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第4章
8.疫神はまだまだ反省中
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『主。我らが不在の間に、様々な出来事が起こったと聞いた』
天界では眠れる神々が覚醒し、地上では疫神がちょっとばかり羽目を外し、無数にある宇宙と次元の大半が消滅した。
『私もラモスもずっと意識が無かったものですから、ご主人様の元に駆け付けられず申し訳ございません』
もし聖獣たちが起きていれば、神格が馴染んでいなかろうが関係なく、アマーリエの元に馳せ参じていただろう。
『疫神様。差し出がましくも申し上げますが、我らの主は、決して決して決して被虐趣味ではございません』
『誠に畏れ多きことにございますが、貴き御身におかれましては、何卒お考え違いをなされませんよう……』
フレイムか誰かから事の次第を聞いたのだろう。ラモスとディモスは平伏する勢いで疫神に訴えた。
「うん。勘違い、解けた。我、反省しまくり。内心悶絶中。あんなこと、もうしないよ」
両手の人差し指をちょんちょんと合わせた疫神がしょぼくれる。その回答を聞いた聖獣たちは、ホッとしたように力を抜く。葬邪神が肩を震わせて笑った。
「ディスにもはっきり物申すとは、ハルアに怯まなかっただけあるなぁ」
「疫神様、私の聖獣たちが僭越なことを申し上げました。心からお詫びいたします」
アマーリエは頭を下げた。内心では聖獣たちの言い分に全力で同意しているが、相手はこちらより上位の選ばれし神。礼を失することはできない。
フレイムと葬邪神が口を開きかけるが、疫神の方が早かった。
「謝るない。アマーリエ、謝る。この雛たちの心、無駄になる。この雛たち、正しい。正しいこと言う、当然。自信持つ。間違ってたの、我の方。ごめんね」
『有り難きお言葉にございます』
『疫神様の大御心に感謝申し上げます』
再び額突いた聖獣たちが、明らかに安堵した雰囲気になった。良かった、話が通じる神だった……と、纏う空気が言っている。アマーリエも同じ思いで再度礼をした。
「疫神様、寛大なお言葉を有り難く思います」
(理性がないとか会話ができない神様ではないのよね。ただ全力で遊んで暴れまくるだけで)
いったん話を聞く体勢にさえなってくれれば、どうにでもなるのだ。そこまで行くのが大変なだけで。場の空気が緩んだところに滑り込ませるように、フレイムが言った。
「ところでユフィー、時間は大丈夫か? もう休憩時間回っちまってるけど」
「え? ……ああっ、本当だわ」
時計を見て声を上げる。聖獣たちや要請書や神格の説明などを聞いている内に、思った以上の時が経ってしまっていた。
「きゃ~、たいへーん。お姉ちゃん、仕事しなきゃ!」
ポンとクラーラの姿になった葬邪神が、頰に手を当てて言う。ロリロリ幼女になった最古の神を見て、ラモスとディモスは無言で目を逸らす。下手にツッコんではいけないと察したのかもしれない。
「誰も来なくて良かったな、ユフィー」
「ええ。フルード様とアシュトン様が、できるだけ仕事を回さないようにして下さっているから。復帰初日だから無理しないようにって、朝も言われたし」
つくづく、贅沢な時に聖威師になれたものだと思う。かつては、聖威師が一人や二人しかいなかった時代もあると聞く。その時分は、疲労困憊だろうが死にかけだろうがフル稼働しなければならなかっただろう。
「お姉ちゃん、何かお手伝いできることはある? あたし頑張るわよぉ」
「ロールも!」
ラミルファ、クラーラ、ロールの三名は、数ある対象孤児院の中から無作為に選ばれた子どもたちで、聖威師の周囲で行儀見習いをしているという扱いになっている。
児童支援は神官府全体で副次的に行なっている活動なので、特定の施設や人物に肩入れしなければ、聖威師にも一定の関与は可能なのだ――もちろん、多様な制約と細かな条件は付いているが。
なおフレイムは、イステンド大公邸に仕える使用人見習いが、実地研修のためにアマーリエに付かせてもらっているという設定にしている。
ライナスやアシュトンたちが聖威師として有している邸とは別に、イステンド大公邸もあり、そちらには人間の使用人がいるのだ。大公邸の家令の采配で、イステンド家の当主であるアシュトンの許可を得て、アマーリエの世話をしながら技術向上に励んでいる……ということになっている。
そもそも論を言えば、フレイムは変装せずとも、フロースのように神の姿で愛し子の側にいられるはずなのだが……当事者曰く、『使用人ごっこが面白くてツボったからもう少しやりたい』らしい。
「で、では、部屋の換気をして、デスクや窓を簡単にで良いので拭いていただけますか? 数日お休みをいただいていたので、少し埃っぽい気がするのです」
「あら、お姉ちゃんが仕事してるのに掃除して良いの?」
「私は今から少し書き物をした後、席を外します。その間に清掃して下さると助かります」
天界では眠れる神々が覚醒し、地上では疫神がちょっとばかり羽目を外し、無数にある宇宙と次元の大半が消滅した。
『私もラモスもずっと意識が無かったものですから、ご主人様の元に駆け付けられず申し訳ございません』
もし聖獣たちが起きていれば、神格が馴染んでいなかろうが関係なく、アマーリエの元に馳せ参じていただろう。
『疫神様。差し出がましくも申し上げますが、我らの主は、決して決して決して被虐趣味ではございません』
『誠に畏れ多きことにございますが、貴き御身におかれましては、何卒お考え違いをなされませんよう……』
フレイムか誰かから事の次第を聞いたのだろう。ラモスとディモスは平伏する勢いで疫神に訴えた。
「うん。勘違い、解けた。我、反省しまくり。内心悶絶中。あんなこと、もうしないよ」
両手の人差し指をちょんちょんと合わせた疫神がしょぼくれる。その回答を聞いた聖獣たちは、ホッとしたように力を抜く。葬邪神が肩を震わせて笑った。
「ディスにもはっきり物申すとは、ハルアに怯まなかっただけあるなぁ」
「疫神様、私の聖獣たちが僭越なことを申し上げました。心からお詫びいたします」
アマーリエは頭を下げた。内心では聖獣たちの言い分に全力で同意しているが、相手はこちらより上位の選ばれし神。礼を失することはできない。
フレイムと葬邪神が口を開きかけるが、疫神の方が早かった。
「謝るない。アマーリエ、謝る。この雛たちの心、無駄になる。この雛たち、正しい。正しいこと言う、当然。自信持つ。間違ってたの、我の方。ごめんね」
『有り難きお言葉にございます』
『疫神様の大御心に感謝申し上げます』
再び額突いた聖獣たちが、明らかに安堵した雰囲気になった。良かった、話が通じる神だった……と、纏う空気が言っている。アマーリエも同じ思いで再度礼をした。
「疫神様、寛大なお言葉を有り難く思います」
(理性がないとか会話ができない神様ではないのよね。ただ全力で遊んで暴れまくるだけで)
いったん話を聞く体勢にさえなってくれれば、どうにでもなるのだ。そこまで行くのが大変なだけで。場の空気が緩んだところに滑り込ませるように、フレイムが言った。
「ところでユフィー、時間は大丈夫か? もう休憩時間回っちまってるけど」
「え? ……ああっ、本当だわ」
時計を見て声を上げる。聖獣たちや要請書や神格の説明などを聞いている内に、思った以上の時が経ってしまっていた。
「きゃ~、たいへーん。お姉ちゃん、仕事しなきゃ!」
ポンとクラーラの姿になった葬邪神が、頰に手を当てて言う。ロリロリ幼女になった最古の神を見て、ラモスとディモスは無言で目を逸らす。下手にツッコんではいけないと察したのかもしれない。
「誰も来なくて良かったな、ユフィー」
「ええ。フルード様とアシュトン様が、できるだけ仕事を回さないようにして下さっているから。復帰初日だから無理しないようにって、朝も言われたし」
つくづく、贅沢な時に聖威師になれたものだと思う。かつては、聖威師が一人や二人しかいなかった時代もあると聞く。その時分は、疲労困憊だろうが死にかけだろうがフル稼働しなければならなかっただろう。
「お姉ちゃん、何かお手伝いできることはある? あたし頑張るわよぉ」
「ロールも!」
ラミルファ、クラーラ、ロールの三名は、数ある対象孤児院の中から無作為に選ばれた子どもたちで、聖威師の周囲で行儀見習いをしているという扱いになっている。
児童支援は神官府全体で副次的に行なっている活動なので、特定の施設や人物に肩入れしなければ、聖威師にも一定の関与は可能なのだ――もちろん、多様な制約と細かな条件は付いているが。
なおフレイムは、イステンド大公邸に仕える使用人見習いが、実地研修のためにアマーリエに付かせてもらっているという設定にしている。
ライナスやアシュトンたちが聖威師として有している邸とは別に、イステンド大公邸もあり、そちらには人間の使用人がいるのだ。大公邸の家令の采配で、イステンド家の当主であるアシュトンの許可を得て、アマーリエの世話をしながら技術向上に励んでいる……ということになっている。
そもそも論を言えば、フレイムは変装せずとも、フロースのように神の姿で愛し子の側にいられるはずなのだが……当事者曰く、『使用人ごっこが面白くてツボったからもう少しやりたい』らしい。
「で、では、部屋の換気をして、デスクや窓を簡単にで良いので拭いていただけますか? 数日お休みをいただいていたので、少し埃っぽい気がするのです」
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