パラレルワールドの世界で俺はあなたに嫌われている

いちみやりょう

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船で島に入ってから山を越えた島の反対側にあるゴールまで向かう訓練で、途中は険しい道のりだ。山の中に道なんてものはないし、1歩踏み間違えると断崖絶壁から真っ逆さまなんて場所もある。おまけに大きな島なので野生動物なんかもかなり生息していて危ない。
食事や飲み物は各自調達だ。
途中棄権をしたかったら手持ちの信号弾を空に向かって放てばいいけど、棄権をしたらその時点で退学となる。

当然俺は1位を目指しているので、スタートの合図が出た瞬間には走り出した。

「うわあ! ってぇな。何すんだよ!」

走り出した俺の足をクラスメイトの一人、伯爵家出身のジェロームが引っ掛けて俺をわざと転ばせた。

「すまないね。平民の分際で僕たちより先に出発しようとしたから身の程を弁えさせてあげようと思って」

奴は謝っている割には悪びれもせずにそう言った。
奴の取り巻きもうんうんとうなずいている。

「あっそ。そんなことやっても俺には勝てねぇと思うけど。じゃ、先に行くな?」
「お、おい!! お前、生意気なんだよ!!」

尚も時間を取らせようとしてくるのを無視して走り出した。
こんな奴らには構ってる時間はない。

一応、一人一つ船で配られたリュックの中には、信号弾やライト、ファイヤースターター、ナイフ、1日分の着替え、コンパスやロープなどが入っていて結構な重さを持っていた。

とりあえず食べられる草を見つけたら取りつつ進んでいるとだいぶ後ろの方で叫び声が聞こえた。

「ああ。ありゃジェロームの声だ」

放置してもいいのだが、何となく寝覚めも悪い気がして俺はきた道を引き返した。

「こりゃ1位は無理かな。卒業後はエドガー隊長の隊に入りたかったけど」

一人愚痴をこぼしながら、先日声が上がっただろう地点に着くと、ジェロームたちが大きな熊と対峙していた。
俺たちに与えられた武器といえば小さなナイフくらいで、ジェロームたちが怖がるのは無理なかった。
とは言っても俺は前の世界でエドガー隊長の隊にいる頃、こんな出来事は日常茶飯事で起こっていたので冷静に対処できた。

だが、俺の戦いの惨さにジェローム他数名は嘔吐するものも居て大変だった。

「た、助けてくれなんて頼んでいないからな!」
「そうか。じゃあ次からはしねぇよ。ほら、熊の肉を持って行っとけ。どうせ1人じゃ多すぎる」
「お前からの施しなんて受ける訳ないだろ!?」

何がそんなに気にくわないのかジェロームは取り巻きを引き連れて先へ行ってしまった。
俺はせっかくなので仕留めた熊の肉を小分けにしてリュックに入っていた塩で保存食用の干し肉にしてから持てる分は持って出発した。
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