laugh~笑っていて欲しいんだ、ずっと~

seaco

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「……俺の事……好きすぎるんだもん」

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「良かったな、軽くて」

今週から休みを合わせてるから、久しぶりの2人揃っての休みなんだけど……

慶は、昨日のケガがあるから、今日は遠出も出来ず……とりあえず、職場の工藤さんとの約束もあって慶を病院へ連れて来た。

診て貰った結果、やはり、足首は捻挫だった。
腕も、少し筋に炎症を起こしてる、と。
顔の傷は打撲って事で……それぞれの処置に必要な外用薬が処方され、今、薬を受け取って車に戻ったところ。

慶は「うん」と笑顔で言う。

「あ…工藤さんに連絡しとくね。連絡ちょうだいって言われてるから」

少し遠慮がちに慶がそう言う。

「あぁ、そだな」

俺がそう言うのを待って、慶は携帯を取り出す。

あ~…携帯、修理しないとな……などとぼんやり考えていたら、漏れて来るコール音が途切れて、電話の向こうのスタッフの声が聞こえた。

「あ、お疲れ様です、羽柴です」
(あっ、羽柴くんっ!?ケガ大丈夫なのっ??)

すんげぇ声が漏れて来る。

「あ、はい、病院行って来て、」
(大丈夫だった??大した事無かった??)
「は、はい、大丈夫でした」

勢いのある女性スタッフが押し気味に聞いて来るから、慶が返答に困ってる。

(あっ、ちょっと待ってね。工藤く~んっ、良いとこ来たっ、羽柴くんから電話だよ~っ)

エンジンもかけず車内が静かだから、すんごい普通に聞こえて来る。
少し間があって…

(もしもし、羽柴くんっ!?)

と、「工藤リーダー」の声がした。

「あ、お疲れ様ですっ」
(お疲れ、どうだった?病院行った?)
「はい、行きました」
(何て?)
「あ、言ってた通りでした。腕は筋の炎症で、足は捻挫みたいです」
(あ~~~~そうかぁ~~……ほんとごめんね、俺の不注意で…)
「もう、謝らない約束です」
(そうだけどさぁ……)


何だか少し………


ジェラシーだ。


ちょっと………仲良し、みたいな?


そういうやり取りが……ちょっと嫌だし…。


(でも、骨とか異常なくてほんと良かった。安心したよ~)
「すみません、心配かけて…」
(いやいや、羽柴くんが謝るような事は1つもないよっ。俺が全面的に悪いからさっ)
「いえ、そんなこと…」
(明日も、無理しなくて良いよ?)
「え?」
(まだ痛むようなら休んでくれても大丈夫だから、朝の様子見て連絡してよ)
「え…でも…」

慶が困ってる。
痛くても、明日も休みます、とは言いにくい性格だろうからな、慶は。

(今休んでくれてた方が良いんだよ。年末の休み前になって来ると忙しくなるから)
「…はい、じゃあ、明日の様子見て連絡します」
(了解。次出勤した時は、休憩の飲み物奢るよ)
「や、いつも奢って貰ってばっかで悪いですから」

ん?
いつも奢って貰ってんの?

(お詫びだよ)
「でも、お詫びって言って昨日送って貰ったんで、もうお詫びは終わってます」
(あはは、よく聞いてんね。じゃあ…奢りは止めて普通に休憩にしようか)
「それが良いです」
(了解。じゃあ、ほんと明日無理しないでね)
「はい、ありがとうございます」
(じゃあ)
「はい」

そう言って、電話は終わったけれど……引っ掛かる事がある。

「あのさぁ、」

引っ掛かりすぎて、声に出してしまった。

「ん?」

携帯を仕舞いながら慶がこちらを向く。

「思いっきり、声漏れてて会話全部聞こえてたんだけどさ、」
「え、あ、うん」

話しの内容、全漏れだからね。

「お前、いつもあの人に何か奢って貰ってんの?」
「いつもじゃないけど…自販で飲み物買ってくれて、」
「休憩、一緒なの?」
「毎回じゃないけどね、リーダーは休憩時間どこで取っても良いんだって。だから被る時もあるんだよ」

いやいや、そうじゃないでしょ、多分。

俺は……お前の事が好きだからさ……だから、何となく分かんだよ…………相手がお前をどう思ってるか。

どこで休憩取っても良いのに、そんな被せて来ないでしょ、普通。

その感情がどんなものなのかまでは、本人じゃないから分かんねぇけど……少なからずお前に興味持ってる事だけは、何となく分かるよ…俺には。

昨日だって……ちょっとそんな感じしたんだ。

さっきも話の流れで、次に出勤した時も休憩一緒に行くみたいな感じになってたじゃん。


………このイラつく感じはアレだ。



嫉妬だな。



これを口にしたら、きっとウザがられんだろうか……。

「…何にも…特別に思ったりしてないよ?」

先に、慶に言われた。
俺はよっぽど、顔に出やすいらしい。

「……当たり前だろ」

こういう俺を、慶はどう思うんだろう……
案外、女々しいな……とか………ちょっと鬱陶しいかも……とか………。

「……侑利くんだって」

慶がそう言って、俺を見る。
俺が、何だよ。

「……キレイな女の人や、侑利くんファンの人とか……気に入られて掴まって話したり……周り……侑利くんに会いに来てる人だらけじゃん」
「それは、仕事だし、」
「仕事でもそんなのっ……」

予想以上に自分の声がデカかった事に、慶はちょっと気まずそうな表情を浮かべて、少し小さく深呼吸をした。

「俺だって……不安だし……嫉妬だってする」

不安?
慶が?

こんなにお前にハマってんのに?

「……やっぱり……女の人にとられちゃうんじゃないかとか……楽しそうに話してるの見たら………嫉妬しちゃって………そんな風にネガティブな自分が嫌になる。………仕事だって分かってるけど……見ちゃったら、すごく嫌だったんだ……侑利くんが……俺から離れて行っちゃうんじゃないかって思って……やっぱり……女の人の方が良いって思うんじゃないかって………」

これは俺は……
すごく愛されてるって事で良いんだよな?

「あのさ……」

助手席の慶の体を少し俺の方へ向かせる。

「……女の人の方が良いとか、そういう事じゃねぇんだ。そんなさぁ……男と女どっちが良いか、なんてレベルじゃないんだよ……前にも言ったかも知んねぇけど……俺は、お前が女でも、きっと好きになったよ」

慶はきっと、この後、泣いてしまうだろう。
こういう話に、慶は弱いから。

「お前が男だろうが何だろうが、もう気付いたら好きになっててさぁ、付き合い出してからずっといつも頭ん中がお前の事で一杯な訳」

慶の両目に涙がどんどん溜まって行ってる。
だけど、俺は止まらなくて……ひたすら喋る。

「お前が喜ぶから料理だって手間じゃねぇし、お前は嫌がるかも知んねぇけど、お前と何かする事でいくら金かかったって何とも思わねぇ。俺、案外単純だからさ、お前が笑ってたら嬉しくなるし、辛そうにしてたら何とかして引き上げてやんねぇとって思うんだ。俺が居る事で、お前の人生が少しでも上がれば良い」

慶は何も言えなくなってる。
俺がこんなに喋ると思って無かったんだろう…。

「お前の事をずっと見てる。少なくとも、お前と付き合うようになってからはずっと…見てるつもり。まだ足りねぇなら、もっと見るよ。すげぇ好きでさぁ……正直、自分でも引く時あんだ。さすがに重いかも、って。だけど、どうにも出来ねぇ。だから、これからもきっと…嫉妬もするし束縛もする」

慶はもうとっくに泣いてる。
静かに……表情を変えず涙だけを流してキレイに泣く。

「だからさ、職場の先輩がさ、休み時間被せて来たり、会う度自販で何か買ってくれたり、ケガさせたお詫びで送るっつって2人っきりで車乗ったり、俺の知らねぇ話を2人でしてたりするとすんげぇ気になんの」

少し驚いたような慶の表情。
俺がこんな事言うとは思わなかった顔だな……。

「とにかく、俺はこんな事考えててさ……正直、女々しいじゃんって思われても仕方ないと思う。……でも……マジで過去最高なんだわ、俺…こんなに人好きになった事ねぇんだ、今まで。……俺には…お前が居ないともうダメだ」

慶が子供みたいに、両方の手の甲で涙を懸命に拭いている。

「……まぁ……今日はこの辺で」

緩く締め括った。

しばらく静かな時間が流れた。
慶の涙は止まる事なく……次々溢れ出して来てる。

「……滝だぞ」

そう言って、車内にあるティッシュを箱ごと取って渡してやった。

「だって……侑利くんが、…」

俺の所為にしようとしてんな。
いいよ、聞いてやる。

「……俺の事……好きすぎるんだもん」
「あっははは」

ウケたわ。

言い方。

「……一番好きだって言って欲しい人に……すんごい愛されてる」
「やっと分かったか?」

抱き締めてるティッシュの箱から一枚取って、グズグズやってんのを手伝って拭いてやる。
もう、涙だか鼻水だか分かんなくなってるけど……とにかく、俺がどんだけ慶を好きかって事は伝わったみたいだな…。

「録音しとけば良かった…」

……ボソッと言う。

「…別に、いつでも言ってやるよ」

……俺も何年か、恋だの愛だの好きだの嫌いだの……そういうのから完全に遠ざかってたから……何かここに来て変なスイッチ入ってんだ…。




~~~~~~~~


病院の後、携帯の修理に行き、割れてた画面は復活した。
慶は元通りになった携帯を嬉しそうに持ってて、ほんと、俺にも勝る単純さだな…と改めて思う。

そもそも……

変態オヤジに目ぇ付けられたり、人の巻き添え食ってケガしたり……何か負のオーラ出てんじゃねぇの?とか、ちょっと思うけど……

これ……
俺と出会って無かったら…一体どう対処したの、って思うわ…。


あ……

でも……

俺と出会って無かったら……「俺はきっともう死んでた」って言ってた…。

慶の事を知ってしまったら……
慶の居ない世の中が、どれだけ虚しいものなのか………想像しただけで泣きそうになる。


「…くんっ、侑利くんっ」
「え?」

すっげぇボーッとしてた…。

「もーっ!聞いてなかったなっ」
「あぁ、悪ぃ、何?」

捻挫とは言え、ケガした足をあんまり使うのは治りを遅らせるだけだし……歩き回らないで何かしようか、と相談してたとこだった。

慶が何か案を出したのかも知れないけど………悪い、聞いてなかったわ…。

「足ケガしてたら案外行くとこないよね~って言ったの」
「あぁ、そうだな。次の休みにはだいぶ良くなってるだろうけどな」
「……えへへ」

何だよ…。

「やっぱ、休み合わせると良いね~」

嬉しそうにしてんなぁ。

「そだな」

vvv…

携帯が短く震えた。
天馬からメッセージだ。

『今日、慶ちゃんと一緒の休みでしょ?夜は予定ある?』

ん?
何だ?

天馬も奏太と一緒の休みだって言ってたけど…。

『慶も休みだけど、特に決めてる予定はないよ。どした?』

送信してみる。
直ぐに既読になった。

『奏太がピザ作るって張り切ってんだけど…予定無かったら、慶ちゃんと一緒に食いに来ない?』

そのメッセージを慶に見せると、すげぇテンション上がった顔で俺を見て来たから、行きたいんだな、と推測。

『慶が超行きたそうな顔してる』

送信。

『ははっ(笑) 何か分かるわ。慶ちゃんにもピザ手伝って欲しいんだって』

天馬は、俺が初めて紹介した奴だから慶も一番慣れてるし、奏太も何かと慶を気にかけてくれてる感じあるし、きっと慶も居心地が良いんだろうな…。

それに、単純に、もっと仲良くなりたいって思ってんだ、きっと。

『奏太んちだけど、分かる?』
『分かるよ』
『夕方頃から作り始めたいんだってさ、だからまぁ、適当に来てよ』
『適当かよ(笑)』

とにかく、奏太んちに適当に行けば良いんだな。

『何か買ってこうか?』
『サラダ的な何か頼む~』
『オッケ』

予定が決まった。

「奏太さん、すごいねっ、ピザなんて家で作れるの??」

出た。
料理音痴の慶の珍質問。

ピザはピザ屋じゃないと食べれないって思ってんだろうな…

「じゃなきゃ、オーブン機能要らねぇから」
「え?」
「あ…や、そうだったな」
「何?」
「原始人だった事、思い出した。進化の途中だ」

蹴りが来るかと思ったら、パンチが来た。
案外本気のやつ。

「痛ぇ」
「大好きな恋人を原始人って言うからだ」
「すんげぇ自信付いてんじゃん」
「へへ、そうだよ。だってすんごい好きなんでしょ?俺の事~」
「何か…ムカつくわぁ~」
「あははっ、じゃあ、行こうっ」
「いや、まだ早ぇから」
「え?そうなの?」

まだ2時前だよ…。

「でも、持ってくもん買わねぇとな」
「…何か……お土産持って行きたいな」
「何持ってくの」
「う~~ん……」

悩んでる。
スイーツって手もあるけど、ピザ食ったら割と腹一杯になるし…奏太、張り切ってめっちゃ作りそうだし……

「……花はどうかな」

慶らしい発言に、何かホッする。
花なんて考え、俺には浮かばねぇけど。

「良いんじゃねぇ?奏太好きそうじゃん」
「ねっ」

嬉しそうな顔してさ。

鞄から財布を取り出して中身を確認してる。
そんなに入って無いはずだ。

ティッシュ配りの日払い給料が何日分か入ってただけだろう慶の財布の中身は、俺と付き合い出してからはほとんど使われる事なく今日まで来てる。

今の仕事の給料は、末締めで次の月の10日払いって言ってた。
そもそも口座を持ってなかった慶は、給料振り込みの為に口座を開設する手続きも大パニックだった。

まぁ、それは良いとして、無事に開設された口座にもまだ今のとこ振り込まれる給料は無い。

あまり、物を買う事に関してそんなに習慣がないらしく、服だって俺と買いに行ったっきり何にも買い足してない。
そろそろ、そのアウターじゃ寒い季節になって来てるって、俺は気付いてるけど……慶はどうなんだろう…。

服なんか毎日違うの着てるくらい持ってます、って言いそうな見た目なんだけどな…。
実際には、俺が買い与えた服しか持ってません、って言う質素ぶり。

俺は、このギャップがけっこうツボだ。

今、手に持ってる財布だって……一体いつから使ってんだって聞きたくなるくらい、年季入ってる。
きっと、この使い捨ての時代に、物を大事にするタイプなんだろうな、って思うと、すごく愛おしくなって来る。

そういうギャップにやられんだ。



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