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第5章
27.天威師と束の間の休憩
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◆◆◆
「……でさー、俺たち天威師側も大変だったわけだよぉ」
天堂がある棟内の会議室。細長いテーブルに腰掛け、紅茶のカップを持ったクレイスが朗らかに笑う。
結局、一般人を巻き込むリスクの回避を優先し、棟の外には出ずに適当な部屋に潜伏することになった。フレイムとラミルファが、アマーリエたちの気を隠す結界を張っている。
室内の隅では、聖獣たちが控えている。彼らは色持ちの神ではないため、遠慮しているのだ。
「はぁ……」
同じくカップを目の前にしたアマーリエは、曖昧に頷いた。濃厚な紅と渋みのあるオレンジが程よく混ざり合った水色を眺めながら一口飲むと、喉の奥まで染み透る味わいが広がった。フレイムが淹れてくれた特製紅茶は、こんな非常事態でも心を癒してくれる。
「今日はちょうど俺たちの祖神――天の至高神をご機嫌伺いで勧請する日だったんだよ。全員じゃなくて、割と近親の祖神だけどね。先々代皇帝と先代皇帝」
先々代の帝国皇帝ルーディと先々代の皇国皇帝黒曜は、双子の兄妹だ。先代の帝国皇帝レイティと先代皇国皇帝白珠は、従兄妹であり夫婦。レイティはルーディの息子、白珠は黒曜の娘だ。天威師の婚姻は近親同士も珍しくない。人のような形をしていても神であるため、民は違和感を抱いていない。
「けどさー、天界の神々がついに痺れを切らしたってので、お祖父様とお祖母様……あっ、ルーディ様と黒曜様まで同調しちゃってさ」
「天の至高神たちは、末裔たる私たちに早く還って来て欲しいとお思いだ。いわば天界の神々と聖威師たちと同じ構図なのだ」
秀峰が補足した。どこの神々も考えることは同じらしい。天堂の状況は今どうなっているのだろうかと、アマーリエはチラと考えた。自分たちの体が再び透け始めていないことを鑑みると、ルファリオンが抑えてくれているのか。
「それで、自分たちも可愛い孫を昇天させるぞーって感じで、勧請した途端に襲いかかって来たわけだよぉ。ははは」
「笑い事ではないぞ、紺月帝。こちらがどれだけ仰天したことか」
マイペースに笑うクレイスに、秀峰が渋い顔で言った。だが、紅茶を口に含むと雰囲気を緩める。美味しかったらしい。
「でも、ルーディ様は父上が、黒曜様は母上が止めて下さったよ。今、バチバチの親子喧嘩中。あっ、父上ってのはレイティ様で、母上は白珠様のことね。んでー、勧請の担当は俺と秀峰兄上で、他の天威師はいなかったからさー、二人で命からがら逃げて来たんだ」
天界の神々に例えれば、ルーディと黒曜は強硬派で、レイティと白珠は尊重派なのだという。秀峰が額を抑えた。
「現在、先々代と先代がそれはもう景気良く戦っておられる。先代方が強力な結界を張って下さったゆえ、地上世界に被害は出ておらぬが……ああもう、あちらでもこちらでも」
「日香とか他の天威師たちは上手い具合に外向きの務めでいなかったからさー、念話で急報出して、ヤバイから事が収まるまで身を潜めといてって連絡しといたよ。だけど父上と母上が突破されたら俺たち終わりだねぇ。ってかこの紅茶とお菓子マジ美味しいですね、最高ですよ!」
「ええ、誠に美味でございます」
クレイスと秀峰にそろってサムズアップを向けられ、茶菓を用意したフレイムとラミルファが破顔する。
「ありがとうございます!」
「光栄です」
至高神は全ての神々に慕われるため、こうして話せることは歓喜の至りなのだ。至高神側にとっても、天界の神々と聖威師は大切な身内なので、会話できるのが嬉しくて堪らないらしい。聖威師と話す時、天威師は常に上機嫌だ。
「ええと、それで……その鳥は?」
「……でさー、俺たち天威師側も大変だったわけだよぉ」
天堂がある棟内の会議室。細長いテーブルに腰掛け、紅茶のカップを持ったクレイスが朗らかに笑う。
結局、一般人を巻き込むリスクの回避を優先し、棟の外には出ずに適当な部屋に潜伏することになった。フレイムとラミルファが、アマーリエたちの気を隠す結界を張っている。
室内の隅では、聖獣たちが控えている。彼らは色持ちの神ではないため、遠慮しているのだ。
「はぁ……」
同じくカップを目の前にしたアマーリエは、曖昧に頷いた。濃厚な紅と渋みのあるオレンジが程よく混ざり合った水色を眺めながら一口飲むと、喉の奥まで染み透る味わいが広がった。フレイムが淹れてくれた特製紅茶は、こんな非常事態でも心を癒してくれる。
「今日はちょうど俺たちの祖神――天の至高神をご機嫌伺いで勧請する日だったんだよ。全員じゃなくて、割と近親の祖神だけどね。先々代皇帝と先代皇帝」
先々代の帝国皇帝ルーディと先々代の皇国皇帝黒曜は、双子の兄妹だ。先代の帝国皇帝レイティと先代皇国皇帝白珠は、従兄妹であり夫婦。レイティはルーディの息子、白珠は黒曜の娘だ。天威師の婚姻は近親同士も珍しくない。人のような形をしていても神であるため、民は違和感を抱いていない。
「けどさー、天界の神々がついに痺れを切らしたってので、お祖父様とお祖母様……あっ、ルーディ様と黒曜様まで同調しちゃってさ」
「天の至高神たちは、末裔たる私たちに早く還って来て欲しいとお思いだ。いわば天界の神々と聖威師たちと同じ構図なのだ」
秀峰が補足した。どこの神々も考えることは同じらしい。天堂の状況は今どうなっているのだろうかと、アマーリエはチラと考えた。自分たちの体が再び透け始めていないことを鑑みると、ルファリオンが抑えてくれているのか。
「それで、自分たちも可愛い孫を昇天させるぞーって感じで、勧請した途端に襲いかかって来たわけだよぉ。ははは」
「笑い事ではないぞ、紺月帝。こちらがどれだけ仰天したことか」
マイペースに笑うクレイスに、秀峰が渋い顔で言った。だが、紅茶を口に含むと雰囲気を緩める。美味しかったらしい。
「でも、ルーディ様は父上が、黒曜様は母上が止めて下さったよ。今、バチバチの親子喧嘩中。あっ、父上ってのはレイティ様で、母上は白珠様のことね。んでー、勧請の担当は俺と秀峰兄上で、他の天威師はいなかったからさー、二人で命からがら逃げて来たんだ」
天界の神々に例えれば、ルーディと黒曜は強硬派で、レイティと白珠は尊重派なのだという。秀峰が額を抑えた。
「現在、先々代と先代がそれはもう景気良く戦っておられる。先代方が強力な結界を張って下さったゆえ、地上世界に被害は出ておらぬが……ああもう、あちらでもこちらでも」
「日香とか他の天威師たちは上手い具合に外向きの務めでいなかったからさー、念話で急報出して、ヤバイから事が収まるまで身を潜めといてって連絡しといたよ。だけど父上と母上が突破されたら俺たち終わりだねぇ。ってかこの紅茶とお菓子マジ美味しいですね、最高ですよ!」
「ええ、誠に美味でございます」
クレイスと秀峰にそろってサムズアップを向けられ、茶菓を用意したフレイムとラミルファが破顔する。
「ありがとうございます!」
「光栄です」
至高神は全ての神々に慕われるため、こうして話せることは歓喜の至りなのだ。至高神側にとっても、天界の神々と聖威師は大切な身内なので、会話できるのが嬉しくて堪らないらしい。聖威師と話す時、天威師は常に上機嫌だ。
「ええと、それで……その鳥は?」
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