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第6章
65.終幕の始まり
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◆◆◆
『石柱の剣を繋いでいた紐を切ったのは、マイカだったそうだ』
麗らかな光が満ちる朝。ヨルンが起こした火事から、既に数日が経過している。
神域のテラスで朝食をいただいていると、感情を削ぎ落としたような無表情で、フレイムが言った。彼はこの数日間、度々神域からいなくなっていた。忙しいのかと思っていたが、もしやこの件の確認もあったのだろうか。そういえば、天の神々も何となく落ち着かない雰囲気を纏っている。
『調査役の精霊が紐を過去視で調べたら、霊威を使って遠くから切断する所が視えたらしい。マイカ自身は知らないと叫んで否定してるらしいがな』
「当事者が違うと行っているなら、再捜査した方が良いのではないかしら?」
シュガーバターをたっぷり染み込ませて焼き上げたトーストに、これまた甘いクリームを付けていたアマーリエは、食事の手を止めて提案した。
『上位の精霊が複数体で過去視をして、視えた光景が一致してたらしいんだがな』
「それでも、冤罪の可能性が少しでもあるなら、神も一緒に確認して最後まで調べるべきよ。……私も、妹が破損させた家具をお前が壊したと両親に決め付けられて、辛かったことがあるわ」
フレイムが言葉に詰まった。彼自身も類似の経験があるはずだ。精霊時代には、備品の紛失や破損、失敗の責任を押し付けられて濡れ衣を着せられたことがあると、以前嵐神から聞いた。
『……大精霊も加えてもう一度調べるよう通達を出しとく』
抑えた声で告げたフレイムは、つと表情を改めてアマーリエを見た。
『なあユフィー。今日は俺とラミルファ、それに狼神様から大事な話があるんだ』
「ラミルファ様と狼神様も?」
『ああ。朝食が終わる頃に来ると思うから、聞いてくれないか。リーリアやランドルフたち現役の聖威師も呼ぶ。先達の聖威師代表としてセインもな。ミンディたちは地上番でいないから仕方ねえけど』
現在は神器暴走が落ち着いているため、場数を踏んでもらう意味も込め、新米聖威師5人の地上番を多めにしたのだ。ラモスとディモスも、新米たちのフォローをするよう頼んで共に神官府に行ってもらっている。
なお、ちびっ子5人は市井の出なので、聖威師どころか神官としても新米だ。せっかく天にいるのだから、かつてのフルードやアリステルと同様、神々に修行を付けてもらった方が良いのではないかとも思ったが、彼ら自身が地上番をたくさんこなしたいと希望を出して来た。
どうもあの兄弟姉妹たちは、どんどん現場に出て実践を積みながら覚えていきたいタイプのようだ。そこは各々の性格や考え方なので、できる限り意向に沿うようにしている。ちびっ子たちの主神も、愛し子のたっての望みであるため、不承不承ながら容認してくれていた。本当は一日でも多く天界にいて欲しいだろうが。
(地上で問題が起きたという連絡は来ていないし、今のところは大丈夫そうだわ。あの子たちの義姉と主家の子どももばっちり処分を受けたしね)
ランドルフから連絡を受けた主任神官と副主任神官が急ぎ調査したところ、神々に手当たり次第念話を送り、愛し子にして欲しいと売り込んでいたのは、やはり彼らだった。全員もれなく降格となり、僻地の神官府で雑用係をさせられることになったらしい。転移を使えば遠方にある神官府にも問題なく通える。
強い霊威を持っていたがゆえに親の連鎖を免れ、高い地位の神官として厚遇されていた彼らだが、神を辟易させた時点で、どれだけ強大な霊威を持っていようが無意味になる。今後這い上がることは難しいだろう。
そんなことをツラツラ考えつつ、フレイムに向かって頷く。
「ええ、分かったわ……何だか大掛かりだけれど、どうしたの?」
『聞けば分かるさ。あんま堅苦しい感じにはしたくねえから、ここの神苑に話し合いの場所を作るな』
果てのない広さを誇るフレイムの神苑には、ガーデンパーティーを開ける場所が幾つもある。その一つを使うという。
「ガーデンミーティングね。開放的で良いと思うわ」
(一体何の話かしら?)
首を傾げながら、アマーリエは付け合わせの半熟ポーチドエッグサラダを頬張った。
『石柱の剣を繋いでいた紐を切ったのは、マイカだったそうだ』
麗らかな光が満ちる朝。ヨルンが起こした火事から、既に数日が経過している。
神域のテラスで朝食をいただいていると、感情を削ぎ落としたような無表情で、フレイムが言った。彼はこの数日間、度々神域からいなくなっていた。忙しいのかと思っていたが、もしやこの件の確認もあったのだろうか。そういえば、天の神々も何となく落ち着かない雰囲気を纏っている。
『調査役の精霊が紐を過去視で調べたら、霊威を使って遠くから切断する所が視えたらしい。マイカ自身は知らないと叫んで否定してるらしいがな』
「当事者が違うと行っているなら、再捜査した方が良いのではないかしら?」
シュガーバターをたっぷり染み込ませて焼き上げたトーストに、これまた甘いクリームを付けていたアマーリエは、食事の手を止めて提案した。
『上位の精霊が複数体で過去視をして、視えた光景が一致してたらしいんだがな』
「それでも、冤罪の可能性が少しでもあるなら、神も一緒に確認して最後まで調べるべきよ。……私も、妹が破損させた家具をお前が壊したと両親に決め付けられて、辛かったことがあるわ」
フレイムが言葉に詰まった。彼自身も類似の経験があるはずだ。精霊時代には、備品の紛失や破損、失敗の責任を押し付けられて濡れ衣を着せられたことがあると、以前嵐神から聞いた。
『……大精霊も加えてもう一度調べるよう通達を出しとく』
抑えた声で告げたフレイムは、つと表情を改めてアマーリエを見た。
『なあユフィー。今日は俺とラミルファ、それに狼神様から大事な話があるんだ』
「ラミルファ様と狼神様も?」
『ああ。朝食が終わる頃に来ると思うから、聞いてくれないか。リーリアやランドルフたち現役の聖威師も呼ぶ。先達の聖威師代表としてセインもな。ミンディたちは地上番でいないから仕方ねえけど』
現在は神器暴走が落ち着いているため、場数を踏んでもらう意味も込め、新米聖威師5人の地上番を多めにしたのだ。ラモスとディモスも、新米たちのフォローをするよう頼んで共に神官府に行ってもらっている。
なお、ちびっ子5人は市井の出なので、聖威師どころか神官としても新米だ。せっかく天にいるのだから、かつてのフルードやアリステルと同様、神々に修行を付けてもらった方が良いのではないかとも思ったが、彼ら自身が地上番をたくさんこなしたいと希望を出して来た。
どうもあの兄弟姉妹たちは、どんどん現場に出て実践を積みながら覚えていきたいタイプのようだ。そこは各々の性格や考え方なので、できる限り意向に沿うようにしている。ちびっ子たちの主神も、愛し子のたっての望みであるため、不承不承ながら容認してくれていた。本当は一日でも多く天界にいて欲しいだろうが。
(地上で問題が起きたという連絡は来ていないし、今のところは大丈夫そうだわ。あの子たちの義姉と主家の子どももばっちり処分を受けたしね)
ランドルフから連絡を受けた主任神官と副主任神官が急ぎ調査したところ、神々に手当たり次第念話を送り、愛し子にして欲しいと売り込んでいたのは、やはり彼らだった。全員もれなく降格となり、僻地の神官府で雑用係をさせられることになったらしい。転移を使えば遠方にある神官府にも問題なく通える。
強い霊威を持っていたがゆえに親の連鎖を免れ、高い地位の神官として厚遇されていた彼らだが、神を辟易させた時点で、どれだけ強大な霊威を持っていようが無意味になる。今後這い上がることは難しいだろう。
そんなことをツラツラ考えつつ、フレイムに向かって頷く。
「ええ、分かったわ……何だか大掛かりだけれど、どうしたの?」
『聞けば分かるさ。あんま堅苦しい感じにはしたくねえから、ここの神苑に話し合いの場所を作るな』
果てのない広さを誇るフレイムの神苑には、ガーデンパーティーを開ける場所が幾つもある。その一つを使うという。
「ガーデンミーティングね。開放的で良いと思うわ」
(一体何の話かしら?)
首を傾げながら、アマーリエは付け合わせの半熟ポーチドエッグサラダを頬張った。
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