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第8章
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『今すぐ地神様の元に陳謝しに行け。トライコーンにも詫びを入れるんだ。どこまで減刑してもらえるかは分からんが、今回だけは俺が同行して地神様に取りなしてやる。でないとお前、マジで厳罰に処されるかもしれねえぞ』
『……僕は悪くない! 僕は偉いんだ、凄いんだ、僕が正しい! だって将来の神格持ちなんだから!』
霊威が膨張し、波状に拡散する。室内の棚や調度が薙ぎ倒され、小物や置物が宙で華麗なダンスを踊る。並の精霊ではこの波動に抗えず、ねじ伏せられてしまっているだろう。フレイムが鼻を鳴らした。
『気に入らねえことがあると、こうやって力を振りかざして黙らせて来たのか』
(絶大な力を掲げて自分の思うままに振る舞うという点では、疫神様に近いところがあるけれど……全然違うわ)
荒れ狂う霊威は、当然ながら神格を持つアマーリエとフレイム、従神には通用しない。涼しい顔で立つアマーリエは、束の間あの暴神の姿を思い浮かべるが、すぐに否定した。
(疫神様は絶対的なのよ。力も、意思も、存在も、全てにおいて底が無い。あまりに異次元すぎて、反骨心を抱くことさえ許されないわ。できることといえば、疫神様が発する御稜威に魅入られて、その前にひれ伏すことだけ)
改めてシルファールを眺め、うんと頷く。
(この子は中途半端だわ。強い力を持つと言っても、所詮は霊威。言い分も幼いし、フレイムも言っていた通り単なる一精霊なのだし。疫神様のような絶対感が無いから、駄々っ子に見えるのよね)
内心に留められた独白。もしフレイムが聞いていれば、あの暴れ神と比較するのはあまりに酷だとツッコんでいただろう。
(そういえば、地上の娯楽本にあったわね。ワガママな王子が強大な霊威を駆使して相手を従わせていたものの、主人公に力の大半を封印されて立場が逆転する話。最初は現実が受け入れられなくて泣き喚いているけれど、周りの者が根気強く教え諭してくれたおかげで改心するのよね)
霊威のほとんどを使えなくなったことで、今までねじ伏せていた者たちに仕返しされると怯えていた王子。だが、周囲の皆は同じ次元で報復するのではなく、言葉と態度で彼を諭した。霊威が足りず王子が困っていれば、手を貸してやったりもした。
弱い霊威しか持たない者の立場と苦労を体験した王子は、心を入れ替えて皆に謝罪し、それを認めた主人公に封印を解いてもらい、即位して名君となる――という内容だった。
(シルファールにも同じような処置をするのはどうかしら。神威は封じられないけれど、ただの霊威なら封印や剥奪ができるはず。もちろん、フレイムや大精霊たちにきちんと相談してからね)
仮にその処置を施すとしても、シルファールの安全確保はきちんとしなくてはならない。現実は物語のように優しくなければ、上手くもいかない。今までの恨みつらみや煩悶が溜まった精霊たちが、仕返しとばかりに徹底的にシルファールを虐げるかもしれないのだ。
(過度な報復は厳禁で、やりすぎと見なした場合は重罰を与えるとか……いえ、それだと下位の使役に報復の実行役を押し付けて、自分は罰を逃れようとする上位者たちも出て来そうだわ。やっぱり霊威封印は難しそうね)
起こり得るリスクや負の連鎖を考え、浮上したばかりの案を実行するのは厳しそうだと悟った時。
《なぁ、ユフィー》
(きゃっ!?)
いきなりフレイムが念話して来た。
《ど、どうしたの?》
すぐ近くにいるのに、何故わざわざ念話するのか。疑問符を飛ばしながら応える。フレイムは、癇癪を起こしたように霊威を乱発しているシルファールを見ていた。
《アイツ、お前に似てる》
《――え?》
《目だよ。アイツの目、昔のお前みたいだ。前、お前が載ってるアルバムを見たことがあるんだ》
《ああ……そうだったわね》
そのアルバムにリサッカがあったことから、ミリエーナを見初めた神が悪神だと分かったはずだ。
《チビのお前は、誰かに縋るような目をしてた。成長するに従って、全部諦めて、家族や周囲への期待を捨てた目に変わっていっちまったが……最初はまだ期待してた。家族に愛してもらえるんじゃないか、周りの誰かが助けてくれるんじゃないかってな》
『……僕は悪くない! 僕は偉いんだ、凄いんだ、僕が正しい! だって将来の神格持ちなんだから!』
霊威が膨張し、波状に拡散する。室内の棚や調度が薙ぎ倒され、小物や置物が宙で華麗なダンスを踊る。並の精霊ではこの波動に抗えず、ねじ伏せられてしまっているだろう。フレイムが鼻を鳴らした。
『気に入らねえことがあると、こうやって力を振りかざして黙らせて来たのか』
(絶大な力を掲げて自分の思うままに振る舞うという点では、疫神様に近いところがあるけれど……全然違うわ)
荒れ狂う霊威は、当然ながら神格を持つアマーリエとフレイム、従神には通用しない。涼しい顔で立つアマーリエは、束の間あの暴神の姿を思い浮かべるが、すぐに否定した。
(疫神様は絶対的なのよ。力も、意思も、存在も、全てにおいて底が無い。あまりに異次元すぎて、反骨心を抱くことさえ許されないわ。できることといえば、疫神様が発する御稜威に魅入られて、その前にひれ伏すことだけ)
改めてシルファールを眺め、うんと頷く。
(この子は中途半端だわ。強い力を持つと言っても、所詮は霊威。言い分も幼いし、フレイムも言っていた通り単なる一精霊なのだし。疫神様のような絶対感が無いから、駄々っ子に見えるのよね)
内心に留められた独白。もしフレイムが聞いていれば、あの暴れ神と比較するのはあまりに酷だとツッコんでいただろう。
(そういえば、地上の娯楽本にあったわね。ワガママな王子が強大な霊威を駆使して相手を従わせていたものの、主人公に力の大半を封印されて立場が逆転する話。最初は現実が受け入れられなくて泣き喚いているけれど、周りの者が根気強く教え諭してくれたおかげで改心するのよね)
霊威のほとんどを使えなくなったことで、今までねじ伏せていた者たちに仕返しされると怯えていた王子。だが、周囲の皆は同じ次元で報復するのではなく、言葉と態度で彼を諭した。霊威が足りず王子が困っていれば、手を貸してやったりもした。
弱い霊威しか持たない者の立場と苦労を体験した王子は、心を入れ替えて皆に謝罪し、それを認めた主人公に封印を解いてもらい、即位して名君となる――という内容だった。
(シルファールにも同じような処置をするのはどうかしら。神威は封じられないけれど、ただの霊威なら封印や剥奪ができるはず。もちろん、フレイムや大精霊たちにきちんと相談してからね)
仮にその処置を施すとしても、シルファールの安全確保はきちんとしなくてはならない。現実は物語のように優しくなければ、上手くもいかない。今までの恨みつらみや煩悶が溜まった精霊たちが、仕返しとばかりに徹底的にシルファールを虐げるかもしれないのだ。
(過度な報復は厳禁で、やりすぎと見なした場合は重罰を与えるとか……いえ、それだと下位の使役に報復の実行役を押し付けて、自分は罰を逃れようとする上位者たちも出て来そうだわ。やっぱり霊威封印は難しそうね)
起こり得るリスクや負の連鎖を考え、浮上したばかりの案を実行するのは厳しそうだと悟った時。
《なぁ、ユフィー》
(きゃっ!?)
いきなりフレイムが念話して来た。
《ど、どうしたの?》
すぐ近くにいるのに、何故わざわざ念話するのか。疑問符を飛ばしながら応える。フレイムは、癇癪を起こしたように霊威を乱発しているシルファールを見ていた。
《アイツ、お前に似てる》
《――え?》
《目だよ。アイツの目、昔のお前みたいだ。前、お前が載ってるアルバムを見たことがあるんだ》
《ああ……そうだったわね》
そのアルバムにリサッカがあったことから、ミリエーナを見初めた神が悪神だと分かったはずだ。
《チビのお前は、誰かに縋るような目をしてた。成長するに従って、全部諦めて、家族や周囲への期待を捨てた目に変わっていっちまったが……最初はまだ期待してた。家族に愛してもらえるんじゃないか、周りの誰かが助けてくれるんじゃないかってな》
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