神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第7章

3.暴れ神は意外と柔軟

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 意味深な言葉に、アマーリエはリーリアと顔を見合わせた。

「疫神様の悪神姿と申されますと、一つ目の小鬼のようなお姿ですかしら?」

 緑の肌にふくれた腹を持つ、巨大な単眼の異形。脳裏に浮かんだその姿に、しかし、ラミルファが返したのは否だった。

『あれは違う。本来の形はあまりに恐ろしすぎるからと、可愛らしくデフォルメして抑えた姿だよ。どうしてそんなことをしていると思う? ずっとずっとずーっと昔、悪神ではない普通の神が、二の兄上の従神になりたいと申し出たかららしいよ』

 疫神に魅入られた神が、ぜひ従神にして下さいと懇願したそうだ。高位の神の基準では、吹けば飛んでしまうような低い神格の神だった。それでも地上程度ならば軽く吹き飛ばせるくらいの力は有しているが。

『悪神の、それも二の兄上の従神となれば、通常の神には難しい部分もある。悪神も含めた同胞たちは心配し、再検討を勧めたそうだ。他ならぬ二の兄上自身もね。それでもその神は意思を曲げなかった。そうしたら、根負けした二の兄上が折れて望みを受け入れ、何と自分をその神に合わせたそうだ』

 同胞すら喫驚させる異形を変え、自身の神域の一部に悪神仕様を和らげた部分を創って新たな従神となった神を置き、萎縮させないように心を配ったという。仕えられる側の主神が気を遣う必要などないのに、小さな神のために幾重にも配慮し譲歩したのだ。
 その一件も、『疫神は同胞への情はあるので話せば分かる』と古参の神々に印象付けた出来事であったという。

『僕は一度、二の兄上の本来の悪神形態を見せていただいたことがある。それはもう絶世のハンサムだったよ。一の兄上と同じくらいに。ただ、今話した従神がいるから、あの超絶に素敵な姿は滅多に見られないのだよ。残念だが同胞のためなら仕方ない』

 恍惚とした表情で絶賛する末の邪神だが、悪神基準で褒めちぎるということは、一般の感覚ではとんでもない姿なのだろう。
 そういえば、葬邪神が精霊ヨルンを愛し子にしようと悪神姿を披露した時、彼を父として誰よりも慕うはずのアリステルが顔面蒼白で見るなと叫んでいた。葬邪神と同等な片割れである疫神もそれに匹敵する異形ということか。

『すまない、話が逸れてしまった。とにかく、神器に治癒機能も付けたいならば、二の兄上に協力を依頼すれば良い』

 我に返ったラミルファが話題を戻す。

『新米5名にも良いアイデアがないか聞いてみるが良いよ。幼い子どもだからこそ頭が柔らかいというか、違う着眼点を持っているかもしれない』

 ミンディたち5名は無色の神、つまり通常の聖威師だ。色持ちの神であり特別な聖威師であるアマーリエたちとは次元が違う――とても及ばないという意味で。だが、思考力や発想力は神格とは無関係だ。

「そうですね、あの子たちにも相談してみます」

 それは良い考えだと、アマーリエは首肯した。

「この後はどうしますの? 試作品はまだありますが、もう4回通しで実験を繰り返していますわ。今回の結果を皆で分析し、改善点をまとめた方がよろしいかもしれませんわよ」
「ええ、私もそう思うわ。……お手数ですが場所を移ってもよろしいでしょうか? それぞれ気が付いたことや気になったことをお聞きしたく……」

 神々をぐるりと見回して言いかけた時、脳裏に音声が反響した。焦燥と狼狽を帯びた声。

《大神官、緊急連絡です!》
《神官長、至急ご報告が!》
(帝国と皇国の主任だわ)

 地上の神官府から届いた緊急念話に、アマーリエとリーリアの顔付きが一気に仕事モードへと切り替わる。皇帝にすら達する、神官府の長の顔だ。
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