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4 ニコル
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夢を見た。
『エドガー教官! 俺のどこを好きになったんですか?』
これは付き合い始めた最初の頃に質問した時の記憶だ。
『んー? どこを好きになったと言われたら顔、かな』
『え、えぇ!? 顔!? 他にないんですか!?』
俺はその答えが気に食わなくてしつこく食い下がったんだったな。
そしたらエドガー隊長は困った顔で笑った。
『まぁ、最初は顔が好きだったんだが、突き詰めれば何でも一生懸命にがんばるところかな』
『そ、そっか』
『聞いてきたくせに顔を真っ赤にするなよ』
隊長はそう言って笑って俺の頭をかき乱した。
今にして思えば、この顔がエドガー隊長の好みなら良いことだ。
それにエドガー隊長は何でも一生懸命に頑張る人が好きなんだから、その通りに頑張ればこの世界でも俺を好きと言ってくれるかもしれない。
俺は走り込みも、素振りも、格闘技も、筋トレも、前の世界の時以上に頑張った。
だけど、何をやってもうまくいかなかった。
俺が頑張ることをクラスの奴らは教官に取り入ろうとしていると判断して、徹底的に無視しだした。
俺は孤立した。
唯一俺と話してくれる相手は1学年上のニコルだった。
ニコルは前の世界でも俺と仲良くしてくれていた。
実家は伯爵家だと言っていたけど、気取らない態度でいろいろなことを教えてくれた。
この世界でもニコルは食堂で気さくに話しかけてくれて仲良くなった。
だけど如何せん、学年が違うので関わる機会も少なく、俺は学校にいるほとんどの時間を1人で過ごした。
ある日、毎朝の日課の走り込みの最中、偶然にもエドガー隊長の走り込みと遭遇した。
「おはようございます! た…教官!」
「……ああ」
俺を一瞥して速度を上げた隊長に俺は負けじとついて走った。
「なぜついてくる」
「一緒に走った方が楽しいじゃないですかっ」
「そんなことはない。ついてくるな」
「教官がどんな感じで走ってるのか、知ったら勉強になります! お願いします!」
さらに速度を上げて俺を振り切ろうとする隊長の後を追いかけて走るのは楽しかった。
毎日走り込みをしていた甲斐があったと言うものだ。
だけど途中から俺は息切れが辛くなってきて、隊長は息切れ一つせずに黙々と走っていた。
やっぱ、エドガー隊長はかっこいいな。
俺も、こんな男になりたい。
前の時も、今も、俺への態度は違ってもやっぱりエドガー隊長の尊敬できるところは何一つ変わってなくて、俺の心はギュッと締め付けられるようだった。
「俺、エドガー教官みたいになりたいです! 好きです!」
「前も言ったが俺は好きじゃない」
「どうすれば好きになってもらえるんですか!」
「俺が君を好きになることなんて一生ないよ」
隊長。俺のこと好きになること一生ないなんてことはないよ。
俺が絶対好きだと言わせて見せるから。
意識して息切れを聞かせないように話すと、もう苦しくて仕方なくて息の仕方を忘れたように辛くなった。もう2人っきりで結構いられたから、これ以上邪魔をするのはよそう。
俺は立ち止まった。
そんな俺を気にする様子もなく、エドガー隊長の背中はどんどんと小さくなっていく。
急に止まるのは良くないので、歩こうと思って1歩踏み出そうとした時、視界がブラックアウトした。
『エドガー教官! 俺のどこを好きになったんですか?』
これは付き合い始めた最初の頃に質問した時の記憶だ。
『んー? どこを好きになったと言われたら顔、かな』
『え、えぇ!? 顔!? 他にないんですか!?』
俺はその答えが気に食わなくてしつこく食い下がったんだったな。
そしたらエドガー隊長は困った顔で笑った。
『まぁ、最初は顔が好きだったんだが、突き詰めれば何でも一生懸命にがんばるところかな』
『そ、そっか』
『聞いてきたくせに顔を真っ赤にするなよ』
隊長はそう言って笑って俺の頭をかき乱した。
今にして思えば、この顔がエドガー隊長の好みなら良いことだ。
それにエドガー隊長は何でも一生懸命に頑張る人が好きなんだから、その通りに頑張ればこの世界でも俺を好きと言ってくれるかもしれない。
俺は走り込みも、素振りも、格闘技も、筋トレも、前の世界の時以上に頑張った。
だけど、何をやってもうまくいかなかった。
俺が頑張ることをクラスの奴らは教官に取り入ろうとしていると判断して、徹底的に無視しだした。
俺は孤立した。
唯一俺と話してくれる相手は1学年上のニコルだった。
ニコルは前の世界でも俺と仲良くしてくれていた。
実家は伯爵家だと言っていたけど、気取らない態度でいろいろなことを教えてくれた。
この世界でもニコルは食堂で気さくに話しかけてくれて仲良くなった。
だけど如何せん、学年が違うので関わる機会も少なく、俺は学校にいるほとんどの時間を1人で過ごした。
ある日、毎朝の日課の走り込みの最中、偶然にもエドガー隊長の走り込みと遭遇した。
「おはようございます! た…教官!」
「……ああ」
俺を一瞥して速度を上げた隊長に俺は負けじとついて走った。
「なぜついてくる」
「一緒に走った方が楽しいじゃないですかっ」
「そんなことはない。ついてくるな」
「教官がどんな感じで走ってるのか、知ったら勉強になります! お願いします!」
さらに速度を上げて俺を振り切ろうとする隊長の後を追いかけて走るのは楽しかった。
毎日走り込みをしていた甲斐があったと言うものだ。
だけど途中から俺は息切れが辛くなってきて、隊長は息切れ一つせずに黙々と走っていた。
やっぱ、エドガー隊長はかっこいいな。
俺も、こんな男になりたい。
前の時も、今も、俺への態度は違ってもやっぱりエドガー隊長の尊敬できるところは何一つ変わってなくて、俺の心はギュッと締め付けられるようだった。
「俺、エドガー教官みたいになりたいです! 好きです!」
「前も言ったが俺は好きじゃない」
「どうすれば好きになってもらえるんですか!」
「俺が君を好きになることなんて一生ないよ」
隊長。俺のこと好きになること一生ないなんてことはないよ。
俺が絶対好きだと言わせて見せるから。
意識して息切れを聞かせないように話すと、もう苦しくて仕方なくて息の仕方を忘れたように辛くなった。もう2人っきりで結構いられたから、これ以上邪魔をするのはよそう。
俺は立ち止まった。
そんな俺を気にする様子もなく、エドガー隊長の背中はどんどんと小さくなっていく。
急に止まるのは良くないので、歩こうと思って1歩踏み出そうとした時、視界がブラックアウトした。
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