう。じゃあ、飲み物の屋台に行って、ラムネを奢ってもらおうかな。歌ったから喉を潤したいんだ」
「分かった! 行こっか!」

 その後、俺は結衣達と一緒に屋台街に向かう。その際、結衣に手を引かれて。
 弾き語りライブをした直後だし、その中で結衣に大好きだと言ったのもあってか、周りにいる人達の多くがこちらを見てきて。中には「ライブ良かったよ」とか「告白最高だったぜ」といった感想を言う人もいて。何度か「ありがとう」とお礼を言って、屋台街に向かった。
 それから程なくして屋台街に到着する。お昼過ぎだし、文化祭も終盤になったけど、屋台街は今でも盛り上がっている。
 3年生のクラスの出し物である飲み物の屋台へ。2.3分ほど並び、俺は約束通り、結衣にラムネを奢ってもらった。結衣もラムネを購入していた。
 人の数が落ち着いた場所まで行き、俺達は屋台で買った飲み物を飲むことに。
 ラムネはこういう屋台では定番のビー玉を落とすタイプ。小さい頃は苦労したけど、高校生の今は難なく落とすことができた。また、結衣も「えいっ」と可愛い声を出して一発で開けていた。

「結衣、ラムネをいただくね」
「どうぞ!」
「ああ。……ライブの後だし、みんなも飲み物を買っているから乾杯しますか?」
「それいいね、悠真君!」

 結衣が明るく賛同すると、飲み物を買った胡桃や伊集院さん、中野先輩、福王寺先生、芹花姉さん、月読さん、柚月ちゃん、遥さん、雄大さん、杏さん、志田さん、御園さん、両親、結衣の御両親、一部のクラスメイトが賛同の意を示す。……結構人がいるな。また、近くでは胡桃の御両親、伊集院さんの御両親、中野先輩の御両親が見守っていて。

「今日はライブに来てくれてありがとうございました! 乾杯!」
『乾杯!』

 俺は結衣や胡桃達みんなの飲み物にラムネのボトルを当てて、ラムネを一口飲んだ。
 ついさっきまで氷水に浸かっていたから、キンキンに冷えている。ラムネの甘さとシュワッとした炭酸の刺激もあってとても爽やかだ。

「うん、美味い!」
「ラムネ美味しいね、悠真君!」
「そうだな!」

 そう言って、結衣と笑い合う。ライブ中に結衣を大好きだと言ったのもあって。いつも以上に結衣が可愛く感じる。
 その後も結衣達と談笑しながらラムネを飲んでいった。ラムネはお祭りのときなどに何度も飲んだことがあるけど、今までで一番美味しかった。ライブの後だったり、結衣が奢ってくれたりするからかな。
 結衣と胡桃と伊集院さんがスイーツ部の屋台のシフトに入る時間が迫っていたので、3人とは一旦お別れ。福王寺先生は屋台の様子を見に行った。

「ユウちゃん! 今日もスイーツ部のベビーカステラ食べようよ!」
「ああ、そうだな」

 昨日、ベビーカステラを買ったけど、どの味も美味しかったし。また今日も味わいたい。

「お姉ちゃんが買ってあげるからね! お姉ちゃんも、結衣ちゃんみたいにライブを頑張ったユウちゃんに買ってあげたいなって思ってて」

 ワクワクとした様子でそう言ってくる芹花姉さん。結衣のように俺の奢りたいと考えるのは姉さんらしい。俺と同じようなことを考えたのか、中野先輩と月読さんが姉さんのことを見ながら「ふふっ」と笑った。

「分かった。姉さんに奢ってもらうよ」
「うんっ! プレーンも抹茶もココアも全部買ってあげるからね!」

 満面の笑顔でそう言う芹花姉さん。ほんと、可愛い姉だよ。そう思いつつ、俺は姉さんに「ありがとう」とお礼を言った。
 それから程なくして、スイーツ部のTシャツに着替えた結衣と胡桃と伊集院さんが第2教室棟から出てきて、スイーツ部の屋台へ向かった。今日も文化祭終了までシフトに入るという。
 俺も芹花姉さん達と一緒にスイーツ部の屋台へ向かう。
 今日もスイーツ部の屋台には長い列ができている。ベビーカステラが屋台での人気スイーツなのもあるだろうけど、

「是非、スイーツ部のベビーカステラを買ってくださいね! 美味しいですよ!」

 と、顧問の福王寺先生がメイド服姿で呼び込みしているのも、列が長くなる理由の一つだろう。
 結衣と胡桃がカウンターに立ったのを確認して、俺達はスイーツ部の屋台の列に並んだ。
 列はかなりの長さだけど、芹花姉さん達と話したり、結衣や胡桃、伊集院さん、福王寺先生の様子を見たりしたので、俺達の番まではあっという間だった。
 約束通り、芹花姉さんがプレーン、抹茶、ココア味を一つずつ奢ってくれた。

「3種類ともお買い上げありがとうございます!」
「はい、どうぞ! 昨日と同じく、プレーン味は姫奈ちゃんが作りました!」

 胡桃と結衣は満面の笑顔で接客してくれて。2人がカウンターに立っていれば、スイーツ部の屋台の列は文化祭終了までずっと長いままだろう。
 1人でカップ3つを持つことはできないので、プレーンと抹茶は俺が、芹花姉さんはココアのカップを持った。
 結衣達に頑張ってとエールを送り、俺達は人の落ち着いた場所に移動する。

「両手でカップを持ってたら食べられないね。お姉ちゃんが食べさせてあげるね!」

 と、芹花姉さんがニコニコとした笑顔で言うので、お言葉に甘えさせてもらうことに。
 芹花姉さんにベビーカステラを食べさせてもらう。プレーンも抹茶もココアも美味しい。特に伊集院さんが作ったプレーンが美味しいな。あと、俺にベビーカステラを食べさせるときの姉さんはとても幸せそうだった。
 また、奢ってくれたお礼に、俺が芹花姉さんにベビーカステラを何個か食べさせた。そのときの姉さんは、俺に食べさせるとき以上に幸せそうにしていた。
 俺と芹花姉さんを見てか、同じくきょうだいの雄大さんと遥さんもベビーカステラを食べさせる一幕も。小さい頃は福王寺先生も一緒に3人で食べさせ合うことが多かったという。懐かしい気持ちになったのか、雄大さんも遥さんも優しい笑顔になっていた。
 ベビーカステラを食べ終わった後は芹花姉さんや月読さん達と一緒に屋台街を廻る。ライブをしたご褒美ということで、俺の分は全て芹花姉さんが奢ってくれた。
 昨日と同じく、屋台街を廻るのはとても楽しくて。だから、時間はあっという間に過ぎていって。

『午後3時半になりました。これにて、今年度の金井高校の文化祭を終了いたします。生徒のみなさん、職員のみなさん、来校されたみなさん、ありがとうございました! 来年度の文化祭をお楽しみに!』

 終了時刻の午後3時半になり、校内放送の形で文化祭実行委員長によって今年度の文化祭の終了宣言がなされた。
 ――パチパチ!
 昨日と同じく、俺は芹花姉さん達と一緒に拍手をする。周りにいる多くの人達も拍手していて。結衣も胡桃や伊集院さんと一緒にスイーツ部の屋台の中から拍手していて。
 文化祭が終わったからだろうか。昨日よりも拍手の音はとても大きい。また、

「すっごく楽しかったー!」
「最高だったぜ! 来年も楽しむぞー!」
「来年は卒業生として遊びに来る!」
「卒業しても文化祭楽しい! 来年も来るよ!」

 などといった感想の叫びも聞こえてきて。文化祭を楽しめた人が多かったようだ。

「楽しかった!」

 スイーツ部の屋台にいる結衣は晴れやかな笑顔で叫んで。その姿は可愛らしい。胡桃と伊集院さんも「楽しかった!」と叫んでいて。
 今年は在学生になってから初めての文化祭だった。喫茶店、結衣とのデート、スイーツ部の屋台、姉さん達と廻る屋台街、弾き語りライブ……楽しいことで盛りだくさんだった。だから、

「俺も楽しかった!」

 と叫んだ。気持ちいいし、爽やかな気持ちになれるな。
 結衣達の方を見ると、俺の叫びが聞こえたようで結衣達は笑顔で俺のことを見ていた。
 それからしばらくの間、拍手が鳴り止むことはなかった。今年の文化祭がとても良くて、盛り上がったことを証明するかのように。
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