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第7章
31.現実逃避したいです
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……はい?
まず主神たちに謝罪。それからエアニーヌたちを叱責し、念話の主導権を取る。この数瞬で詫びの言上を考え出し、今まさに声を放とうとしていたアマーリエは、思わず思念を四散させてしまった。先方から発されたのは、あまりに一方的で唐突で荒唐無稽な要求。目を点にして聞き返すと、全く同じタイミングで同じ反応を示したリーリアとぴったり声が合わさった。
『ふふっ』
アマーリエとリーリアがハモったことが面白かったのか、エアニーヌたちの厚顔無恥な言い分がツボにはまったのか、ラミルファが小さく噴き出した。だが、口元を抑える所作には高貴さと品位がにじみ出ている。思念ではなく肉声で笑っただけなので、念話網の向こうには届いていないだろう。
(直接対面していたら、力ずくででもあの子たちの口を塞げるのに……)
むくむくと嫌な予感が膨れ上がるアマーリエが視線を走らせると、フルードは眉を曇らせ、フレイムは目を点にしていた。狼神は口端に微かな薄笑いを浮かべている。
(早く止めなくては。こうなったら神々への謝罪は後だわ、とにかく話にストップをかけて――)
《あなたたちは一体何を言っているんだ? ウェイブ、どういうことか分かるか? 私にはちょっと意味が分からない》
《いや、私にもさっぱりだ。いきなり何なのだそなたらは。天界への侵入と我らが愛し子への暴挙、果てはこの念話とは、意図がまるで理解できぬ》
だが、アマーリエや他の聖威師たちが制止の言葉を飛ばす寸前に、フロースとウェイブが応じた。リーリアとランドルフの主神たる彼らにも、当然この念話は届いている。天の神が応答したことで割り込みにくくなったアマーリエは、一瞬遅かったとほぞを噛んだ。エアニーヌの方は気にした風もなく主張を重ねていく。
《後のことは私たちにお任せあれと申しているのです。現職の長が昇天した暁には、下賎な聖威師たちへの指導及び躾は上位者である私たちが行いますので、そちらも心配なさらずとも結構です》
もう今の言葉を聞いただけで盛大に心配するところだ。アマーリエの胃がシクシクと胃が痛み出した。十人十色の神官たちを束ねて来た歴代の聖威師や主任神官たちも、きっとこのような思いをして来たのだろう。
《待て貴様ら。下賎な聖威師とは誰のことを言っている》
押し殺した声で割って入ったのは、若い男性の美声。ミンディに寵を与えている金剛神のものだ。他にも数柱、気配を硬質化させている神がいるのを念話網の奥から感じる。言うまでもなく、新米5名の聖威師の主神たちだ。
(まずいわ)
《大神様――》
タイミングを窺っていたらしいランドルフが口を挟みかけた。次の言葉でエアニーヌと慧音が盛大にやらかすと予想し、彼らより先に自分が話すことでそれを阻止しようとしたのだろう。だが、当のエアニーヌたちがそれを察せなかった。今度は慧音が、ランドルフの言葉をぶち切って朗々と述べる。声変わりを迎えたばかりのやや掠れた声。
《当然、あの5名のことですよ。大樹、高芽、美種、ミンディ、アンディ。色無しの神の寵しか得られなかったアイツらなど、有色の神に見初められた僕たちにとっては卑しい下劣な存在も同然ですから》
「…………」
『ユフィー、しっかりしろ!」
『アマーリエ、気を確かに! ここで倒れてはなりません。気持ちは分かりすぎるほど分かりますが』
アマーリエの目の前が真っ黒になった直後、フレイムとフルードの声が耳をつんざく。どうやら現実逃避で意識を飛ばしかけたのを引き戻してくれたようだ。
(そ、そうよ、気絶している場合ではないわ)
ここで失神しても状況が良くなるわけではない。背を向けて逃げたくなる自分に喝を入れて踏み留まる。
《今すぐその減らず口を閉じろ、神官慧音》
当利が鋭い矢のごとき思念を飛ばし、祐奈が淑やかに謝罪する。
《大変申し訳ございません、大神様方。これなる神官たちは崇高なりし天の気に当てられ、些か錯乱しているようでございます。むろん、只今の不敬に対する理由にはなりませんが、私たちからしかと罰を与えますので――》
《私も慧音も正気です!》
《ええ、僕たちはおかしくなってなどいませんとも!》
だが、そのフォローの手を、当人たちがぶった斬った。
《お黙りなさい。発狂している者こそ、自分は平常だと言うものですわ》
酔ってる奴は大体素面だと主張するのよ、というノリでルルアージュが言う。
《いいえ、間違いなくいつもの私たちです。神性に誓います!》
まず主神たちに謝罪。それからエアニーヌたちを叱責し、念話の主導権を取る。この数瞬で詫びの言上を考え出し、今まさに声を放とうとしていたアマーリエは、思わず思念を四散させてしまった。先方から発されたのは、あまりに一方的で唐突で荒唐無稽な要求。目を点にして聞き返すと、全く同じタイミングで同じ反応を示したリーリアとぴったり声が合わさった。
『ふふっ』
アマーリエとリーリアがハモったことが面白かったのか、エアニーヌたちの厚顔無恥な言い分がツボにはまったのか、ラミルファが小さく噴き出した。だが、口元を抑える所作には高貴さと品位がにじみ出ている。思念ではなく肉声で笑っただけなので、念話網の向こうには届いていないだろう。
(直接対面していたら、力ずくででもあの子たちの口を塞げるのに……)
むくむくと嫌な予感が膨れ上がるアマーリエが視線を走らせると、フルードは眉を曇らせ、フレイムは目を点にしていた。狼神は口端に微かな薄笑いを浮かべている。
(早く止めなくては。こうなったら神々への謝罪は後だわ、とにかく話にストップをかけて――)
《あなたたちは一体何を言っているんだ? ウェイブ、どういうことか分かるか? 私にはちょっと意味が分からない》
《いや、私にもさっぱりだ。いきなり何なのだそなたらは。天界への侵入と我らが愛し子への暴挙、果てはこの念話とは、意図がまるで理解できぬ》
だが、アマーリエや他の聖威師たちが制止の言葉を飛ばす寸前に、フロースとウェイブが応じた。リーリアとランドルフの主神たる彼らにも、当然この念話は届いている。天の神が応答したことで割り込みにくくなったアマーリエは、一瞬遅かったとほぞを噛んだ。エアニーヌの方は気にした風もなく主張を重ねていく。
《後のことは私たちにお任せあれと申しているのです。現職の長が昇天した暁には、下賎な聖威師たちへの指導及び躾は上位者である私たちが行いますので、そちらも心配なさらずとも結構です》
もう今の言葉を聞いただけで盛大に心配するところだ。アマーリエの胃がシクシクと胃が痛み出した。十人十色の神官たちを束ねて来た歴代の聖威師や主任神官たちも、きっとこのような思いをして来たのだろう。
《待て貴様ら。下賎な聖威師とは誰のことを言っている》
押し殺した声で割って入ったのは、若い男性の美声。ミンディに寵を与えている金剛神のものだ。他にも数柱、気配を硬質化させている神がいるのを念話網の奥から感じる。言うまでもなく、新米5名の聖威師の主神たちだ。
(まずいわ)
《大神様――》
タイミングを窺っていたらしいランドルフが口を挟みかけた。次の言葉でエアニーヌと慧音が盛大にやらかすと予想し、彼らより先に自分が話すことでそれを阻止しようとしたのだろう。だが、当のエアニーヌたちがそれを察せなかった。今度は慧音が、ランドルフの言葉をぶち切って朗々と述べる。声変わりを迎えたばかりのやや掠れた声。
《当然、あの5名のことですよ。大樹、高芽、美種、ミンディ、アンディ。色無しの神の寵しか得られなかったアイツらなど、有色の神に見初められた僕たちにとっては卑しい下劣な存在も同然ですから》
「…………」
『ユフィー、しっかりしろ!」
『アマーリエ、気を確かに! ここで倒れてはなりません。気持ちは分かりすぎるほど分かりますが』
アマーリエの目の前が真っ黒になった直後、フレイムとフルードの声が耳をつんざく。どうやら現実逃避で意識を飛ばしかけたのを引き戻してくれたようだ。
(そ、そうよ、気絶している場合ではないわ)
ここで失神しても状況が良くなるわけではない。背を向けて逃げたくなる自分に喝を入れて踏み留まる。
《今すぐその減らず口を閉じろ、神官慧音》
当利が鋭い矢のごとき思念を飛ばし、祐奈が淑やかに謝罪する。
《大変申し訳ございません、大神様方。これなる神官たちは崇高なりし天の気に当てられ、些か錯乱しているようでございます。むろん、只今の不敬に対する理由にはなりませんが、私たちからしかと罰を与えますので――》
《私も慧音も正気です!》
《ええ、僕たちはおかしくなってなどいませんとも!》
だが、そのフォローの手を、当人たちがぶった斬った。
《お黙りなさい。発狂している者こそ、自分は平常だと言うものですわ》
酔ってる奴は大体素面だと主張するのよ、というノリでルルアージュが言う。
《いいえ、間違いなくいつもの私たちです。神性に誓います!》
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