神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第7章

2.始めの一歩を堅実に

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(最初の数回は順調に対応できていたけれど、段々吸収率が悪くなって来て、5回目で持ちこたえられずオーバーヒートになってしまったわ)
『今回は台風を想定していた。自然に発生する災害の中で、地上で起こり得る最大限と思われる規模を現象させた。風は私、雨は泡神様、雷は当波』

 同席してくれていた嵐神が、ほっそりした肢体に絡む優美な領布ひれを靡かせながら顎に指を当てる。

(皆様がこぞって協力して下さるのよね。いえ有り難いのよ、とっても有り難いことではあるのだけれども……)

 アマーリエは視線を遠くへ投げてひとりごちた。神威は万能な力なので、一柱の神が全ての天災を起こすことも可能だ。だが、様々な神々が神器作製のために助力すると申し出てくれたため、全然嬉しくないオールスターズが誕生している。
 なお、手を挙げてくれた神の中には魔神もいる。神器は地下世界の存在からの襲撃にも対応できるようにしたいので、魔を司る神の協力は有り難い。また、高位神だけでなく、金剛神と水晶神、桜梅桃の女神に大公家や一位貴族の先達たち、マーカスも含め色無しの神々も数多協力してくれている。

『世界規模の災害を吸収すると想定した場合、現段階では4回が限度ですね』

 フルードが思案げに呟いた。その目が見遣る方向には、砕けた玉の欠片の一つが転がっている。

『神器の性能と耐久度を高め、自動回復機能を強化した上で修復専用の神器も別途で作製した方が良いでしょう。本体と修復用の神器はそれぞれ複数個ずつ創生しておけば安心かと。ローナと当波様はどう思われますか?』
『私も同様に思います。下位互換の霊具を作り、設計書を残しておくのも一手かと。そうしておけば、仮に遠い未来で神器が壊れてしまっても、霊具を量産してしのげます。ただ、神器や霊具が心根の良くない者の手に渡れば、悪用されるやもしれません』

 天災で具象する大自然の力を吸収し、生活に必要なエネルギーに変換する代物だ。内部に貯め込んでいる膨大な力を乱用されれば惨事が起こる。

『神官府と複数名の高位霊威師たちが厳正に管理するよう、昇天前に念押しをしておくべきだね。……ただ、500年後には、神官府や国の状況が現在とは変わっているかもしれない。最終的な判断はその時の聖威師に一任すれば良いと思うよ』

 当波がゆったりとした笑みを浮かべて言った。温和な面を彩る茫洋とした眼差しは、いずれ来る未来に据えられているかのようだ。

『最後の日を迎えるまでに多くの神々と聖威師が神器作製に携わっていけば、最新の情勢に即した発案や新しいアイデアの提言が都度なされていくだろう。それは今後500年の間に顕現する聖威師に委ねるとして、私たちは最初の一歩を堅実に固めることに専念しよう』

 それは最もな意見だった。まだ数百年の猶予がある現時点から、全てを細かく決めてしまうことはできない。今はそれよりも、しっかりとした土台を作っていく時期だ。

(使い勝手ももっと考えなくては。使用時には所有者に結界を張るようにしようかしら。形状も玉ではなく、装着型にした方が持ち運びやすいわよね)

 最大級の災害の中、徒人ただびとが両手に神器を抱えてウロウロできるはずがない。そんな悠長なことをしている間に命を持って行かれる。今はアマーリエが生身で運搬使用しているが、それは聖威師だからこそ可能な芸当だ。人間が同じことをしようと思えば、高位の霊威師でなければできないだろう。

(デザインや意匠は後代の聖威師たちに任せるとして、私たちは機能を少しでも作り込んでおかなくては。いずれにしても改良の余地ありね)

 胸中で唸っている間に、フロースもうーんと首を捻った。

『同時に幾つもの天災が発生することだってある。複数の事象に対応できるようにもしないと。他の代表的な災害と言えば、地震や火山、津波や洪水、急激な気候変動とかかな。今度は砂神様と焔神様に模擬災害を起こしてもらおう。ウェイブも協力してくれるよ』

 砂神はルルアージュの主神だ。地神の御子神でもある。

『自然災害とは異なるが、伝染病の蔓延などもある。神器に治癒機能も加えれば良い。治療専用の神器を別で創生しても良いがね。二の兄上に頼んでごらん、それは面白いと、ノリノリで実験に付き合ってくれるだろう』
「え、疫神様ですか。確かに疫病はお手の物だと思いますけれど……」

 アマーリエは及び腰になった。今は聖威師たちに免じて抑えてくれているが、あの自由奔放な神は世界への加減も慈悲も容赦も持たない。

『心配せずとも僕が一緒にいるよ。二の兄上の悪神姿も見られるかも……いや、それはないか。仮にあっても見ない方が良い。アマーリエやリーリアにはショックが大きすぎる』
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