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本編
第53話『告白と告白-前編-』
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4月29日、日曜日。
現職の国会議員による警察への圧力が重大なことと捉えたのか、一晩経ってもどの局も僕達が決着を付けた事件について報じている。法に則った刑罰を受けることはもちろんのこと、菅原博之は議員辞職間違いなし。息子の和希も高校の退学処分は免れられないと言われている。
中学時代の琴葉のいじめについても、名前は伏せられた状態だけど、きちんと報道された。僕と琴葉が卒業した中学校が、当時いじめの事実を認めなかったことに責任が問われ、教育委員会によりいじめがあったと認定される見通しとのこと。もちろん、当時、いじめに関わった人にも何らかの処分が下ることになるそうだ。
羽賀さんから連絡があって、菅原親子と菅原和希の取り巻き達は起訴する見通しになったとのこと。今後も、不正や圧力なく判決まで進んでほしいものだ。
「ようやく、これで解決って感じだね、玲人」
「とりあえずね、姉さん」
「テレビやネット記事では名前は出ないけど、玲人の方も落ち着くといいね」
「そうなることを願うしかないな」
とりあえず、昨日の夜に松風先生には2年前の事件が解決したことを伝えた。一日でも早く、僕がまた平穏に学校生活を送れるように動いてくれるようだ。
今日は沙奈会長、副会長さん、姉さんと一緒に琴葉のお見舞いに行く。
昨晩、琴葉の母親から電話がかかってきて、検査の結果、琴葉の体に特に問題はないとのこと。今日は大事を取って入院し、体調が悪くならなければ、明日にでも退院するそうだ。2年間も眠り続けたのにも関わらず、そのような流れになるのは、異世界でアリスさんと一緒に過ごしたことが影響しているのだろうか。
午前11時。
琴葉の入院している国立東京中央病院にやってきた。昨日は色々とあったけど、それが嘘だったかのように、病院の中は落ち着いた雰囲気に戻っていた。
518号室に到着すると中では琴葉がアリスさんと談笑している。昨日はいつの間にかいなくなってしまったけど、この様子なら大丈夫かな。
「あっ、いらっしゃい。みんな」
「琴葉ちゃん、ひさしぶりだね!」
病室に入るや否や、姉さんは琴葉の方に駆け寄って彼女のことを抱きしめる。
「麻実ちゃん苦しいよ」
「ごめんごめん。2年ぶりくらいに意識を取り戻したから、思わず感動しちゃって。いやぁ、事件も解決して、琴葉ちゃんも意識を取り戻して本当に良かったよ」
「あたしも麻実ちゃんとひさしぶりに会えて嬉しいよ。麻実ちゃんの雰囲気が全然変わっていなくて良かった」
「雰囲気は変わってないかもしれないけど、身体的には変わった部分はあるよね。背とか胸とか」
「……そ、そういえば……背もちょっと伸びて、胸もちょっと大きくなったかな? そうだ、前よりもお胸が柔らかくなってる」
「2年の間に成長したんだよ」
姉さん、嬉しそうだな。琴葉が2年ぶりに意識を取り戻したのに、さっそく気を遣わせてしまったので、弟として申し訳ない気分。
「そちらのツインテールの方は?」
「笛吹樹里先輩。僕の通っている月野学園高校の3年生の先輩で、生徒会の副会長さんなんだ」
「そうなんだ。初めまして、恩田琴葉です。レイ君がお世話になってます」
「笛吹樹里です。逢坂君から色々と聞いたよ。ひさしぶりに目が覚めたんだね」
「はい。本当に色々なことがありました」
2年前から琴葉は色々なことを経験してきた。今、こうしてまた琴葉と顔を合わせていられるのが夢じゃないかと思うくらいに。
「あのさ、琴葉ちゃん。さっきから気になっていたけど、こちらの銀髪の美人さんって琴葉ちゃんとはどんな関係なの? この部屋に入ってきたとき、彼女と楽しく喋っていたけれど」
やっぱり気になるか、アリスさんのこと。異世界の女の子と説明するのか。それとも、遠いところから来た外国人とでも言うのだろうか。そこは琴葉やアリスさんに任せるしかないか。
「ええと、彼女はアリス・ユメミールちゃん。遠い国からやってきたお嬢様。実は昔、夏休みに何度か遊んだこともあって。そのときにお友達になったんだよね」
「そのような感じですね。当時は逢坂さんと会っていなかったのですが、今月……ひさしぶりに日本の月野市に用がありまして。フリーの時間で散策しているときに、猫ちゃんと戯れている逢坂さんと出会ったのです。なので彼とは猫仲間です。ただ、逢坂さんが琴葉と親友だと知ったときは運命だと思いました」
「へえ、そうだったんだ。全然知らなかったなぁ。初めまして。あたし、玲人の姉の逢坂麻実。よろしくね、アリスちゃん」
「よろしくお願いいたします、麻実さん。樹里さんもよろしくお願いしますね」
「うん、アリスちゃん」
琴葉とアリスさん、上手にごまかしたな。もしかしたら、全ての決着がついたので、異世界のことやミッションのことを隠す必要はないのかもしれないけど、副会長さんや姉さんを混乱させないために敢えて言わなかったのかも。
「ということは、アリスちゃんが琴葉ちゃんの入院している場所を知っていたのは、玲人が教えていたからなんだね」
「え、ええ……そうですよ。琴葉と幼なじみであると知ったとき、2年前の事件についても教えていただいて。昨日、犯人達と決着を付けられたと知ってとても安心しました」
「なるほどね……」
作り話なのに、ここまで自然に話すことができるなんて感心してしまうな。まあ、僕が沙奈会長に話すまで、アリスさんも2年前の事件について知らなかったようだから、ところどころは本当なんだろうけど。
「琴葉、体調は大丈夫か? 昨日の検査ではOKだったそうだけど」
「うん、すこぶる元気だよ。このまま元気だったら明日、退院だって」
「じゃあ、明日も……」
「さすがに3日連続のお見舞いはいいよ。気持ちだけ受け取っておくね、ありがとう。ただ、落ち着いたらレイ君と麻実ちゃんの新しい家に行きたいな」
「うん。いつでも来ていいよ」
来たときには、昔みたいに一緒にゲームをしたりして遊ぶか。何かお菓子を食べよう。そういうことを、また具体的に考えられるようになって嬉しいな。
「レイ君、また泣いてる。そんなに涙もろかったっけ?」
「……どうだったかな。でも、悪くない涙だよ、これは」
今まで滅多に泣かなかったからなぁ。特に琴葉がいじめを受けていると知ってからは昨日まで一度も泣かなかった。きっと、僕が泣いてしまったら、琴葉を守れないと本能的に思っていたんだろう。
「琴葉。どうしますか? そろそろ言いますか?」
「うん、頑張るよ」
「分かりました。逢坂さんと2人きりになりますか? それとも……」
「みんなの前で言うよ。悪いことを伝えるわけじゃないし」
琴葉とアリスさん、小さな声でそんな会話をしているけど、何をするつもりなのか。
「ねえ、レイ君。レイ君に伝えたいことがあるんだけど、聞いてくれるかな」
「……もちろん聞くよ」
琴葉は顔を赤くしてもじもじとしている。これまでのことを考えると、琴葉が伝えたいことはだいたい想像はつく。
「……ごめんなさい、如月さん。その……今までアリスちゃんと一緒に色々なことをしたのに、その……」
「謝る必要はないよ、恩田さん。玲人君と付き合い始めたわけじゃないし。想いを伝えちゃダメだなんて全然思ってない。むしろ、いいことだと思う。それに、私……玲人君に対する恩田さんの気持ちを聞いてみたいな。胸が苦しくなって、気持ちが潰れちゃうかもしれないけれど……」
そんな言葉とは裏腹に、沙奈会長は優しい笑みを浮かべながらそう言った。
今の2人の会話を聞いて察したのか、副会長さんや姉さんはドキドキとした様子で。アリスさんは琴葉を応援していることもあってか、優しい笑顔を浮かべながら彼女のことをじっと見つめていた。
琴葉は何度か沙奈会長とアリスさんのことを交互に見た後、アリスさんと少しの間見つめ合う。
「頑張って、琴葉」
アリスさんがゆっくりと頷くと、返事をするように琴葉はしっかりと頷いた。僕の方にしっかりと視線を向けて、
「あたし、レイ君のことがずっと好きだよ。だから、幼なじみもいいけど……これからはレイ君と恋人として付き合いたい。ずっと一緒にいたい。あたしと幸せになってほしい。だから、レイ君……あたしと恋人として付き合ってください!」
僕に初めて好意を言葉にして伝えてくれた。ベッドから降りた琴葉は僕のことを抱きしめ、キスをしてきたのであった。
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中学時代の琴葉のいじめについても、名前は伏せられた状態だけど、きちんと報道された。僕と琴葉が卒業した中学校が、当時いじめの事実を認めなかったことに責任が問われ、教育委員会によりいじめがあったと認定される見通しとのこと。もちろん、当時、いじめに関わった人にも何らかの処分が下ることになるそうだ。
羽賀さんから連絡があって、菅原親子と菅原和希の取り巻き達は起訴する見通しになったとのこと。今後も、不正や圧力なく判決まで進んでほしいものだ。
「ようやく、これで解決って感じだね、玲人」
「とりあえずね、姉さん」
「テレビやネット記事では名前は出ないけど、玲人の方も落ち着くといいね」
「そうなることを願うしかないな」
とりあえず、昨日の夜に松風先生には2年前の事件が解決したことを伝えた。一日でも早く、僕がまた平穏に学校生活を送れるように動いてくれるようだ。
今日は沙奈会長、副会長さん、姉さんと一緒に琴葉のお見舞いに行く。
昨晩、琴葉の母親から電話がかかってきて、検査の結果、琴葉の体に特に問題はないとのこと。今日は大事を取って入院し、体調が悪くならなければ、明日にでも退院するそうだ。2年間も眠り続けたのにも関わらず、そのような流れになるのは、異世界でアリスさんと一緒に過ごしたことが影響しているのだろうか。
午前11時。
琴葉の入院している国立東京中央病院にやってきた。昨日は色々とあったけど、それが嘘だったかのように、病院の中は落ち着いた雰囲気に戻っていた。
518号室に到着すると中では琴葉がアリスさんと談笑している。昨日はいつの間にかいなくなってしまったけど、この様子なら大丈夫かな。
「あっ、いらっしゃい。みんな」
「琴葉ちゃん、ひさしぶりだね!」
病室に入るや否や、姉さんは琴葉の方に駆け寄って彼女のことを抱きしめる。
「麻実ちゃん苦しいよ」
「ごめんごめん。2年ぶりくらいに意識を取り戻したから、思わず感動しちゃって。いやぁ、事件も解決して、琴葉ちゃんも意識を取り戻して本当に良かったよ」
「あたしも麻実ちゃんとひさしぶりに会えて嬉しいよ。麻実ちゃんの雰囲気が全然変わっていなくて良かった」
「雰囲気は変わってないかもしれないけど、身体的には変わった部分はあるよね。背とか胸とか」
「……そ、そういえば……背もちょっと伸びて、胸もちょっと大きくなったかな? そうだ、前よりもお胸が柔らかくなってる」
「2年の間に成長したんだよ」
姉さん、嬉しそうだな。琴葉が2年ぶりに意識を取り戻したのに、さっそく気を遣わせてしまったので、弟として申し訳ない気分。
「そちらのツインテールの方は?」
「笛吹樹里先輩。僕の通っている月野学園高校の3年生の先輩で、生徒会の副会長さんなんだ」
「そうなんだ。初めまして、恩田琴葉です。レイ君がお世話になってます」
「笛吹樹里です。逢坂君から色々と聞いたよ。ひさしぶりに目が覚めたんだね」
「はい。本当に色々なことがありました」
2年前から琴葉は色々なことを経験してきた。今、こうしてまた琴葉と顔を合わせていられるのが夢じゃないかと思うくらいに。
「あのさ、琴葉ちゃん。さっきから気になっていたけど、こちらの銀髪の美人さんって琴葉ちゃんとはどんな関係なの? この部屋に入ってきたとき、彼女と楽しく喋っていたけれど」
やっぱり気になるか、アリスさんのこと。異世界の女の子と説明するのか。それとも、遠いところから来た外国人とでも言うのだろうか。そこは琴葉やアリスさんに任せるしかないか。
「ええと、彼女はアリス・ユメミールちゃん。遠い国からやってきたお嬢様。実は昔、夏休みに何度か遊んだこともあって。そのときにお友達になったんだよね」
「そのような感じですね。当時は逢坂さんと会っていなかったのですが、今月……ひさしぶりに日本の月野市に用がありまして。フリーの時間で散策しているときに、猫ちゃんと戯れている逢坂さんと出会ったのです。なので彼とは猫仲間です。ただ、逢坂さんが琴葉と親友だと知ったときは運命だと思いました」
「へえ、そうだったんだ。全然知らなかったなぁ。初めまして。あたし、玲人の姉の逢坂麻実。よろしくね、アリスちゃん」
「よろしくお願いいたします、麻実さん。樹里さんもよろしくお願いしますね」
「うん、アリスちゃん」
琴葉とアリスさん、上手にごまかしたな。もしかしたら、全ての決着がついたので、異世界のことやミッションのことを隠す必要はないのかもしれないけど、副会長さんや姉さんを混乱させないために敢えて言わなかったのかも。
「ということは、アリスちゃんが琴葉ちゃんの入院している場所を知っていたのは、玲人が教えていたからなんだね」
「え、ええ……そうですよ。琴葉と幼なじみであると知ったとき、2年前の事件についても教えていただいて。昨日、犯人達と決着を付けられたと知ってとても安心しました」
「なるほどね……」
作り話なのに、ここまで自然に話すことができるなんて感心してしまうな。まあ、僕が沙奈会長に話すまで、アリスさんも2年前の事件について知らなかったようだから、ところどころは本当なんだろうけど。
「琴葉、体調は大丈夫か? 昨日の検査ではOKだったそうだけど」
「うん、すこぶる元気だよ。このまま元気だったら明日、退院だって」
「じゃあ、明日も……」
「さすがに3日連続のお見舞いはいいよ。気持ちだけ受け取っておくね、ありがとう。ただ、落ち着いたらレイ君と麻実ちゃんの新しい家に行きたいな」
「うん。いつでも来ていいよ」
来たときには、昔みたいに一緒にゲームをしたりして遊ぶか。何かお菓子を食べよう。そういうことを、また具体的に考えられるようになって嬉しいな。
「レイ君、また泣いてる。そんなに涙もろかったっけ?」
「……どうだったかな。でも、悪くない涙だよ、これは」
今まで滅多に泣かなかったからなぁ。特に琴葉がいじめを受けていると知ってからは昨日まで一度も泣かなかった。きっと、僕が泣いてしまったら、琴葉を守れないと本能的に思っていたんだろう。
「琴葉。どうしますか? そろそろ言いますか?」
「うん、頑張るよ」
「分かりました。逢坂さんと2人きりになりますか? それとも……」
「みんなの前で言うよ。悪いことを伝えるわけじゃないし」
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「ねえ、レイ君。レイ君に伝えたいことがあるんだけど、聞いてくれるかな」
「……もちろん聞くよ」
琴葉は顔を赤くしてもじもじとしている。これまでのことを考えると、琴葉が伝えたいことはだいたい想像はつく。
「……ごめんなさい、如月さん。その……今までアリスちゃんと一緒に色々なことをしたのに、その……」
「謝る必要はないよ、恩田さん。玲人君と付き合い始めたわけじゃないし。想いを伝えちゃダメだなんて全然思ってない。むしろ、いいことだと思う。それに、私……玲人君に対する恩田さんの気持ちを聞いてみたいな。胸が苦しくなって、気持ちが潰れちゃうかもしれないけれど……」
そんな言葉とは裏腹に、沙奈会長は優しい笑みを浮かべながらそう言った。
今の2人の会話を聞いて察したのか、副会長さんや姉さんはドキドキとした様子で。アリスさんは琴葉を応援していることもあってか、優しい笑顔を浮かべながら彼女のことをじっと見つめていた。
琴葉は何度か沙奈会長とアリスさんのことを交互に見た後、アリスさんと少しの間見つめ合う。
「頑張って、琴葉」
アリスさんがゆっくりと頷くと、返事をするように琴葉はしっかりと頷いた。僕の方にしっかりと視線を向けて、
「あたし、レイ君のことがずっと好きだよ。だから、幼なじみもいいけど……これからはレイ君と恋人として付き合いたい。ずっと一緒にいたい。あたしと幸せになってほしい。だから、レイ君……あたしと恋人として付き合ってください!」
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