291 / 602
第4章
7.神と神使と
しおりを挟む
「そ、それはとても嬉しいけれど、ちょっと待って。私、従神まで持つの? 神使だけではなく?」
問いに解説してくれたのは葬邪神だ。
「色持ちの神には従神が付くんだなぁ。相手の神の方から従神にして下さいとアプローチして来る場合と、気に入った神をこっちがスカウトする場合と、どちらもあるぞ。もしくは今回のように、他の神の仲立ちが入ることもある」
(嘘でしょう。神使を選べと言われるだけで困っているのに、さらに従神まで!?)
照覧祭でもあたふたするばかりで、神使を選ぶどころではなかったのだが。気が遠くなりそうなアマーリエに構わず、葬邪神は聖獣たちを見て破顔する。
「良かったな~、正式な神になったら安心だ。正真正銘の神の神性は、降格や剥奪、封印なんかをされることはない。放棄や喪失、譲渡とかも無理だ。箔付けの神格とは違うからな」
絶対に有り得ない仮定だが、今後アマーリエがフレイムの不興を買って嫌われ、愛し子の誓約を解除されたとしても、燁神の神格を奪われたり神の座から落とされることはない。一度得た神格と神威は、完全にその神のものになる。以降は、例え格上の神であろうが主神であろうが、侵害することはできなくなるのだという。
同じ理屈で、ラモスとディモスの神格は、もはや主たる火神であっても取り上げることはできなくなったのだと説明してくれた。
なお、悪神の生き餌である愛し子は神に含まれないため例外で、主神の一存で誓約を解かれ、神性も剥がされて放り出される場合もあるらしい。
「その通りですが、例えが悪すぎます。俺がユフィーを嫌いになるはずないでしょう」
「すまん、ちょうど焔神様がここにいたから。あくまで物の例えだ」
両手をひょいと上げて謝罪する最古の邪神に軽くジト目を向け、フレイムは続けた。
「下働きの精霊が二体、神使に昇格するかもってことで、俺も審査のために呼ばれただろ。あれはラモスとディモスの穴を埋めるための措置だったんだ。神になった以上、もう母神の神使じゃなくなったからな」
ここで新たな疑問が生まれたアマーリエは、フレイムを見る。
「神使と神は両立できないの? フレイムは高位神だけれど、火神様の使役として神使選定を行なっていたわよね」
「あー、それは特例措置なんだ。俺は正しくは、焔神になった時点で神使じゃなくなってる」
フレイムが頭をかきながら答える。
「けど今回に限っては、天界史上でも前例がない神使選定だ。その第一回目で最高神の使いを選び出す。そんな重要事は、普通の使役には荷が重いだろ」
そのため、火神からの信頼と実力を備え、かつ使役の経験もあるフレイムに白羽の矢が立った。
さらに内情を明かせば、最高神全柱から『聖威師が限界であれば、力ずくで命を絶って天界に連れて帰れ』という二つ目の密命があったことも理由の一つだ。
当代の聖威師たちは、自らも高位神の神格を秘めている。彼らが本気で昇天を拒んだ場合、通常の神使や神では太刀打ちできない。フルードに至っては化け物神器に守られている。そういったことも考慮すると、聖威師より上位の神格を持つ者が出なければならなかった。そんな存在は、最高神か選ばれし神しかいない。
「んで、俺が神格を抑えて、神じゃなく火神の使いという立ち位置を全面に出して降臨することになった。だから、正式な立場は神のままでも、便宜上は神使っていう扱いになってたんだ。実際、火神も俺自身も、その認識で動いていた」
アマーリエと会い、最初に自分のことを説明した時は、まさか愛し子にしてここまで深く事情を話すとは思っていなかった。ゆえに色々と簡略し、神使でもあり神でもある、と説明したのだという。
『正式な神にして下さったことは感謝するばかりですが、少し申し訳ない気持ちもございます。焔神様が苦心して探し回った末、私とラモスをお選び下さいましたのに』
『神使としての仕事が始まる前に、さらに上に行かせていただけることになるとは』
ディモスとラモスがフレイムに頭を下げる。確かにある意味では、必死で火神の神使を探し回っていたフレイムの努力が、水泡に帰したと受け取れなくもない。
「んなこと気にしなくて良いさ。同胞が増える方が嬉しいからな」
だが、当事者はどこ吹く風でカラリと笑っている。
「それに、精霊は天界で定期的に生まれるし、母神に付きたい奴は無数にいるから、選び放題の補充し放題だしな。俺に選定させたのも、もし地上で逸材が見付かったら儲けもの、くらいの感覚だったはずだ」
事実、真に相応しいと思う者がいなければ、無理に選ばなくて良いと念押しされていたらしい。神格を授かる特別な神使を、妥協して選ばれる方が困るのだ。
「コイツらは新しい神格を馴染ませるために、母神の神域で眠りについてたんだ。神使から神に昇格する場合、神格が魂に慣れるまで少し時間がかかる。まぁ数日間くらいだな」
愛し子であれば神の寵愛を得るので、主神から万全のフォローを受けながら神格を授かる。ゆえに、瞬時に馴染ませることができるという。だが、神使が神にしていただく時には、そこまでのバックアップはしてもらえないので、多少の時を要するそうだ。
ちなみに、悪神の愛し子……奇跡の聖威師ではない生き餌の場合……は、神格を賜るといっても中身のない形骸的な物なので、馴染ませる必要自体がないらしい。
問いに解説してくれたのは葬邪神だ。
「色持ちの神には従神が付くんだなぁ。相手の神の方から従神にして下さいとアプローチして来る場合と、気に入った神をこっちがスカウトする場合と、どちらもあるぞ。もしくは今回のように、他の神の仲立ちが入ることもある」
(嘘でしょう。神使を選べと言われるだけで困っているのに、さらに従神まで!?)
照覧祭でもあたふたするばかりで、神使を選ぶどころではなかったのだが。気が遠くなりそうなアマーリエに構わず、葬邪神は聖獣たちを見て破顔する。
「良かったな~、正式な神になったら安心だ。正真正銘の神の神性は、降格や剥奪、封印なんかをされることはない。放棄や喪失、譲渡とかも無理だ。箔付けの神格とは違うからな」
絶対に有り得ない仮定だが、今後アマーリエがフレイムの不興を買って嫌われ、愛し子の誓約を解除されたとしても、燁神の神格を奪われたり神の座から落とされることはない。一度得た神格と神威は、完全にその神のものになる。以降は、例え格上の神であろうが主神であろうが、侵害することはできなくなるのだという。
同じ理屈で、ラモスとディモスの神格は、もはや主たる火神であっても取り上げることはできなくなったのだと説明してくれた。
なお、悪神の生き餌である愛し子は神に含まれないため例外で、主神の一存で誓約を解かれ、神性も剥がされて放り出される場合もあるらしい。
「その通りですが、例えが悪すぎます。俺がユフィーを嫌いになるはずないでしょう」
「すまん、ちょうど焔神様がここにいたから。あくまで物の例えだ」
両手をひょいと上げて謝罪する最古の邪神に軽くジト目を向け、フレイムは続けた。
「下働きの精霊が二体、神使に昇格するかもってことで、俺も審査のために呼ばれただろ。あれはラモスとディモスの穴を埋めるための措置だったんだ。神になった以上、もう母神の神使じゃなくなったからな」
ここで新たな疑問が生まれたアマーリエは、フレイムを見る。
「神使と神は両立できないの? フレイムは高位神だけれど、火神様の使役として神使選定を行なっていたわよね」
「あー、それは特例措置なんだ。俺は正しくは、焔神になった時点で神使じゃなくなってる」
フレイムが頭をかきながら答える。
「けど今回に限っては、天界史上でも前例がない神使選定だ。その第一回目で最高神の使いを選び出す。そんな重要事は、普通の使役には荷が重いだろ」
そのため、火神からの信頼と実力を備え、かつ使役の経験もあるフレイムに白羽の矢が立った。
さらに内情を明かせば、最高神全柱から『聖威師が限界であれば、力ずくで命を絶って天界に連れて帰れ』という二つ目の密命があったことも理由の一つだ。
当代の聖威師たちは、自らも高位神の神格を秘めている。彼らが本気で昇天を拒んだ場合、通常の神使や神では太刀打ちできない。フルードに至っては化け物神器に守られている。そういったことも考慮すると、聖威師より上位の神格を持つ者が出なければならなかった。そんな存在は、最高神か選ばれし神しかいない。
「んで、俺が神格を抑えて、神じゃなく火神の使いという立ち位置を全面に出して降臨することになった。だから、正式な立場は神のままでも、便宜上は神使っていう扱いになってたんだ。実際、火神も俺自身も、その認識で動いていた」
アマーリエと会い、最初に自分のことを説明した時は、まさか愛し子にしてここまで深く事情を話すとは思っていなかった。ゆえに色々と簡略し、神使でもあり神でもある、と説明したのだという。
『正式な神にして下さったことは感謝するばかりですが、少し申し訳ない気持ちもございます。焔神様が苦心して探し回った末、私とラモスをお選び下さいましたのに』
『神使としての仕事が始まる前に、さらに上に行かせていただけることになるとは』
ディモスとラモスがフレイムに頭を下げる。確かにある意味では、必死で火神の神使を探し回っていたフレイムの努力が、水泡に帰したと受け取れなくもない。
「んなこと気にしなくて良いさ。同胞が増える方が嬉しいからな」
だが、当事者はどこ吹く風でカラリと笑っている。
「それに、精霊は天界で定期的に生まれるし、母神に付きたい奴は無数にいるから、選び放題の補充し放題だしな。俺に選定させたのも、もし地上で逸材が見付かったら儲けもの、くらいの感覚だったはずだ」
事実、真に相応しいと思う者がいなければ、無理に選ばなくて良いと念押しされていたらしい。神格を授かる特別な神使を、妥協して選ばれる方が困るのだ。
「コイツらは新しい神格を馴染ませるために、母神の神域で眠りについてたんだ。神使から神に昇格する場合、神格が魂に慣れるまで少し時間がかかる。まぁ数日間くらいだな」
愛し子であれば神の寵愛を得るので、主神から万全のフォローを受けながら神格を授かる。ゆえに、瞬時に馴染ませることができるという。だが、神使が神にしていただく時には、そこまでのバックアップはしてもらえないので、多少の時を要するそうだ。
ちなみに、悪神の愛し子……奇跡の聖威師ではない生き餌の場合……は、神格を賜るといっても中身のない形骸的な物なので、馴染ませる必要自体がないらしい。
15
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十周年。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました
水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。
求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。
そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。
しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。
ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが……
◆なろうにも掲載しています
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
侯爵令嬢ソフィアの結婚
今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない
そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる
美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ
その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた
結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて…
表紙はかなさんです✨
ありがとうございます😊
2024.07.05
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる