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第4章
48.狙われるのは
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魔神と疫神は最初、聖威師たちの性癖をこれでもかとばかりに勘違いした。神威で見通していれば良かったものを、それではつまらないから、自分は正しいから、等々の理由を付けて怠ったせいだ。
だが、実のところ理由はそれだけではない。それ以前の話として、元から力の大部分を抑え、自らの完全性と絶対性を抑制しているために分からなかったという事情もあった。
『うん。本来の力出す、強すぎて逆に暴れる余地ない。暴れる間もなく全てが思い通り。つまらない、面白くない。だから、大半を抑えてる。この前、宇宙次元、ほとんど消した時も、ずっと抑えてた』
疫神が小さな手を叩き、あっけらかんと言う。この神は一度だって、世界を相手に本気になったことはないのだ。先日寝起きで暴れた際もそうだった。二重の荒神化をしてもいない、真の神格を出してもいない、虹を帯びてもいない、ごく軽い準備運動でしかない。真価など欠片も表出させていない状態だった。
……余談だが、最高神以下の色持ちの神が世界に合わせて抑えている力を解き放てば、自身の神威の色に加えて淡い虹色を纏う。至高神のように鮮やかな明度ではないにしろ、同じ彩を放つのだ。だからこそ、有色の神は超天の絶域にも辿り着ける。なお、天威師を含む至高神に関しては、力を抑えている普段の状態でも虹を帯びている。
ただし、一括りに色持ちと言っても、至高神、最高神、選ばれし神、アマーリエたちと神格の段階が分かれているので、有する神位によって虹の濃淡は変わる。
『遊運命神も同じだ。真価を抑制しているから、失敗もするしポカもヘマもする。聖威師たちをついうっかり襲っちゃうくらい、十分有り得るとも』
『あるある、やるやる』
同じように手をヒラヒラ振って言い切る兄たちに、ラミルファが舌打ちした。
『困ったお方ですね、遊運命神様は』
『ちょっとねぼすけなんだなぁ。アマーリエたちを同胞だと気付かず、憎い輩だと思って加害するならば、クロウやディスのような加減はしない。容赦なく来るぞ』
魔神はアマーリエに魔物をけしかけたが、本当に傷付ける気はなかった。疫神も彼なりに考えており、危うくなれば止めるつもりでいた。だが遊運命神の場合、本気で害しに来るという。
フレイムは思わず、ちょっと待てと片手を挙げた。
『いや、けど、神は地上には干渉しない決まりじゃないですか』
『それは努力義務なんだな。どこまで守るかは個々の神々の一存だ。むろん、大抵の神は遵守する。高位の神は特にな。だが、シュナは関与する理由を持ってるからな~』
『そう、理由あったら堂々と干渉可能。我、起きてから、今の天の規則、お勉強し直した。我、勤勉。シュナ、神の詐称に自分の神器使われた。これ、理由なる』
神になりすますことは禁忌だ。一笑に付して捨て置く神もいるが、激怒する神の方が多い。
『シュナ、普段、遊戯に夢中。自領から出て来ない、けど、今回、キレて飛び出して来るかも』
『あ~、シュナはアレだ、人間世界で言えばゲーム中毒者みたいな奴なんだな。放っておけば何万年でも何十万年でも自分の領域で遊戯に明け暮れている。遊ぶのが大好きな神同士、ディスとは時々ゲームをしていたが、大体一柱でのめり込むことが多いな』
『ですが、聖威師を詐称するために神器を利用したのはレシスの先祖ですよ、兄上方。セインやヴェーゼ、アマーリエは何もしていません』
『でも、その先祖と勘違いしてる。だから、どのみち襲われる』
ケロリと放たれた物騒な言葉に、フレイムが頭を抱え、ラミルファも額に手を当てた。
『シュナ、パッチリ起きれば大丈夫。同胞だって気付く。攻撃止める。それまで耐えられれば良し』
『だから、アイツがいつ起きても守れるように地上に来たんだなぁ。俺とディスがそろってたら大丈夫だ。片方が狙われた聖威師を守り、もう片方はシュナを止めることに専念する。同胞が本気で危ないということで、父神も降臨の許可を下さった』
『高確率で狙われる、アマーリエ。フルードとアリステルの可能性、なくはないけど低い』
ピンと指を立て、宙を漂う疫神が言う。
『あの二人、神罰抑えて15年ほど経ってる。ぎゅー、押さえ込まれ続けたから、神罰の気配、かなり弱まってる。けどアマーリエの神罰、先日抑えたばかり。しかも爆発寸前まで膨張済み。まだ気配、強い。感知されやすい』
なお、ミリエーナやダライ、エイールなど、神罰を継いではいるが選ばれていない者は、感知される可能性はほぼない。絶対にないわけではないが、それより先にアマーリエやフルード、アリステルの方が気付かれる。
ではエイリーはどうなのかと言えば、彼女は現在、心身の療養のために創られた特殊な治療用空間にいる。神官府に伝わる高位神器を用いて主任神官が創生したそこは、一種の異空間であるため、その中にいれば発見される確率は低い。もちろんゼロではないが、やはりその前にアマーリエたちが見付かるだろう。
『畢竟するに、遊運命神様に真っ先に目を付けられるとしたらユフィー、ってワケですか』
だが、実のところ理由はそれだけではない。それ以前の話として、元から力の大部分を抑え、自らの完全性と絶対性を抑制しているために分からなかったという事情もあった。
『うん。本来の力出す、強すぎて逆に暴れる余地ない。暴れる間もなく全てが思い通り。つまらない、面白くない。だから、大半を抑えてる。この前、宇宙次元、ほとんど消した時も、ずっと抑えてた』
疫神が小さな手を叩き、あっけらかんと言う。この神は一度だって、世界を相手に本気になったことはないのだ。先日寝起きで暴れた際もそうだった。二重の荒神化をしてもいない、真の神格を出してもいない、虹を帯びてもいない、ごく軽い準備運動でしかない。真価など欠片も表出させていない状態だった。
……余談だが、最高神以下の色持ちの神が世界に合わせて抑えている力を解き放てば、自身の神威の色に加えて淡い虹色を纏う。至高神のように鮮やかな明度ではないにしろ、同じ彩を放つのだ。だからこそ、有色の神は超天の絶域にも辿り着ける。なお、天威師を含む至高神に関しては、力を抑えている普段の状態でも虹を帯びている。
ただし、一括りに色持ちと言っても、至高神、最高神、選ばれし神、アマーリエたちと神格の段階が分かれているので、有する神位によって虹の濃淡は変わる。
『遊運命神も同じだ。真価を抑制しているから、失敗もするしポカもヘマもする。聖威師たちをついうっかり襲っちゃうくらい、十分有り得るとも』
『あるある、やるやる』
同じように手をヒラヒラ振って言い切る兄たちに、ラミルファが舌打ちした。
『困ったお方ですね、遊運命神様は』
『ちょっとねぼすけなんだなぁ。アマーリエたちを同胞だと気付かず、憎い輩だと思って加害するならば、クロウやディスのような加減はしない。容赦なく来るぞ』
魔神はアマーリエに魔物をけしかけたが、本当に傷付ける気はなかった。疫神も彼なりに考えており、危うくなれば止めるつもりでいた。だが遊運命神の場合、本気で害しに来るという。
フレイムは思わず、ちょっと待てと片手を挙げた。
『いや、けど、神は地上には干渉しない決まりじゃないですか』
『それは努力義務なんだな。どこまで守るかは個々の神々の一存だ。むろん、大抵の神は遵守する。高位の神は特にな。だが、シュナは関与する理由を持ってるからな~』
『そう、理由あったら堂々と干渉可能。我、起きてから、今の天の規則、お勉強し直した。我、勤勉。シュナ、神の詐称に自分の神器使われた。これ、理由なる』
神になりすますことは禁忌だ。一笑に付して捨て置く神もいるが、激怒する神の方が多い。
『シュナ、普段、遊戯に夢中。自領から出て来ない、けど、今回、キレて飛び出して来るかも』
『あ~、シュナはアレだ、人間世界で言えばゲーム中毒者みたいな奴なんだな。放っておけば何万年でも何十万年でも自分の領域で遊戯に明け暮れている。遊ぶのが大好きな神同士、ディスとは時々ゲームをしていたが、大体一柱でのめり込むことが多いな』
『ですが、聖威師を詐称するために神器を利用したのはレシスの先祖ですよ、兄上方。セインやヴェーゼ、アマーリエは何もしていません』
『でも、その先祖と勘違いしてる。だから、どのみち襲われる』
ケロリと放たれた物騒な言葉に、フレイムが頭を抱え、ラミルファも額に手を当てた。
『シュナ、パッチリ起きれば大丈夫。同胞だって気付く。攻撃止める。それまで耐えられれば良し』
『だから、アイツがいつ起きても守れるように地上に来たんだなぁ。俺とディスがそろってたら大丈夫だ。片方が狙われた聖威師を守り、もう片方はシュナを止めることに専念する。同胞が本気で危ないということで、父神も降臨の許可を下さった』
『高確率で狙われる、アマーリエ。フルードとアリステルの可能性、なくはないけど低い』
ピンと指を立て、宙を漂う疫神が言う。
『あの二人、神罰抑えて15年ほど経ってる。ぎゅー、押さえ込まれ続けたから、神罰の気配、かなり弱まってる。けどアマーリエの神罰、先日抑えたばかり。しかも爆発寸前まで膨張済み。まだ気配、強い。感知されやすい』
なお、ミリエーナやダライ、エイールなど、神罰を継いではいるが選ばれていない者は、感知される可能性はほぼない。絶対にないわけではないが、それより先にアマーリエやフルード、アリステルの方が気付かれる。
ではエイリーはどうなのかと言えば、彼女は現在、心身の療養のために創られた特殊な治療用空間にいる。神官府に伝わる高位神器を用いて主任神官が創生したそこは、一種の異空間であるため、その中にいれば発見される確率は低い。もちろんゼロではないが、やはりその前にアマーリエたちが見付かるだろう。
『畢竟するに、遊運命神様に真っ先に目を付けられるとしたらユフィー、ってワケですか』
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