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本編
第24話『坩堝』
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4月24日、火曜日。
今日は朝の身だしなみチェックがあるため、いつもよりも30分くらい早く学校へと向かう。
昨日と同じように晴れてはいるけれど、陽の差し方が違うので普段とは違った景色に見える。それに、周りに生徒があまりいないのでジロジロ見られることもない。いつもこのくらいの時間に行った方がいいかも。
「おはようございます」
「おはよう、玲人君」
「おはよう、逢坂君」
生徒会室に行くと、今日も沙奈会長と副会長さんが先に来ていたか。30分も早いので俺は眠いけれど、2人は全然そんな感じに見えない。
「玲人君、ちゃんと早く来たね。偉いよ」
よしよし、と頭を撫でられる。俺は犬や猫じゃないんだけれど。
「これから行なう身だしなみチェックですけど、具体的にどのような感じでやっていくんですか? 先週は校門を入ってすぐのところに立っていた生徒会と風紀委員会メンバーが、登校してくる生徒のことを見ていましたけれど」
「へえ、ちゃんと覚えていてくれたんだね。今日もそういう感じだよ。校門近くに立って、校則に違反している生徒がいないかどうかチェックするの」
昨日の夜、家で生徒手帳を見て服装や頭髪についてのところは見ておいた。改めて、金色に染めた俺の髪は校則違反でないことを確認した。
「ただ、逢坂君にとっては初めてだし、今回は名簿に名前を書いてもらおうか」
「それがいいですね」
「名簿ってなんですか?」
「このバインダーに挟まっている違反者名簿のことだよ」
違反者名簿と書かれた紙が挟んであるバインダーが机の上に置かれている。クラス、出席番号、生徒氏名、違反内容の欄がある。
そういえば、先週も何かメモをしている生徒がいたけれど、きっと名簿に校則違反をした生徒のことを書いていたんだな。
「重大な違反をした生徒、注意しても違反項目を直さない生徒、反論する生徒などの名前とクラス、違反内容を書いていくの。私と沙奈ちゃんで生徒をチェックするから、逢坂君にはこの名簿を書いてもらおうかな。書くときに、こういうところが校則違反だってことを覚えるようにすればいいよ」
「分かりました。ちなみに、毎回どのくらいの人数になるんですか?」
「0人のときもあるよ。多くて数人かな?」
「そんな感じですね。ただ、風紀委員会の方が厳しくて、違反しているかどうか怪しいと思った生徒に結構声を掛けているし。そんな風紀委員会のことが恐くて、私達の目の前を通る生徒もいるんだ」
「そうなんですか。色々とあるんですね」
俺の場合、いつも大多数の生徒から鋭い視線を向けられるので、風紀委員会が特に恐いと思ったことはないな。ちなみに、一番恐いのは沙奈会長だけれど。
「この生徒会の腕章を付けたら、正門前に行こうか、玲人君」
「分かりました」
ブレザーの左袖に生徒会の腕章を付ける。うん、ようやく生徒会のメンバーになった気がするな。
「メンバーが3人っていうのもいいね、沙奈ちゃん」
「そうですね。玲人君がいて心強いです。そういえば、今日の放課後……樹里先輩はいないんですよね?」
「うん。歯医者さんにね。今日で治療が終わる予定だから」
歯医者さんか。小学生のときに虫歯の治療をして以来、定期検診には行っているけれど虫歯になったことはないな。そういえば、月野市にどんな病院があるのかあまり分かっていないから、暇なときにでも調べておこう。
「分かりました。今日は特に重要な仕事はないですし、玲人君と2人でやりますね」
「うん、よろしくね。逢坂君がいるから今まで以上に安心だよ」
「俺にできることはまだまだ限られていますけど、頑張ります」
「今日も色々とお仕事を教えるね、玲人君。でも、まずは身だしなみチェックだよ。さあ、みんなで行きましょう」
俺は違反者名簿を挟んだバインダーを持って、2人と一緒に校門前へと向かう。
校門の近くには既に風紀委員会の生徒がいたので、軽く挨拶をした。爽やかに笑みを見せてくれる生徒もいれば、なんでこんな奴が生徒会に……と言いたげな表情を浮かべる生徒もいて。
「何か、一部の生徒から、まずは俺の身だしなみをどうにかしろと言われそうな気がしてきました」
「その金色の髪も校則違反じゃないし、服装も大丈夫だよ。生徒会長の私のお墨付きだから安心して」
「その証拠に、風紀委員会の生徒から一度も注意も受けてないからね」
沙奈会長と副会長さんがそう言ってくれて一安心。とりあえず、穏便にチェックが進むように俺は名簿に記入することに専念しよう。
「生徒が来始めたね、玲人君。始めようか」
「はい」
朝の身だしなみチェックが始まる。
続々と生徒が正門を通るけれど、だいたいの生徒は髪を染めていないし、制服もきちんと着ている。一部の生徒は門をくぐる前に、Yシャツのボタンを閉めたり、スカートの丈が大丈夫かどうか確認していたりしていたけれど。校則違反でなくても、金髪の俺が変な奴であるかのように見られてしまうのが分かる気がしてきた。
「はい、そこの男の子。Yシャツのボタンを全部開けたままにしないように。第1ボタンくらいは開けてもいいから他は閉めなさい」
「こうしないと暑いんだ! それに、これが俺のアイデンティティなんだよ! 生徒会長さん!」
「あなたはスカートの丈が短すぎかな。ちょっとでいいから下ろせる?」
「下着は見えていないんだし、このくらい許容範囲でしょ? それに、あたしは下着を見られても気にしないからさ、副会長。それに、あたしは副会長みたいな女の子が結構タイプなんだよね」
一部の生徒が沙奈会長や副会長さんの注意を受け入れなかったので、俺がクラスと氏名を訊いて、違反内容を名簿に記入する。校則違反は良くないけれど、月野学園にも個性的な生徒がいるんだな。
生徒会は違反している生徒を見つけても穏やかに事を進めるけれど、風紀委員会の方はかなり殺伐としている。
「お前、それダメだ! 同じことを何度注意したら分かるんだよ!」
「前回はスカートだったのに、今回は厚化粧しやがって! 俺がこの化粧水で全部落としてやろうか!」
どうやら、中には何度も同じことで違反する生徒もいれば、毎回違う箇所で違反をしてくる生徒もいるようだ。風紀委員の男子生徒が激昂しても、違反する生徒はケラケラ笑っているし。
その後も身だしなみチェックをしていると、
「あっ、逢坂君だ。おはよう」
佐藤先輩が俺達のところにやってきた。佐藤先輩の身だしなみは大丈夫そうだ。
「生徒会のお仕事をしているんだね」
「はい。先週の木曜日から庶務係として」
「そうだったね。貼られていた生徒会新聞と告示の紙を見たよ。あたしのことをお手伝いしてくれた逢坂君ならきっとやっていけると思うな」
「ありがとうございます。頑張ります」
生徒会に入ってもいいかなと思えたのは佐藤先輩を手伝ったこともあるから、先輩には感謝している。
「うん、頑張ってね。ところで今は何のお仕事をしているの?」
「朝の身だしなみチェックです。俺は校則違反をしている生徒の名前と違反内容をこの名簿に書いているんです」
「そうなんだ。朝早くからお疲れ様。じゃあ、この後も頑張ってね」
「ありがとうございます」
「たまには図書室に遊びに来てね」
「分かりました」
佐藤先輩は笑顔で俺達に手を振ると、元気に校舎の方へ向かっていった。
「彼女みたいな生徒が増えていくといいね、逢坂君」
「そうですね」
佐藤先輩のような人が増えれば確かに嬉しい。まずは酷く反感を持つ生徒が減っていけばいいかなと思う。
「今の女の子、誰なのかなぁ? 玲人君」
物凄く低い声で沙奈会長はそう言うと、俺の目の前に立った。怒らずに笑顔でいることがとても恐ろしく感じる。
「正直に答えなさい。嘘を付いたり、隠したりしたら……あなたの持っている違反者名簿に玲人君の名前を書いてもらうから。ただ、正直に話しても内容次第では書いてもらうことになるけどね? それで、私から特別なおしおきを受けるの」
ふふっ、と沙奈会長は冷たく笑った。どんな人でも関わらず自分以外の女の子と仲良くしていたら、毎回ここまで追究されないといけないのだろうか。恐ろしい取り調べのようなことをされたくないんだけれど。嫌な記憶が蘇ってくる。
「以前、副会長さんから聞いたと思いますが、俺が手助けをした図書委員の佐藤華先輩ですよ。ですよね、副会長さん」
「うん、そうだよ。告示の紙を勝手に作った日の放課後に私が話したじゃない。だから落ち着いて、沙奈ちゃん」
「ああ、あのときの話に出てきた女子生徒でしたか。すみませんでした。玲人君が浮気をしたかと思って、つい。ごめんね、玲人君」
「事実を理解していただけて何よりです」
時には事実を言っても信じてもらえないことだってあるからな。すぐに分かってもらえて、しかも謝ってもらえたのだからそれでいい。
「他の女の子と仲良くしたら嫉妬する気持ちは分かるけれど、少しは逢坂君のことを信じてもいいんじゃないかな」
「心がけます。ただ、玲人君が知らない女の子と仲良くしていると、嫉妬心が一瞬にして爆発してしまうというか」
「なるほどね。嫉妬心が出ちゃうのは仕方ないとして、一瞬で爆発しないように気を付けようね。あと、今は朝の身だしなみチェック中だから」
「そうでしたね、ごめんなさい。気を付けます」
副会長という立場だけれど、3年生だけあって沙奈会長のことをしっかりと叱っている。本当に彼女が一緒で良かったよ。俺だけだったら、ここまで迅速に丸く収まらなかっただろうから。
さっきの沙奈会長は恐かったけれど、昨日はよそよそしく思えたところがあったので、正直安心している。いつもの会長だなと感じたから。
「残り10分くらいだけれど、最後まで頑張ろうね。沙奈ちゃんは引き続きチェックを。逢坂君も正門の方を見て、気になる生徒がいたら沙奈ちゃんや私に教えてね」
「分かりました」
この後も身だしなみチェックが行なわれた。
校則違反スレスレの生徒が何人かいたけれど、沙奈会長や副会長さんが注意したこともあって、全員がその場で直してくれた。佐藤先輩と話してからは違反者名簿に書くことはなく、無事に終わったのであった。
今日は朝の身だしなみチェックがあるため、いつもよりも30分くらい早く学校へと向かう。
昨日と同じように晴れてはいるけれど、陽の差し方が違うので普段とは違った景色に見える。それに、周りに生徒があまりいないのでジロジロ見られることもない。いつもこのくらいの時間に行った方がいいかも。
「おはようございます」
「おはよう、玲人君」
「おはよう、逢坂君」
生徒会室に行くと、今日も沙奈会長と副会長さんが先に来ていたか。30分も早いので俺は眠いけれど、2人は全然そんな感じに見えない。
「玲人君、ちゃんと早く来たね。偉いよ」
よしよし、と頭を撫でられる。俺は犬や猫じゃないんだけれど。
「これから行なう身だしなみチェックですけど、具体的にどのような感じでやっていくんですか? 先週は校門を入ってすぐのところに立っていた生徒会と風紀委員会メンバーが、登校してくる生徒のことを見ていましたけれど」
「へえ、ちゃんと覚えていてくれたんだね。今日もそういう感じだよ。校門近くに立って、校則に違反している生徒がいないかどうかチェックするの」
昨日の夜、家で生徒手帳を見て服装や頭髪についてのところは見ておいた。改めて、金色に染めた俺の髪は校則違反でないことを確認した。
「ただ、逢坂君にとっては初めてだし、今回は名簿に名前を書いてもらおうか」
「それがいいですね」
「名簿ってなんですか?」
「このバインダーに挟まっている違反者名簿のことだよ」
違反者名簿と書かれた紙が挟んであるバインダーが机の上に置かれている。クラス、出席番号、生徒氏名、違反内容の欄がある。
そういえば、先週も何かメモをしている生徒がいたけれど、きっと名簿に校則違反をした生徒のことを書いていたんだな。
「重大な違反をした生徒、注意しても違反項目を直さない生徒、反論する生徒などの名前とクラス、違反内容を書いていくの。私と沙奈ちゃんで生徒をチェックするから、逢坂君にはこの名簿を書いてもらおうかな。書くときに、こういうところが校則違反だってことを覚えるようにすればいいよ」
「分かりました。ちなみに、毎回どのくらいの人数になるんですか?」
「0人のときもあるよ。多くて数人かな?」
「そんな感じですね。ただ、風紀委員会の方が厳しくて、違反しているかどうか怪しいと思った生徒に結構声を掛けているし。そんな風紀委員会のことが恐くて、私達の目の前を通る生徒もいるんだ」
「そうなんですか。色々とあるんですね」
俺の場合、いつも大多数の生徒から鋭い視線を向けられるので、風紀委員会が特に恐いと思ったことはないな。ちなみに、一番恐いのは沙奈会長だけれど。
「この生徒会の腕章を付けたら、正門前に行こうか、玲人君」
「分かりました」
ブレザーの左袖に生徒会の腕章を付ける。うん、ようやく生徒会のメンバーになった気がするな。
「メンバーが3人っていうのもいいね、沙奈ちゃん」
「そうですね。玲人君がいて心強いです。そういえば、今日の放課後……樹里先輩はいないんですよね?」
「うん。歯医者さんにね。今日で治療が終わる予定だから」
歯医者さんか。小学生のときに虫歯の治療をして以来、定期検診には行っているけれど虫歯になったことはないな。そういえば、月野市にどんな病院があるのかあまり分かっていないから、暇なときにでも調べておこう。
「分かりました。今日は特に重要な仕事はないですし、玲人君と2人でやりますね」
「うん、よろしくね。逢坂君がいるから今まで以上に安心だよ」
「俺にできることはまだまだ限られていますけど、頑張ります」
「今日も色々とお仕事を教えるね、玲人君。でも、まずは身だしなみチェックだよ。さあ、みんなで行きましょう」
俺は違反者名簿を挟んだバインダーを持って、2人と一緒に校門前へと向かう。
校門の近くには既に風紀委員会の生徒がいたので、軽く挨拶をした。爽やかに笑みを見せてくれる生徒もいれば、なんでこんな奴が生徒会に……と言いたげな表情を浮かべる生徒もいて。
「何か、一部の生徒から、まずは俺の身だしなみをどうにかしろと言われそうな気がしてきました」
「その金色の髪も校則違反じゃないし、服装も大丈夫だよ。生徒会長の私のお墨付きだから安心して」
「その証拠に、風紀委員会の生徒から一度も注意も受けてないからね」
沙奈会長と副会長さんがそう言ってくれて一安心。とりあえず、穏便にチェックが進むように俺は名簿に記入することに専念しよう。
「生徒が来始めたね、玲人君。始めようか」
「はい」
朝の身だしなみチェックが始まる。
続々と生徒が正門を通るけれど、だいたいの生徒は髪を染めていないし、制服もきちんと着ている。一部の生徒は門をくぐる前に、Yシャツのボタンを閉めたり、スカートの丈が大丈夫かどうか確認していたりしていたけれど。校則違反でなくても、金髪の俺が変な奴であるかのように見られてしまうのが分かる気がしてきた。
「はい、そこの男の子。Yシャツのボタンを全部開けたままにしないように。第1ボタンくらいは開けてもいいから他は閉めなさい」
「こうしないと暑いんだ! それに、これが俺のアイデンティティなんだよ! 生徒会長さん!」
「あなたはスカートの丈が短すぎかな。ちょっとでいいから下ろせる?」
「下着は見えていないんだし、このくらい許容範囲でしょ? それに、あたしは下着を見られても気にしないからさ、副会長。それに、あたしは副会長みたいな女の子が結構タイプなんだよね」
一部の生徒が沙奈会長や副会長さんの注意を受け入れなかったので、俺がクラスと氏名を訊いて、違反内容を名簿に記入する。校則違反は良くないけれど、月野学園にも個性的な生徒がいるんだな。
生徒会は違反している生徒を見つけても穏やかに事を進めるけれど、風紀委員会の方はかなり殺伐としている。
「お前、それダメだ! 同じことを何度注意したら分かるんだよ!」
「前回はスカートだったのに、今回は厚化粧しやがって! 俺がこの化粧水で全部落としてやろうか!」
どうやら、中には何度も同じことで違反する生徒もいれば、毎回違う箇所で違反をしてくる生徒もいるようだ。風紀委員の男子生徒が激昂しても、違反する生徒はケラケラ笑っているし。
その後も身だしなみチェックをしていると、
「あっ、逢坂君だ。おはよう」
佐藤先輩が俺達のところにやってきた。佐藤先輩の身だしなみは大丈夫そうだ。
「生徒会のお仕事をしているんだね」
「はい。先週の木曜日から庶務係として」
「そうだったね。貼られていた生徒会新聞と告示の紙を見たよ。あたしのことをお手伝いしてくれた逢坂君ならきっとやっていけると思うな」
「ありがとうございます。頑張ります」
生徒会に入ってもいいかなと思えたのは佐藤先輩を手伝ったこともあるから、先輩には感謝している。
「うん、頑張ってね。ところで今は何のお仕事をしているの?」
「朝の身だしなみチェックです。俺は校則違反をしている生徒の名前と違反内容をこの名簿に書いているんです」
「そうなんだ。朝早くからお疲れ様。じゃあ、この後も頑張ってね」
「ありがとうございます」
「たまには図書室に遊びに来てね」
「分かりました」
佐藤先輩は笑顔で俺達に手を振ると、元気に校舎の方へ向かっていった。
「彼女みたいな生徒が増えていくといいね、逢坂君」
「そうですね」
佐藤先輩のような人が増えれば確かに嬉しい。まずは酷く反感を持つ生徒が減っていけばいいかなと思う。
「今の女の子、誰なのかなぁ? 玲人君」
物凄く低い声で沙奈会長はそう言うと、俺の目の前に立った。怒らずに笑顔でいることがとても恐ろしく感じる。
「正直に答えなさい。嘘を付いたり、隠したりしたら……あなたの持っている違反者名簿に玲人君の名前を書いてもらうから。ただ、正直に話しても内容次第では書いてもらうことになるけどね? それで、私から特別なおしおきを受けるの」
ふふっ、と沙奈会長は冷たく笑った。どんな人でも関わらず自分以外の女の子と仲良くしていたら、毎回ここまで追究されないといけないのだろうか。恐ろしい取り調べのようなことをされたくないんだけれど。嫌な記憶が蘇ってくる。
「以前、副会長さんから聞いたと思いますが、俺が手助けをした図書委員の佐藤華先輩ですよ。ですよね、副会長さん」
「うん、そうだよ。告示の紙を勝手に作った日の放課後に私が話したじゃない。だから落ち着いて、沙奈ちゃん」
「ああ、あのときの話に出てきた女子生徒でしたか。すみませんでした。玲人君が浮気をしたかと思って、つい。ごめんね、玲人君」
「事実を理解していただけて何よりです」
時には事実を言っても信じてもらえないことだってあるからな。すぐに分かってもらえて、しかも謝ってもらえたのだからそれでいい。
「他の女の子と仲良くしたら嫉妬する気持ちは分かるけれど、少しは逢坂君のことを信じてもいいんじゃないかな」
「心がけます。ただ、玲人君が知らない女の子と仲良くしていると、嫉妬心が一瞬にして爆発してしまうというか」
「なるほどね。嫉妬心が出ちゃうのは仕方ないとして、一瞬で爆発しないように気を付けようね。あと、今は朝の身だしなみチェック中だから」
「そうでしたね、ごめんなさい。気を付けます」
副会長という立場だけれど、3年生だけあって沙奈会長のことをしっかりと叱っている。本当に彼女が一緒で良かったよ。俺だけだったら、ここまで迅速に丸く収まらなかっただろうから。
さっきの沙奈会長は恐かったけれど、昨日はよそよそしく思えたところがあったので、正直安心している。いつもの会長だなと感じたから。
「残り10分くらいだけれど、最後まで頑張ろうね。沙奈ちゃんは引き続きチェックを。逢坂君も正門の方を見て、気になる生徒がいたら沙奈ちゃんや私に教えてね」
「分かりました」
この後も身だしなみチェックが行なわれた。
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