神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第4章

7.神と神使と

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「そ、それはとても嬉しいけれど、ちょっと待って。私、従神まで持つの? 神使だけではなく?」

 問いに解説してくれたのは葬邪神だ。

「色持ちの神には従神が付くんだなぁ。相手の神の方から従神にして下さいとアプローチして来る場合と、気に入った神をこっちがスカウトする場合と、どちらもあるぞ。もしくは今回のように、他の神の仲立ちが入ることもある」
(嘘でしょう。神使を選べと言われるだけで困っているのに、さらに従神まで!?)

 照覧祭しょうらんさいでもあたふたするばかりで、神使を選ぶどころではなかったのだが。気が遠くなりそうなアマーリエに構わず、葬邪神は聖獣たちを見て破顔する。

「良かったな~、正式な神になったら安心だ。正真正銘の神の神性は、降格や剥奪、封印なんかをされることはない。放棄や喪失、譲渡とかも無理だ。箔付けの神格とは違うからな」

 絶対に有り得ない仮定だが、今後アマーリエがフレイムの不興を買って嫌われ、愛し子の誓約を解除されたとしても、燁神ようしんの神格を奪われたり神の座から落とされることはない。一度得た神格と神威は、完全にその神のものになる。以降は、例え格上の神であろうが主神であろうが、侵害することはできなくなるのだという。
 同じ理屈で、ラモスとディモスの神格は、もはや主たる火神であっても取り上げることはできなくなったのだと説明してくれた。

 なお、悪神の生き餌である愛し子は神に含まれないため例外で、主神の一存で誓約を解かれ、神性も剥がされて放り出される場合もあるらしい。

「その通りですが、例えが悪すぎます。俺がユフィーを嫌いになるはずないでしょう」
「すまん、ちょうど焔神様がここにいたから。あくまで物の例えだ」

 両手をひょいと上げて謝罪する最古の邪神に軽くジト目を向け、フレイムは続けた。

「下働きの精霊が二体、神使に昇格するかもってことで、俺も審査のために呼ばれただろ。あれはラモスとディモスの穴を埋めるための措置だったんだ。神になった以上、もう母神の神使じゃなくなったからな」

 ここで新たな疑問が生まれたアマーリエは、フレイムを見る。

「神使と神は両立できないの? フレイムは高位神だけれど、火神様の使役として神使選定を行なっていたわよね」
「あー、それは特例措置なんだ。俺は正しくは、焔神になった時点で神使じゃなくなってる」

 フレイムが頭をかきながら答える。

「けど今回に限っては、天界史上でも前例がない神使選定だ。その第一回目で最高神の使いを選び出す。そんな重要事は、普通の使役には荷が重いだろ」

 そのため、火神からの信頼と実力を備え、かつ使役の経験もあるフレイムに白羽の矢が立った。

 さらに内情を明かせば、最高神全柱から『聖威師が限界であれば、力ずくで命を絶って天界に連れて帰れ』という二つ目の密命があったことも理由の一つだ。

 当代の聖威師たちは、自らも高位神の神格を秘めている。彼らが本気で昇天を拒んだ場合、通常の神使や神では太刀打ちできない。フルードに至っては化け物神器に守られている。そういったことも考慮すると、聖威師より上位の神格を持つ者が出なければならなかった。そんな存在は、最高神か選ばれし神しかいない。

「んで、俺が神格を抑えて、神じゃなく火神の使いという立ち位置を全面に出して降臨することになった。だから、正式な立場は神のままでも、便宜上は神使っていう扱いになってたんだ。実際、火神も俺自身も、その認識で動いていた」

 アマーリエと会い、最初に自分のことを説明した時は、まさか愛し子にしてここまで深く事情を話すとは思っていなかった。ゆえに色々と簡略し、神使でもあり神でもある、と説明したのだという。

『正式な神にして下さったことは感謝するばかりですが、少し申し訳ない気持ちもございます。焔神様が苦心して探し回った末、私とラモスをお選び下さいましたのに』
『神使としての仕事が始まる前に、さらに上に行かせていただけることになるとは』

 ディモスとラモスがフレイムに頭を下げる。確かにある意味では、必死で火神の神使を探し回っていたフレイムの努力が、水泡に帰したと受け取れなくもない。

「んなこと気にしなくて良いさ。同胞が増える方が嬉しいからな」

 だが、当事者はどこ吹く風でカラリと笑っている。

「それに、精霊は天界で定期的に生まれるし、母神に付きたい奴は無数にいるから、選び放題の補充し放題だしな。俺に選定させたのも、もし地上で逸材が見付かったら儲けもの、くらいの感覚だったはずだ」

 事実、真に相応しいと思う者がいなければ、無理に選ばなくて良いと念押しされていたらしい。神格を授かる特別な神使を、妥協して選ばれる方が困るのだ。

「コイツらは新しい神格を馴染ませるために、母神の神域で眠りについてたんだ。神使から神に昇格する場合、神格が魂に慣れるまで少し時間がかかる。まぁ数日間くらいだな」

 愛し子であれば神の寵愛を得るので、主神から万全のフォローを受けながら神格を授かる。ゆえに、瞬時に馴染ませることができるという。だが、神使が神にしていただく時には、そこまでのバックアップはしてもらえないので、多少の時を要するそうだ。

 ちなみに、悪神の愛し子……奇跡の聖威師ではない生き餌の場合……は、神格を賜るといっても中身のない形骸的な物なので、馴染ませる必要自体がないらしい。
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