向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ

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エピローグ『ファーストキス』

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 恋人同士になった僕と向日葵は、撫子達と別れて2人で学校を後にする。

「向日葵。これからどこに行こうか?」
「2人きりでゆっくりできるところがいいな。あたしの家とかどう?」
「いいね。じゃあ、向日葵の家に行こうか」
「決定だね」

 そう言うと、向日葵はその場で立ち止まり、右手をすっと出してくる。

「恋人になったんだし、桔梗と手を繋ぎたいな」

 上目遣いで僕を見て、向日葵はそう言う。

「もちろんいいよ」

 僕は左手で、差し出された向日葵の右手を掴む。掴んだ瞬間、向日葵の手がピクッと震えた。緊張しているのかな。
 向日葵の手って、僕の手と比べて結構小さい。でも、柔らかさがあって温かいから、僕の手を優しく包み込んでいるようだった。手だけど、肌が直接触れているのっていいな。

「手を繋ぐのっていいね。初めてだから緊張して、掴まれたときにちょっとピクッとしちゃったけど」
「やっぱり、緊張していたか。今まで手を繋いだことないから、向日葵と恋人になったんだって実感する。肌が触れ合っているし」
「肌が触れ合っているって……ちょっとエロいね」

 と言いながら、「ふふっ」と向日葵は楽しそうに笑っている。エロいと言われたときは、言葉選びを間違えたかと思ったけど、この様子からして大丈夫だろう。
 そして、向日葵の家に向かって歩き始める。
 有名人の向日葵が男子生徒と手を繋いでいるのもあり、周りにいる武蔵栄高校の生徒の多くがこちらを見ていた。中には驚いた様子の生徒も。きっと、手を繋いでいるのを見て僕が恋人だと思っているのだろう。しかも、向日葵は多くの生徒から告白され、振った実績があるし。
 駅とは違う方向なので、歩き始めて数分ほどで武蔵栄高校の生徒はいなくなった。

「ようやく落ち着いた感じがする」
「告白のときから、誰かしらあたし達のことを見ていたからね。視線を浴びることには慣れているけど、恋人と一緒に歩く経験はほぼないから、あたしもやっと落ち着いた感じがするよ」
「そっか」

 もしかしたら、周りからの視線があるから、向日葵は僕と2人きりでゆっくりできるところに行きたいと言ったのかもしれない。
 さらに数分ほど歩いて、向日葵の家に到着。
 月曜に花村と会った直後に来たときと同じように、向日葵のご家族は不在。なので、彼女の家で2人きりになるのは2度目。ただ、恋人になってからは初めてなので緊張する。
 向日葵の案内で、僕は2階にある彼女の部屋へと通される。

「適当なところでくつろいでて。アイスティーを淹れてくるね」
「ありがとう。お構いなく」

 向日葵はエアコンのスイッチを入れ、勉強机にスクールバッグを置くと、一旦、部屋から出て行った。
 とりあえず、テーブルの周りにあるクッションのどれかに腰を下ろすか。

「……そういえば」

 向日葵が初めて僕の家に来たとき、彼女は僕のベッドの近くにあるクッションに座って、ベッドに寄り掛かってウトウトしていたな。僕もあのときの向日葵のような感じでくつろぐか。
 スクールバッグを部屋の端に置き、僕はベッドの近くにあるクッションをベッドにくっつけて座る。そして、ゆっくりと向日葵のベッドに寄り掛かる。

「あぁ……気持ちいい」

 ベッドのマットレスの固さがちょうどいいな。向日葵の甘い匂いも感じるし。あと、エアコンの涼しい風がやんわりと当たって気持ちいい。学校から10分近く歩いたのもあって、段々と眠くなってきた。あのとき、向日葵がウトウトしていたのも納得だ。
 自然と目を瞑ってしまう。そのことで、体が段々とふわふわとした感覚になって。あぁ、何だか癒されるなぁ……。

「おーい………たよ……」

 うん? 向日葵の声が聞こえるぞ。
 ゆっくりと目を開けると、すぐ目の前に四つん這いの状態で僕を見つめている向日葵がいた。そんな向日葵の顔には優しげな笑みが浮かぶ。あと、第2ボタンまで開けているからか、普段以上に胸が見えている。そのことにちょっとドキッとした。

「……寝ていたんだ、僕。初めて向日葵が僕の家に来たとき、向日葵が僕のベッドに寄り掛かっていたのを思い出したからさ。ベッドとエアコンの風が気持ちよくて……」
「ふふっ、そうだったんだ。あのときのあたしもそうだったよ。窓から入ってくる風が涼しくてウトウトしちゃったの」
「そうだったんだ」
「さあ、アイスティーを持ってきたから飲もうよ。あと、お母さんの作ったチョコクッキーがあったからそれも持ってきた」
「ありがとう。さっそくいただきます」

 自分の座っていたクッションと一緒にテーブルの近くまで動かす。向日葵の淹れてくれたアイスティーと、悠花さん特製のチョコクッキーをいただく。

「アイスティーもチョコクッキーも美味しいな」
「ありがとう。クッキーの感想、桔梗と恋人になったって報告するときと一緒に言っておくよ。凄く喜ぶと思う」
「そうだといいな」

 僕も家に帰ったら両親に向日葵と付き合うことを報告しないと。特に母さんは喜びそうだなぁ。そんなことを考えながら、アイスティーを一口飲む。冷たくて美味しいなぁ。

「そういえば、さっきの桔梗の寝顔可愛かったよ。スマホで写真撮っちゃった。嫌だったら消すけど」
「全然かまわないよ。写真も撮られていたなんて。意外と深く眠っていたんだな。昨日は告白するのに緊張して、そこまで眠れなかったからかな」
「そうだったんだ。桔梗と恋人になるには、自分から告白した方がいいかなって思っていたの。でも、花村にはあたしを友人として好きだって言っていたから、すぐに告白したら失敗しそうだと思って。それに、席が隣同士で、友達としていつでも気軽に話せる今の環境が幸せで。失敗したらそれもできなくなりそうで。まずは仲良く話して距離を縮めようって考えてた。だから、桔梗からすぐに告白してくれたのが本当に嬉しかったの」
「そうだったんだね。……ちゃんと告白できて、向日葵と恋人になれて良かったよ」
「あたしも!」

 向日葵はとっても明るい笑顔でそう言ってくれた。向日葵は僕に告白しようと考えてくれていたんだ。
 もし、4月頃の自分に向日葵の恋人になるって教えたら信じてくれるだろうか。あの頃は睨まれたり、舌打ちされたりしていたけど。ただ、向日葵という名前で彼女に興味を持っていたから、「そういう関係になれるんだ」って嬉しがるかも。

「あと、桔梗の寝顔を見たら、ゴールデンウィークにお見舞いに行ったときのことを思い出したよ」
「そうか。……あのとき、向日葵と夫婦になっている夢を見たんだ」
「へえ……」

 向日葵は興味津々な様子に。目を輝かせて僕を見つめる姿が可愛らしい。

「目を覚ましたら、おはようのキスをしてあげるって。する直前に目が覚めたんだけど。あと……僕のプロポーズの言葉が『一緒にシスコンになろう』だったらしい」
「桔梗らしいね!」

 あははっ、と声に出して楽しそうに笑う向日葵。

「もう少し別の言葉があっただろうって思ったけどね」
「それは否めないけど、あたしはその言葉もいいなって思えるよ。だって、あたしも撫子ちゃんのことは大好きだし。いつかは一緒にシスコンになろうね」
「ああ」

 シスコンだって指摘したとき、向日葵は僕をキモいとまで言っていたのに。嬉しくて、今が夢なんじゃないかと思えてしまう。試しに左手を軽くつねったら、しっかりと痛みがあった。どうやら本当のようだ。

「桔梗と夫婦とかプロポーズとか話していたら……凄くキスしたくなってきた。学校では頬にキスしたけど、今度は……口に」

 向日葵は頬をほんのりと赤くし、しおらしい雰囲気に。緊張しているようにも見える。

「……僕も向日葵と口と口でキスしたいと思ってた」

 学校では頬にキスされたし、2人きりで向日葵の部屋にいる。もちろん、そういうことをするんじゃないかと意識していた。
 向日葵はほっとした様子で胸を撫で下ろす。

「……ありがとう。じゃあ、あたしからするね。ちなみに、自分からするキスはこれが初めてです。桔梗はどう?」
「僕はキス自体が初めてだよ。だから、ファーストキスを恋人の向日葵にあげられるのは嬉しい」
「……大切に受け取るね」

 向日葵はクッションごと、僕のすぐ側まで近づく。僕もそんな向日葵と向かい合う体勢に移動する。
 向日葵は両手で僕の頬にそっと触れてくる。

「桔梗、大好きだよ」
「僕も向日葵が好きだ」

 好きである気持ちを囁き合い、向日葵はにっこりと笑みを浮かべる。
 そして、向日葵の顔がゆっくりと近づき、唇に温かくて柔らかいものが触れた。その瞬間に僕は目を閉じた。
 これが唇と唇が触れる感覚なんだ。優しくて幸せな気持ちになっていく。あと、アイスティーやチョコレートの匂いもして。これから、紅茶を飲んだり、チョコレートの味がするものを食べたりしたら、今のキスのことを思い出しそうだ。
 やがて、向日葵の唇が離れる。なので、ゆっくりと目を開けると、そこにはうっとりした表情を見せる向日葵が。艶っぽさにドキッとした。

「……好きな人にするキスっていいね。幸せ」
「僕もだよ。向日葵が相手だからだと思うけど、キスすると幸せな気持ちになれるんだね」
「そうだね。……今度は桔梗からしてほしいなぁ」

 猫なで声で向日葵はおねだりしてくる。今まで以上に可愛いな。恋人になって2人きりだからだろうか。

「いいよ」

 僕がそう言うと向日葵はゆっくりと目を瞑った。キスを待つこの顔も可愛くてずっと見ていたい。ただ、いつまでも待たせちゃいけないな。
 僕は向日葵の両肩を掴んで向日葵にキスをする。あぁ、唇に感じるこの感触と温もりが、早くも癖になってきた。

「んっ……」

 唇が触れた直後、向日葵はそんな甘い声を漏らす。そのことにキュンとなる。
 僕からのキスに段々と興奮してきたのだろうか。向日葵は舌を僕の口の中にゆっくりと入れ、舌を絡ませてきた。体がピクッとした。何とも言えない感触と生暖かさもあって、さっきのキス以上にドキドキしてきたぞ。
 やがて、背中から温もりを感じるように。きっと、向日葵は両手を背中に回したのだろう。それに応えるようにして、僕も向日葵の背中に両手を回し、抱きしめ合う形に。この体勢でキスするのっていいな。
 僕の方から唇を離すと、さっき以上にうっとりとした向日葵の顔が。

「興奮して舌入れちゃった。気持ちよかったよ」
「舌を入れてきたときは、ちょっと驚いたけどね。あと、抱きしめ合ってキスするのっていいね」
「凄く良かった。桔梗を抱きしめたくて両手を背中に回したの。そうしたら、桔梗がすぐにあたしを抱きしめてくれて嬉しかった。こんなにもキスしたから、桔梗のことがどんどん好きになってるよ……」

 向日葵は僕の胸に顔を埋める。「好き」と何度も呟きながら、向日葵は顔をスリスリさせて。そんな向日葵の頭を優しく撫でる。恋人になったとはいえ、まさかここまでデレるとは。

「桔梗。これからもずっと側にいてね」
「もちろんだよ。一緒に幸せになろうね」
「うんっ!」

 向日葵は彼女らしい明るい笑みを浮かべながら頷く。そして、僕に再びキスしてきた。
 以前は僕にツンツンとしていたけど、一緒に過ごす中で距離が縮まり、こうして恋人として付き合うことができた。これからもずっと向日葵と側にいて、一緒に幸せになれるように頑張っていこう。



本編 おわり


次の話はアフターショートストーリーとなります。この話の直後になります。
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