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「ずっと前から……久我さんの事が……好きですっ」
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*光side*
「…俺、今から行って来るからっ」
純にそう告げて出て来たのが2時間前。
時刻は深夜1時前。
BIRTHの裏口に繋がる通路の入口に俺は居る。
俺がここに居る理由は1つ。
とうとう…………久我さんに、告白をする決心をした。
…って言っても、もう好きだって事はバレてるし、慶さんが居るから付き合える事もないって分かってるんだけど……
やっぱり……ケジメって言うか……ちゃんと…伝えて、ちゃんと振って貰わないと……俺は止まったままで進めないな…って思ったから…。
純にもそう言われて……俺なりに真剣に考えて、この結果を出した。
それに……実は、翔真の事も引っ掛かってる…。
俺の事を好きだって言って……俺の事を待ってるとか毎日言われるから………さすがに…ちょっと……
俺の何処がそんなに良いのか分からないけど、翔真は久我さんの事で頭が一杯な俺を否定も非難もせずに、ただただ好きだって言ってくれる。
だけど……翔真の気持ちに真剣に向き合えないのも……久我さんの存在が大きすぎるからで……そこが空かないと……たぶん進めない。
今日で片思いが終わる予定。
意気込んで来てみたものの……さっき、誰かが出て来る音がして、思わず隣の建物の壁に隠れてしまった……
先に数人帰って行ったけど、久我さんはその中には居なかった。
はぁ………何だよ……隠れるなんて…
こんなんで告白なんか出来んの?
すでに心臓が口から出そうなぐらいバクバクしてるしさ…。
壁の隙間から出て来て、もう一度通路の所まで戻ろうとした時……
「わ、」
後ろから腕を摑まれて引っ張られた。
思わずよろけて転びそうになる。
「さっきから1人で何してるのぉ?」
「何なに、君、もしかしてそういう?」
酔っ払いのおっさん2人にまた絡まれた。
しかも……何かニヤニヤしてて…おっさんが何考えてるかだいたい分かる。
「男でも君みたいに可愛い子なら、おじさん、3枚出しても良いよ」
き、きもっ!!
摑まれてる腕をブンブン振ってみたけど放してくれそうにない……どころか、引き摺られてるし…。
「ちょっと、止めろって!そんなんじゃないしっ」
もぉーっ!!
こんな事してる場合じゃないのにっ!!
きもいきもいきもいきもい……もう、おっさんどっか行けよーっ!!
「あの、すみません、ツレなんで放して貰って良いですか」
背後から……声がした。
振り返らなくても分かる。
これは…俺が大好きな久我さんの声だ…。
久我さんだけだと思ったら、黒瀬さんや宮永さんたちも居る。
こんな時に何だけど……イケメン揃いで眩し過ぎるよーっ!!
行き成りの助っ人登場に、おっさんたちは文句を言いながらやっと俺の腕を放して、どこかに消えて行った。
「お前、何やってんだっ、また絡まれてんじゃねぇかっ、2回目だぞっ、この前酔っ払いが多いから気をつけろって言ったばっかだろっ」
久我さんが少し強い口調で言う。
「ごめんなさいっ……」
こんなに強く言われると思ってなくて……振られる前から泣きそうだよ…俺…。
「まぁまぁ、侑利、…な?…ほら、お客さんだし」
黒瀬さんがフォローに入ってくれた。
久我さんは、少しの間、俺を怒ったような呆れたような顔で見てたけど……
「……悪かったな」
小さなため息の後でそう言ってくれた。
俺は…ううん、と首を振る事が精一杯で……何も言えなくなってしまった。
「ところでどしたの?」
黒瀬さんが俺を覗き込む。
「あ……え、…と……久我さんに……」
「侑利に用事?」
黙って頷く。
久我さんの顔、見れないよーっ…。
「じゃ、侑利、任せたぞ」
「…ぇ、」
黒瀬さんが、久我さんの肩をポンと叩く。
「話、聞いてやれよ」
「…あぁ、」
久我さんを残して黒瀬さん達は先に帰って行った。
無言でそれを見守ってたけど……俺は……怒られたのもあって、何も喋れない…。
「…何か飲む?」
「…ぇ」
急に言われて顔を上げると、すぐ後ろの自販機で久我さんがコーヒーを買う所だった。
うん、とも、ううん、とも言えず困ってたら、目の前にカフェオレが差し出される。
「好きかどうか分かんねぇけど」
そう言って、俺の手に無理矢理持たせると、駐車場へ向かって歩き出した。
「何か話あるんだろ?寒いから車」
少し先から振り返って俺に言う。
俺は急いで駆け出して、久我さんの後ろを付いて行った。
助手席に乗って良いものか…すこし戸惑う。
「早く乗りな」
「あ、は、はい」
助手席は……慶さんの場所なのに…良いのかな…。
乗り込んだ久我さんの車の中は、シンプルでおしゃれで大人の香りがする。
「それ、使いな」
ドリンクホルダーを指差して言う。
「は、はい」
緊張でうまく喋れない。
ドキドキが煩すぎて……もう…逃げて帰りたい。
でも、チラッと見たコーヒーを飲む久我さんの横顔がカッコ良すぎて倒れそうだよ……。
俺も久我さんも何も喋らない時間が……多分……1分くらい…。
だけど俺には……2時間くらいに思えた。
早く終わらせないと……
久我さんだって早く帰らないと……
慶さんが待ってんだし……
沈黙で居る事にも耐えきれなくなって、俺は……大きく息を吸った…………よし、喋るぞっ。
「久我さんっ!」
「おぉ、」
想像よりデカい声が出たせいで、久我さんがビクッと肩を竦ませた。
「ビビるわっ、声でけぇ」
「ご、ごめんなさい」
もぉーーーっ、何やってんだよーーっ。
「はは、」
え…。
久我さんが…笑ってくれた。
俺も急いで……その笑いに乗っかる。
幾らか、重かった場が和んだ。
「…何、話」
久我さんからそう言われて、また心臓が跳ねる。
告白ってこんなに苦しかったっけ…。
「あの…えっと……どうしても……これだけは言っておかないといけないって思って…」
そう言って、久我さんに向き直すと、久我さんも同じ様に俺の方に体を向ける。
「久我さんには……もう、バレてるし、それに、キレイな恋人さんが居るから…どうにもならないって事も分かってます……でも、」
そこまで一気に喋って……少し深呼吸。
久我さんがじっと俺を見てるから……ドキドキするわ、膝下はガクガクするわで結構大変…。
「このままで諦めれるかと思ったけど………やっぱり無理で……それどころか…久我さんと話せば話すほど……諦めないといけないって気持ちがグラついてる自分が居て……このままじゃ……きっと…前に進めないって思って……今日は……久我さんに…ちゃんと気持ちを聞いて貰おうと思って来ました…」
久我さんの顔を見ないままでここまで喋ったけど……きっと心配そうな顔してるんだろうな……久我さんってそういう人だ。
「ちゃんと気持ちを伝えた上で……ちゃんと…振って貰いたくて…」
「…ぇ、…」
久我さんが少しだけ声を漏らした。
告白なんか……慣れっこだろうな…久我さんは…。
俺は……こんなに緊張してんのに……
「久我さん…」
いよいよ俺は………久我さんを卒業する時が来た……
「ずっと前から……久我さんの事が……好きですっ」
言った…。
言っちゃった…。
沈黙が長い……。
「…お、……あぁ、……うん、……ありがと」
行き成り待ってて、勝手に告白されて、久我さんが困ってる…。
「…でも、…ごめん」
あぁ……とうとう振られるんだ…。
ずっと好きで居たかったのが、本音。
好きになって欲しかったのも本音。
泣いてしまいそうになって…久我さんから視線を外す。
「…好きになってくれた事は…マジで嬉しい。ほんとに、ありがとな」
優しい、久我さんの声…。
平日の深夜は人気もまばらで……静けさの中にその声が響く。
「でも……俺には、付き合ってる奴が居て……ソイツの事が、とにかく好きでたまんねぇんだ」
聞きたくなかったような……聞いてすっきりしたかったような………複雑…。
「多分…先に好きになったのは俺だと思う」
……やっぱり……あの人が羨ましい…。
久我さんに……こんな風に思って貰えるあの人が…。
「…ソイツの事考えてる余裕しかねぇんだ」
さっきから……涙が止まらない。
久々の失恋だし……
「だから…ごめん」
……振られた。
今、完全に…。
「あの人が羨ましくて……そればっか言って落ち込んだり泣いたりして………ウジウジしてたんです…俺」
涙は止まらないけど、感情は…少しずつ落ち着いて来てる…。
「純に…久我さんに気持ち伝えて、前に進まないとダメだって言われて……自分でも…いつまでもこんなんじゃダメだって思ってたから……………でも……久我さんの気持ちが聞けて良かった……」
久我さんが俺の大好きな顔で、ちょっと困ったように笑う。
「もしも……」
こんな事聞いても……意味ないかも知れないけど……
「あの人と出会ってなかったら………俺と付き合ってくれてましたか…?」
……こんなの聞いたって、現に久我さんはあの人と出会ってしまったんだから……ただの妄想でしかないのは分かってるけど…
「アイツと出会ってなかったら……俺は、誰とも付き合ってないと思う」
………久我さん……あの人の事……ほんとにほんとにすごく好きなんだ……。
もう……充分だよ。
惨めだし…どうにもならないって、思い知った。
「わかりました。……もう、諦めます。……前に進みます」
ちょっと強がってるとこもあるけど……でも…だいたいは本心。
いつまでも、ウジウジしたくない。
でも……
でも………
もう、諦めるから………
最後に……一度だけ………
「だから………一度だけ………抱きしめて貰えませんか……」
顔から火が出るかと思った……
そうでなくても、口から心臓が出そうなのに……
ウザいかも知れないな…
未練がましいって思われるかも……
言ってしまった言葉に……居たたまれなくなって、俯いた…………その時、…
フッと、久我さんの仄かな香水の香りがして……その腕が、俺の頭を抱え込むようにまわって来て………俺は…久我さんに抱きしめられた。
信じられない……
久我さんの胸に頭を付けて……その鼓動を感じる。
俺とは違って……穏やかに刻んでる…。
俺、今……久我さんに抱きしめられてんだなぁ……
「幸せになって欲しい」
すぐ近くで久我さんの声が聞こえて……「はい」と返事をしたと同時に、また涙がボロボロと溢れた。
その後は、俺がティッシュをほぼ1箱使い切るくらいの勢いでグズグズやってたのを、久我さんはちゃんと見守ってくれた。
時間はもう、深夜1時40分……
もう、1時間近く引き止めてしまっている…。
はぁ……俺って……ほんとヘタレだよ……。
「帰ります」と言った俺を、当たり前のように久我さんが送ってくれている。
何時になっても良いから終わったらウチにおいで、と純に言われてた。
純の家がここから割と近くて良かった…。
これ以上、久我さんの時間を引っ張りたくない…。
家できっと……慶さんが待ってる…。
「……俺……明日から、前進しますね」
立ち止まるのは今日までだ。
「…俺…昔から…男の人しかダメで……女の子とも付き合ってみた事あったんですけど……やっぱりダメでした…」
久我さんは、ただ黙って運転しながら話を聞いてくれてる。
「だから……恋愛がうまく行く事って、あんまりなくて………だけど……何ヶ月か前から、こんな俺をずっと好きだって言ってくれてる友達が居るんです。…大学の友達なんですけど……ソイツに…俺が向き合うまで待ってるって言われました。……久我さんの事で……俺、正直いっぱいいっぱいだったから適当に流してたのに、ソイツは…バカみたいに俺の事待ってて………どんなに頑張っても久我さんよりカッコ良くないんですけどっ……でも……そんな風に待っててくれてるの見てたら……だんだん…流せなくなって来て…………久我さんを卒業したら……向き合ってみようって思えるようになりました」
こんな事、話されても困るだろうけど……それでも久我さんはちゃんと聞いてくれる。
「前に進めたら……また、店に行っても良いですか?」
何か…全部喋ったら……ちょっと清々しい気分で久我さんの顔が見れた。
「もちろん、その友達も連れて来てよ」
何だか……そういう風に言って貰えて、すごく嬉しかった。
避けたり引いたりせずに……ちゃんと、受け入れてくれるんだなぁ、って…。
「あ、ここです」
「お、」
純のアパートに着いた。
久我さんの車に乗るのは、きっとこれが最初で最後なんだろうなぁ…とか考えながら、ドアを開けて降りる。
久我さんもわざわざ降りて来てくれて、俺の前に立つ。
背が高いとこも、髪型も、顔も、体型も、私服も、声も、性格も、全部……好きだったなぁ…。
「ありがとうございました。…久我さんを好きになって良かった」
「俺も、好きになって貰えて良かった」
ヤバい、泣きそう…。
「もぉ~~っ、最後にカッコいいのずるいですよぉ~」
なんとか堪えて、茶化すように言った。
最後は笑顔で終わりたい。
「ファンでいるのは、良いですか?」
「良いけど、友達が怒んない程度にな」
久我さんはフッと笑って、じゃあ、と言って車に戻った。
俺は、走り去る久我さんの車を泣かないように手を振りながら見送った。
久我さん……大好きでした。
よぉし!
純を起こして泣こうっ!!
「…俺、今から行って来るからっ」
純にそう告げて出て来たのが2時間前。
時刻は深夜1時前。
BIRTHの裏口に繋がる通路の入口に俺は居る。
俺がここに居る理由は1つ。
とうとう…………久我さんに、告白をする決心をした。
…って言っても、もう好きだって事はバレてるし、慶さんが居るから付き合える事もないって分かってるんだけど……
やっぱり……ケジメって言うか……ちゃんと…伝えて、ちゃんと振って貰わないと……俺は止まったままで進めないな…って思ったから…。
純にもそう言われて……俺なりに真剣に考えて、この結果を出した。
それに……実は、翔真の事も引っ掛かってる…。
俺の事を好きだって言って……俺の事を待ってるとか毎日言われるから………さすがに…ちょっと……
俺の何処がそんなに良いのか分からないけど、翔真は久我さんの事で頭が一杯な俺を否定も非難もせずに、ただただ好きだって言ってくれる。
だけど……翔真の気持ちに真剣に向き合えないのも……久我さんの存在が大きすぎるからで……そこが空かないと……たぶん進めない。
今日で片思いが終わる予定。
意気込んで来てみたものの……さっき、誰かが出て来る音がして、思わず隣の建物の壁に隠れてしまった……
先に数人帰って行ったけど、久我さんはその中には居なかった。
はぁ………何だよ……隠れるなんて…
こんなんで告白なんか出来んの?
すでに心臓が口から出そうなぐらいバクバクしてるしさ…。
壁の隙間から出て来て、もう一度通路の所まで戻ろうとした時……
「わ、」
後ろから腕を摑まれて引っ張られた。
思わずよろけて転びそうになる。
「さっきから1人で何してるのぉ?」
「何なに、君、もしかしてそういう?」
酔っ払いのおっさん2人にまた絡まれた。
しかも……何かニヤニヤしてて…おっさんが何考えてるかだいたい分かる。
「男でも君みたいに可愛い子なら、おじさん、3枚出しても良いよ」
き、きもっ!!
摑まれてる腕をブンブン振ってみたけど放してくれそうにない……どころか、引き摺られてるし…。
「ちょっと、止めろって!そんなんじゃないしっ」
もぉーっ!!
こんな事してる場合じゃないのにっ!!
きもいきもいきもいきもい……もう、おっさんどっか行けよーっ!!
「あの、すみません、ツレなんで放して貰って良いですか」
背後から……声がした。
振り返らなくても分かる。
これは…俺が大好きな久我さんの声だ…。
久我さんだけだと思ったら、黒瀬さんや宮永さんたちも居る。
こんな時に何だけど……イケメン揃いで眩し過ぎるよーっ!!
行き成りの助っ人登場に、おっさんたちは文句を言いながらやっと俺の腕を放して、どこかに消えて行った。
「お前、何やってんだっ、また絡まれてんじゃねぇかっ、2回目だぞっ、この前酔っ払いが多いから気をつけろって言ったばっかだろっ」
久我さんが少し強い口調で言う。
「ごめんなさいっ……」
こんなに強く言われると思ってなくて……振られる前から泣きそうだよ…俺…。
「まぁまぁ、侑利、…な?…ほら、お客さんだし」
黒瀬さんがフォローに入ってくれた。
久我さんは、少しの間、俺を怒ったような呆れたような顔で見てたけど……
「……悪かったな」
小さなため息の後でそう言ってくれた。
俺は…ううん、と首を振る事が精一杯で……何も言えなくなってしまった。
「ところでどしたの?」
黒瀬さんが俺を覗き込む。
「あ……え、…と……久我さんに……」
「侑利に用事?」
黙って頷く。
久我さんの顔、見れないよーっ…。
「じゃ、侑利、任せたぞ」
「…ぇ、」
黒瀬さんが、久我さんの肩をポンと叩く。
「話、聞いてやれよ」
「…あぁ、」
久我さんを残して黒瀬さん達は先に帰って行った。
無言でそれを見守ってたけど……俺は……怒られたのもあって、何も喋れない…。
「…何か飲む?」
「…ぇ」
急に言われて顔を上げると、すぐ後ろの自販機で久我さんがコーヒーを買う所だった。
うん、とも、ううん、とも言えず困ってたら、目の前にカフェオレが差し出される。
「好きかどうか分かんねぇけど」
そう言って、俺の手に無理矢理持たせると、駐車場へ向かって歩き出した。
「何か話あるんだろ?寒いから車」
少し先から振り返って俺に言う。
俺は急いで駆け出して、久我さんの後ろを付いて行った。
助手席に乗って良いものか…すこし戸惑う。
「早く乗りな」
「あ、は、はい」
助手席は……慶さんの場所なのに…良いのかな…。
乗り込んだ久我さんの車の中は、シンプルでおしゃれで大人の香りがする。
「それ、使いな」
ドリンクホルダーを指差して言う。
「は、はい」
緊張でうまく喋れない。
ドキドキが煩すぎて……もう…逃げて帰りたい。
でも、チラッと見たコーヒーを飲む久我さんの横顔がカッコ良すぎて倒れそうだよ……。
俺も久我さんも何も喋らない時間が……多分……1分くらい…。
だけど俺には……2時間くらいに思えた。
早く終わらせないと……
久我さんだって早く帰らないと……
慶さんが待ってんだし……
沈黙で居る事にも耐えきれなくなって、俺は……大きく息を吸った…………よし、喋るぞっ。
「久我さんっ!」
「おぉ、」
想像よりデカい声が出たせいで、久我さんがビクッと肩を竦ませた。
「ビビるわっ、声でけぇ」
「ご、ごめんなさい」
もぉーーーっ、何やってんだよーーっ。
「はは、」
え…。
久我さんが…笑ってくれた。
俺も急いで……その笑いに乗っかる。
幾らか、重かった場が和んだ。
「…何、話」
久我さんからそう言われて、また心臓が跳ねる。
告白ってこんなに苦しかったっけ…。
「あの…えっと……どうしても……これだけは言っておかないといけないって思って…」
そう言って、久我さんに向き直すと、久我さんも同じ様に俺の方に体を向ける。
「久我さんには……もう、バレてるし、それに、キレイな恋人さんが居るから…どうにもならないって事も分かってます……でも、」
そこまで一気に喋って……少し深呼吸。
久我さんがじっと俺を見てるから……ドキドキするわ、膝下はガクガクするわで結構大変…。
「このままで諦めれるかと思ったけど………やっぱり無理で……それどころか…久我さんと話せば話すほど……諦めないといけないって気持ちがグラついてる自分が居て……このままじゃ……きっと…前に進めないって思って……今日は……久我さんに…ちゃんと気持ちを聞いて貰おうと思って来ました…」
久我さんの顔を見ないままでここまで喋ったけど……きっと心配そうな顔してるんだろうな……久我さんってそういう人だ。
「ちゃんと気持ちを伝えた上で……ちゃんと…振って貰いたくて…」
「…ぇ、…」
久我さんが少しだけ声を漏らした。
告白なんか……慣れっこだろうな…久我さんは…。
俺は……こんなに緊張してんのに……
「久我さん…」
いよいよ俺は………久我さんを卒業する時が来た……
「ずっと前から……久我さんの事が……好きですっ」
言った…。
言っちゃった…。
沈黙が長い……。
「…お、……あぁ、……うん、……ありがと」
行き成り待ってて、勝手に告白されて、久我さんが困ってる…。
「…でも、…ごめん」
あぁ……とうとう振られるんだ…。
ずっと好きで居たかったのが、本音。
好きになって欲しかったのも本音。
泣いてしまいそうになって…久我さんから視線を外す。
「…好きになってくれた事は…マジで嬉しい。ほんとに、ありがとな」
優しい、久我さんの声…。
平日の深夜は人気もまばらで……静けさの中にその声が響く。
「でも……俺には、付き合ってる奴が居て……ソイツの事が、とにかく好きでたまんねぇんだ」
聞きたくなかったような……聞いてすっきりしたかったような………複雑…。
「多分…先に好きになったのは俺だと思う」
……やっぱり……あの人が羨ましい…。
久我さんに……こんな風に思って貰えるあの人が…。
「…ソイツの事考えてる余裕しかねぇんだ」
さっきから……涙が止まらない。
久々の失恋だし……
「だから…ごめん」
……振られた。
今、完全に…。
「あの人が羨ましくて……そればっか言って落ち込んだり泣いたりして………ウジウジしてたんです…俺」
涙は止まらないけど、感情は…少しずつ落ち着いて来てる…。
「純に…久我さんに気持ち伝えて、前に進まないとダメだって言われて……自分でも…いつまでもこんなんじゃダメだって思ってたから……………でも……久我さんの気持ちが聞けて良かった……」
久我さんが俺の大好きな顔で、ちょっと困ったように笑う。
「もしも……」
こんな事聞いても……意味ないかも知れないけど……
「あの人と出会ってなかったら………俺と付き合ってくれてましたか…?」
……こんなの聞いたって、現に久我さんはあの人と出会ってしまったんだから……ただの妄想でしかないのは分かってるけど…
「アイツと出会ってなかったら……俺は、誰とも付き合ってないと思う」
………久我さん……あの人の事……ほんとにほんとにすごく好きなんだ……。
もう……充分だよ。
惨めだし…どうにもならないって、思い知った。
「わかりました。……もう、諦めます。……前に進みます」
ちょっと強がってるとこもあるけど……でも…だいたいは本心。
いつまでも、ウジウジしたくない。
でも……
でも………
もう、諦めるから………
最後に……一度だけ………
「だから………一度だけ………抱きしめて貰えませんか……」
顔から火が出るかと思った……
そうでなくても、口から心臓が出そうなのに……
ウザいかも知れないな…
未練がましいって思われるかも……
言ってしまった言葉に……居たたまれなくなって、俯いた…………その時、…
フッと、久我さんの仄かな香水の香りがして……その腕が、俺の頭を抱え込むようにまわって来て………俺は…久我さんに抱きしめられた。
信じられない……
久我さんの胸に頭を付けて……その鼓動を感じる。
俺とは違って……穏やかに刻んでる…。
俺、今……久我さんに抱きしめられてんだなぁ……
「幸せになって欲しい」
すぐ近くで久我さんの声が聞こえて……「はい」と返事をしたと同時に、また涙がボロボロと溢れた。
その後は、俺がティッシュをほぼ1箱使い切るくらいの勢いでグズグズやってたのを、久我さんはちゃんと見守ってくれた。
時間はもう、深夜1時40分……
もう、1時間近く引き止めてしまっている…。
はぁ……俺って……ほんとヘタレだよ……。
「帰ります」と言った俺を、当たり前のように久我さんが送ってくれている。
何時になっても良いから終わったらウチにおいで、と純に言われてた。
純の家がここから割と近くて良かった…。
これ以上、久我さんの時間を引っ張りたくない…。
家できっと……慶さんが待ってる…。
「……俺……明日から、前進しますね」
立ち止まるのは今日までだ。
「…俺…昔から…男の人しかダメで……女の子とも付き合ってみた事あったんですけど……やっぱりダメでした…」
久我さんは、ただ黙って運転しながら話を聞いてくれてる。
「だから……恋愛がうまく行く事って、あんまりなくて………だけど……何ヶ月か前から、こんな俺をずっと好きだって言ってくれてる友達が居るんです。…大学の友達なんですけど……ソイツに…俺が向き合うまで待ってるって言われました。……久我さんの事で……俺、正直いっぱいいっぱいだったから適当に流してたのに、ソイツは…バカみたいに俺の事待ってて………どんなに頑張っても久我さんよりカッコ良くないんですけどっ……でも……そんな風に待っててくれてるの見てたら……だんだん…流せなくなって来て…………久我さんを卒業したら……向き合ってみようって思えるようになりました」
こんな事、話されても困るだろうけど……それでも久我さんはちゃんと聞いてくれる。
「前に進めたら……また、店に行っても良いですか?」
何か…全部喋ったら……ちょっと清々しい気分で久我さんの顔が見れた。
「もちろん、その友達も連れて来てよ」
何だか……そういう風に言って貰えて、すごく嬉しかった。
避けたり引いたりせずに……ちゃんと、受け入れてくれるんだなぁ、って…。
「あ、ここです」
「お、」
純のアパートに着いた。
久我さんの車に乗るのは、きっとこれが最初で最後なんだろうなぁ…とか考えながら、ドアを開けて降りる。
久我さんもわざわざ降りて来てくれて、俺の前に立つ。
背が高いとこも、髪型も、顔も、体型も、私服も、声も、性格も、全部……好きだったなぁ…。
「ありがとうございました。…久我さんを好きになって良かった」
「俺も、好きになって貰えて良かった」
ヤバい、泣きそう…。
「もぉ~~っ、最後にカッコいいのずるいですよぉ~」
なんとか堪えて、茶化すように言った。
最後は笑顔で終わりたい。
「ファンでいるのは、良いですか?」
「良いけど、友達が怒んない程度にな」
久我さんはフッと笑って、じゃあ、と言って車に戻った。
俺は、走り去る久我さんの車を泣かないように手を振りながら見送った。
久我さん……大好きでした。
よぉし!
純を起こして泣こうっ!!
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一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。
それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。
にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。
そうして夜宮を知れば知るほどーー
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