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第4章
49.警戒する神々
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『おそらくはな。……俺たちもレシスのやらかしや神罰については、ヴェーゼとフルードが現れるまで知らなかったんだ。シュナが最初にやらかしに気付いて、激怒して罰を与え、怒り心頭のまま昼寝に入ったんだろうなぁ』
神々はそれらの事情を関知していなかった。自身の領域にいた遊運命神の神威が急に昂ぶった後、『少し眠る』という短い連絡が来て、すぐに寝付いた気配がしたのだ。そのため、何か気に触ることがあったらしいとは察したが、その理由は知らないままだった。
だが、そこは永き時を在る神々。まぁ起きたら聞けばいいかと思い、特に気にしなかったという。
『最初に奇跡の聖威師になった娘も知ってたっぽいですが、遊運命神様を止めた後に寝ちまったんですかね』
『ああ。シュナが寝入った直後、あの子も何も言わず眠ってしまったんだ。おそらく、シュナを必死で止めたことで疲れ果てたのだろう。あの子の方はまだ起きる気配を見せていない』
『シュナの覚醒の兆し、最初、とってもとっても小さかった。すぐ消える、思った。でも一応、アレクと許可取って降臨した。万一ある大変、まぁ念のため、くらいの感覚。そんなに心配、してなかった』
おそらく起きないだろうと、葬邪神と疫神を含む神々は楽観視していたという。だが――
『降臨して数日、天地行き来して、状況確認してた。覚醒の気配、消えない。むしろ、どんどん大きくなって来た。無視できないレベル。それで、ラミと焔神様、伝えることにした』
『さっきもシュナの神域の門前まで行ってみたが、これは五分五分だ。眠り続けるか起きるか、半々というところまで来た』
葬邪神がフレイムとラミルファを見た。
『良いか、最も危険なのはアマーリエだ。俺とディスは彼女の側にいる。ヴェーゼとフルードも対抗馬で襲われる恐れがあるから、あの子たちのことも視ている。基本、シュナの相手は俺たちがする予定だが、お前たちも警戒はしておいてくれ。それを伝えたくて呼んだ』
『当然そうしますが、遊運命神様の様子も確認しているのでしょうね?』
『もちろんだとも、ラミ。悪神たちにシュナの神域の周りを巡回してもらっている。覚醒した気配があればすぐこちらに報せるのと、シュナを起こすために呼びかけまくってくれるよう頼んでおいた』
そうですか、と末の邪神が頷く。フレイムも呻くようにしながら言う。
『せいぜい夜道に気を付けますよ』
そういえば、フルードも似たようなことを言っていた。遊運命神だけではなく、聖威師の強制昇天を推奨する強硬派もアマーリエたちを狙う恐れがあるのだ。
『あーもう』
一つ落ち着いたと思ったらまた次から次へと問題が出てきやがって、と、微かな声で呟く。だが、悪いことばかりではない。アマーリエやフルードに守りが必要だという状況ならば、特別降臨の期限を伸ばせるのだ。
これでもうしばらくはアマーリエの側にいられる。理由が理由なので、喜んでばかりもいられないが。隣を見ると、ラミルファも何とも言えない表情で佇んでいた。
『狼神様と鬼神様は愛し子を守りに来ないんですかね?』
『どうだろうなぁ。あの二神は最初期の神だ。太古の神は滅多に動かんし、重要な神事でもなければ地上にもほとんど降りん。愛し子が地上にいる場合、時折会いに行くことはあるが、すぐに還る』
特別降臨などを駆使し、許容範囲限界まで滞留しようとするのは、若神が中心だ。
事実、狼神はフルードに寵を与えた後、フレイムやフロースのように特別降臨して側にいることはしなかった。レシスの神罰を継いだフルードが幾度も危機に瀕した際は腰を上げようとしたこともあったものの、焔の神器が共にいて万全の守護があるということで、基本的には天から静観していた。愛し子への愛が薄いわけではない。世界への関わり方が、若神とは違うのだ。
『とはいえ、ディスの覚醒騒動が落ち着いたと思ったら今度はシュナとなれば、直接動く可能性もあるな~。だが、今のところは俺たちがいるから静観してるんだろう』
『遊運命神様が覚醒する可能性があることは、セインたちに伝えてよろしいですか?』
『ああ。よくよく注意しておくよう言ってくれ。一応、アマーリエたち聖威師には防御壁を張っておく。敵意や害意、嫌悪や憎悪といったものに反応して、その身を守る陣だ』
『分かりました。んじゃこっちも警戒しときますんで、万一の時はお願いしますよ』
『ああ、任された』
『我、了解!』
颯爽と笑って胸を叩く葬邪神と、クルンクルン回る疫神。頼りになるはずの彼らを見ながら、フレイムとラミルファはこっそりと目を見交わして溜め息を吐いた。
神々はそれらの事情を関知していなかった。自身の領域にいた遊運命神の神威が急に昂ぶった後、『少し眠る』という短い連絡が来て、すぐに寝付いた気配がしたのだ。そのため、何か気に触ることがあったらしいとは察したが、その理由は知らないままだった。
だが、そこは永き時を在る神々。まぁ起きたら聞けばいいかと思い、特に気にしなかったという。
『最初に奇跡の聖威師になった娘も知ってたっぽいですが、遊運命神様を止めた後に寝ちまったんですかね』
『ああ。シュナが寝入った直後、あの子も何も言わず眠ってしまったんだ。おそらく、シュナを必死で止めたことで疲れ果てたのだろう。あの子の方はまだ起きる気配を見せていない』
『シュナの覚醒の兆し、最初、とってもとっても小さかった。すぐ消える、思った。でも一応、アレクと許可取って降臨した。万一ある大変、まぁ念のため、くらいの感覚。そんなに心配、してなかった』
おそらく起きないだろうと、葬邪神と疫神を含む神々は楽観視していたという。だが――
『降臨して数日、天地行き来して、状況確認してた。覚醒の気配、消えない。むしろ、どんどん大きくなって来た。無視できないレベル。それで、ラミと焔神様、伝えることにした』
『さっきもシュナの神域の門前まで行ってみたが、これは五分五分だ。眠り続けるか起きるか、半々というところまで来た』
葬邪神がフレイムとラミルファを見た。
『良いか、最も危険なのはアマーリエだ。俺とディスは彼女の側にいる。ヴェーゼとフルードも対抗馬で襲われる恐れがあるから、あの子たちのことも視ている。基本、シュナの相手は俺たちがする予定だが、お前たちも警戒はしておいてくれ。それを伝えたくて呼んだ』
『当然そうしますが、遊運命神様の様子も確認しているのでしょうね?』
『もちろんだとも、ラミ。悪神たちにシュナの神域の周りを巡回してもらっている。覚醒した気配があればすぐこちらに報せるのと、シュナを起こすために呼びかけまくってくれるよう頼んでおいた』
そうですか、と末の邪神が頷く。フレイムも呻くようにしながら言う。
『せいぜい夜道に気を付けますよ』
そういえば、フルードも似たようなことを言っていた。遊運命神だけではなく、聖威師の強制昇天を推奨する強硬派もアマーリエたちを狙う恐れがあるのだ。
『あーもう』
一つ落ち着いたと思ったらまた次から次へと問題が出てきやがって、と、微かな声で呟く。だが、悪いことばかりではない。アマーリエやフルードに守りが必要だという状況ならば、特別降臨の期限を伸ばせるのだ。
これでもうしばらくはアマーリエの側にいられる。理由が理由なので、喜んでばかりもいられないが。隣を見ると、ラミルファも何とも言えない表情で佇んでいた。
『狼神様と鬼神様は愛し子を守りに来ないんですかね?』
『どうだろうなぁ。あの二神は最初期の神だ。太古の神は滅多に動かんし、重要な神事でもなければ地上にもほとんど降りん。愛し子が地上にいる場合、時折会いに行くことはあるが、すぐに還る』
特別降臨などを駆使し、許容範囲限界まで滞留しようとするのは、若神が中心だ。
事実、狼神はフルードに寵を与えた後、フレイムやフロースのように特別降臨して側にいることはしなかった。レシスの神罰を継いだフルードが幾度も危機に瀕した際は腰を上げようとしたこともあったものの、焔の神器が共にいて万全の守護があるということで、基本的には天から静観していた。愛し子への愛が薄いわけではない。世界への関わり方が、若神とは違うのだ。
『とはいえ、ディスの覚醒騒動が落ち着いたと思ったら今度はシュナとなれば、直接動く可能性もあるな~。だが、今のところは俺たちがいるから静観してるんだろう』
『遊運命神様が覚醒する可能性があることは、セインたちに伝えてよろしいですか?』
『ああ。よくよく注意しておくよう言ってくれ。一応、アマーリエたち聖威師には防御壁を張っておく。敵意や害意、嫌悪や憎悪といったものに反応して、その身を守る陣だ』
『分かりました。んじゃこっちも警戒しときますんで、万一の時はお願いしますよ』
『ああ、任された』
『我、了解!』
颯爽と笑って胸を叩く葬邪神と、クルンクルン回る疫神。頼りになるはずの彼らを見ながら、フレイムとラミルファはこっそりと目を見交わして溜め息を吐いた。
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