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本編
第58話『恋人バス-前編-』
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まずは沙奈会長が先に髪と体を洗うことになったので、僕はシャワーを軽く浴びて湯船に浸かることに。
「ごめんね、さっさと洗っちゃうから」
「気にしないでください。ゆっくりと洗って大丈夫ですからね。僕、湯船に浸かるのは結構好きですし」
「うん、分かったよ。……見たくなったらいつでも見ていいからね、私の体。もう恋人同士だし。玲人君だったら、付き合っているかどうかなんて関係ないけどね」
「……気分次第で見たいと思います」
今、沙奈会長は僕に背を向けている状態だ。ただ、彼女の髪は長いため、背中はあまり見えていない。これは精神的にいいな。
そんなことを考えていると、沙奈会長は髪を洗い始めた。
今の沙奈会長を見ていると、髪を長く伸ばしていた時期の姉さんを思い出すな。泡で髪がまとまるから、色々な髪型を作って遊んでいたっけ。
「気分次第って言っておきながら、しっかりと見ているじゃない。玲人君も男の子だね」
一瞬、どうしてそんなことが分かるのかと思ったけど、鏡で僕のことを見ていたのか。鏡に映る沙奈会長の笑みが可愛らしい。
「昔は姉さんと入ることが多かったので、そのことを思い出していたんです」
「なるほどね。お姉様、玲人君のことが大好きみたいだもんね。昔からお姉様はああいう感じだったの?」
「ええ。昔はもっとベッタリしていました。一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり。姉さんとは4歳離れているなので、姉さんの友達とも同じようなことはしていましたね」
「……へえ、予想以上に玲人君は女の子慣れしているのね」
鏡越しで見てくる沙奈会長の鋭い目つきが恐ろしい。
「姉さんの友達と一緒に入ったのは7、8年くらい前が最後ですし。お互いに小学生くらいのときでしたから」
「小学生のときなら問題ないか。でも、羨ましいな。私も小さい頃の玲人君と一緒にお風呂に入りたかったよ! アルバムの玲人君も可愛かったし……」
小さい頃に沙奈会長と出会っていたら、琴葉と3人で一緒にお風呂に入っていたんだろうな。それで、僕の髪や体を2人が洗ってくれたのかな。そのときは、どっちが洗うか言い争っていそうな気がする。
「玲人君、楽しそうに笑っているけれどどうしたの?」
「色々なことを思い出しまして。子供のときは女の子とかあまり意識せずに遊んだなと。大きくなるとできることは多くなりますけど、することは減っていくんだなって」
僕は1年ほど禁固刑を受けていたから、そのときはできることが制限されていたけど。
「確かに、子供の頃は意識せずにしていたことも、今はしなくなることってあるよね。今だって、玲人君のこと……意識してるよ」
沙奈会長は洗った髪をヘアクリップでまとめながら笑っている。本当に……可愛い人だ、彼女は。
「ねえ、玲人君。背中を流してくれない?」
「分かりました。沙奈会長が流してほしいと言うならいいですけど……」
「うん、お願い」
まさか、沙奈会長の体を洗う展開になるとは。もしかして、さっきの話を聞いて体を洗ってほしくなったのかな。
湯船から出て僕は沙奈会長の背後に立つ。さっきは髪を下ろしていたのでよく見えなかったけれど、髪をまとめると、
「綺麗な背中だ……」
「……えっ? 玲人君って背中フェチなの?」
「そういうわけじゃないですけど。あっ、声に出ちゃっていましたか?」
「うん。はっきりと言ってたよ」
不意に背中のことを言われて恥ずかしかったのか、それとも嬉しかったのか……沙奈会長は頬を赤くしてはにかんでいた。
「あと、髪をまとめると印象が違いますね。とても可愛いと思います」
「そうかな?」
「ええ。そういえば、会長って小さい頃からロングヘアだったんですか?」
「そうだよ。でも、ポニーテールにしてみたり、おさげにしてみたり。サイドにまとめたこともあるかな。でも、髪を縛られる感覚がどうも気になってね。ただ、何も付けてないのも面白くないと思って、カチューシャを付けているの」
「色々と考えた末での、あの髪型だったんですね」
ポニーテールやおさげなど髪をまとめても似合いそうだ。ただ、ショートヘアはあまり似合わないかもしれない。
「じゃあ、背中を流しますね。たまに肩とか触っちゃうかもしれません」
「気にしないで。むしろ、どんどん触っていいくらいだから」
僕はボディータオルを使って沙奈会長の背中を洗い始める。女性の肌なので、できるだけ優しく丁寧に。
途中、会長の肩や腕のあたりに触ってしまうけど、結構スベスベしているな。
「こんな感じで大丈夫ですか?」
「うん、凄く気持ちいいよ。あと、私の裸を見た男の人はこれで2人目だよ」
「へ、へえ……」
ちょっと胸が締め付けられる。沙奈会長の裸を見た男の人って誰なんだ?
「ち、ちなみにその男の人って……?」
「お父さんだよ。幼稚園くらいまではたまに入っていたんだ」
「……なるほど」
哲也さんが男の人なのは間違っていないけど、紛らわしい言い方をしないでほしい。ただ、僕が他の女性の話をしているとき、沙奈会長が似たような思いを抱いていたのかもしれないってことは分かった。
「玲人君が2人目だって言ったのに、何を考えていたのかな? 可愛いな、玲人君は。ちなみに、玲人君はお姉様や恩田さんにも洗ってあげていたの?」
「ええ。ただ、小さい頃にですよ」
「そっか。小さい頃でも羨ましい。でも、これからは他の人が羨ましいって思えるほどに玲人君と一緒に過ごしたいって思ってる」
「……そうですか」
背中を洗い終わったので沙奈会長にボディータオルを渡す。
どうしようかな。一度、湯船に戻ろうか。でも、すぐに僕の髪や体を洗ってもらうことになるし。ううん。
「すぐに洗い終わるから、入らずに待てばいいんじゃないかな、玲人君」
「そうですね。入浴は好きですけど、入りすぎるとのぼせちゃいますからね」
迷っているように見えたのかな。
沙奈会長の言葉通り、湯船には入ることはせず、浴槽に寄り掛かる状態で座る。会長が体を洗っている様子を見たら、変な欲と罪悪感を抱いてしまうことになりそうなので、ゆっくりと目を瞑ることにした。
「あらあら、目を瞑っちゃって。可愛いね」
「今は目を瞑りたい気分なんです」
「そうなの? 温かいし眠っちゃわないようにね」
「分かりました」
昨日だったら色々とあって疲れていたので眠ってしまいそうだけれど、今日は全然疲れていないのでそんな心配は無用だろう。
「ふふん……」
沙奈会長、鼻歌を歌いながら体を洗っているのかな。知らない曲だけれど、こういう雰囲気のメロディー……僕好みだ。段々気持ち良くなってきて……ふわふわしてきた──。
「……くん。れいとくん」
「……えっ?」
「玲人君! 起きてよ!」
目を開けると、すぐ目の前に真剣な表情をした沙奈会長の姿が。気付けば、僕は床の上に横になっていた。
「良かったよ、玲人君。体を洗い終わって玲人君の方を見たら、玲人君の意識がなかったからさ。何度も声をかけたんだよ」
「ごめんなさい。湯船に浸かって体が温まっていましたし、沙奈会長の鼻歌が凄く心地よかったので寝ちゃったんですね。今も気持ちのいい目覚めでした」
「それなら良かったよ。これで起きなかったら、シャワー全開でお水をかけようかなって思っていたんだよ」
それは何とも強引な方法だ。良かった、かけられなくて。危うく風邪を引くところだった。そんなにも深く眠っていたんだな、僕。
「私が髪を洗っているときは肩まで湯船に浸かっていたし、お風呂の中の空気も温まってきたからのぼせちゃったのかと思って」
「いえいえ、むしろ気持ち良かったですから。でも、心配かけちゃいましたね。ごめんなさい」
「……いいんだよ。目を覚ましてくれて良かった」
すると、沙奈会長はほっと胸を撫で下ろす。そして、目に涙を浮かべながら笑顔になり、僕のことを抱きしめてきた。とても柔らかく感じる。ボディーソープの甘い匂いが僕を包み込む。
「体調は全然問題ありませんから」
「うん、分かった。じゃあ、部屋で話したように髪と体を洗ってあげるね」
「はい、お願いします」
僕の勝手なイメージだけど、沙奈会長は髪や体を洗うのが上手そうだから、気持ち良くなってまた眠ってしまわないように気を付けないと。そんなことを考えながら、僕はさっきまで彼女が座っていた椅子に座るのであった。
「ごめんね、さっさと洗っちゃうから」
「気にしないでください。ゆっくりと洗って大丈夫ですからね。僕、湯船に浸かるのは結構好きですし」
「うん、分かったよ。……見たくなったらいつでも見ていいからね、私の体。もう恋人同士だし。玲人君だったら、付き合っているかどうかなんて関係ないけどね」
「……気分次第で見たいと思います」
今、沙奈会長は僕に背を向けている状態だ。ただ、彼女の髪は長いため、背中はあまり見えていない。これは精神的にいいな。
そんなことを考えていると、沙奈会長は髪を洗い始めた。
今の沙奈会長を見ていると、髪を長く伸ばしていた時期の姉さんを思い出すな。泡で髪がまとまるから、色々な髪型を作って遊んでいたっけ。
「気分次第って言っておきながら、しっかりと見ているじゃない。玲人君も男の子だね」
一瞬、どうしてそんなことが分かるのかと思ったけど、鏡で僕のことを見ていたのか。鏡に映る沙奈会長の笑みが可愛らしい。
「昔は姉さんと入ることが多かったので、そのことを思い出していたんです」
「なるほどね。お姉様、玲人君のことが大好きみたいだもんね。昔からお姉様はああいう感じだったの?」
「ええ。昔はもっとベッタリしていました。一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり。姉さんとは4歳離れているなので、姉さんの友達とも同じようなことはしていましたね」
「……へえ、予想以上に玲人君は女の子慣れしているのね」
鏡越しで見てくる沙奈会長の鋭い目つきが恐ろしい。
「姉さんの友達と一緒に入ったのは7、8年くらい前が最後ですし。お互いに小学生くらいのときでしたから」
「小学生のときなら問題ないか。でも、羨ましいな。私も小さい頃の玲人君と一緒にお風呂に入りたかったよ! アルバムの玲人君も可愛かったし……」
小さい頃に沙奈会長と出会っていたら、琴葉と3人で一緒にお風呂に入っていたんだろうな。それで、僕の髪や体を2人が洗ってくれたのかな。そのときは、どっちが洗うか言い争っていそうな気がする。
「玲人君、楽しそうに笑っているけれどどうしたの?」
「色々なことを思い出しまして。子供のときは女の子とかあまり意識せずに遊んだなと。大きくなるとできることは多くなりますけど、することは減っていくんだなって」
僕は1年ほど禁固刑を受けていたから、そのときはできることが制限されていたけど。
「確かに、子供の頃は意識せずにしていたことも、今はしなくなることってあるよね。今だって、玲人君のこと……意識してるよ」
沙奈会長は洗った髪をヘアクリップでまとめながら笑っている。本当に……可愛い人だ、彼女は。
「ねえ、玲人君。背中を流してくれない?」
「分かりました。沙奈会長が流してほしいと言うならいいですけど……」
「うん、お願い」
まさか、沙奈会長の体を洗う展開になるとは。もしかして、さっきの話を聞いて体を洗ってほしくなったのかな。
湯船から出て僕は沙奈会長の背後に立つ。さっきは髪を下ろしていたのでよく見えなかったけれど、髪をまとめると、
「綺麗な背中だ……」
「……えっ? 玲人君って背中フェチなの?」
「そういうわけじゃないですけど。あっ、声に出ちゃっていましたか?」
「うん。はっきりと言ってたよ」
不意に背中のことを言われて恥ずかしかったのか、それとも嬉しかったのか……沙奈会長は頬を赤くしてはにかんでいた。
「あと、髪をまとめると印象が違いますね。とても可愛いと思います」
「そうかな?」
「ええ。そういえば、会長って小さい頃からロングヘアだったんですか?」
「そうだよ。でも、ポニーテールにしてみたり、おさげにしてみたり。サイドにまとめたこともあるかな。でも、髪を縛られる感覚がどうも気になってね。ただ、何も付けてないのも面白くないと思って、カチューシャを付けているの」
「色々と考えた末での、あの髪型だったんですね」
ポニーテールやおさげなど髪をまとめても似合いそうだ。ただ、ショートヘアはあまり似合わないかもしれない。
「じゃあ、背中を流しますね。たまに肩とか触っちゃうかもしれません」
「気にしないで。むしろ、どんどん触っていいくらいだから」
僕はボディータオルを使って沙奈会長の背中を洗い始める。女性の肌なので、できるだけ優しく丁寧に。
途中、会長の肩や腕のあたりに触ってしまうけど、結構スベスベしているな。
「こんな感じで大丈夫ですか?」
「うん、凄く気持ちいいよ。あと、私の裸を見た男の人はこれで2人目だよ」
「へ、へえ……」
ちょっと胸が締め付けられる。沙奈会長の裸を見た男の人って誰なんだ?
「ち、ちなみにその男の人って……?」
「お父さんだよ。幼稚園くらいまではたまに入っていたんだ」
「……なるほど」
哲也さんが男の人なのは間違っていないけど、紛らわしい言い方をしないでほしい。ただ、僕が他の女性の話をしているとき、沙奈会長が似たような思いを抱いていたのかもしれないってことは分かった。
「玲人君が2人目だって言ったのに、何を考えていたのかな? 可愛いな、玲人君は。ちなみに、玲人君はお姉様や恩田さんにも洗ってあげていたの?」
「ええ。ただ、小さい頃にですよ」
「そっか。小さい頃でも羨ましい。でも、これからは他の人が羨ましいって思えるほどに玲人君と一緒に過ごしたいって思ってる」
「……そうですか」
背中を洗い終わったので沙奈会長にボディータオルを渡す。
どうしようかな。一度、湯船に戻ろうか。でも、すぐに僕の髪や体を洗ってもらうことになるし。ううん。
「すぐに洗い終わるから、入らずに待てばいいんじゃないかな、玲人君」
「そうですね。入浴は好きですけど、入りすぎるとのぼせちゃいますからね」
迷っているように見えたのかな。
沙奈会長の言葉通り、湯船には入ることはせず、浴槽に寄り掛かる状態で座る。会長が体を洗っている様子を見たら、変な欲と罪悪感を抱いてしまうことになりそうなので、ゆっくりと目を瞑ることにした。
「あらあら、目を瞑っちゃって。可愛いね」
「今は目を瞑りたい気分なんです」
「そうなの? 温かいし眠っちゃわないようにね」
「分かりました」
昨日だったら色々とあって疲れていたので眠ってしまいそうだけれど、今日は全然疲れていないのでそんな心配は無用だろう。
「ふふん……」
沙奈会長、鼻歌を歌いながら体を洗っているのかな。知らない曲だけれど、こういう雰囲気のメロディー……僕好みだ。段々気持ち良くなってきて……ふわふわしてきた──。
「……くん。れいとくん」
「……えっ?」
「玲人君! 起きてよ!」
目を開けると、すぐ目の前に真剣な表情をした沙奈会長の姿が。気付けば、僕は床の上に横になっていた。
「良かったよ、玲人君。体を洗い終わって玲人君の方を見たら、玲人君の意識がなかったからさ。何度も声をかけたんだよ」
「ごめんなさい。湯船に浸かって体が温まっていましたし、沙奈会長の鼻歌が凄く心地よかったので寝ちゃったんですね。今も気持ちのいい目覚めでした」
「それなら良かったよ。これで起きなかったら、シャワー全開でお水をかけようかなって思っていたんだよ」
それは何とも強引な方法だ。良かった、かけられなくて。危うく風邪を引くところだった。そんなにも深く眠っていたんだな、僕。
「私が髪を洗っているときは肩まで湯船に浸かっていたし、お風呂の中の空気も温まってきたからのぼせちゃったのかと思って」
「いえいえ、むしろ気持ち良かったですから。でも、心配かけちゃいましたね。ごめんなさい」
「……いいんだよ。目を覚ましてくれて良かった」
すると、沙奈会長はほっと胸を撫で下ろす。そして、目に涙を浮かべながら笑顔になり、僕のことを抱きしめてきた。とても柔らかく感じる。ボディーソープの甘い匂いが僕を包み込む。
「体調は全然問題ありませんから」
「うん、分かった。じゃあ、部屋で話したように髪と体を洗ってあげるね」
「はい、お願いします」
僕の勝手なイメージだけど、沙奈会長は髪や体を洗うのが上手そうだから、気持ち良くなってまた眠ってしまわないように気を付けないと。そんなことを考えながら、僕はさっきまで彼女が座っていた椅子に座るのであった。
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