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3 君へのメッセージ
しおりを挟む「で、どうなの?加瀬さんとは」
ニヤニヤしながら目の前に座る葉山みのりが蘭に聞いた。どこか面白がるようなその声に蘭はむっとした。
「なんか面白がってない?」
「そんなの面白いに決まってるじゃん。で、加瀬さんとはうまくいってるの?」
葉山みのりは蘭のモデル仲間だ。同じ学生で年齢も近いことから仲良くなった。
異性でここまで腹を割って話せる相手は珍しい。
さっぱりとした性格で口下手な蘭にとって逆に話しやすかった。気づくと相手の懐に入ってしまう人懐っこさが現場でもいい雰囲気を生み出している。
そして、唯一蘭と加瀬の関係を知っている。
今は、お互いの撮影現場が重なり、休憩中である。
「うまくはいってると、思う」
「なによ、歯切れが悪いわね。前会った時は散々惚け話を聞かされたけど」
そう、普段言えない加瀬との話をみのりには話すことができた。
「別に、加瀬さんとはいい感じだよ。相変わらずかっこいいし。ただ…」
「ただ?」
「加瀬さんは優しすぎるんだよ。俺に触れる手だって信じられないくらい優しくて。キ、キスも上手で。でもそこから先はまだしてくれないの。大切にしてくれてるのはわかるんだけど、でも…」
蘭が顔を赤らめる姿を見て、みのりは大きなため息をついた。それは大きなため息だった。
「あんたさ、結局惚気じゃない」
「の、惚気じゃないよ。悩んでるんだよ」
「贅沢な悩みねぇ。結局こうでしょ。彼氏が優しすぎて大切にされちゃって僕、困っちゃうーってことでしょ」
「?!」
蘭は真剣に悩んでいたのだ。でも他人から見ると贅沢な悩みなのだろう。
「蘭」
みのりのトレードマークのポニーテールが揺れる。蘭はみのりの真剣な視線とぶつかった。
「あんたの悩みはわかったけど、結局のところ、加瀬さんと話すしかないと思うよ。それにしてもお互い会う時間とか限られてるんだから不安なことはしっかり話さないと、どんどん離れていくわよ」
離れていく。加瀬さんと。
加瀬さんは今でも遠いのだ。経験値も仕事能力も自分よりもあって加瀬さんの背中はいつだって遠い。加瀬さんが好きだけどその背中に早く追いつきたくて必死だ。
加瀬さんの考えていることは想像はできるけど実際のことはやっぱりわからない。そもそも他人の気持ちなんて完璧に理解はできない。でも理解したい。加瀬さんが好きだから。そのためにちゃんと話さないといけない。
「みのりちゃん。ありがとう。俺、ちゃんと加瀬さんと話してみる。それでちゃんと加瀬さんの気持ちも聞いて、俺の気持ちも伝える」
みのりはにっこりと笑って大きく頷いてくれた。
「じゃあ、さっそく加瀬さんにメッセージ送って」
「え?」
「せっかく今決心したんだから。加瀬さんに会えませんかって連絡しよ!」
「そんな急に」
「今送らないと決心が揺らぐでしょ。早く!」
みのりは蘭をせかす。確かに蘭のことだから家に帰ったらまた色々悩んで今の気持ちが揺らぐかもしれない。
よしっ!
蘭はカバンから携帯を取り出して加瀬にメッセージを打つことにした。みのりは目の前で静かに待っていてくれる。
『 今週末会えませんか?話したいことがあります』
シンプルが一番だ。ダラダラと書きそうになったが伝えたいことは直接会った時話せばいい。
「みのりちゃん、本当にありがとう」
「蘭なら大丈夫!頑張って」
みのりの励ましで一歩前に進めた気がする。
時計を見ると休憩時間がもうすぐ終わろうとしていた。
頑張ろう。今は自分ができる精一杯を。
蘭の足取りはいつもより軽かった。
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