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特別編-Green Days-
第7話『衣装合わせ』
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「このくらいで十分だと思う。ありがとう、逢坂君」
「最初に比べると凄く良くなった気がします。本番も頑張ってくださいね」
「うん。……あれ? 樹里と真奈ちゃんと麻実さんは?」
「隣のウォークインクローゼットに行きましたよ。コスプレ衣装を着て、サイズが大丈夫かどうか確認するために」
「なるほどね、分かった」
そういえば、今日はコスプレ衣装のサイズが大丈夫かどうか確認するために来たんだった。有村さんの告白の練習に付き合っていたのですっかり忘れていたよ。とりあえずは3人が戻ってくるまではここでゆっくりしていよう。
「それにしても、玲人君。黒髪でもとてもかっこいいね。何だか、黒髪の玲人君を見ていると、私のことをお姉ちゃんって呼んでほしくなっちゃうな」
「逢坂君には麻実さんっていうお姉さんがいるから、自分も呼んでほしいみたいな?」
「そんな感じですね」
普段はともかく、生徒会の仕事をしているときはとても頼りになるので、お姉さんというイメージは強いかな。
「でも、あたしも一人っ子だし、沙奈ちゃんの気持ちは分かるなぁ。もちろん、部活で先輩って呼ばれるけど、お姉ちゃんはないから」
「咲希先輩もそう言っているんだし、さあ、玲人君! 咲希先輩と私のことをお姉ちゃんって呼んでみようか!」
「しょうがないですね」
まったく、有村さんの名前を出せば何でもやってくれると思っているのか。昔は姉さんのことも「お姉ちゃん」と呼んでいたので、さほど抵抗はない。
「……沙奈お姉ちゃん。咲希お姉ちゃん」
沙奈会長と有村さんの目をそれぞれしっかりと見ながら、お姉ちゃんと呼んでみた。ひさしぶりに言ってみると何だか気恥ずかしい。
「お姉ちゃんって呼ばれるとグッとくるね、沙奈ちゃん」
「そうですね。玲人君のお姉ちゃんになりたくなっちゃいますよ! 玲人君かわいい! そんな玲人君に沙奈お姉ちゃんがチューしちゃうよ!」
沙奈会長は僕のことを横からぎゅっと抱きしめてきて、頬にたくさんキスをしてくる。もしかしたら、さっきまで僕が有村さんの告白の練習に付き合っていたから、嫉妬の気持ちが溜まっていたのかもしれない。
「真奈ちゃんと麻実さんは大丈夫だったよ……って、沙奈ちゃんは何をやっているの? キスの仕方でも教えているのかな」
「いいえ。告白の練習が終わったので、玲人君を労っているんです。あと、玲人君にお姉ちゃん呼びしてもらったのが思いの外可愛くて……」
「ふふっ、なるほどね。黒髪で雰囲気も変わるもんね。こっちも、真奈ちゃんと麻実さんがセーラー服を着て雰囲気が変わったよ。ほら、2人とも入って」
「はーい!」
「こういう制服を着るのは高校を卒業したとき卒業以来だから、何だか不思議な感じだよ」
副会長さんに手招きをされ、『未必の恋』のキャラクターが通う高校の制服である水色のセーラー服を着た真奈ちゃんと姉さんが部屋の中に入ってくる。
「真奈もお姉様もよく似合っています! 可愛い!」
「そうだね! 2人とも高校にいそうだよね」
沙奈会長も有村さんも2人のセーラー服姿をスマートフォンで撮影している。僕も1枚撮っておくか。
「お姉ちゃん、咲希さん、ありがとうございます」
「似合うって言ってくれると嬉しいもんだね。写真を撮っているけれど、玲人はあたしや真奈ちゃんのセーラー服姿をどう思っているの?」
「姉さんも真奈ちゃんもとてもよく似合っているよ。2人とも高校にいそうだけど、こうして見てみると真奈ちゃんの方が先輩に見えるかな」
「おい玲人、それはどういうこと? あたしが子供っぽく見えるってこと?」
「そ、そんなことないって。真奈ちゃんが大人びて見えるんだよ」
「ふ~ん」
同じ制服を着ているので、さっきよりも真奈ちゃんの方が年上に見えるとは言えない。ただ、月野学園には真奈ちゃんのような大人っぽく見える生徒もいれば、姉さんのようなミニサイズな生徒もいる。
「じゃあ、次は咲希と沙奈ちゃんの確認をしようかな。麻実さんと真奈ちゃんはゆっくりしていてください。2人とも、ついてきて」
「うん」
「分かりました。玲人君、私のクレア姿、楽しみにしていてよね!」
「楽しみしていますよ。いってらっしゃい」
沙奈会長と有村さんは副会長さんに続く形で部屋を出ていった。
しかし、こうして改めて姉さんと真奈ちゃんを見てみると、制服がよく似合っているな。真奈ちゃんのコスプレする瑞希は同じ黒髪だけど、姉さんのコスプレする菜月は金髪。まあ、髪まで似せたコスプレ姿は明日のお楽しみにしておこう。
「姉さんも真奈ちゃんも制服のサイズは大丈夫だったんだね」
「はい。樹里さん、いつの間に採寸していたんだろうって思うほどにちょうどいいです」
「あたしもそういう感じかな。琴葉ちゃんも胸がちょっと大きいってことを除けば、あたしとさほど体格は変わらないし、たぶん大丈夫だと思うよ」
「それなら良かったよ。ところで、2人は『未必の恋』は小説で読んだり、アニメで観たりしたことはある?」
「あたしは昔、玲人から借りて原作小説を読んだよ」
「あたしはお姉ちゃんと一緒にアニメを観ましたね。コミカライズ版は買って読みましたね。昨日の夜もさらっと読み返しました。瑞希ちゃん、小説を考えるのに一生懸命で可愛いですよね」
「確かに。あたしがコスプレする菜月も2人の恋路を邪魔したりするけれど、愛嬌があって憎めないんだよね。小春ちゃんが可愛いから恋する理由も分かるし」
2人とも、自分がコスプレするキャラクターを気に入っているようで良かった。
例の事件がある前に『未必の恋』の原作小説を琴葉に貸した記憶があるので、琴葉も内容は覚えているはずだ。
姉さんと真奈ちゃんは写真を撮るなどして楽しんでいる。改めて思うけど、彼女達の衣装も副会長さんの手作りだなんて凄いな。2人の制服を観ただけで、アニメの色々なシーンを思い出したし。
「はーい、お待たせしました。咲希と沙奈ちゃんの衣装も大丈夫でした!」
サイズが大丈夫だったからなのか、思ったよりも早かったな。
副会長さんに続いて、沙奈会長と有村さんが入ってくる。
2人がコスプレするキャラクターであるクレアとアンナは同じ魔法学校に通っており、その制服を着ている。黒を基調としており、マントを羽織っているところがいかにも異世界の学校のように思える。さっそくスマートフォンで写真を撮ることに。
「お姉ちゃんも咲希さんも可愛いです!」
「2人とも背が高いし、スタイルもいいからかっこよくも見えるね。沙奈ちゃんのクレアはオリジナルよりもセクシーな感じもするけど、これはこれでかなり魅力的かな」
「ふふっ、ありがとうございます、お姉様、真奈ちゃん」
「同じ服を着たから、沙奈ちゃんの胸の大きさにいつも以上に嫉妬しているよ。本当に可愛いね」
有村さんは人差し指で沙奈会長の胸をつん、と押した。
「もう、咲希さんったら……」
さすがの沙奈会長も少し不満そうにして頬を膨らませている。あまり普段見せない表情なので何だか新鮮であり可愛らしいな。
「僕はスタイルのいいクレアも好きですよ、沙奈会長」
「ありがとう。玲人君がそう言ってくれるなんて凄く嬉しいよ」
僕が頭を撫でると、沙奈会長はにっこりとした笑みを浮かべる。クレアにコスプレをしているからか、アリシアがクレアのことを選んだのも少し分かったような気がした。
「咲希と沙奈ちゃんもサイズは大丈夫だったよ。じゃあ、残りは逢坂君だね。ついてきて」
「はい」
僕は副会長さんと一緒に、隣にあるウォークインクローゼットへと向かう。
「うわあっ、凄いですね」
「私服あるけれど、コスプレ衣装もたくさんあるからね」
扉が開いた瞬間、たくさんのコスプレ衣装が目に飛び込んできた。奥には私服として着そうなワンピースなどもあるし、カオスというイメージ通りだ。
「コスプレ衣装は全部作ったんですか?」
「うん。基本的には全部そうだね。……さっ、これが逢坂君に着てもらう、アリシアちゃんがよく着ているゴシックドレスだよ。それが靴」
「なかなか手が込んでいますね」
真奈ちゃんと姉さんが着る高校のセーラー服も、沙奈会長と咲希さんが着る魔法学校の制服もなかなかのクオリティだった。これもかなりの再現度なのだろう。
「見た目とか、沙奈ちゃんの話とかでおおよそのサイズを推測して作ったんだ」
「そうなんですね。さっそく着てみます」
「うん、よろしくね。外で待っているから」
副会長さんは部屋から出て行った。
それを確認して、僕はさっそくゴシックドレスを着てみることに。その際に黒髪のウィッグを外した。
「おお……」
一度も採寸されたわけでもないのに、サイズも合っているしとても着心地がいい。着る人間が男の僕であることを考慮してパッドが入っているのか。鏡で見ても、自然な胸の膨らみになっているな。靴も僕のサイズに合っている。
「副会長さん、ドレス着ましたよ」
「ちゃんと着られたね。というか、凄くキレイ……」
「ありがとうございます。このドレス、恐ろしいほどに僕にピッタリなサイズでした。4人の衣装もそうですけど、副会長さんって服飾についてかなり凄いスキルを持ってますね」
「ありがとう。好きでやっていたら、いつの間にかできちゃっただけだよ。ええと、どれどれ……」
すると、サイズなどのチェックをしているのか、副会長さんは舐めるようにしてドレス姿の僕のことを見てくる。
「大丈夫だね。明日はアリシアの髪型のウィッグを付けて、化粧すればいいかな。逢坂君、元々の顔がいいから、これはとても綺麗なアリシアになるよ」
「そうですかね。でも、化粧は僕が自分やります。……小学生の頃、姉さんや琴葉に無理矢理化粧させられた挙げ句に大笑いされたので、いっそのこと自分でやろうと思い母に教えてもらいました。多分、今でも一通りできると思います」
「それは凄いね! じゃあ、化粧は逢坂君に任せるよ。道具はあたしが持っていくから」
「分かりました」
まさか、化粧のスキルを16歳になって、コスプレという形で活用できるとは。手に技術を付けるのっていいものだなと思った。
「さっ、今の姿もとっても綺麗だから沙奈ちゃん達に見せないと」
「はいはい」
ウィッグを付けて、化粧をしたならまだしもドレスを着ただけでは、女装をしている逢坂玲人だ。どんな反応をされるか不安だな。
「みんなー、美しいドレス姿の逢坂君だよ!」
『おおっ……』
部屋に入った途端、沙奈会長達に好奇の目で見られ、スマートフォンで写真を撮られることに。特に沙奈会長は目を輝かせている。
「玲人君、すっごく綺麗だよ!」
「そうだよね、お姉ちゃん! ウィッグを付けてお化粧をしたら、どれだけ綺麗になるんだろう。楽しみ……」
「逢坂君、とっても綺麗だね。真奈ちゃんの言うように、明日が楽しみになってきた」
「昔のことを思い出したよ。琴葉ちゃんやあたしの友達と一緒に女の子の服を着せたことをさ。いくつになっても似合うのね……」
みんな好意的な感想を言ってくれて良かったよ。馬鹿にされたり、変に笑われたりするかもしれないって思っていたから。特に姉さん。
琴葉がこの姿を見たら喜んでくれるかな。笑顔にできれば何よりだ。
「玲人君の衣装のサイズは大丈夫そう? 見た目としてはピッタリだけど」
「ええ、とっても着心地がいいですよ。サイズもOKです」
「破れとかもなかったし大丈夫だよ。琴葉ちゃんもきっと大丈夫だと思うし、明日のコスプレはこれでいってみよう!」
『おー!』
みんなやる気いっぱいのようだ。似ているかどうかも重要かもしれないけれど、やってみたい気持ちとか、楽しい気持ちが大切なんだろうな。
どうやら、明日の同人誌即売会は無事にコスプレ参加できそうだ。草原めなか先生の作品は好きで魅力的なキャラクターも多いので、できれば、コスプレだけじゃなくて何冊か同人誌を買ってみたい。そんなことを思うのであった。
「最初に比べると凄く良くなった気がします。本番も頑張ってくださいね」
「うん。……あれ? 樹里と真奈ちゃんと麻実さんは?」
「隣のウォークインクローゼットに行きましたよ。コスプレ衣装を着て、サイズが大丈夫かどうか確認するために」
「なるほどね、分かった」
そういえば、今日はコスプレ衣装のサイズが大丈夫かどうか確認するために来たんだった。有村さんの告白の練習に付き合っていたのですっかり忘れていたよ。とりあえずは3人が戻ってくるまではここでゆっくりしていよう。
「それにしても、玲人君。黒髪でもとてもかっこいいね。何だか、黒髪の玲人君を見ていると、私のことをお姉ちゃんって呼んでほしくなっちゃうな」
「逢坂君には麻実さんっていうお姉さんがいるから、自分も呼んでほしいみたいな?」
「そんな感じですね」
普段はともかく、生徒会の仕事をしているときはとても頼りになるので、お姉さんというイメージは強いかな。
「でも、あたしも一人っ子だし、沙奈ちゃんの気持ちは分かるなぁ。もちろん、部活で先輩って呼ばれるけど、お姉ちゃんはないから」
「咲希先輩もそう言っているんだし、さあ、玲人君! 咲希先輩と私のことをお姉ちゃんって呼んでみようか!」
「しょうがないですね」
まったく、有村さんの名前を出せば何でもやってくれると思っているのか。昔は姉さんのことも「お姉ちゃん」と呼んでいたので、さほど抵抗はない。
「……沙奈お姉ちゃん。咲希お姉ちゃん」
沙奈会長と有村さんの目をそれぞれしっかりと見ながら、お姉ちゃんと呼んでみた。ひさしぶりに言ってみると何だか気恥ずかしい。
「お姉ちゃんって呼ばれるとグッとくるね、沙奈ちゃん」
「そうですね。玲人君のお姉ちゃんになりたくなっちゃいますよ! 玲人君かわいい! そんな玲人君に沙奈お姉ちゃんがチューしちゃうよ!」
沙奈会長は僕のことを横からぎゅっと抱きしめてきて、頬にたくさんキスをしてくる。もしかしたら、さっきまで僕が有村さんの告白の練習に付き合っていたから、嫉妬の気持ちが溜まっていたのかもしれない。
「真奈ちゃんと麻実さんは大丈夫だったよ……って、沙奈ちゃんは何をやっているの? キスの仕方でも教えているのかな」
「いいえ。告白の練習が終わったので、玲人君を労っているんです。あと、玲人君にお姉ちゃん呼びしてもらったのが思いの外可愛くて……」
「ふふっ、なるほどね。黒髪で雰囲気も変わるもんね。こっちも、真奈ちゃんと麻実さんがセーラー服を着て雰囲気が変わったよ。ほら、2人とも入って」
「はーい!」
「こういう制服を着るのは高校を卒業したとき卒業以来だから、何だか不思議な感じだよ」
副会長さんに手招きをされ、『未必の恋』のキャラクターが通う高校の制服である水色のセーラー服を着た真奈ちゃんと姉さんが部屋の中に入ってくる。
「真奈もお姉様もよく似合っています! 可愛い!」
「そうだね! 2人とも高校にいそうだよね」
沙奈会長も有村さんも2人のセーラー服姿をスマートフォンで撮影している。僕も1枚撮っておくか。
「お姉ちゃん、咲希さん、ありがとうございます」
「似合うって言ってくれると嬉しいもんだね。写真を撮っているけれど、玲人はあたしや真奈ちゃんのセーラー服姿をどう思っているの?」
「姉さんも真奈ちゃんもとてもよく似合っているよ。2人とも高校にいそうだけど、こうして見てみると真奈ちゃんの方が先輩に見えるかな」
「おい玲人、それはどういうこと? あたしが子供っぽく見えるってこと?」
「そ、そんなことないって。真奈ちゃんが大人びて見えるんだよ」
「ふ~ん」
同じ制服を着ているので、さっきよりも真奈ちゃんの方が年上に見えるとは言えない。ただ、月野学園には真奈ちゃんのような大人っぽく見える生徒もいれば、姉さんのようなミニサイズな生徒もいる。
「じゃあ、次は咲希と沙奈ちゃんの確認をしようかな。麻実さんと真奈ちゃんはゆっくりしていてください。2人とも、ついてきて」
「うん」
「分かりました。玲人君、私のクレア姿、楽しみにしていてよね!」
「楽しみしていますよ。いってらっしゃい」
沙奈会長と有村さんは副会長さんに続く形で部屋を出ていった。
しかし、こうして改めて姉さんと真奈ちゃんを見てみると、制服がよく似合っているな。真奈ちゃんのコスプレする瑞希は同じ黒髪だけど、姉さんのコスプレする菜月は金髪。まあ、髪まで似せたコスプレ姿は明日のお楽しみにしておこう。
「姉さんも真奈ちゃんも制服のサイズは大丈夫だったんだね」
「はい。樹里さん、いつの間に採寸していたんだろうって思うほどにちょうどいいです」
「あたしもそういう感じかな。琴葉ちゃんも胸がちょっと大きいってことを除けば、あたしとさほど体格は変わらないし、たぶん大丈夫だと思うよ」
「それなら良かったよ。ところで、2人は『未必の恋』は小説で読んだり、アニメで観たりしたことはある?」
「あたしは昔、玲人から借りて原作小説を読んだよ」
「あたしはお姉ちゃんと一緒にアニメを観ましたね。コミカライズ版は買って読みましたね。昨日の夜もさらっと読み返しました。瑞希ちゃん、小説を考えるのに一生懸命で可愛いですよね」
「確かに。あたしがコスプレする菜月も2人の恋路を邪魔したりするけれど、愛嬌があって憎めないんだよね。小春ちゃんが可愛いから恋する理由も分かるし」
2人とも、自分がコスプレするキャラクターを気に入っているようで良かった。
例の事件がある前に『未必の恋』の原作小説を琴葉に貸した記憶があるので、琴葉も内容は覚えているはずだ。
姉さんと真奈ちゃんは写真を撮るなどして楽しんでいる。改めて思うけど、彼女達の衣装も副会長さんの手作りだなんて凄いな。2人の制服を観ただけで、アニメの色々なシーンを思い出したし。
「はーい、お待たせしました。咲希と沙奈ちゃんの衣装も大丈夫でした!」
サイズが大丈夫だったからなのか、思ったよりも早かったな。
副会長さんに続いて、沙奈会長と有村さんが入ってくる。
2人がコスプレするキャラクターであるクレアとアンナは同じ魔法学校に通っており、その制服を着ている。黒を基調としており、マントを羽織っているところがいかにも異世界の学校のように思える。さっそくスマートフォンで写真を撮ることに。
「お姉ちゃんも咲希さんも可愛いです!」
「2人とも背が高いし、スタイルもいいからかっこよくも見えるね。沙奈ちゃんのクレアはオリジナルよりもセクシーな感じもするけど、これはこれでかなり魅力的かな」
「ふふっ、ありがとうございます、お姉様、真奈ちゃん」
「同じ服を着たから、沙奈ちゃんの胸の大きさにいつも以上に嫉妬しているよ。本当に可愛いね」
有村さんは人差し指で沙奈会長の胸をつん、と押した。
「もう、咲希さんったら……」
さすがの沙奈会長も少し不満そうにして頬を膨らませている。あまり普段見せない表情なので何だか新鮮であり可愛らしいな。
「僕はスタイルのいいクレアも好きですよ、沙奈会長」
「ありがとう。玲人君がそう言ってくれるなんて凄く嬉しいよ」
僕が頭を撫でると、沙奈会長はにっこりとした笑みを浮かべる。クレアにコスプレをしているからか、アリシアがクレアのことを選んだのも少し分かったような気がした。
「咲希と沙奈ちゃんもサイズは大丈夫だったよ。じゃあ、残りは逢坂君だね。ついてきて」
「はい」
僕は副会長さんと一緒に、隣にあるウォークインクローゼットへと向かう。
「うわあっ、凄いですね」
「私服あるけれど、コスプレ衣装もたくさんあるからね」
扉が開いた瞬間、たくさんのコスプレ衣装が目に飛び込んできた。奥には私服として着そうなワンピースなどもあるし、カオスというイメージ通りだ。
「コスプレ衣装は全部作ったんですか?」
「うん。基本的には全部そうだね。……さっ、これが逢坂君に着てもらう、アリシアちゃんがよく着ているゴシックドレスだよ。それが靴」
「なかなか手が込んでいますね」
真奈ちゃんと姉さんが着る高校のセーラー服も、沙奈会長と咲希さんが着る魔法学校の制服もなかなかのクオリティだった。これもかなりの再現度なのだろう。
「見た目とか、沙奈ちゃんの話とかでおおよそのサイズを推測して作ったんだ」
「そうなんですね。さっそく着てみます」
「うん、よろしくね。外で待っているから」
副会長さんは部屋から出て行った。
それを確認して、僕はさっそくゴシックドレスを着てみることに。その際に黒髪のウィッグを外した。
「おお……」
一度も採寸されたわけでもないのに、サイズも合っているしとても着心地がいい。着る人間が男の僕であることを考慮してパッドが入っているのか。鏡で見ても、自然な胸の膨らみになっているな。靴も僕のサイズに合っている。
「副会長さん、ドレス着ましたよ」
「ちゃんと着られたね。というか、凄くキレイ……」
「ありがとうございます。このドレス、恐ろしいほどに僕にピッタリなサイズでした。4人の衣装もそうですけど、副会長さんって服飾についてかなり凄いスキルを持ってますね」
「ありがとう。好きでやっていたら、いつの間にかできちゃっただけだよ。ええと、どれどれ……」
すると、サイズなどのチェックをしているのか、副会長さんは舐めるようにしてドレス姿の僕のことを見てくる。
「大丈夫だね。明日はアリシアの髪型のウィッグを付けて、化粧すればいいかな。逢坂君、元々の顔がいいから、これはとても綺麗なアリシアになるよ」
「そうですかね。でも、化粧は僕が自分やります。……小学生の頃、姉さんや琴葉に無理矢理化粧させられた挙げ句に大笑いされたので、いっそのこと自分でやろうと思い母に教えてもらいました。多分、今でも一通りできると思います」
「それは凄いね! じゃあ、化粧は逢坂君に任せるよ。道具はあたしが持っていくから」
「分かりました」
まさか、化粧のスキルを16歳になって、コスプレという形で活用できるとは。手に技術を付けるのっていいものだなと思った。
「さっ、今の姿もとっても綺麗だから沙奈ちゃん達に見せないと」
「はいはい」
ウィッグを付けて、化粧をしたならまだしもドレスを着ただけでは、女装をしている逢坂玲人だ。どんな反応をされるか不安だな。
「みんなー、美しいドレス姿の逢坂君だよ!」
『おおっ……』
部屋に入った途端、沙奈会長達に好奇の目で見られ、スマートフォンで写真を撮られることに。特に沙奈会長は目を輝かせている。
「玲人君、すっごく綺麗だよ!」
「そうだよね、お姉ちゃん! ウィッグを付けてお化粧をしたら、どれだけ綺麗になるんだろう。楽しみ……」
「逢坂君、とっても綺麗だね。真奈ちゃんの言うように、明日が楽しみになってきた」
「昔のことを思い出したよ。琴葉ちゃんやあたしの友達と一緒に女の子の服を着せたことをさ。いくつになっても似合うのね……」
みんな好意的な感想を言ってくれて良かったよ。馬鹿にされたり、変に笑われたりするかもしれないって思っていたから。特に姉さん。
琴葉がこの姿を見たら喜んでくれるかな。笑顔にできれば何よりだ。
「玲人君の衣装のサイズは大丈夫そう? 見た目としてはピッタリだけど」
「ええ、とっても着心地がいいですよ。サイズもOKです」
「破れとかもなかったし大丈夫だよ。琴葉ちゃんもきっと大丈夫だと思うし、明日のコスプレはこれでいってみよう!」
『おー!』
みんなやる気いっぱいのようだ。似ているかどうかも重要かもしれないけれど、やってみたい気持ちとか、楽しい気持ちが大切なんだろうな。
どうやら、明日の同人誌即売会は無事にコスプレ参加できそうだ。草原めなか先生の作品は好きで魅力的なキャラクターも多いので、できれば、コスプレだけじゃなくて何冊か同人誌を買ってみたい。そんなことを思うのであった。
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