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第7章
32.神官たちは失言を重ねる
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どの神性に誓ってるんだ。お前ら神じゃないだろ。そんなシラッとした空気が念話網を流れた。悪神の生き餌は神格を刻み付けられるが、本物の神になるわけではないので神性を持ち出して宣誓することはできない。
『あー……まぁあれだ。コイツら、自分たちは花神に見初められたと勘違いしてるから、神格を得たと思い込んでるんだろうな』
『例えそうであったとしても、聖威師は神格を抑えていますから、原則は神性を持ち出すことはできないはずです。どのみちアウトでしょう』
もはや息も絶え絶えになっているアマーリエの背をよしよしと撫ででくれるフレイムが、遠い目をして呟いた。真面目に応じたのはフルードだ。
『神同士で誓いを結ぶなどの場合は別ですが、そうでもないのに迂闊に神性を持ち出せば、神面を出したと見なされて強制昇天されかねません。仮に聖威師に成り立てでその事実を知らなかった場合でも、直感がストップをかけるはずです』
『そうだなぁ。でもコイツら本物の聖威師じゃねえから、その本能を持ってないんだよなぁ』
深刻な顔付きの弟と、おざなりな兄。神官たちに対して有する関心の程度の差が、如実に表れている。
『ふふふ……これは噴飯ものだな』
ラミルファは腹を抱えてずっと笑っている。悪神の獲物に刻み付けられる、張りぼての神格。空疎な抜け殻であるそれを、中身の詰まった本物だと信じている神官たちが、可笑しくて堪らないのだろう。狼神は全く興味がなさそうに欠伸をしていた。
そんな現実を他所に、念話網では桜の神が抑えた声で淡々と返す。
《神性云々の世迷言はいったん捨て置くわ。とはいえ、本人たちがここまで言う以上、正気ということにして良いでしょう。……それで? 私は大樹の主神なのだけれど、私たちの愛し子が無色ゆえに下賎であると言ったのかしら?》
気が触れたという言い訳を使用不可能にした上で、再度問い直す。すると、何を勘違いしたのか、慧音が的外れかつ最悪な答えを投げた。
《大樹の主神ということは、あなたは桜の神ですね。これは失敬、言い方を間違えました。下賎というのは先ほど挙げた5名の聖威師たちのみを指しています。あなた方を貶したわけではありませんので、お気を悪くされないで下さい》
無理だろうと、相手方の神官2名以外の全員が思った。こんな言い方をされれば普通は気を悪くする。
《大神様、畏れながら――》
これ以上囀らせてはならない。アマーリエは急いで思念を送りかけるが、桜の神の方が早かった。
《大変申し訳ございません、燁神様。誠に恐縮ながら、私は今、この神官たちと話しております》
押し秘めているとはいえ有色の神格を持つアマーリエに敬意を払いつつも、口を挟むなとやんわり要請され、何も言えなくなる。神性を抑えている聖威師は、原則天の神には逆らえないからだ。同じ理由で、ランドルフたちも割り込むことができなくなった。
(フレイムに頼めば……いいえ、駄目だわ。今は明らかにエアニーヌたちに非がある状況なのよ。なのに高位神の威光を笠に着て、貶められた側の神に言うことを聞かせるなんて真似、できない)
焦燥が心身を焼き焦がす中、ストッパーが無くなった慧音は鼻高々に言った。
《花神様に見初められた僕たちは高位神になりましたが、まだ聖威師です。色無しとは言え、天の神である桜神たちを馬鹿にしたりはしませんよ》
(様! 様を付けなさい馬鹿っ!)
まさかの敬称無しで天の神を呼んだ神官に、アマーリエは心中で絶叫した。先ほど飲んだばかりの美味しい茶菓が、胃の中で猛烈ダンスをしている。こんな時にこんな所でリバースするわけにはいかない。
『ふ、ふふっ……中央本府の神官はレベルが高いはずだが、かようにどうしようもないバカもいるのだな。アイツを思い出す。ほら、あのシュードンとかいう神官だ。アレも大概バカだった。だが、今のコイツらも相当だ』
どうにか笑いの発作から立ち直ったラミルファが、嘲りと呆れを噛み殺した口調で言った。
『あー……まぁあれだ。コイツら、自分たちは花神に見初められたと勘違いしてるから、神格を得たと思い込んでるんだろうな』
『例えそうであったとしても、聖威師は神格を抑えていますから、原則は神性を持ち出すことはできないはずです。どのみちアウトでしょう』
もはや息も絶え絶えになっているアマーリエの背をよしよしと撫ででくれるフレイムが、遠い目をして呟いた。真面目に応じたのはフルードだ。
『神同士で誓いを結ぶなどの場合は別ですが、そうでもないのに迂闊に神性を持ち出せば、神面を出したと見なされて強制昇天されかねません。仮に聖威師に成り立てでその事実を知らなかった場合でも、直感がストップをかけるはずです』
『そうだなぁ。でもコイツら本物の聖威師じゃねえから、その本能を持ってないんだよなぁ』
深刻な顔付きの弟と、おざなりな兄。神官たちに対して有する関心の程度の差が、如実に表れている。
『ふふふ……これは噴飯ものだな』
ラミルファは腹を抱えてずっと笑っている。悪神の獲物に刻み付けられる、張りぼての神格。空疎な抜け殻であるそれを、中身の詰まった本物だと信じている神官たちが、可笑しくて堪らないのだろう。狼神は全く興味がなさそうに欠伸をしていた。
そんな現実を他所に、念話網では桜の神が抑えた声で淡々と返す。
《神性云々の世迷言はいったん捨て置くわ。とはいえ、本人たちがここまで言う以上、正気ということにして良いでしょう。……それで? 私は大樹の主神なのだけれど、私たちの愛し子が無色ゆえに下賎であると言ったのかしら?》
気が触れたという言い訳を使用不可能にした上で、再度問い直す。すると、何を勘違いしたのか、慧音が的外れかつ最悪な答えを投げた。
《大樹の主神ということは、あなたは桜の神ですね。これは失敬、言い方を間違えました。下賎というのは先ほど挙げた5名の聖威師たちのみを指しています。あなた方を貶したわけではありませんので、お気を悪くされないで下さい》
無理だろうと、相手方の神官2名以外の全員が思った。こんな言い方をされれば普通は気を悪くする。
《大神様、畏れながら――》
これ以上囀らせてはならない。アマーリエは急いで思念を送りかけるが、桜の神の方が早かった。
《大変申し訳ございません、燁神様。誠に恐縮ながら、私は今、この神官たちと話しております》
押し秘めているとはいえ有色の神格を持つアマーリエに敬意を払いつつも、口を挟むなとやんわり要請され、何も言えなくなる。神性を抑えている聖威師は、原則天の神には逆らえないからだ。同じ理由で、ランドルフたちも割り込むことができなくなった。
(フレイムに頼めば……いいえ、駄目だわ。今は明らかにエアニーヌたちに非がある状況なのよ。なのに高位神の威光を笠に着て、貶められた側の神に言うことを聞かせるなんて真似、できない)
焦燥が心身を焼き焦がす中、ストッパーが無くなった慧音は鼻高々に言った。
《花神様に見初められた僕たちは高位神になりましたが、まだ聖威師です。色無しとは言え、天の神である桜神たちを馬鹿にしたりはしませんよ》
(様! 様を付けなさい馬鹿っ!)
まさかの敬称無しで天の神を呼んだ神官に、アマーリエは心中で絶叫した。先ほど飲んだばかりの美味しい茶菓が、胃の中で猛烈ダンスをしている。こんな時にこんな所でリバースするわけにはいかない。
『ふ、ふふっ……中央本府の神官はレベルが高いはずだが、かようにどうしようもないバカもいるのだな。アイツを思い出す。ほら、あのシュードンとかいう神官だ。アレも大概バカだった。だが、今のコイツらも相当だ』
どうにか笑いの発作から立ち直ったラミルファが、嘲りと呆れを噛み殺した口調で言った。
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