神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第3章

75.変質する神罰

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「そうだよ。……アマーリエには説明しなくては。これはセインたちのために神罰を調べていた時に分かったことだが、神罰に選ばれた者同士は共鳴を起こす。誰かの身辺で異変が起こった時に近くにいると、その変事を直感や胸騒ぎなどの形で察知するのだよ。天誅の神威が及ぼした思わぬ副作用だろう」

 ゆえに、フルードが持つ滞留書の異変を察知できる可能性は、アマーリエにもあった。メイン指導者であるフルードに付いて、彼のすぐ側にいたのだから。

「だが、共鳴はそれだけじゃねえんだ。自分は、あるいはコイツも、呪われてる神罰を受けてるって認識した瞬間、神罰が何倍にも膨れ上がってソイツらを襲う。悪神の守護を受けてるか、自分が悪神になれば大丈夫なんだが、ユフィーはどっちも満たしてねえ」

 つまり、アマーリエ本人か、同類の共鳴を持つフルードあるいはアリステルが、アマーリエも神罰に選ばれた者だと認知した時点で、共鳴が起こってしまう。不幸が数倍に増加して、まだ守りのないアマーリエに遅いかかっていた。

(だから疫神様が私の神罰について触れた時、必死で止めようとしていたのね)

 あの時はどうにか、共鳴をラミルファが食い止めていたという。だが、守護できる対象は一人だけであるため、長くは保たず、葬邪神の守護神就任があと少し遅ければ危なかったそうだ。

「そう言えば、疫神様は私たちを視ただけで神罰のことを見抜かれていましたね」

 フレイムやラミルファたちは、かなり調べなければ分からなかったようだが。

「二の兄上は、神威を抑えている割合が僕たちより圧倒的に低かった。世界への配慮など全くしていなかったしね。力を多く出していた分、色々と視えたのだろう」

 フルードとアリステルが苦い顔で目を見交わした。

「神罰の存在が明らかになった時、私たち以外にもレシスの子孫がいないか、聖威で視たのです。もし他にもいるならば、彼らのことも助けなくてはと思いましたので」
「だが、調べ方を間違えた。本来の神罰の対象だった子ども――遊運命神様の怒りを直に受けた子どもの血を継ぐ子孫が、私たち以外にはいないかという調べ方をしてしまった」
「当時の私たちは、例の第三子は死んだものだと思っていましたから。第三子から続く子孫がいるか、レシス全体の子孫が私たち以外にいるかという方向からは調べませんでした。それでサード家の存在を見落としてしまったのでしょう」
「私たちの実の親は死んでいるから、他に生きているレシスの血筋は、私の育ての父親だけだと思った。アイツは復讐対象だったから、聖威でこっそり生殖機能を奪っておき、間違っても他に血を繋げないようにした上で時が来るまで泳がせていたんだ」

 ほんの少しアプローチの角度を変えただけで、見えなくなってしまうものもある。フルードもアリステルも、自分たちの代でこの呪われた血は終わると安心していた。フレイムが宥めるような声を上げた。

「俺たちも第三子の生存は把握してなかった。ユフィーの中に神罰があるのを見付けた時、どういうことなんだって過去視をして分かったんだよ」
「そういうことだな。アマーリエの内に隠れている因子を見付けた僕は、フレイムに念話しながら状態を確認した。そうしたら、セインやヴェーゼと比べればとても小さく弱いものだったから、これなら悪神の守護なしでも大丈夫だと感じたのだよ」
「ラミルファが去り際に玉をくれただろ。ずっと身に付けてろって。あれが守りの代わりであり、神罰への抑えだ。それでイケるレベルだったんだよ……あの時はまだ」

 フレイムが眉を顰めて言葉を紡ぐ。アマーリエは衣越しに、胸元の玉に触れた。星降の儀の後祭でラミルファから賜ったものだ。この玉は、魔神がけしかけた牛に結界を貫かれかけた時にも光っていた。

 同じタイミングで魔牛が動きを鈍らせたのは、これ以上は危ないと魔神が止めたからか。クラーラに扮した葬邪神が、やり過ぎだと背後から牽制したからか。もしくは――守りの代わりだというこの玉が発動してくれたのか。あるいは複数の理由が合わさっていたのか。

「次に事態が動いたのは、オーブリーが聖威師になった報が入り、アマーリエが憔悴した時だった。君を見て内心愕然としたよ。神罰の因子が別物のように肥大化しているのだから。ほんの半日前までは、そのような兆候すら無かったのに」

 邪神が告げた言葉に、またハッとした。あの時、ラミルファはわざわざアマーリエの両手を握って励ましの言葉をかけた。あれはもしや、神罰の状態を詳しく探っていたのだろうか。ワイマーに変化した魔神も、同じ方法で聖威師の耐久限界を確認したと言っていた。

「このままでは、授けた玉では対応し切れなくなる。正式に悪神の守護を付けなければならない。そう思い、ガルーンの件で動揺していたセインを支えながら、並行して密かに君の神罰を解析して調べまくったのだよ」

 またしても調べまくってくれた邪神である。そろそろ神罰をテーマにした論文が書けそうだ。……などと現実逃避をするアマーリエだが、話は進む。

「そうしたら戦慄するような事実が分かった。サード家に伝わる神罰の因子は、本来の形から大きく変質している。十何代にも渡って息を潜め、血から血へと繋がっていき、やがてどこかで覚醒する。そうなると一気に膨張し、大爆発を起こすのだよ」

 数百年越しにもなる、長期的なトラップである。なお、ダライとミリエーナもサード家の血を引いているが、彼らの中にある因子はまだ潜伏期間が続いており、今代で覚醒はしないらしい。

「覚醒した因子が刻まれている者は、神罰に選ばれた扱いとなり、不幸と絶望のどん底に突き落とされる。セインやヴェーゼのような、本家本元の呪われし子と同等なまでに酷い環境に」

 そんな本家本元、全く嬉しくない。レシスの兄弟がそろって複雑な顔を浮かべた。
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