僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

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世の中には不要な存在というのが存在する。
僕がそうだ。
僕は生きているだけで人を不快にする。
人を不快にしないように。どれだけそう気をつけていても、どうしてだかいつもうまくいかない。人とうまく話せない。
ぼーっと生きているから死にかけることも多くて、その度に面倒ごとを増やすなと両親から叱られていた。

だけど、高校で出会った青砥だけは違った。
青砥だけは僕の話を怒らずにゆっくりと待って最後まで聞いていてくれた。
僕が食べたいものを一緒にゆっくり食べてくれたし、僕を殴ったりしないし、勉強ができなくても、常識が分からなくても怒ったりしなかった。

青砥はとても優しかった。
だから、青砥に一世一代の告白をして、受け入れてもらえた時は本当に天にも登る気持ちで幸せだった。

青砥に食べてもらいたくて料理も練習して弁当を作って大学で一緒に食べたりもした。

「本当に美味しいよ。千景は器用だなぁ」

美味しそうに食べてくれる青砥が大好きだった。

「はぁ……いい匂い。千景の匂いは本当にいい匂いだ」
「ん……、恥ずかしいよ」

青砥はいつもこうやって僕の匂いを嗅いでくる。
僕のオメガのフェロモンの匂いなんて嗅ぎ分けてくれる人はいないのに、本当に青砥は特別な人だ。

「可愛い。愛してるよ、千景」
「僕も、青砥が大好き。ずっと一緒にいたいなぁ」
「そうだね。ずっと一緒にいようね千景」

僕はその言葉を信じてたんだ。
ずっと一緒にいられると信じていたんだ。

「もって1年です」

胸が痛くて病院に行った僕に医師は淡々と言った。
僕は今まで何度も何度も死にかけた。
車に轢かれそうになったことも何度もあるし、工事現場の鉄柱が上から落ちてきて辛うじて僕にあたらなかったこともある。ひどい風邪をこじらせて40度近い高熱が何日も続いたこともある。

その度にしぶとく生きてきたけれど、今回ばかりは無理そうだ。
だって、お医者さんがそう言うんだから。

せっかく。

せっかく青砥と出会えたのに。
まだ、2年しか一緒に居れていないのに。

それでも頑張ればあと1年は一緒にいられるんだ。
その1年で思い出をたくさん作ろう。

そうなんとか気持ちを持ち直した。

だけど悪いことは続くんだ。
僕はそんなこと知っていたはずなのに、ショックがデカすぎて忘れていた。

『話がある』

病院から出た僕がスマホを確認すると、青砥からメッセージが届いていた。
いつもより硬い文面に僕は嫌な予感がした。

待ち合わせ場所は近くの公園だった。

「千景、ごめん。ごめんね」
「青砥……どうしたの?」

青砥は困った顔で笑って、もう一度僕に“ごめん”と謝った。

「俺、和樹と付き合うことにした。だから、ごめん」
「そんな……。もう僕のことは好きじゃないってこと?」
「……ごめん」

青砥は僕が何を聞いてもごめんとしか返さなかった。
青砥の中に、僕への思いはもうなかった。

「……そっか。分かった。幸せにね」

僕はそう言うしかなかった。
ここですがり付いて、青砥が僕と付き合い続けてくれても、どうせ1年後には死んでしまうから。

「ありがとう、千景」

青砥はそう言って笑った。
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