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本編
第59話『恋人バス-後編-』
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「さあ、玲人君。髪と体……どっちから洗ってほしいかな? 玲人君のご希望に沿うつもりだよ」
後ろから僕のことを抱きしめ、沙奈会長はいつもよりも艶っぽい声で僕に問いかけてくる。
鏡越しで沙奈会長の顔を見るけど、何を考えているのか彼女はニヤニヤしているぞ。果たして、僕は無事に髪と体を洗い終え、湯船に浸かることができるのだろうか。
「まずは髪からお願いします」
「うん、分かったよ」
「……くれぐれも、変なことはしないでくださいね」
「大丈夫だって。体を触ったりくすぐったりするかもしれないけど、舐め回したりすることはしないからさ」
「そ、そうですか」
舐め回されるのは論外だけど、くすぐられるのもあまりしてほしくない。特に首回りと脇腹は弱いんだ。ただ、それもいずれは沙奈会長にバレるんだろうな。
「じゃあ、ご希望通り……髪から洗いますね。旦那様」
「もう旦那様ですか。まあ、いずれはそうなるといいですよね。よろしくお願いします。僕の……未来の奥さん」
「……色々とサービスしちゃいますね」
ふふっ、と沙奈会長は優しい笑顔を見せる。可愛いけど、大人らしさも感じられて。これからは彼女と一緒にこういう風にお風呂に入ることが多くなるのかな。そうなればいいなと思った。
沙奈会長に髪を洗ってもらい始める。
「どうかな」
「気持ちいいですよ。だから、眠ってしまわないように気を付けないと」
「気を付けてよ。さっきはとても心配したんだから。だって、声をかけても全然起きないんだもん。熱中症とかで倒れたのかと思ったよ」
それで、シャワー全開で俺に水をぶっかけようとしていたわけか。それこそ、窒息して意識を失うことになりそうだ。
「それはすみませんでした。それにしても、沙奈会長……上手ですね。真奈ちゃんに髪を洗ってあげたりすることもあるんですか?」
「小さい頃ほどじゃないけどね。でも、私が小学生の間はけっこう髪を洗ってあげていたよ。私がやった方がサラサラになるからって真奈が言ってきて。私も髪を洗ってあげるのは好きだからさ」
「へえ、そうなんですか」
僕も姉さんと一緒に入ったときはよく髪を洗ってもらっていたけど、昔は力任せに洗われたり、髪が長めということもあって琴葉と2人で遊ばれていたりしたな。
「ふああっ……」
「寝ない」
「すみません。気持ち良かったので、つい……」
「ははっ、褒め言葉として受け取っておくよ。あと、あくび可愛かった。そういえば、玲人君って寝るのが好きだよね。この前泊まったときだってぐっすりと眠っていたし。昨日の朝も私と樹里先輩が部屋に来たのに、起きる気配が全くなかったんだもん。先輩と一緒に寝顔の写真を撮りまくったよ」
昨日の朝にそんなことをしていたのか。部屋の中を盗撮されていることに比べれば可愛いことなので、そのくらいは大目に見ておこう。
「さっ、シャンプーの泡を落とすから目をしっかりと瞑りましょうね。できるかな?」
「……そのくらいできますって」
まったく、子供扱いしないでほしい。
彼女の言うようにしっかりと両眼を瞑ると、温かいお湯がかかる。沙奈会長の手触りの良さもあってかまた――。
「冷たっ!」
「眠りそうだったからね。ふふっ、今夜は玲人君を寝かさないつもりだったけど、これは早々に寝ちゃうパターンかも」
「早く寝ても、ベッドで水をかけないでくださいよ」
「かけないかけない。むしろ、ベッドの上で液体をかけるのは玲人君の方でしょ? ……はい、終わったよ。拭くね」
沙奈会長を拭いてもらう。何から何までやってもらっているなぁ。ただ、とても手際が良く、真奈ちゃんにもこういう風にしてあげているのかなと思った。
「こうして間近で見てみると、本当に綺麗に染まってるね」
「初めてやったんですけどね。結構気に入っています。校則違反でもないですし、しばらくは金髪のままでいようかなと思います」
「そっか。黒に戻してもいいかなって思ったけど、玲人君が気に入っている髪が一番いいよね。黒髪の玲人君が見たくなったら、演劇部からカツラを借りて付けさせればいいし」
部活に入ろうとは全然考えていなかったので、月野学園にどんな部活があるのか全然覚えていない。新入生歓迎会で部活紹介があったけど。
「よし、これで髪はいいかな。次は背中を流すけど、玲人君のために2つのコースを用意しています。柔らかいコースともっと柔らかいコースなんだけどどっちがいい?」
選ぶのに悩んでしまうコース名だな。もう少し違いがはっきりと分かるコース名にできないものか。
「それぞれのコースの内容は?」
「柔らかいコースは玲人君が私にしてくれたように、このボディータオルで背中を流すの。それで、もっと柔らかいコースは背中を流すのに私の体を使うの。玲人君とは違って私には2つのたわわがあるから、それを使うことになるかなぁ」
やっぱり。そんなことだろうと思ったよ。
「ボディータオルを使う柔らかいコースでお願いします」
「分かったよ。じゃあ、もっと柔らかいコースはまた後日だね。それじゃ、ボディータオルを使って背中を流すね。玲人君さえ良ければ、前の方も洗うけれど」
「背中だけを流してください」
「はーい」
沙奈会長に背中を流してもらうことに。この感触は僕の知っているボディータオルのものだ。安心した。
「さっきから思っているんだけど、意外と玲人君って筋肉質なんだね」
「2年近く体を鍛えましたからね。昔は細身だったんですが、逮捕されて禁固生活を送っている中、勉強以外は読書か筋トレくらいで。それに、出所してからも菅原達に絡まれてしまう可能性があったので、そこから切り抜けるためにも、体力と筋力を身につけておいた方がいいと思いまして」
「なるほどね。確かに、昨日もあなたを襲うために家の前に2人いたもんね」
「ええ。2人くらいだったら、気絶させられたと思いますよ。もちろん、血を流すことなく」
「……さも当然かのようにそう言える玲人君は凄いと思うよ」
「そうですかね?」
ナイフやカッターを持っている男4人を気絶させたゴンに比べたら、全然凄くないと思うけど。
「……凄いよ。その想いを胸に体を鍛え上げてさ。今の玲人君の話を聞いたら、もっと体に触れたくなってきちゃった」
「沙奈会長らしい感想ですね」
恋人として付き合い始めたから、これまで以上にスキンシップが激しくなりそうだ。出会った当初はそれが嫌で仕方なかったのに、今は嬉しいと思えるようになるとは。
「うん、このくらいでいいかな。前も洗っちゃう?」
「さすがに前は自分で洗いますよ。沙奈会長、ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして」
沙奈会長、とても嬉しそうだ。
前の方は自分で洗い、ボディーソープの泡をシャワーで流した。その間はずっと、湯船に浸かる沙奈会長から好奇な眼差しを向けられていた。
「さてと、僕も入りますね」
僕は沙奈会長と向かい合うようにして湯船に浸かる。彼女の脚に触れてしまうけど、この距離感もいいものだ。
「こうして一緒に湯船に浸かると凄く気持ちいいね、玲人君」
「そうですね。気持ちがまったりします」
「確かに。この前入ったときはゆったりできていいなって思ったけど、玲人君の脚が触れているのもいいもんだね」
沙奈会長はそう言うと嬉しそうな表情になり、段々と僕に近づいてきて、
「でも、玲人君とはもっと触れていたいんだ」
僕のことをぎゅっと抱きしめてきた。そのことで、沙奈会長から柔らかさと甘い匂いが感じられる。
「あぁ……幸せだな。玲人君と一緒にこうすることができて。それにお湯も気持ちいい。玲人君が思わず寝ちゃう気持ちも分かるなぁ」
「分かるでしょう? 実は僕も気持ち良くなっています。こうして一緒にお風呂に入るのってやっぱりいいですね」
僕も沙奈会長のことをそっと抱きしめる。誰かを抱きしめることって、こんなにも温かい気持ちになれるのか。抱きしめている相手が沙奈会長だからかもしれないけど。
「玲人君……」
僕の名前を呟くと沙奈会長はキスをしてきた。抱きしめるよりもキスの方がより温かい気持ちになるな。
「……凄く幸せ」
「僕も幸せですよ」
すると、沙奈会長は僕の顔を見つめながらにっこりと笑った。想いが重なったことで温もりは更に膨らんでいく。
ただ、お互いに一糸まとわぬ状態で抱きしめ合っているので、ドキドキする気持ちも大きくなる一途を辿っている。今夜、沙奈会長とどんな時間を過ごすんだろう。ただ、忘れられない夜になりそうな予感はしていたのであった。
後ろから僕のことを抱きしめ、沙奈会長はいつもよりも艶っぽい声で僕に問いかけてくる。
鏡越しで沙奈会長の顔を見るけど、何を考えているのか彼女はニヤニヤしているぞ。果たして、僕は無事に髪と体を洗い終え、湯船に浸かることができるのだろうか。
「まずは髪からお願いします」
「うん、分かったよ」
「……くれぐれも、変なことはしないでくださいね」
「大丈夫だって。体を触ったりくすぐったりするかもしれないけど、舐め回したりすることはしないからさ」
「そ、そうですか」
舐め回されるのは論外だけど、くすぐられるのもあまりしてほしくない。特に首回りと脇腹は弱いんだ。ただ、それもいずれは沙奈会長にバレるんだろうな。
「じゃあ、ご希望通り……髪から洗いますね。旦那様」
「もう旦那様ですか。まあ、いずれはそうなるといいですよね。よろしくお願いします。僕の……未来の奥さん」
「……色々とサービスしちゃいますね」
ふふっ、と沙奈会長は優しい笑顔を見せる。可愛いけど、大人らしさも感じられて。これからは彼女と一緒にこういう風にお風呂に入ることが多くなるのかな。そうなればいいなと思った。
沙奈会長に髪を洗ってもらい始める。
「どうかな」
「気持ちいいですよ。だから、眠ってしまわないように気を付けないと」
「気を付けてよ。さっきはとても心配したんだから。だって、声をかけても全然起きないんだもん。熱中症とかで倒れたのかと思ったよ」
それで、シャワー全開で俺に水をぶっかけようとしていたわけか。それこそ、窒息して意識を失うことになりそうだ。
「それはすみませんでした。それにしても、沙奈会長……上手ですね。真奈ちゃんに髪を洗ってあげたりすることもあるんですか?」
「小さい頃ほどじゃないけどね。でも、私が小学生の間はけっこう髪を洗ってあげていたよ。私がやった方がサラサラになるからって真奈が言ってきて。私も髪を洗ってあげるのは好きだからさ」
「へえ、そうなんですか」
僕も姉さんと一緒に入ったときはよく髪を洗ってもらっていたけど、昔は力任せに洗われたり、髪が長めということもあって琴葉と2人で遊ばれていたりしたな。
「ふああっ……」
「寝ない」
「すみません。気持ち良かったので、つい……」
「ははっ、褒め言葉として受け取っておくよ。あと、あくび可愛かった。そういえば、玲人君って寝るのが好きだよね。この前泊まったときだってぐっすりと眠っていたし。昨日の朝も私と樹里先輩が部屋に来たのに、起きる気配が全くなかったんだもん。先輩と一緒に寝顔の写真を撮りまくったよ」
昨日の朝にそんなことをしていたのか。部屋の中を盗撮されていることに比べれば可愛いことなので、そのくらいは大目に見ておこう。
「さっ、シャンプーの泡を落とすから目をしっかりと瞑りましょうね。できるかな?」
「……そのくらいできますって」
まったく、子供扱いしないでほしい。
彼女の言うようにしっかりと両眼を瞑ると、温かいお湯がかかる。沙奈会長の手触りの良さもあってかまた――。
「冷たっ!」
「眠りそうだったからね。ふふっ、今夜は玲人君を寝かさないつもりだったけど、これは早々に寝ちゃうパターンかも」
「早く寝ても、ベッドで水をかけないでくださいよ」
「かけないかけない。むしろ、ベッドの上で液体をかけるのは玲人君の方でしょ? ……はい、終わったよ。拭くね」
沙奈会長を拭いてもらう。何から何までやってもらっているなぁ。ただ、とても手際が良く、真奈ちゃんにもこういう風にしてあげているのかなと思った。
「こうして間近で見てみると、本当に綺麗に染まってるね」
「初めてやったんですけどね。結構気に入っています。校則違反でもないですし、しばらくは金髪のままでいようかなと思います」
「そっか。黒に戻してもいいかなって思ったけど、玲人君が気に入っている髪が一番いいよね。黒髪の玲人君が見たくなったら、演劇部からカツラを借りて付けさせればいいし」
部活に入ろうとは全然考えていなかったので、月野学園にどんな部活があるのか全然覚えていない。新入生歓迎会で部活紹介があったけど。
「よし、これで髪はいいかな。次は背中を流すけど、玲人君のために2つのコースを用意しています。柔らかいコースともっと柔らかいコースなんだけどどっちがいい?」
選ぶのに悩んでしまうコース名だな。もう少し違いがはっきりと分かるコース名にできないものか。
「それぞれのコースの内容は?」
「柔らかいコースは玲人君が私にしてくれたように、このボディータオルで背中を流すの。それで、もっと柔らかいコースは背中を流すのに私の体を使うの。玲人君とは違って私には2つのたわわがあるから、それを使うことになるかなぁ」
やっぱり。そんなことだろうと思ったよ。
「ボディータオルを使う柔らかいコースでお願いします」
「分かったよ。じゃあ、もっと柔らかいコースはまた後日だね。それじゃ、ボディータオルを使って背中を流すね。玲人君さえ良ければ、前の方も洗うけれど」
「背中だけを流してください」
「はーい」
沙奈会長に背中を流してもらうことに。この感触は僕の知っているボディータオルのものだ。安心した。
「さっきから思っているんだけど、意外と玲人君って筋肉質なんだね」
「2年近く体を鍛えましたからね。昔は細身だったんですが、逮捕されて禁固生活を送っている中、勉強以外は読書か筋トレくらいで。それに、出所してからも菅原達に絡まれてしまう可能性があったので、そこから切り抜けるためにも、体力と筋力を身につけておいた方がいいと思いまして」
「なるほどね。確かに、昨日もあなたを襲うために家の前に2人いたもんね」
「ええ。2人くらいだったら、気絶させられたと思いますよ。もちろん、血を流すことなく」
「……さも当然かのようにそう言える玲人君は凄いと思うよ」
「そうですかね?」
ナイフやカッターを持っている男4人を気絶させたゴンに比べたら、全然凄くないと思うけど。
「……凄いよ。その想いを胸に体を鍛え上げてさ。今の玲人君の話を聞いたら、もっと体に触れたくなってきちゃった」
「沙奈会長らしい感想ですね」
恋人として付き合い始めたから、これまで以上にスキンシップが激しくなりそうだ。出会った当初はそれが嫌で仕方なかったのに、今は嬉しいと思えるようになるとは。
「うん、このくらいでいいかな。前も洗っちゃう?」
「さすがに前は自分で洗いますよ。沙奈会長、ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして」
沙奈会長、とても嬉しそうだ。
前の方は自分で洗い、ボディーソープの泡をシャワーで流した。その間はずっと、湯船に浸かる沙奈会長から好奇な眼差しを向けられていた。
「さてと、僕も入りますね」
僕は沙奈会長と向かい合うようにして湯船に浸かる。彼女の脚に触れてしまうけど、この距離感もいいものだ。
「こうして一緒に湯船に浸かると凄く気持ちいいね、玲人君」
「そうですね。気持ちがまったりします」
「確かに。この前入ったときはゆったりできていいなって思ったけど、玲人君の脚が触れているのもいいもんだね」
沙奈会長はそう言うと嬉しそうな表情になり、段々と僕に近づいてきて、
「でも、玲人君とはもっと触れていたいんだ」
僕のことをぎゅっと抱きしめてきた。そのことで、沙奈会長から柔らかさと甘い匂いが感じられる。
「あぁ……幸せだな。玲人君と一緒にこうすることができて。それにお湯も気持ちいい。玲人君が思わず寝ちゃう気持ちも分かるなぁ」
「分かるでしょう? 実は僕も気持ち良くなっています。こうして一緒にお風呂に入るのってやっぱりいいですね」
僕も沙奈会長のことをそっと抱きしめる。誰かを抱きしめることって、こんなにも温かい気持ちになれるのか。抱きしめている相手が沙奈会長だからかもしれないけど。
「玲人君……」
僕の名前を呟くと沙奈会長はキスをしてきた。抱きしめるよりもキスの方がより温かい気持ちになるな。
「……凄く幸せ」
「僕も幸せですよ」
すると、沙奈会長は僕の顔を見つめながらにっこりと笑った。想いが重なったことで温もりは更に膨らんでいく。
ただ、お互いに一糸まとわぬ状態で抱きしめ合っているので、ドキドキする気持ちも大きくなる一途を辿っている。今夜、沙奈会長とどんな時間を過ごすんだろう。ただ、忘れられない夜になりそうな予感はしていたのであった。
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